連載コラム

光の知識をストックする

[ 2013年1月24日 ]

L-1 プレゼンテーション vol.02

昨年の12月12日に六本木のAXISで開催されたEssential Light JP Project(エッセンシャルライト ジャパン プロジェクト)が主催する「L-1 プレゼンテーション vol.02」に参加してきました。今回のイベントはJIDA社団法人日本インダストリアルデザイナー協会・東日本ブロックライティングデザイン研究会との共同開催だそうです。

図1 多くの人で賑わう会場(開演15分前)

Essential Light JP Project(エッセンシャルライト ジャパン プロジェクト)は東日本大震災以降の節電などをきっかけに都市や空間の光や照明のあり方を改めて考え直そうと、照明デザイナーの岡安泉さんの発信で集まった有志によって発足したプロジェクトです。(詳細はEssential Light JP ProjectのHPをご覧ください。)

節電や省エネを意識しながら、かつ安心・安全に配慮し、都市景観としても美しい照明等について考えるイベントや、実際に夜の街を歩いて震災後の光の現状を調査するフィールドワーク等がこれまでにも多数実施されています。今回実施された「L-1 プレゼンテーション vol.02」はそういったイベントとは少し趣が違いますが、10社の照明に関わるメーカーや企業が10分間の持ち時間で新しい照明の技術や、どのような形で光にアプローチしているか、といった内容をプレゼンテーションします。時間も短いため会社や実績の紹介を抜きにしたプレゼンショーです。プレゼンテーションが始まるとマイクがバトン代わりになっていて、持ち時間の10分を経過してしまうと、スピーカーは強制的に話を終えなければいけないというシステムがユニークで緊張感があります。今回のイベントに参加しているのは次の10社です。


SD.hess Lighting株式会社
エルコライティング株式会社
カネカ株式会社
カラープランニングコーポレーション クリマ
コイズミ照明株式会社
山友工業株式会社
大光電機株式会社
有限会社タマ・テック・ラボ
株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパン
ルートロン アスカ株式会社


もちろんプレゼンの内容はLEDや有機ELの最新の情報等が多く含まれ、このように複数の企業やメーカーが一度にプレゼンテーションを行うような事はあまりないので非常に貴重な機会です。新しい照明の情報を取り入れ、これからの省エネ時代に適した照明計画に反映させる勉強会といったようなイベントです。

図2 多くの人で賑わう会場(開演15分前)

また、10分というプレゼンテーション時間の設定が面白く、細かい話をしていると時間がなくなってしまい、要点だけを抽出しすぎると結局何を言いたいのか分からなくなってしまいます。多くの情報をできるだけ効率よく整理したプレゼンか、逆に一つのテーマに絞った一点集中型のプレゼンか、実機などを用いた体験型のプレゼンか・・・。私自身も普段仕事でプレゼンテーションをしたり、人前で話す事が多いのでそれぞれのスピーカーのプレゼンテーションの手法も非常に気になるところです。

内原智史さん、東海林弘靖さん、武石正宣さん、東宮洋美さん、富田泰行さんの日本を代表する5名の照明デザイナーが中心になって活動されている円卓会議・照明楽会でも、以前に「Light de night 10×10」というイベントが行われていました。こちらのイベントでは建築照明とは違った分野の方々が多数スピーカーとして参加されていて、それぞれの方と光の関わり方を10人×10分間のプレゼンテーションで発信するというスタイルで、我々とは違った光の捉え方に新鮮な驚きの多いイベントでした。10人×10分間というプレゼンスタイルは聞く側も構える事無く、かつ集中を保つ事ができる絶妙な設定なのかもしれません。

全てのプレゼンテーションの紹介はできませんが、個人的に印象に残ったものを紹介します。

■SD.hess Lighting株式会社
トップはSD.hess Lighting株式会社のプレゼンテーションです。前回のコラムでも紹介した主に屋外照明を取り扱うドイツの.hessの製品を日本で取り扱っているのがSD.hess Lighting株式会社です。SD.hess Lighting株式会社はドイツのHess AGと日本の信号機メーカーである信号電材株式会社の共同出資によって生まれたメーカーです。

図3  SD.hess Lighting株式会社のプレゼンテーションの様子

「街路灯のイチオシ」と題してLEDを用いた街路灯照明をいくつかのタイプに分けての紹介です。LEDの高効率化、ハイパワー化が進み街路灯の分野にもLEDが進出しています。しかしながら街路灯は一般的な照明に比べ強い明るさが必要になるため、明るさを追求した結果、強いグレアが生じてしまったという器具が多く、街路灯照明はLED照明の分野においては未だ発展途上であると思います。眩しさを軽減するためにはできる限り光源を隠す必要があるので、グレアレスな照明でありながら器具効率(器具光束を光源の全光束で割った値 光源自体の全光束が照明器具からどの程度照射されているかを表した指標)の高い照明器具を作る事は大変難しく、強い明るさが必要である街路灯で眩しさの少ない照明を実現するのはなかなか難しい問題です。

こういったLEDの街路灯照明が抱える問題に対しての.hessのアプローチは、異なる4種類のLEDモジュールを最適な器具に組み込むという考え方です。最初に紹介されたのは、いわゆる面発光タイプのLEDと反射鏡+カバーレンズの組み合わせで配光を制御するCLU-TECHというモジュールです。レンズの効果によって配光をコントロールすると共にグレアを抑えています。

図4  CLU-TECHモジュールの解説


図5 実際のCLU-TECHモジュール

図6 配光を制御するレンズ

CLU-TECHモジュールはLEDを反射鏡制御するため、光源となるLEDの大きさに制約があり、ある程度大きな光量が必要になると他の手法が必要になります。それに適したものがLEVOというモジュールです。コチラはLED基盤をレンズで配光制御する手法を採用しています。LED基盤をレンズ制御する事でコストをかけずに簡単に器具に組み込みやすくなるのだと思います。さらにパワーが必要になる場合はLEVOモジュールを増設するわけです。おむすびのような三角形のレンズが特徴的で、丸くなっているレンズは様々な方向に向いていて、光を一箇所に集中させる事なく、広範囲に効率よく光を飛ばします。

図7 実際のLEVOモジュール

CLU-TECHモジュールやLEVOモジュールは、道路照明によく使用される横方向に伸びる光が特徴との事ですが、逆に全方向(360°)に光を飛ばすタイプが、MODUL360モジュールとcLEDモジュールです。MODUL360モジュールは大きめのヒートシンクを使った縦長のモジュールで、ルーバーのようなパーツを組み合わせる事で眩しさを抑えた光を作ります。cLEDモジュールは大きめの面発光タイプのモジュールにスリガラス状の拡散カバーを取り付け、柔らかい拡散光を作ります。cLEDモジュールのほうはランタンのようなクラシカルな形状の街路灯照明に適しているようです。

図8 MODUL360モジュールの解説の様子

図9 実際のMODUL360モジュール
遮光板を用いる事で360°と270°の2種類の配光を作る事ができる。

さすがは街路灯照明に強いメーカーだけあって独特のアプローチで理にかなったシステムという印象を受けました。実際に設置された事例などをその場所にいって是非見てみたいと思いました。今回紹介して頂いた街路灯照明は昨年の4月にドイツフランクフルトで開催された世界最大の照明見本市「Light+Building 2012」でも展示されていましたが、プレゼンテーションを聞いてより深く理解する事ができました。

■エルコライティング株式会社(以下ERCO)
ERCOも前回のコラムで紹介しましたが、照明業界の人間なら知らぬ人はいない高い光の質を備えた照明器具で知られるドイツの照明メーカーです。プレゼンテーションでは「Light+Building 2012」でも展示されたレンズによって配光制御されたLED照明等について詳しく聞くことができました。

「Lighting With LEDs」というテーマで最新のLED照明の配光制御技術等を中心にしたプレゼンテーションが行われました。先にも述べましたが、現在LED照明の配光制御はレンズ制御か反射鏡制御に大きく分かれると思います。それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらが良いという事は今のところはっきりいえませんが、最新のLED照明を見てみると、面発光するCOB(Chip on Boardの略)タイプのLEDモジュールと反射鏡を組み合わせたLED照明の勢いが目立っているように思います。

図10 エルコライティング株式会社のプレゼンテーションの様子

そんな中でERCOがどのようなLED照明を展開するのか注目されていたと思うのですが、ERCOのLED照明は、オリジナルのLED基盤にコリメイティングレンズとスフェロリットレンズという2種類のレンズによって、配光を制御するという独特のレンズ制御を行っていいます。(詳細はLight+Building 2012レポート 前編をご覧ください。)

図11、12 コリメイティングレンズとスフェロリットレンズで制御された光
図11(左側)の状態がコリメイティングレンズで光を整えた状態。図12(右側)のようにスフェロリットレンズを装着する事で様々な配光の光を生み出す事ができる。Narrow spot、Spot、Flood、Wide flood、Oval flood、Wallwashの6種類の配光がある。

基盤に実装されたLEDの光は広範囲に広がっているため、まずコリメイティングレンズで光を制御しやすい状態に整えます。その状態からスフェロリットレンズを使って好みの配光に変換するという手法です。従来の手法であれば約40%の器具効率であったものが、このレンズ制御方式を用いると約80%の器具効率になるそうです。

図13 ダウンライトの配光制御についての解説の様子

またダウンライトではレンズで拡散させた光を反射鏡制御するという方式を採用するなど、それぞれの器具に最適な手法を組み合わせるというERCOの光を扱う技術の高さに改めて感心しました。

■カネカ株式会社(以下カネカ)
照明というよりは「カガクでネガイをカナエル会社」というテレビCMや化学の分野での知名度が非常に大きいイメージのあるカネカですが、照明の分野では有機ELで有名なメーカーで、いち早く有機ELモジュールを販売したことで知られています。

図14 カネカのプレゼンテーションの様子

カネカの有機ELは鮮やかな5色(白、赤、橙、青、緑)の光色が選択できます。カラーチェンジできない分、それぞれのカラーの発色は非常に鮮明との事です。プレゼンテーションではいくつかの導入事例が紹介され、都内の茶室の事例では有機ELに装着された光取り出しフィルムの効果で消灯時も和紙のように見えるという事から、障子をイメージしてカネカの有機ELが採用されたそうです。

図15、16 カネカの有機EL
プレゼンテーションどおり美しい発色の有機EL

しかし2012年時点では効率15lm/w、寿命10,000hとの事で、LEDはもちろんのこと蛍光灯などの従来光源と比較しても一般照明としての能力はまだまだ不足しており、一般照明としての使用はまだ少し遠いイメージがあります。ただ、厚さ1mm以下という有機ELは照明器具というよりは光る建材や素材として捉えたほうが良いかもしれません。そういった捉え方をすれば有機ELはもう少し早く我々にとって身近な存在になるような気がしました。

■カラープランニングコーポレーション クリマ
カラープランニングコーポレーション クリマは今回プレゼンテーションを行った10社の中では少し異色の存在で、照明メーカーではなく色彩計画・設計のプロ集団です。都市の景観デザイン、建築、構造物などの総合的な色彩デザインを行っている会社です。

「光と色彩」というテーマのプレゼンテーションでした。私が生業としている建築照明デザインは光によって空間やモノを照らします。それはモノを照らしていると同時に色も光を当てています。そもそも暗闇の中では何も見る事はできないわけですから、太陽光や人工光など、光によって色は認識されます。でも光自体にも色味はありますから、美しい色を感じるためには美しい光が必要不可欠です。光と色というものは非常に密接な関係なのですが、普段の仕事では、白熱電球だと食事がおいしく見えるだとか、最近だとLEDの演色性がRa90だとか、光と色の話は照明業界の方からしか聞いた事がないような気がします。そういった意味でも色彩のプロのプレゼンテーションというのは興味があります。

図17 カラープランニングコーポレーション クリマのプレゼンテーションの様子

印象に残ったのは、土のサンプルの話です。こういったお仕事のプロセスを伺った事がなかったのですが、プロジェクトを進めるにあたりその土地にあった色を探すために計画地の土をサンプリングして色の分析をするそうです。こういったプロセスを経る事で「素材の持つ幅や奥行きを知る」とおっしゃっていいました。

図18 ディスプレイされた土のサンプルを紹介したスライド
試験管のようなガラスケースにサンプリングした土が入っている。

図19 250倍に拡大した砂を紹介したスライド

スライドで事務所にディスプレイしてあるという土のサンプルの写真が映し出されたのですが、どれも異なる色彩と個性を持っていて、それぞれの土地や場所に色があるという事が良く分かります。そして何よりその美しい色彩と色彩に対する追求の深さに驚きました。プレゼンテーションの中では「光の中で色をとらえ、光の中で色を美しく見る」というお話がありましたが、色を活かすも殺すも光次第であるという事を再認識し、我々もモノや空間を照らす際に色についてもう一歩深く考えなければと改めて思いました。

■コイズミ照明株式会社(以下コイズミ照明)
コイズミ照明は昨年の9月に行われた展示会でも紹介されていた自社のLEDブランドcledyの中からace、versa、RD seriesの3つのシリーズについてプレゼンテーションが行われました。

図20 コイズミ照明のプレゼンテーションの様子

cledy aceはいわゆる多粒タイプのLED照明ですが、他のシリーズに比べ明るく、演色性を重視したRa92の高演色タイプと、明るさを重視した高効率タイプ(Ra83)の2機種が展開され、10°といった狭角配光をそろえるなど、あらゆる空間で使用できるバランスの良いシリーズです。

図21 cledy versaの解説の様子

cledy versaは集約した多粒のLEDを大型のレンズで配光制御するという考え方です。先に紹介したERCOのLED照明と手法に近いと思います。一つのレンズで制御する事によりこれまで当コラムでも取り上げてきたマルチシャドウ(マルチシャドウについては過去のコラムをご覧ください。)も解消できるというわけです。cledy versaはRa85のみでまとめられ、調光ができませんがその分コストメリットが大きく、HID70wクラスの明るさを持つスポットライトの定価は36,800円で、従来のHID70wの器具から考えると約半分程度の価格です。

図22 RD seriesの解説の様子

cledy RD seriesは最近流行のスタイルであるCOBタイプのLEDモジュールを反射鏡制御するタイプで、面発光するCOBを採用しているためマルチシャドウが発生しません。RD seriesの面白いところは、反射鏡にエンボス加工のような独特の仕上げが施され、仕上げのパターンが異なる反射鏡を選択することで配光を変えるシステムです。また器具には小型のファンが搭載されており、ハイパワーLED最大の課題である放熱にもうまく対応しています。COB +反射鏡の器具は光源部分が直接見えにくくグレアを抑えやすい特徴がありますし、ユニット化されたユニバーサルダウンライトなども展開されているのでショップなどに適している印象を受けました。

■山友工業株式会社
山友工業株式会社はRGBタイプのLED照明等を取り扱っている照明メーカーです。プレゼンテーションではRGBタイプのLED照明「イルアート」が紹介されました。RGBタイプのLED照明といえば器具それぞれにアドレスがあり、それをプログラムによって個別に制御する事により複雑な演出をする事が可能ですが、イル アートはオリジナルの専用のコントローラーを用いる事で、複雑なプログラムを作成する事無くカラー演出を行えるという点が最大のウリです。実際にRGBタイプのLEDを使うと一体どれだけオプションが必要なんだろうか?というくらいに、あれやこれやと照明以外のものが増えていきますが、器具とコントローラーのみというシンプルな構成が非常に分かりやすい印象を受けました。

図23 山友工業株式会社のプレゼンテーションの様子

図24 実機によるプレゼンテーションの様子

LED照明が建築照明の中で頻繁に使用されるようになったのは2003~2004年頃からではないかと思いますが、その当時のLEDといえばRGBタイプのLED照明が主力でした。それまでカラーライティングの演出はカラーフィルターや調光を駆使して行っていましたが、RGBタイプのLEDの登場でデジタル制御された複雑なカラー演出照明が容易に行われるようになり演出照明としての地位を確立しました。当時の照明展示会はどこへいってもRGBタイプのLED照明を使ったカラー演出でいっぱいだった事を鮮明に覚えています。それから10年ほど経過した現在ではLEDの性能が大きく向上し、明るさも価格の面でも一般照明と比較しても遜色ないレベルまで到達し、現在はLED=一般照明というイメージが定着しており、展示会などではRGBタイプのLED照明を取り扱っているメーカーは少なくなり逆に貴重な存在になっています。カラーライティングの演出は頻繁に行うものではありませんが、照明には必ず必要なものです。私自身はイルアートの存在を今回のプレゼンテーションで初めて知りましたが、新たなカラー演出用のLED照明の選択肢が増えました。

■大光電機株式会社
大光電機のプレゼンテーションは照明器具の紹介ではなく昨年の11月に行われた横浜のスマートイルミネーションの報告でした。スマートイルミネーションとは横浜都心臨海部を舞台に、東日本大震災以降ますます重要となっている省エネルギー技術を活用し、新たな夜景の開発を試みるアートイベントです。(スマートイルミネーションHPの概要より引用)

図25 大光電機のプレゼンテーションの様子
谷川俊太郎の詩をモールス信号に変換している様子をスライドで紹介する。

紹介されたのは光をテーマにした作品が多いアーティストの高橋匡太氏と、照明制御のプロフェッショナルであるスタイルテックと大光電機の3社がコラボレーションした2作品です。1つは「つぶやく街灯」谷川州太郎の詩をモールス信号に変換して、そのリズムを街灯の光の明滅で表現した作品です。(概要はスマートイルミネーションのHPをご覧ください。)

図26 イベントで実際に使用されたTシャツと手袋の紹介

図27 実際にTシャツを着て点灯の実演を行う様子
スライドはスマートイルミネーションで、実際に参加者で手をつないで光を点灯した状態の写真

もう一つの作品は「つないだ手の光」という作品です。この作品は無機ELと電源を組み込んだTシャツと、スイッチのような仕組みを持った手袋で構成されていて、それを着た人が握手をするとTシャツの無機ELが点灯する仕組みです。(概要はスマートイルミネーションのHPをご覧ください。)

スライドを見ていてなんとなく思ったのですが、光をアートとしてみた場合、一般的なアート作品に比べて暗い場所で輝く光のアートにはメッセージが乗り易いというか、メッセージの発信力が強いような気がします。アートではありませんが精霊流しや火祭りなどにも通じるものを感じます。建築照明においても光の持つメッセージ性を常に意識する必要があると再認識しました。

■有限会社タマ・テック・ラボ(以下タマ・テック・ラボ)
タマ・テック・ラボは舞台やショーなどの照明演出機材を取り扱っている会社です。照明デザインと呼ばれる分野はいくつかに細分化されていて、タマ・テック・ラボの機材は主に舞台照明デザインの分野で使用されるものです。私自身は建築照明デザインの仕事をしておりますが正直舞台照明用の機材の扱いなどはほとんど分かりません。それだけ専門性の高い分野という事です。今回のプレゼンテーションでは舞台やLIVEなどの演出照明を制御する照明制御卓の紹介や、実際に照明演出を行っているソフトフェアを使ってどのようにプログラムを作成しているかという簡単なプロセスを見せて頂きました。

図28 照明制御卓の実機を紹介する様子

図29 専用のソフトウェアを使ったプログラミングの実演

専用のソフトウェアといってもフリーのソフトだそうですが、リアルタイムで映し出される3Dのレンダリングを見ながら照射方向や配光、点灯のタイミング、調光レベルを設定できる機能に驚きました。建築照明の計画もこのような感じでできたらいいなぁとうらやましく思ってしまいました。

■株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパン
フィリップスのプレゼンテーションは主に有機ELの紹介と、その有機ELを使った導入事例をまとめた内容でした。フィリップスの有機ELはLumiBladeというブランド名で展開されていて、日本ではまだそれほど馴染みはないですがヨーロッパなどでは最も知名度の高い有機ELモジュールではないかと思われます。先にも紹介した世界最大の照明見本市「Light+Building 2012」でもフィリップスのブースではLumiBladeを大きくアピールしていました。

図30 フィリップスのプレゼンテーションの様子

図31~33  Light+Building 2012で展示されていた有機EL「LumiBlade」
LumiBladeを使ったオブジェ(図31)や様々な形状の有機ELモジュール(図32、33)

図34 様々な形状のモジュールを紹介している様子

図35 消灯時はミラーのような素材に見えるLumiBlade

図36 消灯時のミラー効果を生かしたLumiBladeのオブジェの例
Light+Building 2012のフィリップスブースにて

LumiBladeの特徴はモジュールに様々な形状があることです。そのまま使用するにしても、器具に組み込むにしてもモジュールの形状によって様々なアイデアが生まれそうです。実際紹介された事例では車に使用されていたり、光のアートとして使用されていたりと用途も様々です。世界的な企業であるフィリップスはフルカラーの有機EL、曲がる有機ELは6年後、透明な有機ELは2013年に登場するという話もありました。そういった特徴を持つ有機ELが市場に投入される事になると、建材や素材としての魅力が益々高まり、様々な分野での応用が期待できそうです。

■ルートロン アスカ株式会社(以下ルートロン)
最後のプレゼンターがルートロンです。ルートロンは調光器を扱う世界的に知られたメーカーです。多機能調光器といえばまず最初に思い浮かぶのがルートロンといっても過言ではないのでしょうか?今回のプレゼンテーションではエナジー・トライパックという新しい調光システムを紹介してくれたのですが、10社のプレゼンの中で個人的に一番強く興味を持った内容でした。

図37 ルートロンのプレゼンテーションの様子

一言で簡単にまとめると、空間にある全ての照明をワイヤレスで個別に制御できるという画期的なシステムです。アドレスをもったオリジナルのドライバー(電源)と照明器具を接続すると、ドライバーを通じて照明器具をリモコンで制御できるようになるそうです。ドライバーにはそれぞれアドレスが振られているため、特定の照明器具の調光レベルやON/OFFを操作するという事が可能になります。これまでは同じように一台の器具を独立して操作するためには、例えば5台の照明器具がある場合、コントローラーとなる調光器に対して、5台の器具それぞれを個別に接続しておく必要がありました。結果的に5つの系統が必要になります。器具を個別に制御できるのは便利ですが、たった5台の器具を制御するのに5系統も準備するというのはとても贅沢で面倒な話です。一般的に照明器具単体を個別に制御するという事は、必然的に系統の数が増えてしまい配線が非常に複雑になってしまったり、調光器によって系統数の制約があるため、非常にたくさんの調光器が必要になるなどの問題があります。5台程度の器具なら問題ありませんが、店舗クラスの施設になると特定の一台の照明をコントロールするという事は技術的には可能ですが、コストや手間などを考慮すると日本での実現はほぼ不可能であると思います。ですから通常は複数の照明をいくつかのグループに分けて、グループごとにON/OFF、調光などを行います。

図38 オリジナルの調光ドライバーの紹介

ルートロンの新しいシステムを導入すれば照明は配線を一筆書きのように繋いでおいても、オリジナルのドライバーにアドレスがふってある為、リモコンを使って特定の器具を操作できるという仕組みです。これまでのコラムでも紹介した事がありますが、ヨーロッパではDALIシステムという制御システムがあり器具の個別制御が数年前から実現しています。しかし、この画期的なシステムも日本では特殊な電気事情もあってか普及には至っていません。

さらにこのシステムはワイヤレスで連動している明るさセンサーや人感センサーと組み合わせる事も可能だそうです。センサー類は電池内臓(寿命は10年)で配線は不要という手軽さも素晴らしいと思います。

図39 リモコン、ドライバー、センサー、調光器などの実機展示

特に震災以降の節電では、様々な施設で照明が消灯されましたが、スイッチをOFFにすると実は消えてほしくない部分まで消えてしまうなどの問題が多く見られました。オフィスならまだしも商業施設などでは売り上げにも影響を及ぼすような重要な問題です。照明計画を行う者にとって今回のような照明制御システムは待ち望まれていたものであると思います。もちろんLED照明とドライバーの相性や、設置に関する様々な条件などはこれまでの調光システムの導入と同じく調整が必要な部分ではあると思いますので、全てが簡単に行く事ではないと思いますが、このシステムの可能性に大いに期待してしまいます。

■全体をとおして
たくさんのメーカーが一同に会してプレゼンテーションを行うという試みは面白く、こういった機会はやはり貴重であると思いました。情報交換・収集の場ですから照明メーカーの方も多くいらしていたせいもあると思いますが、来場者の年齢層が少し高いような気がしました。このようなイベントは若い照明デザイナーや照明関係者に是非聞いて欲しいと思います。照明の知識はもちろん、プレゼンテーションの勉強や、同業種・異業種の方々とも交流できる収穫の多い場所なので得られるものは非常に大きいと思います。

図40 最後に挨拶をする照明デザイナーの岡安泉さん

図41 イベント終了後は紹介のあった器具などを実際に見る事ができる

10分という限られた時間の中でのプレゼンテーションは、プレゼンする側も発表する内容を吟味し、無駄をそぎ落とす作業をすることによってより理解を深めたり、新たな発見があったのではないかと思います。

また今回のイベントでは震災や節電といったワードは挙がりませんでしたが、Essential Light JP Projectのコンセプトからも感じ取る事ができるように、東日本大震災が照明業界に与えた影響は非常に大きいという事を強く感じました。今回プレゼンテーションで紹介してもらった内容然り、昨今の急速なLED照明の進化の背景には東日本大震災から得た教訓が確実に反映されつつあると思います。明るさや平均照度だけを重要視した照明計画は既に古い手法になっていて、「必要な場所に必要な分だけの明るさ」がこれからの照明に求められることです。そう考えた時にLED照明はその手法と相性の良い次世代の照明だと思います。今回紹介してもらったような新しい技術をどう活かすかは、我々設計者のアイデア次第です。良い判断や良いアイデアを生み出すためにはこのような機会にこまめに顔をだして、自分の引き出しを増やしておくことが大事なのだと思います。

FLOS HISTORICAL ARCHIVE EXHIBITION

昨年の11月に仕事でFLOSのショールームにお邪魔する機会があったのですが、ちょうどその際にショールームでFLOS誕生50周年を記念した展示「FLOS HISTORICAL ARCHIVE EXHIBITION」が行われていました。展示自体は2012年11月30日をもって終了していますが、その内容が非常に興味深かったので紹介したいと思います。FLOSの照明に関しては当コラムでも紹介したことがありますが、FLOSはイタリアの照明メーカーで、Philippe StarckAchille Castiglioniなど優れたデザイナーとコラボレーションしてオリジナリティ溢れるプロダクトを展開している世界的なメーカーです。その名前は照明業界の人ではなくてもご存知の方も多いと思います。またFLOSの名前を知らない人でもFLOSのプロダクトはインテリアショップ等で一度は目にした事があるのではないでしょうか?

またデコラティブな照明だけではなく、近年はアーキテクチュアル・ライティングにも力を入れており、建築照明デザインの分野でも注目されています。FLOSの最新のプロダクトについては前回のコラムでも一部紹介しておりますのでそちらをご覧下さい。

図42  FLOS HISTORICAL ARCHIVE EXHIBITIONが行われているFLOSのショールーム

図43 オリジナルの什器の中に展示されているFLOS50年の歴史にまつわる様々なアイテム

ショールームでの展示イベントといっても照明器具の展示ではなく、FLOSの50年の歴史を物語るあらゆるものが集められた内容になっていて、有名なプロダクトのオリジナルドローイングや試作品、会社設立交付書などバラエティに富んでおり、通常では絶対に見る事のできない貴重な資料を間近で見ることができます。今回の展示は2012年の4月にミラノ、5月にニューヨークで展示され、11月に日本へ巡回してきたそうです。FLOSっぽさを漂わせながら無駄なく展示アイテムが陳列されている什器は今回の展示のためにデザインされたオリジナルの什器で、本国イタリアでデザインされたものだそうです。陳列されるアイテムの配置まであらかじめ決まっているとの事で、さすがにデザインに拘るブランドらしい徹底ぶりです。貴重な展示のいくつかを写真で紹介したいと思います。

図44 1962年創業時のオリジナル鋳鉄製壁掛FLOSロゴプレート(中央)

図45 1962年9月28日付 会社創立交付書(左下)

図46 奥がSergio Gandini(前会長)、手前がPiero Gandini(現会長)
現会長が子供の頃に前会長の席に座って前会長と同じポーズで電話を取っている写真を並べて展示している。このユーモアのセンスがFLOSらしさを感じさせる。

図47 デザイナーのオリジナルドローイングを展示した什器

図48、49 Bruno Le MoultのスケッチとFAX通信

図50 19番はPatricia Urquiolaの'Chasen'のスケールモデル

図51 Philippe Starckの'Guns'シリーズの生産工程を含むアーカイブボックス

図52 中央の円筒形の物は定番の'Arco'のベースより切り出され大理石
直径4.5センチで重さは2kgもある。手前にある巨大なスタンドを支えるベース部分はさぞ重いのだろうと改めて納得する。

図53 これまでのカタログやパンフレットをまとめた展示

お馴染みのプロダクトにまつわる試作品やスケッチなどの展示などもあり、デザインの裏側を覗いているようなとても楽しい展示でずっと見ていても飽きません。FLOSの歴史に触れるとても良い機会になりました。また50周年記念に合わせて構想に6年の歳月をかけて作成されたというipad専用のアプリ「FLOS50」の完成度がとても秀逸で充実した内容になっています。FLOS50でも今回の展示の内容や50周年に関連した様々なコンテンツが用意されています。

図54 ショールームでも紹介されているipad専用のアプリ「FLOS50」

展示は既に終了していますが、FLOS50のアプリの内容を見るだけでも展示内容に匹敵するアーカイブや、展示にはないアプリならではの動画や面白いコンテンツを楽しむ事ができます。ipadをお持ちの方は無料でダウンロードできますので是非お試しください。いかにもFLOSらしい遊び心も随所に用意されていて何気なく見ているだけであっという間に時間がたってしまいます。

たまにはLEDの効率がどうとか、演色性がどうとか、価格がどうとか難しい話を抜きにして純粋にプロダクトやデザインの楽しさに触れる事は非常に大事だと思いました。偶然でしたがこの企画展に出会えて本当に良かったと思います。

光のデザインレポート
執筆者:岡本 賢

岡本 賢(おかもと けん) 
照明デザイナー/Ripple design(リップルデザイン)代表

1977年愛媛県生まれ。2002年株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツに入社し、幅広い分野のプロジェクトに参加し建築照明デザインを学ぶ。2007年独立し、Ripple designを設立。現在も様々な空間の照明計画を行っている。
URL http://ripple-design.jp

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