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河西工業企画・デザイン開発室高田有紀子氏――車の接近、光る内装で警告(FromLABO研究開発の新潮流)

[ 2017年6月28日 / 日経産業新聞 ]

ドア内側なら察知早く

 自動車内装材を手掛ける河西工業が発光ダイオード(LED)を使って内装材を光らせる技術開発を進めている。意匠目的だけでなく、左右の後方から車が近づいた時に、運転席や助手席のドア内装部が光ることで警告を出し、事故を防ぐといった使い方を模索している。これまで内装材は高級感などが付加価値だったが、人とクルマのコミュニケーション部品としての役割を担おうとしている。

 神奈川県寒川町にある河西工業の実験棟。棟内に置いた試験車両のサイドミラーやドア付近には、運転席と助手席側にそれぞれ4つの小型照明が付いている。ドライバーが試験車両に乗って運転シミュレーションをする際、別の技術者はスイッチを操作して照明を任意に光らすことができる。照明がオレンジ色に点灯するとドライバーがハンドル上のボタンを押し、点灯してからの反応時間を計測できる。

 同社の企画・デザイン開発室が手掛けるこの実験は「死角検出警報機能」を模したものだ。同機能は後続車が近づいた時に運転者に警報を出して、不用意な車線変更による事故を防ぐ技術。サイドミラーが光るタイプは既に市販車で普及している。河西工業は照明の位置によって、反応時間がどう変わるかを調べる。

 実験の結果、明るい昼間の場合、ミラーに付いた照明が点灯するよりも、ドアの内側など車内に設置した照明が光ったときの方が運転者の反応時間が半分ほどだった。ドライバーの視界に近く、視認性が高まるためだと分析している。

 ミラーでなく、内装にLEDを仕込んで光らせることができれば、より安全性の高い死角検出警報機能になる可能性がある。内装材が人とクルマをつなぐ機能を持つという新たな価値を生み出せる。河西工業ではこうした技術を「インテリア・ユーザー・インターフェース(IUI)」と呼び、普及を目指している。

 従来、内装材の価値は高級感のあるデザイン、手触りの良さといった装飾面にあった。だが、自動運転をはじめとした安全技術が進化する中、部品にも新しい価値が求められる。河西工業は3年ほど前から技術革新の変化を読み、IUIを推進してきた。

 ただ、自動車の内装をきれいに光らせるには、住宅照明とは異なる高い次元の技術が求められる。例えば、ドア部品は2000もの曲面で構成される。室内を均質に照らす住宅照明に比べ、光の反射やLEDの配置を正確に考慮しないと意匠性が失われてしまう。

 河西工業は2010年頃からコンピューターシミュレーションによる照明設計ができるよう技術を蓄積してきた。企画・デザイン開発室の高田有紀子氏は「デザイナーの設計をもとに、LEDの位置や導光部材の配置を決めてシミュレーションを繰り返し、商品化につなげている」と話す。

 同室では欧州で開かれる家具や照明の展示会に定期的に出張し、最新の照明のトレンドを取り入れる。例えば、布など光源以外の素材を生かした光や、あえて影の部分を生かす光り方など流行は様々だ。

 こうした光学技術を取り入れたドアは日産自動車の多目的スポーツ車(SUV)「ムラーノ」やホンダのSUV「アヴァンシア」で採用されている。車内照明は影の付け方といった味付けで、人間の感性による部分も大きい。「開発には色彩感覚に優れた女性の力が大きい」と先行開発を担当する田村谷誠執行役員は話す。内装に光を掛け合わせた技術で車の未来を変える。(杜師康佑)

《組織概要》
▽設立時期 2014年4月
▽場 所  神奈川県寒川町
▽人 員  非公開
▽事業概要 コンセプトモデルや照明の開発

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