連載コラム

「LED Next Stage 2008を視察して」(その1)LED照明器具の最新情報

[ 2008.03.24 ]

照明デザイナー 落合 勉(M&Oデザイン事務所)
はじめに

 7月には北海道にて洞爺湖サミットG8が開催予定で、その主要テーマにCO2削減や省エネへの積極的な対応の促進など、地球温暖化対策が挙げられると予想されています。その開催を控えての3月、省エネへの新光源と期待されているLED(Light Emitting Diode/発光ダイオード)の展示会"LED Next Stage 〜魅力的な店づくり、安心・安全な街づくり〜"が東京国際展示場・東京ビッグサイトで開催されました。このLEDの展示会は2008年3月4日〜7日の4日間、アジア最大級の店舗総合見本市"JAPAN SHOP"や"建築・建材展"等6展同時に開催され、大変盛況で同時開催6展で合計26万人を超える来場者でした。

 今回のLED Next Stageは2回目で(前回の第1回は2006年)、出展社57社が最新LED照明器具やハイパワーLEDデバイス、さらにはLED専用電源などを多種多様に展示し、会場は海外からの視察団も交え、賑わいを見せていました。そして会場奥に設けられた主催者コーナーには最新LED空間照明事例の紹介パネル30枚が掲示され、さらに特設LED セミナーコーナーもあり、いつも多くの人で溢れ、LED照明に大変な関心が寄せられているのを感じました。

 海外の照明見本市と比較してのこのLED Next Stage、照明展としては出展社数や展示ブースなど決して多くはなく、大規模展示ではありませんでしたが、展示されたLEDの種類や技術力の高さ、さらには製品化したLED器具の多様性など、世界のLEDトップランナーである日本メーカーの確かなる力量を感じた展示会でした。二回に分けて出展社ブースの様相を交えてLED新製品の数々を紹介します。

 

図1、2 東京ビッグサイト東館会場への通路とLED Next Stage入り口に吊るされたバナー
 


図3、4、5 会場風景


図6 主催者コーナーのセミナー風景


 会場中央で出展社中最大の展示スペースを展開していたのが松下グループのブースで、各種のLED新製品を展示していました。中でも注目したのは器具の厚さが10ミリのシーリングライトMFORCE-Hと白色LEDのLUGAで、特にMFORCE-Hは光束660ルーメンの白色タイプで白熱灯100ワット形器具と同等の明るさが実現できたとのこと。ダウンライト的使用も想定でき、用途展開が広まりそうです。このMFORCE-HのLEDは「器具・ユニット完全一体化技術」により、放熱性を飛躍的に高めていますが、その技術を用いたセラミック基盤使用のLED新製品が白色LEDのLUGAです。このLUGA、400ルーメン(8.5ワット)と明るさ重視で実用性に富み、薄型・軽量というそのコンパクト形状は照明器具設計がしやすく、いろいろな器具に使えそうです。

 

図7 松下グループのブース/図8 シーリングライトMFORCE-Hの展示


図9 LEDランプのLUGA


 Good Design賞2007を受賞したダウンライトE-CORE40の上級版が東芝ライテック出展ブースで話題を集めていました。その名もダウンライトE-CORE60で、60ワット形白熱灯器具と同等以上の明るさが得られ、しかも断熱・遮音施工天井対応のS形仕様でもあります。そして消費電力わずか7.8ワットは60ワット形白熱灯器具対比で電気代が1/7となり、さらにランプ寿命40.000時間は白熱灯器具の20倍です。1日10時間点灯でも10年間ランプ交換が不要となり、省エネ・長寿命で明るさと経済性を両立した実用的ダウンライトなのです。そしてLED器具に必要な電源ユニットが器具内に収められており、簡単施工でもあります。この実用性が高いE-CORE60ですが、既存器具との代替対処用リニューアルプレートなる補間部品や、眩しさ感低減パーツの拡散カバーも取り揃えていました。



図10 東芝ライテックのブース
 

図11 リニューアルプレートに取り付けられたダウンライトE-CORE60
図12 断熱・遮音施工天井対応のS形仕様(マット敷工法)の展示紹介


 LEDならではの器具の薄さを強調したデザインのスポットライト器具を前面に展示していた三菱電機照明のブースは若い女性が多く、インテリアデザイナーの関心の高さが窺えました。天井フレンジタイプや直付け(ブラケット)タイプのバリエーションもあるこの綺麗なフォルムのLED スポットは大変オシャレな製品でした。

 

図13 三菱電機照明のブースの様子
図14 ブースの正面展示台に置かれていたLEDスポットライト
(真ん中、両側はLED高輝度誘導灯)


 三菱電機照明と一体感ある展示形成していたのが三菱電機オスラムのブースで、各種のLEDモジュール(ランプ)と共に、投光器型のLED器具と制御機器(コントローラー)も展示しており、建築空間への点・線・面の照明演出実現化をPRしていたほか、屋外照明計画対応可の防水機能を備えたLED器具等も紹介していました。

 

図15 三菱電機オスラムのブース/図16 防水投光器(奥)と防水コントローラー(手前)


 ハイパワーLEDとレンズを組み合わせて街路灯を主体に展示していたのが岩崎電気で、ハイポール用からローポール、庭園灯まで高さとデザインが異なる様々なバリエーションで紹介していました。中でも既存電信柱に巻いて設置する形状は斬新なるデザインです。省エネの郊外型防犯灯として、普及すること大いに期待できましょう。

 

図17 岩崎電気のブースの外装/図18 既存電信柱に巻きつけるLED防犯灯


 IDECオプトデバイス/IDECパワーデバイスのLEDスクエア型600角埋め込み器具に注目しました。3月6日竣工の自社の新社屋設置のために開発したこのLED器具、システム天井用と一般用との2種が展示してありました。白色(6000K)と温白色(3300K)のLEDを混色し、その内のシステム天井タイプはルーバーとアクリルカバーによりグレア低減を図っています(消費電力66ワット)。

 尚、全館LED照明の建物として世界初になるこの新社屋オフィスビル、省エネの地球環境に優しいLED照明建造物として後世に名を残すこととなりましょう。機会があればぜひ視察したいものです。

 

図19 IDECオプトデバイス/IDECパワーデバイスのブース
図20 600角のLEDシステム天井用埋め込み器具(手前)


図21 新建屋(IDEC SALES OFFICE:大阪市淀川区)の様相
(写真提供:IDECオプトデバイス)


 国産初の防水・防爆型蛍光灯器具を発売した創業1945年の星和電機のブースには、水をたくわえた水槽の中に、防水された水中LED器具が点灯されていました。ランプ寿命が長いLEDは今後メンテナンスが困難な水中照明用に多用されていくことでありましょう。



図22 星和電機のブース。真ん中で3色に光っているのが水中LED器具


 ラッキーのブランドで知られた丸善電機は、創業1921年の老舗の照明専業メーカーです。その丸善電機がLED電球やLED光源採用の器具を試作出展していました。長年の培われた製造技術と伝統が、21世紀型光源LEDの特性を活かしてどのような製品を作り出すのか、今後の展開が期待されます。

 

図23、24 丸善電機のブースおよび和紙とLEDを融合させたLED照明器具(参考出展)


 主にLED照明器具を展示するブースを取り上げ、注目した事柄などを紹介してきました。それらはダウンライトなどの基本照明や建築化照明に用いる器具や灯具が多く、(造詣的に空間演出の装飾的器具は少ない)照明の展示会としてはやや淡白でありました。その中にあって人目を惹いていたユニークなLEDのテーブルスタンドがありました。中央の幹線通路に面した大光電機のブースです。調光や色光調整できるLEDダウンライトに重点を置いた展示でしたが、一角に置かれた透明アクリルのスタンドは爽やかな印象を覚えました。これから先、機能優先だけでなく軽快さや情緒や和やかさを醸し出すLED器具が創り出されることを期待したのでした。

 

図25、26 大光電機のブースとテーブルスタンド


 次回は、LEDモジュールや電源などの基幹部品や集光や拡散にフォーカスを当てた展示内容を取り上げます。

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落合 勉
執筆者:落合 勉

照明デザイナー
M&Oデザイン事務所代表
LBA JAPAN NPO 理事長、愛知県立芸術大学非常勤講師、照明文化研究会 会長


1948年愛知県三河生まれ、ヤマギワにて照明を実践。
1991年横浜にてM&Oデザイン事務所スタート、現在に至る。
2001年からLED照明デザインワークに特化しての活動を展開、そして2006年からはOLED照明普及にも尽力。
2006年のALL LEDの店舗空間、2008年のALL LED街あかりや住空間、2009年のALL OLED照明空間など手がけ、SSL快適照明を探求提案。
器具のプロダクトデザインや照明計画などを行う傍ら、国内外の照明関連展示会や企業などを訪れ、グローバルな照明最新情報をインプットする。コラム(http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/index.html)参照。
趣味は古灯具探索で、日本のあかり文化の認知普及活動を展開中。
2009年7月、Light Bridge Association JAPAN NPOを設立し、理事長に就任。
次世代のあかり文化を担う「あかり大好き人間」の育成を目指している。

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