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連載コラム

"Emotional & Seamless" Light+Building 2012 レポート 前編

[ 2012年7月12日 ]

2012年4月15日~4月20日にドイツのフランクフルトにある国際展示場フランクフルトメッセで2年に一度開催される世界最大の照明見本市「Light+Building 2012」が盛大に行われました。今回はその会場の様子をレポートしたいと思います。Light+Buildingでは照明器具のトレンドや、照明業界の動向を世界規模で知る事ができる貴重な機会である為、開催期間中は世界中から照明関係者がフランクフルトに集まり、街全体が盛り上がりをみせます。尚、2004年、2006年、2008年、2010年に開催されたLight+Buildingにつきましては既に当サイトのコラムにて照明デザイナーの落合勉さんよりご紹介頂いております。これまでの世界における照明業界の流れやLight+Buildingの雰囲気を掴んでいただけますと、今回のレポートも、より分かり易いかと思いますので是非ご覧下さい。

Light+Building2004
http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/687.html
http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/688.html
http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/689.html

Light+Building2006
http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/699.html
http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/700.html

Light+Building2008
http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/24061.html

Light+Building2010
http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/62586.html
http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/65914.html

日本でもライティング・フェアやLED Next Stageなどの大規模な照明展示会が開催されていますが、世界50各国から2352社が出展するLight+Buildingの規模はまさに規格外で、オープンからクローズまで会場内を歩き回って、6日間の会期中に全てのブースを見られるかどうか?といった規模の大きさです。それだけの規模ですから見る側の方も自分の興味のある分野や照明メーカー等、要点を絞って会場を回らなければすぐに一日が終わってしまいます。効率よく会場を回るためにはまず会場のマップを把握し、どこに何があるか予習しておくことが重要です。

図1 会場となるフランクフルトメッセのマップ
敷地面積:578,000㎡、利用可能なホール面積:345,697㎡というスケール。
日本最大の国際展示場である東京ビックサイトは敷地面積:243,419㎡、総展示面積:80,660㎡である。
数字で比較するとその規模の大きさに改めて驚く。

来場者の為に敷地内をバスが巡回しているほど広大なフランクフルトメッセは、大きく分けて12のホールからなります。主に照明関係者はForum0というホール、ホール1~6、ホール10等が主要なチェックポイントです。例年Forum0とそれに隣接するホール2は、ヨーロッパを代表する照明メーカーであるPHILIPS、OSRAM、ZUMTOBEL等が他を圧倒する巨大なブースを構え、会場の中でも最も賑わいを見せるエリアです。ホール1はペンダント、デスクスタンド、フロアスタンドなどインテリアデザイン色の強い意匠的な照明器具を中心に展示しています。(ダウンライト、スポットライト等も展示されています。)ホール3は世界的にも知られているヨーロッパの照明メーカーを中心とした、主要な照明メーカーが集まり、施設向けの照明が展示されています。ホール4は施設照明を取り扱う照明メーカーの展示に加え、ソケットや電源、LEDチップ、LEDパッケージを取り扱う部品メーカー等の展示も見る事ができます。ホール5,6はシャンデリアのようなクラッシックでデコラティブな照明器具の展示、ポール照明といった屋外用の大きな照明器具を展示しているエリアです。さらにホール10では日本のライティング・フェアやLED Next stageでも出展数が増加している中国を中心としたアジア勢の照明メーカーが集まって出展しています。

図2 会場であるフランクフルトメッセの様子

人によって注目するポイントは様々だと思いますが、私のように建築照明を生業としている者にとっては、Forum0、ホール2~4あたりが特に集中的に見るべきエリアと言えるでしょう。

これだけの規模の展示会ですからすべての照明がLEDという訳ではありませんが、会場の9割以上がLED照明で構成されており、世界的にみても本格的なLED時代が到来した事を感じました。一般照明のLED化については既に2008年のLight+Buildingから本格的な動きが見え始めたと感じていましたが、明るさ、光の質(色温度や演色性)、ともにハロゲンランプ、蛍光灯、メタルハライドランプ等の従来光源と比較すると一歩及ばずという印象でしたが、今回のLight+Buildingで展示されているLED照明の数々は明るさ、光の質ともに従来光源にとって代わる事が十分に可能だと感じさせるものが非常に多く見られました。こういったLED照明のクオリティの向上は、既にこれまでのコラムで紹介している通り、日本のライティング・フェアやLED Next stageでも顕著に見られますが、照明の本場ヨーロッパではグレアレスや演色性、色温度にこだわった商品群が日本に比べ非常に充実しています。また日本ではまだそれほど充実していない屋外用のLED照明のバリエーションが多いという印象も受けました。その他で特に顕著に感じた事は各社の調光・調色タイプのLED照明、それに対応したオリジナルのコントローラーとソフトウェアが非常に充実していたという事です。単なる調光ではなく、LEDだからこそできる、細やかな制御や動き、RGBのカラー変化だけではなく、白色から電球色といったような色温度の変化等、LED照明の進化によって光のコントロールの概念も次のステージへ移行しています。それに合わせてこれまではルートロンに代表されるような専門メーカーの調光器を使用していた流れから、各メーカーが自社のLED照明に合わせてオリジナルの調光器(コントローラー)や制御ソフトを展開し、LED照明との組み合わせでプレゼンテーションを行っているメーカーが多く見られました。また、コンパクトでスリムなライン照明、トリムレス照明に代表されるような建築と一体化した照明器具の存在が非常に目立っていたいように思います。

詳細については後程まとめるとして、会場のレポートに入りたいと思うのですが、何度も申し上げているように会場が非常に大きいため、どのようにまとめるのが分かりやすいか本当に頭が痛い問題です。散々悩みましたが私が普段携わっている建築照明の視点から見て気になったブースをホール別にまとめ、写真を中心にレポートするというスタイルで進めたいと思います。また、レポートのボリュームが多く、一度に全ての内容をお伝えする事は難しいと思いますので今回のレポートは前編、後編の2回に分けて報告します。

Light+Buildingの会期中はLuminaleというライトアップイベントがフランクフルトの至るところで開催されており、このインベント楽しみにしている参加者がたくさんいます。もちろん私もその一人です。このLuminaleについても後編のレポートで紹介したいと思います。

※下記のレポートでホールやメーカー名に記載されている( )内の表記や番号は、会場で配布されたパンフレットに記載されているホールの名称や、メーカーのブース配置番号になります。

Forum0 PHILIPS 
Forum0は巨大なホールにPHILIPSブースのみという特徴的なエリアです。PHILIPSはオランダのメーカーで照明業界の人間であればもちろんの事、世界中の誰もが一度は必ずその名前を聞いた事があるメジャーなメーカーだと思います。通常は世界で名の知れた照明メーカーでも、何十というブースがひしめくホールの中の一角に自社のブースを構えるわけですから、ホール一つを一社で占有するPHILIPSという企業の規模の大きさ、そしてヨーロッパや世界の照明業界への影響力の大きさを実感します。

図3 巨大なPHILIPSのブース

また先にも紹介した通りPHILIPSのブースがあるForum0はホール2(Halle 2.0)に直結しており、そこにはPHILIPSに負けず劣らず巨大なOSRAM、ZUMTOBELのブースがあります。これだけの規模のメーカーが揃うForum0とホール2(Halle 2.0)は単に照明器具を見るだけでなく、世界のトレンドになり得るキーワードが点在しているため、その情報を求めて多くの人が集まってくるのです。

ブース中央には巨大な有機ELのオブジェが設置されています。以前にもコラムで紹介しましたがランプメーカーでもあるPHILIPSはLEDチップやパッケージだけでなく、LumiBladeと呼ばれる有機ELモジュールも取り扱っています。中央のオブジェはそのLumiBladeを贅沢に使った光のオブジェです。



図4~6 LumiBladeをつかった有機ELのオブジェ 発光面が鏡面仕上げの為、
消灯時も周囲の景色が映り込み多様な表情を作り出す。

図7  LumiBladeを使ったもう一つの有機ELのオブジェ
円筒形の造形物の中にランダムに設置されたLumiBladeがランダムに点滅する。

ただ光に動きがあるだけでなく、オブジェ自体も有機的な動きをする仕掛けで、定期的にオペレーションされているオブジェはまるで生き物のような動きをみせます。照明器具としての明るさは?というとLED照明に比べるともう1歩というところですが、オブジェとしては有機ELの薄さを活かした軽快で人目を引くものであったと思います。有機ELのブースでは様々なタイプのモジュールが展示され、有機ELが徐々に一般照明の分野に浸透しつつあることを感じさせます。


図8~11  LumiBladeのモジュールバリエーション
一般的な正方形、4×4の小型正方形、長方形など様々なモジュール展開がある。
そのほかにも超薄型や透過する素材にも対応可能。

2008年頃よりLEDが本格的に一般照明の分野に進出し始めてから、PHILIPS、OSRAM、ZUMTOBEL等の大規模なブースでは、OFFICE、FASHION(RETAIL)、INDUSTRY、OUTDOORといったようにブースに空間の特性を持たせて、照明器具はもちろんの事、空間の演出や照明プランの提案を行っています。もちろん全ての照明はLEDによって提案されています。以前は例えばオフィスならば蛍光灯、ショップやレストランならハロゲンランプ、工場ならばメタルハライドランプといったように空間ごとに光源の特性を生かした使い分けができていたのですが、LEDに移行する事になると全ての空間がLEDになってしまう訳ですから、メーカーはそれぞれの空間に合わせたLEDを開発し、その使い方を提案しているのだと思います。



図12、13、14 OFFICE空間を想定したブース
緩やかに色や表情が変化する窓のような光壁が印象的


図15、16 Industryをテーマにしたブース。
工場など想定した吊り下げ式のLED照明の提案



図17~19 Fashionをテーマにしたブース
店舗用の照明らしく、明るさとCRI(Color Rendering Index)90以上の演色性をアピールしている。


図20、21 Outdoor用の照明を展示したブース
ハイパワーのLEDポール照明が展示される。

またPHILIPSと言えばコイズミ照明や大光電機などのLEDダウンライトに採用されているFortimo LEDモジュールが広く知られています。会場のPHILIPSブースでは様々なバリエーションのFortimoモジュールを見る事ができます。

図22 Fortimo LED DLMモジュールの開発の歴史
2008年は52lm/wだった効率が2012年には約倍の105lm/wに向上した。
ダウンライト等で広く採用されているDLMモジュールの高効率化により
同社の看板商品であったCDMランプ並みの光量が得られる。

図23 日本でも知られているFortimo LED TDLM Twistableモジュール
1100lmタイプ(左)、2000lm(右)タイプともに約10~25%ほど効率が向上した。

図24 小型のFortimo LED SLMモジュール
少し大きいという印象のあったDLMモジュールやTwistableモジュールに比べ小型面発光タイプのモジュール。
小型で高効率のLED照明の展開が期待される。
左が3000lmタイプ(115lm/w)、右が5000lm(110lm/w)とどちらも優れた省エネ性を誇る。

図25 Fortimo LED HBMt モジュール
4000lm、6000lmの大光束を持つFortimo LED HBMtモジュール。
大型の投光器やポール照明等に適していると思われる。


図26,27 蛍光灯のような使い方ができるFortimo LED Line luminaire
高効率で知られるT5管蛍光灯を超える135lm/wの驚異的な効率。

図28 直管形蛍光灯タイプのMASTER LED TUBE
コチラも蛍光灯を超える120lm/wの高効率。

図29 LED電球タイプのMASTER LED bulb、MASTER LED spotシリーズ
ランプ製造メーカーだけあって白熱電球やハロゲンランプの代替用LEDの品揃えも豊富である。

図30 様々なメーカーの調光器に対応している事をアピールするプレゼンテーション



図31 高効率化、高演色化されたCDMシリーズ
LEDだけでなく、世界中で使用されているセラミックメタルハライドランプ、
CDMシリーズもさらに高効率化、高演色化が図られている。
右が従来の70wタイプ、左が改良された50wタイプ。
ほぼ同等の明るさで肌の色味も美しく見える。


図32、33 PHILIPSのLEDコントローラー
色温度可変タイプのLED照明に対応したコントローラー(左)、
RGBタイプのLED照明に対応したコントローラー(右)。シンプルで直感的に操作する事ができる。

とにかくLEDモジュール、LEDランプのバリエーションの豊富さ、用途毎に整理されたプレゼンテーションには圧倒されました。今後これらのLEDモジュールを採用した器具が日本でも増えていく事になると思われます。

ホール2(Halle 2.0)

1.ZUMTOBEL(Halle 2.0 B30,B31)
ホール2で印象に残ったのはZUNTOBELのブースです。ZUMTOBELはオーストリアのメーカーで、ヨーロッパの照明メーカーの中でも中心的な存在の一つです。日本ではコイズミ照明がZUMTOBELの製品を取り扱っています。

建築的な造形を持つブースにはRGBのLED光壁が作り込まれていて、単純な色変化でなく色味がにじんだような表現や、文字、映像など時間や音楽に合わせて様々な光と情報を映しだすメディアウォールとなっています。




図34~39 RGBのLED光壁で演出されたZUMTOBELのブース
単純に映像のみを映し出すLEDスクリーンとは異なり、
照明器具としてパネル化・ユニット化している事で光壁して使用することはもちろん、
映像も柔らかいフィルターが掛かったようなメッセージ性のあるものへと変化する。
会場は常にたくさんの人で賑わっていた。

ZUMTOBELのHPに掲載されているブース動画
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=x9FBG0viJ4o#!

ZUMTOBELのブースもPHILIPSと同様に、FAÇADE、OFFICE、INDUSTRY、RETAIL、HOTEL、ART AND CULTURE、HEALTH AND CAREといったように空間に合わせた光の提案を行っています。特にZUMTOBELブースで気になったのは調光・調色可能なLEDダウンライトです。シャープのZENIGATAというLEDモジュールを採用しており、15%~100%の調光、2700K~6500Kの調色が可能です。ZUMTOBELのダウンライトは基本的にCOB(Chip on boardといわれる面発光タイプのLEDパッケージ)+反射鏡の組み合わせで光学制御を行っており、特定のメーカーのパッケージやモジュールを使用するのではなく、器具のコンセプトに合わせて様々なメーカーから最適なLEDを選定しているとの事です。



図40、41 ZENIGATAモジュールが搭載されたLEDダウンライト「PANOS INFINITY」
ウォールウォッシャーも用意されている点が嬉しい。
16w、23w、27w等の展開があり4m~5m程度の高天井でも問題なく使用できる。


図42~45 「PANOS INFINITY」をコントローラーで調色している様子。



図46~48 ZENIGATAモジュールを採用した調光・調色可能なスポットライト「ARCOS」
器具単体調光・調色が可能な為、特に美術館・博物館照明での展開が期待される。
日本でもこのようなコンセプトの器具が増える事を希望する。


図49、50 HOTELエリアに展示されていたLEDのエフェクトスポットライト「APHRODITE」
波紋のような美しい模様をカラーライティングと共に壁面に映し出す器具。
癒しを演出するホテルのロビー空間にぴったりの器具。
器具をできるだけ見せないように設置する手法が課題である。


図51、52 コーニス照明のように扱えるLEDライン照明
「SLOTLIGHT LED」
トリムレスで設置できる為、照明器具の印象がなく、建築化照明のような仕上がりになる。

2.OSRAM(Halle 2.0 B10,B50)
日本でもランプメーカーとして広く認知されているOSRAMもヨーロッパを代表する照明メーカーの一つでホール2に巨大なブースを構えています。PHILIPSと同様にLEDモジュール、LEDランプなどを中心に展示しています。有機ELの展示なども見られました。またグループにLEDのカラー演出を得意とするTRAXONが加わった事でメディアウォールのような展示も多く見られました。



図53、54、55 OSRAMのブース
ブースは大きく2つに分かれていて、空間ごとに照明のあり方を提案したコンセプト重視のブースと、
LEDランプ、LEDモジュール、コントローラー、制御システムなどを展示したテクニカルなブースという構成になっている。



図56、57、58 様々な電球形LEDやLEDモジュール
日本でも良く知られているPARATHOMシリーズをはじめ様々な機種がある。


図59、60 調光用の電源、コントローラー、制御システムなども豊富に展開されている。


図61 海外ではあまり見かける事が少ないT5タイプのシームレスランプ


図62、63 OSRAMの有機ELモジュール「ORBEOS」を使った光のオブジェ(図62)と
有機ELシャンデリアのコンセプトモデル(図63)
正方形、長方形、丸形などのモジュールが展開されている。


図64 OSRAMグループに加わった屋外照明に強いSITECOのLEDポール照明


図65 OSRAMグループに加わったTRAXONのブース


図66~69 TRAXONのRGBタイプのLED照明による演出のパフォーマンス


図70 ガラスにLEDのドット照明が輝くGlassiled Motion


図71、72 優れた演出機能をもつe:cueのコントローラー
TRAXONとビジネスパートナーであるe:cueのコントローラーは、
アドレスを持つRGBタイプのLED照明と相性がよく、
一般的に我々が使用している画像や動画フォーマットなども容易に照明演出に変換できる。

世界がLED照明に移行し始めてからPHILIPSがLEDの屋外照明の分野にも力を注いだり、LEDのカラー演出照明のトップブランドであったColor Kineticsを買収しLEDの演出面を強化したように、OSRAMもTRAXON+e:cueやSITECOといった企業をグループに加える事により、屋外照明やLED照明演出や制御といった分野を強化しています。企業合併や買収が日常的に行われる欧米ならではのスタイルで、世界の流れがLED照明に移行してからの照明業界の動向のめまぐるしさとスケールの大きさに驚くばかりです。

ホール3(Halle 3.0,3.1)

ホール3は世界の主要な照明メーカー(主にヨーロッパを中心とした)が集まっています。画像を中心に気になった物を紹介します。

1. ERCO(Halle 3.0 A11)
ERCOは高い光学性能をもつハイクオリティな照明器具で日本でも良く知られるドイツの照明メーカーです。今回の展示の大部分がLED照明でした。現在、LED照明の配光制御は反射鏡制御とレンズ制御に分かれており、ERCOはレンズによって配光制御を行っています。しかし、優れた光学性能で定評のあるERCOだけに、ただのレンズ制御ではありません。

ERCOオリジナルの基盤に取り付けられたLEDにコリメイティングレンズ(Collimating lens)と呼ばれるレンズを取り付け、LEDの配光を整えます。さらに器具側ではスフェロリットレンズと呼ばれるレンズでNarrow spot、Spot、Flood、Wide flood、Oval flood、Wallwashの6種類の配光を揃え、オリジナルLED基盤+コリメイティングレンズ+スフェロリットレンズの組み合わせで様々な配光を生み出します。レンズ制御を採用した事で器具の形状が変わっても同じ思想で配光制御できるというメリットがあります。


図73、74 ERCOのブース
他メーカーは毎回趣向を凝らしたデザインのブースを展開する中、
ERCOは「Tune the light」をテーマに毎回一貫したデザインのブースを出展しており、
そのこだわりはERCOの製品や企業姿勢をそのまま表現しているようで好感が持てる。
尚、今回のERCOブースの照明は、100%LEDで、7.62w/㎡で実現している。
これは非常に省エネ性の高い数値である。


図75 ERCOオリジナルのLED基盤


図76 LED基盤にコリメイティングレンズを装着した状態


図77、78 スフェロリットレンズを装着した器具(Light Boardシリーズ)
スフェロリットレンズにより様々な配光制御を行う。



図79~81 LED照明の配光データと実際の配光
配光データがプロジェクションされた壁面に実際のLED照明の光を当てて、配光データの正確さと、
レンズ制御によるLED照明の光学制御技術の高さを証明するプレゼンテーションが行われていた。
ウォールウォッシャー配光まで驚くほど正確にデータと実際の配光が一致する。



図82~84 統一されたレンズ制御の思想で展開される器具
Logotecシリーズ(図82)、Cantaxシリーズ(図83)、Optonシリーズ(図84)等、
様々な器具が同じ思想のもと展開されている。


図85、86 様々な配光パターンを持つ屋外用のLEDファサード用照明「Cylinder façade luminaires」
上下で異なる配光の組み合わせも面白い。


図87、88 ハイパワーな屋外用LED照明
LEDでは10°以下の狭角配光を持つ器具はそれ程多くないが、ERCOならではの配光制御技術で6°や7°といったLED投光器もラインアップしているBeamerシリーズ(図87)とPowercast Projectorシリーズ(図88)。

2.BEGA(Halle 3.0 C91,C95)
BEGAは屋外用の照明を得意とするメーカーとして世界的に知られるドイツのメーカーです。堅牢性のあるシンプルなデザインの器具が特徴です。今回の展示ではほぼ全ての器具がLEDであり、屋外用のLED照明のバリエーションが日本とは比較にならないほど多いことに驚きます。


図89 BEGAのブース



図90~92 様々なバリエーションが展開されているBEGAの屋外用LED照明


図93 コントロールシステムの提案
スポットライトやブラケットと一緒にポール照明も一括して制御可能なシステム。
自社の専用コントローラーとソフト(BEGA-PRO、BEGA-GVSなど)と組み合わせて制御を行う。


図94 水中でも使用可能な面発光タイプの照明
個人的に一番興味を持った器具が、この水中でも使用できるIP68の面発光タイプの地中埋め込みLED照明。
機会があれば海外のプロジェクトで是非使用してみたい。

3. Kreon(Halle 3.0 B61)
Kreonはベルギーの照明メーカーです。今回の展示ではコンパクトなLEDの特徴を活かしたミニマムなデザインの器具が多く見られました。


図95 Kreonのブース


図96 トリムレスタイプのユニバーサルダウンライト
施工精度が課題であるが、建築との一体感が美しい。


図97 ラインタイプのLEDウォールウォッシャー
鉛直面の明るさを重視する海外ならではのLEDの特徴を活かしたプロダクト。


図98、99 調光・調色が可能なシーリングライト(Tenno)とライン照明(Nuit)
それぞれの器具に2700K(1ドットあたり118lm CRI85)、3000K(1ドットあたり126lm CRI85)、4300K(1ドットあたり171lm CRI70)のLEDを内蔵し、
調光・調色を行っている。LEDは全て1ドットあたり1.425wという事なので、
かなり高効率のLED照明といえる。若干グレアは気になったものの、プロダクトとしての魅力は大きい。

4.Modular(Halle 3.0 B80)

Modularはオリジナリティあふれる器具デザインで日本の照明デザイナーや建築家にもファンが多いベルギーの照明メーカーです。日本にも代理店がありますので国内のプロジェクトでも使用することができます。


図100、101サーカスをテーマにしたModularのブース
ブースデザインでも他のブースとは一線を画す独特の世界観を持つ。


図102~105 シームレス蛍光灯を使用した器具
新しいプロダクトはそれ程多く見られなかったが、シームレス蛍光灯をつかったプロダクトが多く見られた。LED全盛の時代にあっても明るさ、経済性、メンテナンス性などを総合的に評価すると蛍光灯は非常に扱いやすい光源である。


図106 シームレスランプと小型のLEDスポットライトを組み合わせた埋め込みタイプのライン照明
全般照明とタスク照明を同時に確保でき、かつスリムであるため施設照明だけでなく、
住宅照明としての使用も充分可能。

5.XAL(Halle 3.0 D10)
XALはオーストリアの照明メーカーです。恥ずかしながら今回会場を訪れるまで私は知らなかったメーカーですが、非常に多くのプロダクトが展示されていて内容も濃いものでした。一見すると意匠的な器具が多く、インテリアデザイン色が強いような印象受けましたが、建築化照明を意識した器具なども多く見られ、非常に興味を持ったメーカーの一つです。



図107~109 ブラケットと間接照明をあわせたような器具
重ね合わせて使用するコンセプトが面白い。(図109)


図110 小型のトランスを採用し、細いスリットにも設置可能なLEDスポットライト「TIMO」


図111 W:25×H:41スリムな埋め込みタイプのLEDライン照明「FRAME」


図112 スリット内の小型LEDスポットやLEDライン照明を自由に動かす事ができるシステム「MOVE IT」
スリットのサイズに合わせて幅(または直径)45mmと幅(または直径)25mmの器具が展開されている。


図113 様々なバリエーションの押し出し材が豊富なライン照明器具を作る


図114 LEDライン照明のウォールウォッシャー

6.FLOS(Halle 3.1 A51)

FLOSは建築や照明の専門家ではなくても、広く世の中に知られているイタリアの照明メーカーです。今回の展示では照明器具というよりも建築と一体になった照明装置のような器具がたくさん展開され、新しいプロダクトの発想に非常に刺激を受けました。


図115、116 トリムレスのスリムなスリット照明
先に紹介したModularやXALでも同様のコンセプトの器具があるが、
FLOSのスリット照明はトリムレスにすることでスリットの存在感を極限まで抑える。
小型のスポットやライン照明はマグネットで取り付け可能で自由に移動する事ができる。


図117、118 トリムレスなスリットに間接照明を組み合わせたLIGHT CUT
トリムレスなスリットの内部に間接照明を加え、内部を発光させるプロダクト。
スポットライトも取り付け可能。


図119、120 LIGHT CUTをさらに進化させたようなWALL RUPTURE
岩肌のような内部仕上げを持つスリットの中からLEDの間接照明の光が漏れ出す。


図121 サインと建築化照明を一体化させたようなプロダクト「APPS」


図122、123 壁面に収納できるLEDスポットライト「FINDME」
使用されているLEDは9w、560lm、3000k、CRI80。
手のひらサイズであることを考慮すれば十分な光量を持っている。

7.BRICK IN THE WALL(Halle 3.1 B71)

BRICK IN THE WALLは建築と一体化したシンプルなデザインが特徴のベルギーのメーカーです。


図124  BRICK IN THE WALLのブース



図125~130 建築と一体化する照明器具
ライン照明、ダウンライト、アッパーライト、フットライトなどバリエーションが豊富。


図131、132 丸いボタンのような素材から光が漏れ出す壁面照明
クッションを連想させるような照明。

8.Artemide(Halle 3.1 E51)
Artemide(アルテミデ)はデザインと機能を両立させた器具で知られるイタリアのメーカーです。しかし今回の展示で一番目立っていたのは和のテイストを持つ照明でした。


図133  Artemideのブース



図134~137 ISSEY MIYAKE氏デザインの陰翳(IN-EI)シリーズ


図138、139 折り紙のように折りたたむ事ができる
日本の行灯のような陰翳の素材は和紙ではなく、ペットボトルの樹脂からできている。
光源にLEDを用い、素材はリサイクル樹脂を用いて環境に配慮し、
折りたたむことで持ち運びが楽になり、輸送コストも削減きる。
日本の行灯を最新の技術で現代版にアレンジしたECO行灯と言っても過言ではない。


図140、141 スタンドから取り外しができるLEDデスクスタンド「Mercury」


図142、143 凹凸のあるガラスのテスクチャーが光の模様となって現れるLEDブラケット

9.Viabizzuno(Halle 3.1 D71)
Viabizzunoはイタリアの照明メーカーです。照明器具のみならず、ブースデザイン、スタッフのユニフォーム、カタログ、グッズなどトータルでのデザインとブランディングが非常にうまいメーカーだと思います。Viabizzunoのブースを見ることがLight+Buildingの個人的な楽しみの一つです。ただ、今回は新しい器具の展示はそれ程多くなかったように思います。またViabizzunoはインテリア系の照明が集まるホール1にもブースを出展していたのでそちらの内容も合わせて報告します。


図144、145 巨大な本棚のようなデザインのブース


図146、147 本のように収納されたLED照明
本棚に本のように収納されているLED照明はフレームの内側にLEDの間接照明、
フレームの外側に小型のLED照明取り付けられていて、
外側のLED照明は上向きに設置するとアッパーライト(図147)下向きに設置すると
ダウンライトのような働きをする。
図146は器具を上下ランダムに設置した状態。


図148、149 別の壁面には個性的な壁付け照明がランダムに配置されている。


図150、151 階段に設置されているのは他メーカーでも見られた建築と一体化した照明


図152 パイプのような形状のタスク照明(LED)


153 ホール1(Halle 1.2)のViabizzunoブース
個性的なデザインが目を引く。


図154、155 インテリア用のオブジェにLED照明を組み込んだフロアスタンド
独特のシルエットが美しい。

10. iGuzzini(Halle 3.1 E31)

iGuzziniは日本でもヤマギワが取り扱っているので知っている方も多いと思いますが、イタリアの老舗メーカーです。巨大な面積を持つRGB光床の圧倒的な存在感が非常に印象的なブースでした。この光床は映画セットデザイナーのGiancarlo Basili氏が設計によるもので、同氏は上海万博のイタリアパビリオンの演出なども行っているそうです。

(http://www.iguzzini.com/iguzzini_exhibition_space_at_light_building_2012)


図156~159 巨大なLEDの光床
様々なテーマカラーを持った映像の光を受けて天井のフレスコ画も刻々と表情を変える。
光床の上にはクリアアクリルのテーブルと椅子が置かれ、その場で商談を行う。


図160、161 コンパクトでグレアに配慮したLED照明「Minimal」
LEDの特徴を非常に良く活かした器具で、最小単位が1つから使えるというミニマムなコンセプトが良い。



図162~164 COBタイプのLEDを反射鏡制御しているiGuzzini
ダウンライト、スポットライト、ポール照明等、大光量を必要とする器具は基本的にCOBタイプのLED+反射鏡という組み合わせになっている。

11.その他ホール3(Halle 3.0,3.1)で気になったもの。
上記に紹介したメーカーや器具のほかにホール3で気になったものを紹介します。


図165、166 MEYER(Halle 3.0 B21)の窓枠を照らす照明
窓枠の下におくだけで4方を照らすことができるLED照明。
電球色も用意されているのでクラシックな建築物のライトアップなどに役立つと思われる。
6wという消費電力の低さも魅力。


図167、168 Trilux(Halle 3.0 E11)のLEDシーリングライト
折り紙のように切り欠きされた遮光板のなかからLEDの光が照射されベース照明となる。
グリッド状になっているLEDはカバーをする事で発光部分のパターンを自由に変えることができる。


図169 DELTA LIGHT(Hall3.1 B60)のRGBタイプのLEDブラケット)
RGBそれぞれの光を際立たせる事でカラーシャドーの効果が期待できる個性的なLEDブラケット。


図170、171 Selux(Halle 3.1 B81)のLEDライン照明
直付け、埋め込みどちらも可能なLEDライン照明。記号のようなデザインが目を引く。
今回のLight+Buildingではこのようなコンセプトの器具が非常に多い。


図172、173 TOBIAS GRAU(Hall 3.1 B95,A85)の大型LEDデスクスタンド
8900lm、124wというハイパワーな器具でありながら非常にグレアレスなデスクスタンド。
省エネ性はどれほどのものか少々気になるものの、デザインもシンプルで洗練されているので大きさもそれ程気にならない。

ここでレポートの前編を終了します。後編はホール1(Halle 1.1,1.2)、ホール4(Halle 4.0,4.1,4.2)、ホール5(Halle 5.0)のポール照明、全体のまとめ、そして期間限定のライトアップイベント「Luminale」等についてレポートしたいと思います。

光のデザインレポート
執筆者:岡本 賢

岡本 賢(おかもと けん) 
照明デザイナー/Ripple design(リップルデザイン)代表

1977年愛媛県生まれ。2002年株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツに入社し、幅広い分野のプロジェクトに参加し建築照明デザインを学ぶ。2007年独立し、Ripple designを設立。現在も様々な空間の照明計画を行っている。
URL http://ripple-design.jp

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