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光操る結晶、レーザーに革新――京都大学教授野田進氏(かがくアゴラ)

[ 2019年8月30日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 大規模集積回路(LSI)やコンピューターが発明された20世紀は電子の時代といわれた。21世紀はそれに加えて光の技術が大きく伸びると期待されている。発光ダイオード(LED)やレーザーなどの技術は既に身近になった。京都大学の野田進教授は「光を自在に操るフォトニック結晶はレーザー技術に革新をもたらす」と強調する。自動運転車向けセンサーの高性能化などに役立てる考えだ。

 フォトニック結晶は屈折率が異なる物質を光の波長と同程度の数百ナノ(ナノは10億分の1)メートルの間隔で周期的に並べた人工結晶のことだ。光を内部に閉じ込めたり侵入を防いだりする現象が起こる。自然界でも同じ原理が存在する。「生きた宝石」といわれるモルフォチョウは青く光沢のある羽を持つ。表面の微細構造の間隔により特定の波長の光だけ反射されるためだ。間隔が変われば色も変わる。

 我々は1999年に世界で初めて3次元のナノ周期構造でフォトニック結晶を作った。以来、数十年先の実用化を目指す基礎研究と産業に役立つ研究の双方を進めてきた。前者の例は次世代の量子コンピューターへの応用だ。フォトニック結晶内に光導波路やナノ共振器を設けると、光パルスの捕獲、放出機能、電子との組み合わせ状態などを持たせることができる。

 後者で注目されているのが高性能の半導体レーザーだ。従来、高出力を得るために発光面積を大きくすると、ビームの品質が悪くなった。フォトニック結晶を応用すればビーム品質が劣化せずに高出力が得られる。離れた場所にビームを当てる際もレンズで集光する必要がない。超小型であることも利点だ。

 ロボットによるレーザー加工や、自動運転車に使うレーザー光で人や障害物などを検知する「LiDAR(ライダー)」などへの応用が見込める。大学から企業への技術移転も進めており、国の提唱する超スマート社会「ソサエティ5・0」の実現に貢献したい。(長谷川章)

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