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東京、可視光通信コンソーシアム――未来の通信、実用化へ合流(新人脈地脈)

[ 2011年9月22日 / 日経産業新聞 ]

 目に見える光で情報も伝える――。電機メーカーなど計14社が参加する可視光通信コンソーシアム(VLCC、東京・品川)は、慶応大学が中心に開発を進める「可視光通信」の普及に取り組む。可視光通信は発光ダイオード(LED)の点滅でデジタル情報をやり取りする仕組み。電波でも赤外線でもない新しい無線通信の可能性を探る。

 水族館の水槽内でダイバーが懐中電灯のように手に持つ光を観覧者に向ける。「聞こえますか」。光をガラス越しに専用端末で受け取った観覧者にはダイバーの声が聞こえる。今夏に大阪市の「海遊館」でこんな風景を見られた。

 これは可視光通信を使った実演の一コマ。ケーブル通信では行動範囲が制約されるし、音波ではイルカなど生態系に影響を与える。海中でダイバー同士が通話するシステムとして年内に商品化される予定もある。

 可視光通信は光の明暗をデジタルデータの「0」「1」に置き換えて情報を送る。点滅は人の目には分からないほど高速なので、ただの照明にしか見えない。病院など電波が使えない場所で活躍する。文字通り通信経路が見えるので特定の人だけとやり取りできる。

 「LEDの照明が将来出てくるかもしれない。通信に応用できないか」。1998年に目を付けたのが、無線通信技術の開発で有名な慶大元教授の中川正雄氏(64)。翌年、可視光通信の研究を始めた。

 加わったのが、中川氏の研究室に在籍経験があり、当時ソニーコンピュータサイエンス研究所にいた春山真一郎氏(53、現・慶大大学院教授)。「ソニーと慶大で何か共同研究をやりたいね」と中川氏と話をしていたところに、興味深いテーマが降ってきた。

 2002年に春山氏が中川研究室に戻り、学会で研究会を立ち上げるなど精力的に活動したが、実用化は遠かった。そこにビジネス感覚を持ち込んだのが商社出身で米大学で経営学修士号(MBA)を取得した松村友邦氏(61)だ。慶大出身でソフト会社を興していた松村氏が相談目的で中川氏と知り合ったとき、次世代通信のコンセプトに共感。特許管理などを担う中川研究所(東京・品川)という会社を立ち上げた。

 普及させるためには企業の力が不可欠。松村氏が代表を務める中川研究所が運営主体となり、03年にVLCCが発足した。東芝やパナソニック電工、NECなどが参加した。

 無線LAN(構内情報通信網)の発達などもあり、まだ広く市民権を得られてはいない。それでもショッピングモールなどで位置データや広告を送る計画が進んだり、三井住友建設が測量に使ったりするなど、実例は増えてきている。

 オバマ米大統領が研究推進を宣言したり、韓国サムスン電子などが規格化を進めたりと海外でも関心が高い。節電対策でLED照明が注目されるなど追い風も吹く。春山氏は「今後は本格的にビジネスにしていく」と話す。

(鳳山太成)


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