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連載コラム

第1回 東アジアにおける一般市場LED照明販売に特徴あり、中国ではEコマース販売市場に期待

[ 2013年11月6日 ]

 日本では電球形LEDは4年で8割も価格が下がった。このような価格下落は消費者の購買意欲を掻き立てる。価格下落については中国、韓国、台湾などでも顕著だが、それでも高効率蛍光灯に比べてまだまだ単価は高い。そのため、各メーカーはLED照明普及に向け様々な活動を続けながら、日本のように普及させるためにはどのようにすればいいのかと策を練る。

LED照明販売の動向

 日本においてLED照明はあらゆる場面で浸透し利用されている。電気量販店では販売面積を広くとり、ホームセンターなどでも電球形LEDはもちろんのこと直管形LED照明も一般向けに既に販売されている。電球形LEDの価格は大手ブランドでも物によっては1000円を切る価格だ。
 2009年、日本大手企業のもので電球形LED 4.1W (白熱電球40W相当・340lm・昼白色)で5000円台であった。2013年には大手通販サイトで同等製品を購入すれば電球形LED 7.7W(白熱電球40W相当・580lm・昼白色)で1,000円前後だ。4年で8割も価格が下落したことになる。電気代や取替えの手間を考えるとLED電球が断然得に思える。
 2012年の日本における屋内用LED照明の出荷台数は全体の出荷台数の約40%を占める。価格や利便性よりも商品の目新しさを重要視し新製品を積極的に購入するような初期採用者が動いたフェーズから、今では製品の原価と効果を考える消費者が購入検討リストに入れるようなコモディティ化した製品なったといえよう。しかし、それは2011年に起きた大震災の影響もあり、日本が世界に先駆けてLED照明の普及が進んだからにほかならない。もし、この大きなきっかけがなければ、ここまで急激な市場拡大は出来なかったのではないだろうか。
 この急激な普及はあくまで日本だけのものであって、ひとたびアジア圏を見ると、全く違う様相を見せる。

 東アジア圏におけるLED照明事情についてだが、日本は個人購入からの行動が早く、室内照明から導入に至ったことを考えると導入の流れは対照的である。中国、韓国、台湾などはパブリックセクター主導による拡大が主流のため、公共事業の一環として屋外照明から市場が拡大している。そのため今後は一般消費者市場の拡大に期待が集まっている。

 2012年のLED照明(屋外および屋内)の数量ベースでの普及率は中国で2012年3~4%、2013年には10%には届くだろうが、それは政府政策による屋外照明や公共機関、または外資企業が積極的に取り入れているからだ。住宅用においてはまだまだ初期採用者が受け入れただけの状態だ。韓国のLED照明(屋外および屋内)の数量ベースでの普及率は2012年で10%、台湾でも2012年で10%程度だ。

 各国の今後の目標として2020年までに、日本ではフロー(出荷)レベルで100%、韓国では普及率30%(15/30プロジェクト)、中国では機能照明普及率20%、台湾では30%の普及率を目標としている。

政府政策

中国市場、中央政府・地方政府ともに政策で推進

 中国のLED照明の今後の市場規模について、調査会社の台湾LEDinside社は「2012年に中国政府が採った一連の政策措置がLED照明の内需を刺激し、中国におけるLED一般照明市場を動かし始めた」と指摘する。それにより、2015年の中国国内LED照明の需要は100億米ドル規模(約1兆円)に達すると見込む。さらに2020年には、中国の家庭用LED照明の需要は220億米ドル(約2兆2000億円)にまで伸びると予想する。

 中国政府はLED照明普及に向けてこれまでも様々な支援策を打ち出してきており、2012年以降の主な政策だけでも■2012年4月国家が発展を支援する重大技術設備および製品目録(2012年改訂)の開始、■2012年6月国務院、環境配慮向け製品への補助金支給(LED向け22億元)、■2012年7月科技部発布「半導体照明科学技術発展"十二五"特定プロジェクト計画」、■2012年8月NDRC/MOST/MOFによる半導体照明産品 財政補助企業決定、財政補助の普及プロジェクト「2012/2013年度半導体照明製品財政補助推進プロジェクト」、■2012年11月十八大「グリーン発展、循環発展、低炭素発展」で「美しい中国」を建設目標として掲げるなど、様々な方面から支援する。2013年1月にも国家発展改革委員会、科学技術部、工業情報技術部、財政部、住宅都市農村建設部、国家質検総局の6部共同発表「半導体照明省エネ産業計画」を発表、さらに支援を続ける考えだ。第12次5カ年計画の期間(十二五期間)中、中国政府は補助金政策によって、LED照明の生産額を年平均成長率30%前後で伸ばし、2015年までに4500億元(従来予想の5000億元から10%下方修正)に引き上げることを掲げる。

 広東省政府は、省レベルでも補助金を展開する。同省政府が2012年3月12日に発布した「広東省戦略性新興産業発展"十二五"計画」では、LED照明を含む八つの産業を広東省の次なる基幹産業と位置付け、重点的に産業を育成することを狙う。第12次5カ年計画の期間に、約220億元の補助金投入が決定している。

 2013年はLED照明が一般消費者の間で急速に普及し始める年とみていいだろう。中国でのLED照明の普及過程は、政府支援による屋外照明への導入や、公共機関の屋内照明への導入、一般商業施設への導入といったこれまでの流れから、2013年にはEコマース販売やスーパーマーケットチェーンの店舗で容易に製品が入手可能になるなど一般消費者の手元へも流れ出している。

韓国市場、電力削減のためソウル市が積極的に推進

 韓国は積極的にLED照明政策を推進してきた。確かに、大企業の大規模投資などにより、LEDチップの製造など、いわゆるサプライ・チェーンの川上分野では韓国は短期間で2011年には世界シェア2位にまで躍進し、現在も維持している。しかし、照明器具製造などの川下産業では、大企業から中小企業にいたるまで多くの企業が参入したことで単価下落が激しくなる一方、韓国内でのLED照明の普及の伸び悩みのため、各企業が苦戦している。そのため政府は企業育成や消費電力削減のためLED普及政策をいくつも施している。

 例えばソウル市では2007年から2009年までに230億ウォンを導入し、交通施設で15.6万個、公共庁舎で3.8万個もの照明をLEDに交換済みである。これによる年間の電力消費量と電気代の削減規模は、それぞれ約42.4 GWhと約16億ウォンに達するようだ。こうした策に2012年加わったのが、LED照明化率100%に向けた政策である。ソウル市は2012年6月、ソウル市内の公共機関に関して「新築の公共建物においてLED照明の設置を義務化」を発表した。2012年6月末の段階で、ソウル市におけるLED照明普及率は公共機関で10%程度。それを今後拡大させ、公共機関では2014年に50%、2018年に100%、そして民間では2030年までに100%を目指すという。
 2014年までのLED照明への切り替え目標として、780万個を掲げる。この内訳は、公共機関の目標の50%となる80万個と、民間部門の目標の25%となる700万個である。実現すると、年間で約1100GWhの電力削減が実現できるとソウル市は試算する。この数値は、ソウル市の代表的な高層ビル「63ビル」の電力使用量(2011年で約35GWh)の約30倍に相当する。金額にすると年間で約1200億ウォンのコスト削減効果となる。特に夏場の電力供給が不安定なソウル市にとっては、これほどの削減量の効果は大きい。
 ソウル市の各区では今後、新設する公共建物でのLED照明の採用率を2012年に50%、2013年に70%高め、2014年には100%義務化される。
 このほかにも公共機関に限らず、地下駐車場のLED照明導入時に支援を行う。ソウル市には地下駐車場が多く存在する。そのため、ソウル市はLED照明の普及を目指して活動する業界団体KLEDA(Korea LED Association)と協力し、地下駐車場でのLED照明の普及促進を図る。大型商業施設や共同住宅の地下駐車場では、実質的に無償でLED照明を導入できる。また、2013年8月にはソウル市は「大型新築ビルでの再生可能エネルギー10%以上の利用、LED照明設置50%以上の設置義務化」、9月には「ソウル地下鉄環境配慮型LED照明設置業務協約」など、常に新しい政策を展開している。

台湾市場、LEDメーカーが主導する

 行政院が発表した「2015経済発展ビジョン第一段階の三年衝刺計画(スパート計画)」中の「産業発展方案」で、LED 産業をグリーン産業の中でも重要分野の一つとしている。
 台湾の目標として,「LEDの世界シェアを2008年の10%から,2014年に14%(生産額930億元),2015年に23%(生産額5,400億元)」を掲げる。
 中台間における取り組みも積極的で「両岸(中台)LED照明産業協力交流会」をもち,台湾はいち早く中国との関係強化を進めた。
 また、LEDメーカーの努力により、この2~3年、台湾でもLED照明普及が進み、2012年現在で数量ベースでの普及率が10%程度となった。2010年には電気店ではLED照明の販売スペースがほとんどないと言っていい状態であったが、今年の販売状況には目を見張るものがある。価格についても台湾大手企業のもので、2010年に40W相当製品で約500NTドルだったものが、2013年には200NTドル以下と半額以下になっていた。白熱灯が欧州照明メーカーのもので20NTドル程度なので、まだ10倍の価格差はあるが、着実に安くなっている。

 台湾にある欧州のスーパーマーケットチェーンの店舗でのLED照明の販売エリアは、高効率蛍光灯エリアの倍のスペースが用意されていた。特にEverlight社やDelta社が業界を引っ張っているのだ。LED商品棚ではデジタルサイネージで商品の情報を流し、またPOPで電球との比較を記載して消費者に分かりやすくその性能をPRしている。韓国や中国ではこのような説明について筆者は目にすることがなかった。もちろん日本ほどではないが、一般消費者にとっては購入検討の一助となるのは間違いない。そのため筆者が売り場前で観察していると、LED照明を手に取り検討する人が意外に多いことに目を見張った。これらは各LED照明販売メーカー主導の積極的な展開によるものだ。Everlight社では拡販戦略の一つとして、量販店などでは「それぞれのチャネルにEverlight社のLED照明コンセプトコーナーの設置」、「消費者は実際の商品と触れることができる」、「LED照明の点灯」、「LEDの長所と照明知識の教育」などを掲げ、消費者のLED照明の購入行動を促している。
 また、昨年から一時的ではあるが、コンビニエンスストアにはEverlight社やDelta社の製品が並んだ。Everlight社は「7−SELECT」としてセブンイレブンとのダブルブランドがレジ前で販売されていた。Everlight社によると台湾内の5000店近くの店舗に置かれたということだ。(2013年10月現在、販売は終了している)

図1:Everlight社の拡販戦略(参照:Everlight社資料)
※3Cとは台湾における家電量販店のことをさす

 LEDinside社によると2012年の台湾での電球形LEDの出荷個数は134万個で、2013年は20%増の160.8万個となるとしている。現在、主な販売企業はEverlight社、Delta社、TESS社などだが、日本の照明メーカーや欧米の大手照明メーカーが台湾で販売を展開する予定もあるという。

中・韓・台におけるLED照明の個人への普及課題

 中国や韓国、台湾などでも、ここ数年でLED照明の価格は日本同様大きく下落した。一般家庭への普及が進まない障壁の理由の一つとして価格の高さがあったが、2013年の価格の下落も手伝い、徐々にではあるが、普及の兆しが見えてきた。
 しかし、まだ普及に向けた課題は残っていた。それは信頼性だ。
韓国LED協会(KLEDA)によれば「民間市場における普及が進まない理由としてはもちろん価格が高いこともあるが、初期のLED照明に不良品が多かったことも大きかった」とのこと。また中国でも状況は似ており、粗悪な製品が存在したり、競合他社に対して価格面で優位に立ちたいがため、品質面を犠牲にする企業も多いという。国家半導体照明工程研発及産業連盟(CSA)によると「使い始めて3日間で使えなくなるような製品があった」とのこと。そのため、中国内ではLED照明製品に対する不信感はまだ根強く、未だ価格差や信頼性の面から高効率蛍光灯を選ぶ傾向にあると考えられる。両国とも標準化の重要性を認識していることが伺える。

中国ではEコマース販売市場に期待

 2013年、中国で欧州の某大手照明企業の60W相当のLED照明は110元台(1,900円前後、9.5W E27 )で購入できる。同等製品価格を比べると白熱電球価格は3元台(60円前後、60W E27 )、高効率蛍光灯照明は26元台(400円前後、螺旋型11W E27)。このメーカーは中国国内ブランドに比べ価格は高いが、白熱電球や蛍光灯と比べてもその差は歴然としている。以前に比べ、LED照明が一般消費者にとって手に入りやすい価格段階に来たといえども、まだまだ高い。中国Zhejiang Shenghui Lighting社によれば、LED照明の価格は「蛍光灯の1.5倍の価格なら中国人でも許容でき、それは2015年~2016年にかけて実現できる」と語るが、上記の例をみると、ブランド品LED照明の価格の場合65%程度は下げる必要もあるかもしれない。その一方でノンブランドものでは高効率蛍光灯照明に近い価格で入手できるものもあるが、品質面で信頼性が高いとは言えない場合がある

 現在の中国での照明の主な販売ルートのひとつとしてあげられるのは、Eコマースや、街中にある照明灯具市場であり、最近では多くのLED製品が一般人でも入手可能だ。それにあわせ夏ごろからヨーロッパスーパーマーケットチェーンの店舗でもLED照明の販売エリアが設置され、LED照明製品が手に入るようになった。

 今後、中国の一般消費者向けのLED照明の販売において、ネット経由での販売の貢献が大きくなると思われる。中国でも取引量が大きい中国のオンラインショッピングサイト、タオバオ(淘宝)は2012年時点で、オンラインショッピング市場シェア約70 %、会員5億人で、「タオバオ」(CtoC)と「T-mall」(BtoC)を合わせた総流通総額は1兆元(約15兆円)にもなる。(参照:アリババサイトより)(※1)1日の流通金額にすると約410億円(2012年、楽天1日の流通金額は27億円)である。照明の販売が占める割合は小さいが、この販売網は期待できる。中国の若者が主な購入層であるのに加え、広い中国において、どの地域でも販売可能だからだ。

※1.タオバオ(淘宝網)はCtoCビジネスであり、T-mall(天猫/旧:タオバオモール(淘宝商城))はBtoCビジネス。ともにアリババグループ参加のEコマースサイトである。

 また、購入者はこのサイトを利用するメリットがある。BtoCサイトであるT-mallサイトでの購入者数や、さらにはその商品への評価が分かる。他者のコメントを参考に購入行動を起こすことが出来るのだ。そして、このサイトは信頼性が高いため、購入者は安心して購入できる。主な例としては、不正なコメントや不正な製品が流通しないように運営会社は細かいルールを設けており、罰則制度がある。(※2)このような運営により、このサイトがここまで流通金額を上げるとともに、利用客からの信頼も獲得し、ひいては流通商品も信頼性を上げている。

※2. T-mall(天猫)全体に対する消費者の信頼・利便性を高めるため、ネット上での不正な経営や不正行為について、正当な経営を行う会員の権益を保護し、不正な経営を行う会員を是正し又は処罰することができる。罰則ポイントがたまると店舗の一時遮断やID封鎖などの罰則が適用される。また、全ての店舗は、「7日間理由なし返品」の受付が義務付けられている。中国のネット決済システム「アリペイ(支付宝)」を通じて購入された商品に限り、商品受け取り後7日以内であれば理由なしに返品できる、という制度もある。(ただし、再販売可能な状態の商品に限る)参照:JETROの「タオバオ、アリババ知的財産権侵害に関する処罰情報の公開と収益システム究明」(2011年3月発行)およびアリババサイトより

 また、照明灯具市場でのLED照明製品の売上も上がっている。多くのダウンライトやスポットライト製品が並ぶ。販売店に売上の状況を聞くと「売上は確実に増えており、現在、販売金額では全体の半分をLED照明が占める」という。BtoBが主なため、電球型の製品の販売は比較的少なく、商店向けのダウンライトが多く並んでいるのが特徴だ。

 LED照明関連製品の価格が下落する中、東アジアの一般消費者市場では、消費者からの信頼を獲得することが今後さらに必要となるだろう。そのような中で、信頼性確保とコスト低下に寄与する日本のデバイス・材料メーカーへの期待は高まることと確信する。また、製品が普及するにつれ、LED照明がいち早く一般消費者市場に拡大した日本における照明製品展開のノウハウや、制御システムのノウハウは今後拡大する地域において手本になることだろう。

Asian Lighting Report
執筆者:石田のり子


ソフトウェア企業、半導体マーケティング企業でマーケティング担当後、2006年韓国FPD調査会社Displaybank日本支社を立ち上げ、アナリストとして調査を担当。2007年にGranageLLP(グラナージュ)を設立。2008年には、日経BP社FPD Internationalのイベントプロデューサを勤める。現在、FPD、LED照明、太陽電池、二次電池エリアでのリサーチ業務、コンサルティング、レポート作成、ビジネスマッチング、イベントプロデュースなどを行う。日経BP社発行誌「日経エレクトロニクス」「Green Device」「LED2011」、韓国LED普及協会誌への寄稿や日本国内、台湾、中国などでLED照明関連の講演を行う。

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