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光輝く家具、ミラノ魅了――見本市、日本人デザイナー脚光。

[ 2017年4月26日 / 日経MJ(流通新聞) ]

虹の様な色彩 感動的に表現
高度な工業技術 世界へ向け発信

 イタリアで4月上旬、デザインの国際的祭典「ミラノ・デザイン・ウィーク」が開かれ、今年も日本の気鋭デザイナーの活躍が目立った。吉岡徳仁氏の光の展覧会、佐藤オオキ氏のユニークな照明、深沢直人氏の椅子、倉本仁氏のガラスのオブジェ――。注目された4氏のモノづくりを紹介する。

 デザイン・ウィークのメインとなる国際家具見本市「ミラノサローネ」は56回目を迎え、出展数2000以上、来場者数は34万3602人に上った。隔年で併催される照明の見本市「エウロルーチェ」は2015年度に比べ来場者数が10%増と盛況だ。市内では「フオーリサローネ」と呼ばれるメイン会場外でのデザイン展示が約1300作品まで増えていた。

 総面積約1000平方メートルの巨大な空間では、赤、オレンジ、黄、緑、青と虹のように色彩を変えて輝く椅子が大規模な光の詩的な現象を披露。来場者を魅了する。会場奥に設置された幅16メートル×高さ5メートルの巨大な光の壁、「太陽の壁」は3万個の5センチ角の有機発光ダイオード(OLED)照明がランダムな光を放ち、太陽のように輝く――。デザイナーの吉岡徳仁氏と韓国の総合家電メーカー、LGがコラボした展覧会「S.F_Senses of the Futuer」=写真【1】=は、フオーリサローネの展示から選ばれる「ミラノデザインアワード2017」の最高賞を受賞した。日本人ではアワードの名称が変わる前の12年以来、2人目だ。

 昨年秋、LGから「『人に感動を与える』という企業理念を空間で表現してほしい」との依頼が舞い込んだ。吉岡氏は「最先端技術を使って新しいモノづくりができる絶好の機会」と韓国を訪れ、あらゆる技術の中からOLEDを選択。「最新のテクノロジーを使った自然な光を表現したかった」。新作の椅子「S.F chair」は奥行き68センチ×高さ123センチ、厚さわずか15ミリメートルの両面がOLEDデジタルサイネージでつくられ、映像が映し出される。未来的でありながら自然な光で輝く椅子は時代を象徴する。

 吉岡氏はもう1つ、伊カルテル社から革新的な立体構造の椅子「MATRIX chair」を発表した。これまでに発表したハニカム構造の紙の椅子や植物の繊維構造の椅子などは、素材の構造から椅子をデザインした。今回は椅子の構造そのものをデザインし、2層で形成されるマトリックス状の立体構造を一体成型し、プラスチック製の椅子を生み出した。同社のマーケティングディレクター、ロレンツァ・ルーティ女史は「吉岡氏の実験的な創作の実現は、プラスチックの新たな可能性を切り開く」と期待を込めた。

 照明メーカーの最高峰、伊フロス社の最高経営責任者(CEO)のピエロ・ガンディーニ氏は初めて日本人デザイナーを起用した。佐藤オオキ氏率いるデザイン事務所「nendo」(東京・港)の新作「GAKU(ガク)」=写真【2】=は、約35センチ角の木質を生かした箱型で、照明と小物を組み合わせて使う「家具と照明の中間的なもの」だ。

 箱につるしたペンダントタイプの照明は高さを自由に変えられる。置き型のスポットタイプは普段は充電ドックに置き、必要に応じ持ち運ぶ。磁石で傾けて置けるため照らす向きの調節も可能。花瓶や本立てなどの小物も磁石で固定できる。佐藤氏は最近のトレンドを考慮。「自然素材の木質や陶磁器の質感を大切にし、オンライン購入に向け自由な組み合わせができるようにした」

 日本の高度な技術を世界に発信した他の1人はプロダクトデザイナーの深沢直人氏だ。ミラノサローネ会場で最も注目されるホール16に日本から唯一出展する家具メーカー、マルニ木工(広島市)のアートディレクターを10年から務める。代表作「ヒロシマ」の椅子は3次元の複雑な加工が特長だ=写真【3】。

 深沢氏は「本来、人間の手でしか削り出せない形状を工業的に生産できるよう『工芸の工業化』を推進してきた」と語る。製造当初は月産数台だったが、今では数百台以上に伸び、海外に販路を拡大する。働き方の変化からもっとぬくもり感のある椅子をオフィスに取り入れたいという各国のディーラーの要望を受け、今回はスタッキングチェアの張り座に難燃性の生地を用い脱着式にするなど提案の幅を広げた。

 もう1人は新進のプロダクトデザイナー、倉本仁氏。3年目の出展を果たした旭硝子とタッグを組んだ。テーマは「タッチ」。「ガラスに触れる」というアイデアのもと、同社の様々な技術を生かした太鼓、シーソー、モビールの3作品=写真【4】を発表した。

 倉本氏は「ガラスはテクノロジーの塊のようなものだが、ガラス本来のシンプルな魅力で勝負した」と話す。迫力ある音を響かせる太鼓は天板を囲む十角形の上部が底部では円形になるという形状も面白い。その色彩は世界の民族衣装からヒントを得た。天板が透明で側面がオレンジや黄色の濃淡の太鼓は台湾の山岳民族の衣装から色を抽出。他の2点はアフリカのマサイ人やマダガスカル島の民族衣装を参考にした。

 世界のバイヤーやデザイナー、ジャーナリストらが集まるミラノ・デザイン・ウィークは、日本の気鋭のあふれる創造性と確固たる独自性を披露する最良の場となっていた。

(ホームファッションコーディネーター 堀和子)

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