再注目、Φ75ダウンライト
[ 2018.01.16 ]
近年、5月~6月頃、そして11月~12月頃に照明メーカーのプライベート展示会が集中して開催されています。ライティング・フェアやLED NEXT STAGEのような大規模な展示会では来場者数も多く、来場者の業種も様々で、ブースの広さも限定されていることもあり、万人に分かりやすく要点やコンセプトを絞って、短時間で見られる展示内容になっています。それに対して、照明メーカーのプライベート展示会はメーカーからの招待客がほとんどであるため、展示内容はより専門的になります。また自社の展示スペースを使ったり、イベントホールをレンタルするなど規模は様々ですが、すべてのスペースを単独のメーカーで占有しているため、時間を使ってゆっくり見ることができます。メーカーによっては混雑を避けるため時間帯を指定する予約制になっているところもあり、担当者が帯同して丁寧に解説してくれるといったスタイルもあります。
端的に言えば大規模展示会は、広く浅く(たくさんのメーカーを一度に見ることができるという意味で)、逆にプライベート展示会は狭く深くといった特性があります。今回は11月に開催された山田照明とDNライティングのプライベート展示会をレポートします。
■山田照明
ここ数年の山田照明はこれまでコラムで紹介してきたとおり、「コンパクト・スリム」というキーワードに徹底的にこだわった器具づくりをしています。開口径Φ50mm(以下Φ50)のコンパクトダウンライトシリーズ、極薄のペンダント照明、スリムなΦ35mmの屋外用スポットライトなどがその代表的な器具です。
図1~3 3月に行われたライティング・フェア2017の山田照明ブースの様子
展示会に先行して発表された新しいカタログには、そのキーワードを体現している魅力的かつ、オリジナリティの高い新製品がたくさん掲載されていたので、実物を見ることができる展示会の機会を楽しみにしていました。
1. Unicorn NEO 75 グレアレスダウンライトシリーズ
新製品のなかでも個人的に最も注目していたのが開口径Φ75mm(以下Φ75)の新しいグレアレスダウンライトシリーズ「Unicorn NEO 75」です。このところコンパクトダウンライトのジャンルは各社ともにΦ50~60の極小サイズの開発が活況で、Φ75のグレアレスダウンライトは目新しい製品としては業界全体を見渡してもそれほどありませんでした。というのもすでに十分な性能を持った製品が多かったので大幅なアップデートをする必要がなかったというのが正しい見方かもしれません。
図4 エントランスロビーに設置されたUnicorn NEO 75
ロビーの天井には新しいUnicorn NEO 75が取り付けられ、点灯している。グレアを感じないことが良くわかる。
しかしΦ75はコンパクトダウンライトとしては一般的なサイズで、最もよく使用されます。また、昨今人気のΦ50~60の極小ダウンライトは設計者やデザイナーには照明器具の存在感がほとんどないため高い人気を誇りますが、現場レベルでは喜ばれないケースが多いように感じます。というのも開口径が小さいため、施工時に穴から手を入れて配線を手繰り寄せたり、天井内部の状況を確認することが難しく、器具取り付けの難易度が非常に高くなってしまうからです。
実際に私もΦ50~60のダウンライトをよく使いますが、極小ダウンライトをスペックした現場では、必ずといっていいほど同じような話を現場の施工者から聞きます。また、大規模な現場ではΦ50~60のダウンライトを使わないで欲しいという要望もあります(取り付けの数が多いと工期・施工費などにも影響があるため)。
そういったダウンライトのコンパクト化による新しい問題もあって、個人的にΦ75のダウンライトの重要性を再認識していたところでした。そこへ「Unicorn NEO 75」が新しく発表され、そのスペックをカタログでみて衝撃を受けると同時に期待が高まっていました。
Unicorn NEO 75はベース、アジャスタブル、ウォールウォッシャー、軒下のバリエーションが用意されていて、さらにベースダウンライトは広い配光で広範囲を照らすことに特化したタイプと、より遮光角の深い(55度)グレアレスタイプのベースダウンライトが展開されています。
図5、6 Unicorn NEO 75 グレアレスベースダウンライト(左)、ウォールウォッシャー(右)
左のグレアレスベースダウンライトは55度という深い遮光角が特徴。トリムが非常に薄いというデザインもうれしい。
図7 Unicorn NEO 75 ウォールウォッシャーで照らされた壁面
同じダウンライトのシリーズにおいて、ウォールウォッシャーや軒下まで揃っているメーカーはほとんどないと思います。同じシリーズでここまで選択肢が多いと、照明設計が非常にやりやすくなる上、照明手法が違っても同じメーカー、同じ見た目で器具を統一できるメリットは非常に大きいと思います。軒下はベースダウンライトのみとなっていますが、ここに軒下のアジャスタブルタイプが加われば、まさに最強のグレアレスダウンライトシリーズになると思います。どの器具も最低でも遮光角を30度以上確保しているというこだわりの仕様です。
もっとも注目すべき点は、明るさとコストパフォーマンスです。これまでΦ75のダウンライトと言えば明るいもので10~12w程度、ローボルトハロゲン12v50w相当のものが主流でした。価格帯は専用電源も含めて20,000~25,000円程度が一般的ではないかと思います。Unicorn NEO 75は消費電力が20.7w、コンパクト蛍光灯FHT32w相当の明るさがあります。これまでこれほどハイパワーなΦ75ダウンライトはなかったと思います。Φ75ダウンライトでこの仕様となると、2層吹き抜けのような空間でも配光次第では十分に通用すると思います。コンパクトでハイパワーとなると、いかにグレアレスダウンライトといえども、眩しさが気になるところですが、先ほども紹介した通り最も遮光角が深いもので55~58度、最低でも30度の遮光角を確保しておりぬかりありません。実際点灯している状態をみても嫌な眩しさは感じませんでした。
価格の面ではもっともリーズブナブルなベースダウンライトで本体が13,500円、専用電源(PWM調光タイプ)が8,000円、合計で21,500円と、従来のΦ75ダウンライトとほとんど変わらない価格を実現しています。この性能と価格、そしてラインアップは他メーカーにとって脅威ではないかと思います。
中でも気に入ったのが65度配光のベースダウンライトです。他のダウンライトはすべてアルミの反射鏡ですが、65度配光のベースダウンライトのみ樹脂で成形した特殊な反射鏡になっており均一に光が拡散するように設計されています。
図8 Unicorn NEO 75 65度配光のベースダウンライト
地下の実験室では1.8mグリッドで4灯のベースダウンライトが設置されていましたが、その条件で机上面照度700lx以上確保できるとのことで、非常に驚きました。我々のイメージではコンパクト蛍光灯FHT32wのダウンライトと言えば、仮におなじ条件で設置されていても、明るいというよりは、どちらかというと薄ぼんやりとした明るさといった印象があります。LEDの場合はFHT32w相当の明るさといえど、コンパクト蛍光灯のような広範囲に広がる拡散光ではなく、高度に配光制御された光がロスなく床面や机上面を照らすため、より明るく感じるのだと思います。従来光源の光のイメージで言えばCDM-T35wクラスのダウンライトに近い、はっきり、くっきりとした光の印象です。それでいて配光のエッジもやわらかいので、天井高さ床・壁・天井の仕上げにもよりますが、2.5m程度までなら設置間隔を飛ばしても空間は成立するのではないかと思います。
図9 地下の実験スペースに設置されたUnicorn NEO 75
65度配光のベースダウンライト。1.8mグリッド、4灯で十分な机上面照度を確保する。
これまでは高天井や、どうしても明るさが必要な場所では、開口径Φ100mmや開口径Φ125mmのダウンライトを使っていましたが、ほとんどのケースをUnicorn NEO 75で解決できるのではないかと思うほどこの器具のインパクトは絶大でした。Φ75というサイズはハロゲンランプの時代から馴染みのあるサイズではありますが、設置間隔を飛ばしたり、高天井で使用するとΦ75というサイズのコンパクトさがより際立ち、これまでとは違った新しい感覚になります。高天井での使用なども考慮して狭角配光の充実などが今後の課題ではないかと思います。
2. Line 75s 人感センサ付ダウンライト
業界最小というΦ75の人感センサ付ダウンライトも完成度の高い製品でした。人感センサ付ダウンライトというと、コンパクトなものでもΦ100~125が一般的で、デザインや配光も野暮ったいものが多く、我々照明設計者の立場ではどちらかといえば設計者やクライアントの要望で仕方なく設置するといった類の照明です。
このダウンライトはΦ75というコンパクトさに加え、ピンホールダウンライトのようなシンプルな意匠、でっぱりのない小さなセンサが付いているという、一見しただけでは人感センサ付ダウンライトとはわからないような秀逸なデザインです。配光も広過ぎず、狭過ぎずの43度という絶妙な設定で、まさにトイレブースなどにはうってつけのダウンライトです。
図10 Line75s 人感センサ付ダウンライト(写真右)
Φ75のコンパクトな人感センサ付ダウンライト(写真右)で、コンパクトかつシンプルな意匠が特徴。一般的な従来品(写真左)と比較するとそのコンパクトさとデザインの良さが際立つ。
コンパクトでデザインも良いためトイレ、廊下、バックヤードだけでなく、住宅では子供部屋やエントランスなどにも十分使えそうです。また人感センサ付の照明と言えば、まるでお前は泥棒かと言わんばかりに、人が近づくといきなりパッと明るく点灯するのが一般的ですが、このダウンライトはラグジュアリーホテルの照明のように、ゆっくりフェードインして明るくなるため、安っぽい感じが全くありません。ありそうでなかったこういった器具とはまさにこういう事だと思います。
ただ、現在の仕様ではセンサ付のダウンライトにセンサなしのダウンライトをぶら下げて全灯を同時に点灯、消灯といったことはできない仕様になっています。器具1台ごとに独立してセンサが反応するため、トイレブースのような個室以外で複数台使用する際は、空間の広さにもよりますが、点灯にタイムラグが生じる可能性があるという事を考慮しておかなければなりません。それさえ気にならなければ従来の人感センサ付ダウンライトの枠を超えた使い方ができる器具だと思います。
3. Line 75 PLUS Retorofit E11
E11口金のLEDランプを使用するΦ75のダウンライト「Line75 PLUS Retorofit E11」も展示されていました。現在LED照明の9割以上が光源・器具一体型となっており、上質な空間を設計するとなると必然的に光源・器具一体型のLED照明を選択することになります。しかしながら、クライアントや一般のユーザーにはその事実はあまり知られておらず、当然ランプは交換できるものという先入観があり、もしトラブルがあった際には器具交換の必要がある光源・器具一体型のLED照明をなかなか受け入れてもらえない事もあります。それだけ世間一般では照明器具はランプ交換ができるものという認識が強く、またその要望も依然として高いという事だと思います。
図11、12 Line75 PLUS Retrofit E11シリーズのダウンライト
ランプ交換型のLED照明は光源・器具一体型のLED照明に比べ、明るさや光の質が劣る部分がありましたが、昨今の技術力の向上によりLEDランプの性能が上がり、E11口金のLEDランプ(Φ50ハロゲンランプタイプ)の明るさは、光源・器具一体型のLED照明比べても遜色ないくらいの製品が出始めています。
前述した極小のダウンライトの施工面の難しさによるΦ75ダウンライトの再注目、そして一般ユーザーや施主・事業主のランプ交換型器具に対する要求の高さ、LEDランプの性能向上という3つの要素をバランスよく組み合わせている点が非常に素晴らしいと思います。E11口金のLEDランプは、電源(トランス)も必要ないため一般的なLEDダウンライトに比べ価格も抑えられます。しかもこの新しいダウンライトに対応しているLEDランプは、東芝、ウシオライティング、SORAAの3種類から選択が可能で調光にも対応しています。明るさ、価格、演色性、調光の滑らかさなど、空間や用途に合わせてランプを選択できるというの設計者にとっては非常にうれしい仕様です。
「Line75 PLUS Retorofit E11」は白バッフル、半鏡面、ピンホール、ウォールウォッシャーが選択でき、E17口金のLEDランプ(ミニクリプトンタイプ)が使用可能なΦ75ダウンライトもあります。(E17タイプは白バッフル、鏡面、ウォールウォッシャー)遮光角も十分確保されていて嫌な眩しさも感じません。何より、ランプ交換型のダウンライトでありながらウォールウォッシャーがあるという所に山田照明の本気度を感じます。
図13 Line75 PLUS Retrofit E11のウォールウォッシャーで照らされた壁面ランプ交換型という点を考慮すると十分な明るさと光の質が得られる。
こういった器具はホテルのゲストルームなどではハイクラスなグレアレスダウンライトよりも一番重宝される器具のような気がします。
4. Refit
3月に行われたライティング・フェア2017でもBlade Line Finchという極薄のペンダント照明が展示されていましたが、それが進化したようなライティングダクトレールに取り付け可能なスリムなライン照明が発表されました。ライン照明といってもいわゆる間接照明に用いられるようなタイプの器具ではなく、配光制御された小さな光をライン上に集約させた、いわば線状のダウンライトです。器具の真ん中にあるライティングダクトレールとの取り付け部分が軸となり回転が可能で、照射方向を調整することができます。これはアイデア次第でいろいろな使い方ができそうです。
20mmというスリムなボディでありながら、電源内蔵のため別途電源が必要ありません。さらにエンオーシャンスイッチに対応した無線調光タイプや、ペンダントタイプも選択できます。光源は黒のルーバーで一粒ごとに仕切られているため、嫌なグレアも感じず、細いボディでも十分な机上面照度が得られます。
図14、15 ライティングダクトレールに取り付け可能なスリムなライン照明「Refit」
図16 エンオーシャンスイッチで無線調光が可能
図17~19 コンパクトスポットを組み合わせたRefitの特注仕様
レンズスポットで画像を壁面に投影している。
5. Blade Line Finch
以前より発表されている薄さわずか16mmのLED照明「Blade Line Finch」も改めてじっくり見ることができました。こちらはPWM調光タイプに加え山田照明オリジナルの無線調光システム「ECO wine」に対応した機種もあり、調光調色なども可能です。下方配光、上方配光、上下配光、面発光のライン照明、点光源のダウンライトなど、パズルのように組み合わせて点灯パターンや光源を選択できます。既製品である程度のパターンは用意されていますが、特注照明には定評のある山田照明では設計者やデザイナーの要望に応じてカスタマイズにも対応してれくれます。
図20、21 Blade Line Finch
上方は面発光のライン照明、下方は点光源のダウンライトと面発光のライン照明の組み合わせ
図22~24 ECO Wineシステム対応のBlade Line Finchで調光調色制御を行う
改めてゆっくり見てもその細さには本当に驚きます。それでいて十分な明るさが確保できているのでものものすごく不思議な感じがします。10年前には絶対にあり得なかったLED照明ならではの照明と言えるでしょう。
図25 特殊なアクリルレンズのオプションを用いたウォールウォッシャータイプのBlade Line Finch
この器具はスリムな器具だけに電源は別置になるのでその点だけは注意が必要です。別途、器具内に電源を内蔵した幅30mmのBlade Lineという器具もあるので状況に応じて使い分けたいところです。
図26 電源内蔵タイプのBlade Line
6. その他気になったもの
これまで紹介したもの以外でも魅力的な新製品がたくさんありました。それらを画像を中心に紹介します。
屋外照明 Mouシーズ
図27、28 新しい屋外照明「Mou」シリーズ
光源や発光面を直接見せないボラード照明とブラケット照明。このタイプのボラード照明は他社にも存在するが、傘になるトップの部分が大きいものが多く、ここまでシンプルですっきりとした形状のものは少ない。光も広範囲を照らすように設計されており、高級感のある仕上げの割に価格も抑えられている。H660、H410の2種類の高さに加えスパイク式も用意されており、非常に使いやすい。また同じシリーズのブラケットも魅力的。このような間接光で見せるブラケットは業界全体でも非常に数が少なく、薄く(厚さ25mm)、コンパクトでシンプルなものとなると、選択肢がほぼないという状態であったため朗報である。
図29~32 導光板発光パネル照明 Conference-LG
Conference-LGは導光板を用いた面発光パネル照明で、システム天井に対応した□600の埋め込みタイプ、□450の直付けタイプ、そして□450のライティングダクトレールタイプが展開されている。特に□450の直付けタイプ、ライティングダクトレールタイプが面白い。直付けタイプは薄くシンプルな形なので、オフィスのみならず住宅や商業施設などにも工夫次第で展開できる。ライティングダクトレール仕様は面発光照明をスポットライトのように使う新しいタイプの器具で、建築照明のならず、スタジオ撮影用の照明機材などにも展開が期待できる。現在は5000K、4000K、3500Kの3つの色温度展開であるが、2700~3000Kの低色温度、色温度可変タイプ、さらには高演色タイプ(現状はRa82)などが登場するとより可能性が広がると思われる。
図33、34 シリコン樹脂製のペンダントやデスクスタンド
柔らかい樹脂のシェードを用いたペンダントやスタンドライト。触らなければガラスやアクリルと比較しても見た目は全く遜色がない。
■DNライティング
DNライティングは建築化照明(間接照明)や什器照明に特化した照明メーカーです。これまでもこのコラムでDNライティングの製品は何度も紹介してきましたが、毎回専業メーカーならではの新しい提案、細かい改善などを短いスパンでアップデートしています。昨今は大手照明メーカーのLEDライン照明なども充実しており、同じようなコンセプトを持った器具はたくさんあるのですが、長年積み重ねられてきた細かい仕様の違いや、器具以外のアフターフォローなど、照明設計のキャリアが長い人ほど建築化照明では専業メーカーの器具を採用する方が多いのではないかと思います。
これまでDNライティングの新製品を展示会で見られる機会はライティング・フェアやLED NEXT STAGEなど大規模な展示会という事がほとんどで、プライベート展示会は開催していませんでした。しかし、2017年4月に「STUDIO E139」というショールームがDNライティングの営業本部がある五反田のビルの地下1Fにオープンしたこともあり、(STUDIO E139についてはDNライティングホームページをご覧ください。)今年はプライベート展示会がその新しいショールームで開催されるという事で非常に楽しみにしておりました。ちなみにE139とはこのショールームが位置する場所が東経139度にあるという事が由来だそうです。(ショールームの照明デザインはLIGHT DESIGN)
図35 2017年4月にオープンしたDNライティングのショールーム「STUDIO E139」
1. 森川製作所・ライティング創のダウンライト
照明業界においてコンパクトダウンライトの分野では代表的なメーカーである森川製作所、ライティング創のダウンライトをDNライティングで取り扱うようになりました。開口径Φ28mm~Φ50mmという極小のダウンライトで、什器照明のみならず、建築照明としても十分使用可能です。また森川製作所のダウンライトはこれまでDNライティングでは扱っていなかった軒下仕様のダウンライトもあるので、屋内外の間接照明とコンパクトダウンライトをセットで提案できるようになりました。なお、開口径Φ28mmのコンパクトダウンライトは穴から専用電源を入れることができないため、点検口を設けたり、電源を先付するなどの注意が必要です。
図36、37 森川製作所とライティング創のダウンライト
そのコンパクトさに驚く。
2. アルミ押し出し材を使ったLEDプロファイルシステム
海外ではよく見る器具で、アルミの押し出し材の中にLEDテープライトを仕込み、押し出し材に設けられたスリットに乳白アクリルなどのオプションをはめ込み照明器具化するというシステムです。国内ではLUCIがこのシステムを採用しています。このシステムのメリットは大きく分けて次の3点だと思います。1点目は通常のライン照明では難しい、長尺のライン照明の制作が可能であること(DNライティングのプロファイルシステムは最大で約2.5mまで制作可能)。2点目は、すっきりとしたアルミの押し出し材に照明が収まっているため、野暮ったい蛍光灯トラフのような形状ではなくプロダクトとして美しい照明器具となること。そして3点目は、照明器具を押し出し材のケースに入れたことにより、押し出し材自体は多少の加工をしても照明器具に影響がないため、天井や壁に直付け、スリットを造作して埋め込み、ペンダント照明など様々な取り付けのカスタマイズが可能になることです。
DNライティングのシステムではアクリルの透過率や拡散率を工夫することで内部の照明の明るさを大きく損なうことなく、発光面は嫌な輝度を抑えつつLEDのドットは見せないという仕上がりになっています。現時点では試作段階で2018年5月発売予定とのことです。
図38、39 LEDプロファイルシステム
20mmのスリットにも設置可能なスリムな面発光ライン照明となる。特殊なアクリルカバー(右の画像 図39)を用いることでコンパクトなボディでありながら輝度を抑えつつ均一な発光面を実現している。
図40 試作品のプロファイルシステムのペンダント照明
3. トリムラインのバージョンアップ
DNライティングの製品の中にトリムラインというLEDライン照明があります。この製品は器具を直に見せてもかっこ悪くないスクエアタイプの器具で100V仕様でありながら幅22mmとスリムなライン照明です。同じようなコンセプトの器具は遠藤照明のLINEARシリーズ、LUCIのコネクティッドライトなどがありますが、トリムラインはそれらの器具と比較しても明るく(1mあたり約2800lm)、かつ光源ユニットが交換可能という特徴もあり、個人的に気に入っている器具です。
図41 現行のトリムライン
こういったスリムで明るく、洗練された意匠を持つ照明器具の登場によって、これまではコーニス照明など難しい納まりが必要だった間接照明に変化をもたらしています。単純に照明器具が隠れるスリットさえあれば照明器具を直付けするだけで簡単に間接照明ができるようになりました。この場合はスリットから直接光で出ているので厳密には間接照明と呼べない手法ではありますが・・・。仮にスリットの近くで照明器具が見えた場合でもシャープな光のラインが見えるだけです。この手法の場合は、ダイレクトに光が出るため通常の間接照明よりも明るさも期待できます。
このように、新しいスタイルの器具が登場することで、照明手法も変化したり進化したりします。そうするとまた新しい問題も出てきます。こういった意匠の器具を細いスリットに埋め込んで使用する場合は設計者やデザイナーはどうしても器具が入るサイズギリギリで設計したくなるものですが、放熱などの関係で現在販売しているトリムラインではその納まりが実現できません(メーカー推奨の最小施工寸法は器具の両サイド30mmずつ確保する)。
新しくバージョンアップするトリムライン(TRE2)は器具の形状などはそのままで、光源ユニットが外に出ている状態であれば器具の両サイドは5mmずつ確保できれば良いという仕様に変わります。(2018年5月発売予定)この変更によってトリムラインはより使いやすくなります。
図42 新しくなるトリムライン(右側のスリット)
より厳しい納まりでも使用できるようになる。光源ユニットさえ外に出ていれば幅32mm、深さ29mmのスリットに取り付け可能。左側のスリットは先ほど紹介したプロファイルシステムの器具を取り付けている。幅20mm、深さ20mmのスリットに取り付け可能。
4. LEDたなライト(TA-LED)
什器用照明として新しく発表された「LEDたなライト(TA-LED)」ですが、棚下照明はすでにたくさんの製品が他社製品でも展開されています。この器具の特徴は100Vで使用可能、器具厚さ14.8mm、幅40mmというコンパクトさです。また棚の手前に設置しても棚の奥まで光を照射できる配光設計になっています。棚下照明のため強い明るさは必要なく1mあたり1500lmというちょうどよい明るさです。調光機能はありませんがこのくらいの明るさであれば調光機能がなくても問題はありません。
図43 新しく発表された「LEDたなライト TA-LED」
右側3本のライン照明のうち、真ん中がLEDたなライト。100V仕様の器具とは思えない薄さ。
ここまでの特徴を踏まえると、棚下灯だけでなく建築化照明としてこの器具は様々な用途で活用ができそうです。たとえば開口が狭いコーブ照明などでは器具の薄さや、棚の奥まで照らすことができる特殊な配光といった特徴が活かせます。家具の下に仕込む間接照明の場合ではコンパクトさはもちろん、明るすぎないちょうど良い明るさが逆にぴったりです。名前こそ「LEDたなライト」となっていますが、これは万能な間接照明といってよいと思います。
図44 LEDたなライトの連結
コネクタで連結でき、コネクタは器具内に収納できる。
図45 DNライティングの様々な棚照明の比較
LEDたなライトは左側中段。棚の背面まで光が拡散していることが良くわかる。比較してみると、面発光の拡散タイプの照明も良いが、ツヤある商品を照らす場合は右側中段、下段の棚のようにドット感のある棚照明の方が商品を高級に見せるような煌めきを感じる。
5. MC-LEDシリーズのバージョンアップ
電源別置タイプのスリムな面発光LEDライン照明としては比較的早い段階で登場し、その中でも業界トップクラスの明るさを誇るMC-LEDが第3世代へバージョンアップしています。これまでの面発光タイプ(MC-LED3)に加え、色温度可変タイプのMCT-LED、1/2ビーム角50度のMC-LED3Y HR、薄さ9mmで棚の奥まで照らすことができる配光を持つMC-LED3Yが新しくラインアップに加わりました。特注対応ですがRa96の高演色タイプの制作可能とのことで、用途に合わせて使い分けができそうです。
図46 新しくなったMC-LEDシリーズ
図47、48 調光調色タイプのMCT-LED
調光調色を行うためには調光用と調色用の2つの調光器が必要になる。
図49 新しく電源と一体になった調光ドライバー
これまでMC-LEDをはじめDNライティングのローボルトタイプのLEDライン照明は、1系統の容量が少し大きくなると調光を行う際に電源と調光ドライバーという2つのアイテムが必要であった。調光ドライバーと電源が一体となった調光直流電源装置(最大105wまで接続可能)の登場で、現場の負担が軽減されると思われる。
■まとめ
特に山田照明の新しい製品群が素晴らしかったと思います。2017前半は大光電機の屋外照明の新シリーズ「ZERO」が照明業界の大きな話題だったように思います。今回の山田照明のプライベート展示会はそれに近いインパクトがありました。なんというか、ブレイクスルーな感じです。この枠にとらわれない感じは日本の他の大手照明メーカーには感じられない雰囲気です。
なんといっても素晴らしかったのがΦ75のグレアレスダウンライトシリーズ「Unicorn NEO 75」です。ここ数年ダウンライトのコンパクト化、ハイパワー化が活況でしたが、やはりベースとなる基準はΦ75ダウンライトなんだなぁ、と改めて感じました。ハロゲンランプ時代から受け継がれているこのサイズは、まさに伝統のΦ75ダウンライト、当たり前のようにあったサイズですが、ここへきて新たにその魅力が再燃しています。
また、山田照明の展示会からだけでなく、DNライティングの展示会からも感じたことですが、器具開発の裏にある高いマーケティング力とその情報を整理する分析力、そして要望や課題にスピーディに対応する柔軟な開発力を感じました。
山田照明、DNライティングともに、イベントホールのような大きな会場での展示会ではありませんが、自社のスペースを最大限に活用し、時間によって招待客を分散させたり、吟味されたプログラムを担当者が丁寧に時間をかけて解説するスタイルは非常に分かりやすく楽しめました。こういったプライベート展示会は大きな展示会とは違い、設計者やデザイナーが今抱えている案件に即展開できるような高い訴求力を感じました。
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- 執筆者:岡本 賢
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岡本 賢(おかもと けん)
照明デザイナー/Ripple design(リップルデザイン)代表1977年愛媛県生まれ。2002年株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツに入社し、幅広い分野のプロジェクトに参加し建築照明デザインを学ぶ。2007年独立し、Ripple designを設立。現在も様々な空間の照明計画を行っている。
URL http://ripple-design.jp
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