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連載コラム

第2回 「有機EL照明、日本に猛追する中韓勢」

[ 2014年2月3日 ]

 有機EL照明の市場にも中国、韓国勢が猛追してきている。中国では元米国イーストマン・コダック社出身の技術者が設立した南京第一有機光電有限公司(英語名:First-O-Lite、以下、FOL)が本格的量産を始めた。韓国ではLG化学社が日本や中国への進出を本格化させている。同社は米国イーストマン・コダックの有機EL事業を買収し、また、LGグループで有機EL関連の特許管理会社GTO社を米国に置くなど開発に力を入れている。
その様な中で日本企業はこれまでに積み上げた経験をこれからどのように活かせるのか?

中国の有機EL照明企業の動向

 中国ではすでに数社が有機EL照明事業に参入を明確にしている。代表的な3社として、FOL社、中国の大手液晶パネル・メーカーである京東方科技集団(以下、BOE)社や中国清華大学の有機EL技術研究を基本として作られた維信諾公司(以下、VISIONOX)がある。FOL社は有機EL照明パネル専業メーカーで、BOE社およびVISIONOX社は有機ELディスプレイパネル製造を行っているメーカーである。このように中国でも有機ELディスプレイパネルを製造している企業による有機EL照明分野への参入が進む。

 中国の大手液晶パネル・メーカーであるBOE社といえば、中国国内はもとより、日本企業にも多くの液晶パネルを供給している会社として知られる。2014年には、第5.5世代ラインで中小型向けの*AM有機ELディスプレイパネルの量産計画を持つ。有機EL照明については、市場推進担当者によると照明用途では自社製造については研究レベルにとどめ、照明用パネルは他社から購入し、2014年には照明器具製品を発表することを明かした。

 中国で長年照明用有機ELの技術研究をしているのは、VISIONOX社だ。同社は中国清華大学の有機EL技術研究を基本として作られた会社で、研究開発、生産、販売を一貫して行う。北京維信諾公司(北京VISIONOX)と昆山維信諾公司(昆山VISIONOX)の2つの拠点がある。北京工場では研究開発や試作を行い、昆山には量産ラインを設ける。同社は2001年からPM有機ELディスプレイパネルとAM有機ELディスプレイパネル(*1)の製造と、フレキシブルディスプレイパネルと有機EL照明の開発を進めている。PM有機ELディスプレイパネルの量産は2006年から、2010年からは昆山にてAM有機ELディスプレイパネルのパイロットラインを稼動させている。2012年には清華大学、江蘇省昆山市とAM有機ELディスプレイパネル事業化戦略協力について締結しており、補助金投資額は150億元となっている。それをもとに、5.5世代の量産ライン工場が建設され、2014年下半期にも稼動させる予定だ。さらに、量産ラインに加えAM有機ELイノベーションリサーチプラットフォームの建設についても協力をする。有機EL照明については2012年5月に80mm角のパネルを23片使った有機EL吊灯、灯具などを発表しているが、有機EL照明用パネル量産の発表はまだ無い。

※1.AM(アクティブ・マトリックス)有機ELディスプレイパネルとPM(パッシブ・マトリックス)有機ELディスプレイパネルはそれぞれ有機ELの駆動方式が違う。AM駆動は主に大型パネル製造用に採用され、構造が複雑である。PM駆動は構造が単純だが大型化が難しく、小型用市場で利用されている。有機EL照明の話を進めるにあたり、有機ELディスプレイパネルの研究開発の流れについての説明が欠かせないため文中では触れている。

 2013年10月に照明用パネルの量産を開始したのがFOL社だ。米Eastman Kodak社で有機EL材料の研究を手掛けていた王錦山博士と田元生博士および国内企業家である呉暁明氏他3名により、2010年11月29日、資本金1億元にて設立された。同社は中国で唯一の有機EL照明製造専業メーカーである。投資は第1期、2期計画をあわせて7.8億元に上る。敷地面積は16,675㎡、工場は13,000㎡、クリーンルームは2,200㎡である。その他4,500㎡の材料研究、測定、設計および工程実験室が設置されている。同社は2013年6月に中国広州で行われた「広州国際照明展」では寸法100mm×50mmで発光効率40lm/Wの有機EL照明モジュールなどを出展した。価格は200元に設定し、同モデルは同年7月から販売開始している。他サイズとして100mm×100mmのものもある。現在の製造ラインは第2世代(パネルサイズ:370×470mm)だが、同社副社長兼研究開発センター常務副主任の 張建新博士は「今後量産が進むにつれ、第5世代までの量産ライン増設を行いたい」とした。なお、現在王錦山博士は同社を離れており、田元生博士がFounder兼CTOとして、同社を牽引している。

第一有機光電有限公司(FOL社)の正面玄関(撮影:Granage LLP)

同社副社長兼研究開発センター常務副主任 の張建新博士(撮影:Granage LLP)

FOL社ショールーム。100mm×50 mmの有機EL照明パネルを様々な形に並べたデザイン。(撮影:Granage LLP)

中国政府の固体照明(SSL)市場への期待

 中国政府は省エネ政策を重視しており、第12次5カ年計画の期間(十二五期間、2011年~2015年)に固体照明(SSL)市場を4500億元にまで拡大させたい考えで、政府は省エネ環境製品に対して積極的に補助を行っている。そのため、国家半導体照明工程研究開発と産業連盟(CSA)によると2013年のLED市場予測は2,500億元規模まで拡大が進むと試算している。さらに今後10年で200億㎡規模の新築物件建設が進むと予想され、新築物件へのLED照明導入が期待されている。もちろん、政府としては有機EL照明の導入も進めたい意向である。そのため今後、有機EL照明分野にも政府支援が活発になると予想される。有機EL照明専業メーカーであるFOL社では新築物件の導入に加え、特殊建築物(博物館、美術館など)、軍用照明、医療照明、ヘルスケア照明などへの利用を期待しているという。

有機EL(ディスプレイパネルおよび照明)技術領域の研究に対する政府支援

 中国ではこれまでに有機EL分野(ディスプレイパネルおよび照明)に対して様々な支援を行ってきた。研究対象の中心は有機ELディスプレイパネルであったが、最近では照明分野への展開に向けて支援を広げている。これまで、有機EL基礎研究の方面では「国家重点基礎研究発展計画(973計画)」、「有機/高有機EL分子発光材料重大基礎問題の研究」、「有機/高分子フラットディスプレイ材料の基礎研究」などの有機EL技術の基礎問題の解決のために力を注いでいる。また、有機EL技術研究方面では第9次5カ年計画の期間(九五期間、1996年~2000年)に863計画(*2)に組み込まれている。

 近年のサポートについて年代を追うと、2007年末には国家発展改革委員会で「新型フラットパネルディスプレイ産業化特定プロジェクトの通知」で再度有機EL研究を産業技術サポート対象に取り入れた。さらに、第10次5カ年計画の期間(十五期間、2001年~2005年)では「ハイビジョンフラットパネルディスプレイ項目」の技術の取り入れの重点項目としてさらに研究が重ねられた。第11次5カ年計画の期間(十一五期間、2006年~2010年)には「九五期間」に引き続き863計画の有機ELの産業化項目の継続サポートしている。2011年から始まった「十二五期間」に国家はさらに有機EL産業拡大を促進するなど、様々な支援を行っている。

※2.863計画とは、「高技術研究発展計画("863"計画)要綱」。中国政府自らが研究を進める計画の一つ。1986年3月に発表されたのでこのように呼ばれる。ハイテク分野の強化と競争力強化を進める。

 中国では1991年から有機EL技術領域の研究を開始し、現在では全国で蘇州大学、華南理工大学、清華大学、南京郵電大学、北京大学、中国科学院理化技術研究所、中国科学院長春応用化学研究所、中国科学院化学研究所、吉林大学、武漢大学、香港都市大学などの大学校や研究所で有機EL技術の研究が展開されている。

 中国では有機EL照明分野はまだ立ち上がったばかりであるが、ディスプレイパネル分野では活発な動きを見せている。2011年6月2日に国内有機EL企業関連企業11社が参加し「中国有機EL産業連盟」を広東省の恵州に設置した。2012年末には23社となっている。Tech &Biz社の北原洋明氏によると「ディスプレイパネルメーカー、材料メーカー、装置メーカー、セットメーカーなどが参画する非営利的な全国組織である。中国の有機EL産業の発展戦略と課題の研究、産業チェーン、特許の保護と共有、標準化の研究と制定、情報収集と整理などに重点的に取り組み、企業の発展のために指導し、政府の政策に諮問することを役目としている」という。

 このように活発な動きを見せている中国では、2014年に有機ELディスプレイパネル量産を予定する企業として、京東方科技集団(BOE:5.5世代)、昆山国顕光電(5.5世代)、厦門天馬微電子(TIANMA:5.5世代)、上海天馬微電子有限公司(TIANMA:4.5世代)、上海 和輝光電(4.5世代)、河南激藍科技(4.5世代)、佛山彩虹(IRICO;4.5世代)の7社があげられる。

 北原氏によると「ディスプレイ応用は限界があり、一部は照明にも転用されるのではないか」という。どちらにも転用が利くラインのため、原価は専業メーカーに比べ優位性があるのではと考えられる。そのため、中国の有機ELディスプレイパネル製造企業の動きに注目したい。

 有機EL照明に関して言えば、中国科学技術部が主導する「半導体照明(solid state lighting:SSL)プロジェクト」において、新材料技術領域の重大プロジェクトとして有機EL照明材料の開発項目が組み込まれている。「十一五期間」における計画の1つである「半導体照明の産業化技術開発」計画が打ち出され、2012年7月科技部発布「半導体照明科学技術発展"十二五"特定プロジェクト計画」においても「有機EL照明光源の開発」プロジェクトで有機ELのキー技術の開発についてさらにサポートを行う。しかしながら、材料分野では日本や米国の企業のように国際的に通じる企業がいまだ1社も無い状態だ。そのため有機EL産業におけるサプライチェーンの川上分野産業の育成が中国では課題となっている。さらには、業界標準などの整備も今後課題となってくる。そのため中国では、今後有機EL用材料の開発にさらなる力を注ぎ、政府もサポートを強化すると考えられる。その他の課題としても有機EL駆動用ICの設計と生産など、克服すべき問題は数々あり今後更なる投資が行われる予定である。

日本企業の動向に注目する中国

 中国では現在、LED照明産業とは違い、有機EL照明分野では特許と技術力が障壁となり、限られた企業の参入にとどまっている。LED照明分野では多くの中国企業が参入したが、有機EL照明産業はそうは行かないようだ。仮に有機ELディスプレイ企業らが照明分野に打って出たとしても把握できるほどの企業数である。それに対し、日本では既に製造業でELテクノ、エイソンテクノロジー、NECライティング、カネカ、コニカミノルタ、東芝、日本精機、パナソニック、パイオニア、日立製作所、三菱化学、ルミオテックなどが名を連ね、多くの企業が参入している。照明器具メーカーの採用事例としても、2013年3月5日~8日に東京で開催された「ライティング・フェア2013」では確認しただけでもパナソニックや東芝、オーデリック、コイズミ照明、DNライティング、三菱電機照明、山田照明などが有機ELパネルを採用した照明器具を展示していたことが確認できている。日本はこれほどに有機EL照明が盛んな国だといえる。
 このように盛んな理由として、山形大学や九州大学などに代表されるように基礎技術研究の充実や材料企業、装置企業の多くが日本企業であることからであろう。そのため日本では多くの企業が参入し、他の国に比べ技術や販売面、製品展開において先に進んだ。

 中国では前述のように有機EL照明産業の川上産業はLED照明産業ほどに進んでいない。そのため日本企業が積み重ねてきたノウハウが中国では必要とされているだろう。そのため、中国で行われるカンファレンスなどで、日本企業が講演をする時には、多くの聴衆が耳を傾ける。中国において日本企業が活躍するには、資金回収、商習慣などを乗り越えどのようにこのノウハウを提供するかが、これまで同様に問題だ。これから有機EL照明産業を大きく育てていこうとする中国政府の意図を考えると、今後潤沢な補助金が動く。補助金がこれから期待できる中国において日本はもっと積極的な戦略を見せるべきである。そのため、中国がいまだ苦手とする事業において、ロイヤリティ売りや、半導体産業における台湾のように日本が有機デバイスのOEM産業の地として活躍する方法はある。中国の有機EL照明分野で積極的姿勢を見せる企業の例として、蘭Philips社が挙げられ、中国での展開を狙い、各大学や企業と共同して研究を積極的に行っており、参考になるだろう。

韓国メーカーの台頭

 韓国LG 化学社が日本市場で動きを活発化させている。直販にあわせ日本国内の販売代理店を通じて有機EL照明パネルの販売が始まっている。既に日本企業各社と価格交渉を進めており、パネル価格(電源を含まず)は10cm角、発光効率55lm/W(4,000K)をリーズナブルな値段で販売しているという。また、同社は米Universal Display Corporation(UDC)社と有機ELディスプレイパネルおよび有機EL照明用の材料開発に向け関係を築いている。LG化学社の電子輸送材料、正孔注入材料技術と、UDC社の燐光有機ELエミッタ材料技術を融合させるなど技術面でも日本企業を猛追する。さらには、同社は中国市場でも動きを見せる。中国の大手液晶メーカーの有機EL照明市場推進担当者によると、2014年3月をめどに販売する有機EL照明器具製品に搭載する有機EL照明パネルを、ほぼLG化学社のものを採用することに決めたという。

有機EL照明の今後の課題

 LED照明の技術進化はここ数年劇的なものだった。現在では研究レベルでも発光効率で160lm/Wレベルのチップが既にできており、多くの企業における量産品も110lm/Wレベルまできている。それに比べ市場で販売される有機EL照明パネルは、1万時間の寿命を基準とすると40lm/Wも出れば性能の良い製品としていいだろう。2014年には更なる高効率品を市場に出したいという企業も存在する。
 VISIONOX社の資料によると、価格比較でLED照明が25US$/klm(*3)に対して有機EL照明は500US$/klmと格差は大きい。この価格について2015年には50US$/klmにまで下げるための施策が必要だとし、基板価格については20分の1、有機材料を13分の1に縮小することを目標としている。

※3.klm=1000lm

有機EL照明の活きる道

 これまでにも述べてきたように、日本では照明器具の取り扱い企業が増加するなど有機EL照明産業が盛んになったように見えるが、市場化はこれからである。各国同様だが、LED照明との差別化や価格の問題は依然、課題として取り上げられる。それに加え、認知率、アプリケーション側への訴求など有機EL独特の課題や標準化整備も早急に必要だ。

 課題の一つとして上がる認知率については、市場拡大の大きな障害になっているのではないか、と有機EL業界関係者と意見交換をする機会があった。LED照明は一般消費者の中でも認知度は大きく伸びてきたが、有機EL照明の生活シーンにおける認知度はほぼ皆無ではないかと痛感させられる。LEDと有機ELは何が違うのか?一般消費者に問いかけるのは難しいと感じる場面も多い。確かに有機ELは「OLED」と表現されるように「LED」に「O」がついただけのように受け取られる。また、形状も同じようなものがあるため、その差を一般の人が感じることは難しいのではないか。

 そのためユーザー側(実際の使用者、製品採用者、デベロッパー)の理解とファンを増やすことも普及への一歩と捕らえる企業もある。デザイナーへの訴求に加え、ソリューション側にこのような有機ELの特長・使い方を理解してもらいながらファンを作らない限り、既存光源の代替品としてでしか認知されず、LED照明が普及した市場でコスト競争は避けられず、有機EL照明の活きる道は険しいものとなるであろう。

 そのような中で、有機ELパネル製造専業メーカーの一部の企業では照明の使い方の新たな動きに期待している。「メイカーズ(MAKERS)」と呼ばれる存在だ。いわゆるひとりメーカーである。メイカーズとして代表的な存在はビーサイズ株式会社の八木啓太氏だ。同氏は業界をまたぎ活躍の場を広げている、B to Cビジネスを中心に注目される存在だ。LEDデスクライト「STROKE」は同社の代表的な製品だ。同氏は有機EL照明について「太陽光や月光の発光に近い広がりでやわらかい面発光が出来ることが特徴で、デバイスそのものが光るため今まで設置できなかったところへの使用が期待できるだろう」と語る。また「価格面ではまだLED照明とは大きく差があるが、もう少し近づけば、価格よりもデザインを気に入って購入する顧客層へ訴求できるのではないか」とのこと。同社ではまだ有機EL照明パネルを使用した製品はないが、期待できるデバイスであることは間違いないようだ。

 一方、大手照明企業はLED照明とともに有機EL照明を展開しているが、照明としてLED照明が商売の中心として不動の地位を築いている。価格面や生産量の面ですでに消費者に受け入れられている商品であるため、大手企業がLEDに代わるものとして有機EL照明を普及展開させることは現段階では難しいように感じる。そのため、有機EL照明パネル・メーカーは八木氏のように独特なデザイン性を重視した小ロット高付加価値製品を作り出す「メイカーズ」に市場創出期の立役者として期待しているようだ。売り手側は個人の意思決定で商品化を迅速に進めることができ、また、買い手側も個人の嗜好に合ったものを選ぶことができる為だ。買い手は価格よりもデザイン性を購入の決め手とする。昨今の3Dプリンタ等製造分野以外の周辺技術の普及は、このようなメイカーズによる市場創出のハードルを下げる一助となっており、様々な個人や他の業種からの参入企業拡大の可能性があるのではないかと考える。

 また、もうひとつの普及のきっかけとして「適光適所」概念の浸透があげられる。ある照明メーカースタッフは「省エネを達成しながら快適な照明空間が実現できる、いわゆる『タスク&アンビエント照明空間』の導入は着実に進んでおり、『適光適所(=必要な場所に必要な量の光があればよい) 』の考え方がさらに普及する」とにらんでいる。東日本大震災の影響による電力供給不安から、社会全体で今まで以上に節電が求められるようになっており、社会全体のエネルギー消費の約20%を占めると言われている照明においては、LED照明が節電・省エネの解決策として爆発的に導入されるきっかけとなった。しかし既存の照明器具を間引いたり、そもそも照明を付けない等の「我慢の省エネ」が行われているケースも多く見受けられる。

 タスクライトについては、作業をする位置の近くに設置されるケースが多いため、グレアやブルーライトの問題等、生体の安全に配慮した光源への要求が高まるものと思われる。アンビエント照明については、昼光の活用も進みつつあるため、昼光をセンシングし、光源の照度を制御するシステムとの連動性が必須となるだろう。またタスク&アンビエント照明空間については、空間全体に必ずしも絶対的な照度を必要としない為、場所や用途、つまり欲しい光の量・質に応じてLEDと有機EL等、光源を使い分ける必要がでてくるのではないかと思われる。その場合も、照明器具単体にとらわれず、空間全体を考えた照明システムの提案・構築が必要となる。

 このように、BtoC分野ではLED照明と違ったアプローチから攻めるとともに、BtoB分野でも特徴的な普及が期待される。昨年はナースライトのような医療空間での適用や美容業界での使用も関心を集めた。そして今後さらに期待されるのは、有機EL照明の特徴の一つである「軽い」部分をいかした飛行機の機体への導入だ。ご存知のとおり飛行機の開発においては常に機体の軽量化を求められる。既に一部の飛行機ではLED照明が採用されているが、軽量化に向けて既存照明からLED照明を飛び越えて有機EL照明の採用が進む可能性も高いのではないだろうか。

 有機EL照明分野は、認知度の向上と各社各様な大きさや仕様等の規格・標準の整備、低コスト化、有機EL照明の特徴を最大限に活かす製品作りなど企業一丸となって更なる努力が必要だが、早期に市場を立ち上げる為には中国や韓国のように政府からの支援も今以上に期待をしたいところである。LED照明がエコポイントで安く手に入ることにより、普及が進み価格低下に繋がったことが思い出される。有機EL照明市場が拡大するためのキープロダクト創出や、ブレークポイントの早期到来にも期待したい。そのため、場合によっては国境をまたいだアライアンスの必要性も議論されるべきではないだろうか。

 LED照明と有機EL照明は確かに同じ照明分野だが、有機EL照明はLED照明とは違う産業構造を持つ。このことを理解した上で、日本の政府による技術開発支援と市場普及に向けた後押しが欠かせない。また、企業側はLED照明と有機EL照明との住み分けをさらに一歩進めることにより、共存の道を探る必要もあるのではないか。その上で、中韓での有機EL照明市場が大きくなる前に手を打つ必要がある。LED照明分野における標準化や中韓市場での製品販売で苦労をしている日本だが、有機EL照明ではその点を踏まえ、国際標準化に向けたリーダーシップなどを日本が発揮することを期待したい。日本が一歩先を行く有機EL照明産業の、国際市場での活躍を願うばかりである。

Asian Lighting Report
執筆者:石田のり子


ソフトウェア企業、半導体マーケティング企業でマーケティング担当後、2006年韓国FPD調査会社Displaybank日本支社を立ち上げ、アナリストとして調査を担当。2007年にGranageLLP(グラナージュ)を設立。2008年には、日経BP社FPD Internationalのイベントプロデューサを勤める。現在、FPD、LED照明、太陽電池、二次電池エリアでのリサーチ業務、コンサルティング、レポート作成、ビジネスマッチング、イベントプロデュースなどを行う。日経BP社発行誌「日経エレクトロニクス」「Green Device」「LED2011」、韓国LED普及協会誌への寄稿や日本国内、台湾、中国などでLED照明関連の講演を行う。

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