連載コラム

照明器具から照明システムへの移行

[ 2018.05.21 ]

2018年3月6(火)~3月9日(金)の4日間、東京ビッグサイトで、恒例の照明展示会「LED NEXT STAGE 2018」が開催されました。今回はこのLED NEXT STAGE 2018をレポートします。また同時期にドイツのフランクフルトで開催された世界最大級の照明見本市「Light + Building 2018」の様子も併せてレポートしたいと思います。

LED NEXT STAGE 2018

LED NEXT STAGEは2年に一度の開催で、これまでもこのコラムで何度も紹介しておりますライティング・フェアと1年交代の隔年に開催されている照明展示会です。LED NEXT STAGEは、よりLED照明にフォーカスした展示会となっています。

    
図001、002
LED NEXT STAGE 2018の会場となっている東京ビッグサイト

とはいえ、現在はカタログに載っているほとんどの照明器具がLED照明になっていますので、ライティング・フェアとLED NEXT STAGEの差別化が近年の課題となっているように思います。実際、今回のLED NEXT STAGE 2018は事前にインフォメーションされていた出展メーカーリストを見ると、国内大手照明メーカーのほぼすべてが出展していないという状況で、ある意味どういう展示会になるのだろうという興味が湧いていたところです。

大規模な照明展示会はライティング・フェアに絞り、あとは自社のプライベート展示会を充実させるというスタイルが近年は定着しつつあるように思います。

私は最終日の9日に会場へ行ったのですが、照明分野の展示スペースも例年に比べて縮小し、人の賑わいも少し落ち着いていたように思います。大手照明メーカーが出展していないという事が大きな要因の一つだと思いますが、例年に比べ寂しい印象でした。


図003 会場の様子(最終日)

ただ照明業界に元気がないか?というと、そういうわけではなく、前回のコラムでも紹介した通り、各照明メーカーのプライベート展示会等は盛況で、新しいLED照明が積極的に発表されています。2020年の東京オリンピックを中心とした開発、建設ラッシュなどの影響も大きいのだと思いますが、私が仕事を通して感じている肌感覚では、建築、照明業界は今、非常に忙しく動いているように思います。

毎年大きな展示会に向けて出展の準備を行うことは、メーカーにとっても大変なことであると思います。それに加えて近年は自社のプライベート展示会にも力を注ぐようになっているので、コンセプトが少しぼやけ始めている LED NEXT STAGEは魅力が薄れつつあるのではないかと推察します。

例えば、間接照明に使用するLEDライン照明を主に取り扱っているLUCIは、LED NEXT STAGEではなく、この時期にビッグサイトで同時開催されている、JAPAN SHOPに数年前から出展しています。そしてLUCIはライティング・フェアにも毎回出展していますので、実質毎年ビッグサイトのイベントに出展していることになります。LUCIは照明業界では既に十分な知名度があります。JAPAN SHOPに出展することで建築家やインテリアデザイナーはもちろん、施主や事業主に対しても直接アピールできる機会を増やし、よりビジネスチャンスを広げようという試みではないかと思います。展示会にそういったメリットや魅力をメーカーが見出すことができれば、毎年の出展も充分あり得るという一例だと思います。


図004 LUCIのブース

LEDが一般の照明器具として定着し始めてから約10年ほど経ちますが、このあたりが展示会のコンセプトや方針を見直す良い時期なのでは?という事を今年の会場全体をみて感じました。

そんな印象のLED NEXT STAGEでしたが、興味を惹かれる新しい照明がいくつかありましたので紹介したいと思います。

■アイ・スペック

昨年のライティング・フェアでも非常に印象に残った照明器具で、アイ・スペックが取り扱うANOLIS(アノリス)というチェコ発のRGB照明がありました。今回のLED NEXT STAGEにも出展されており、存在感を放っていました。このメーカーの器具は屋外仕様のものが充実しており、ハイパワーからコンパクトなものまで揃っています。なかでもコンパクトな屋外用RGB照明のバリエーションが非常に多いのが特徴です。


図005 アイ・スペックのブース

今回のブースは中央に噴水を配したデザインになっていて、そこには噴水とRGB照明を組み合わせた水中照明が展示されています。これは今までなかったタイプの照明です。

    
図006、007 噴水とRGB照明を組み合わせた水中照明

また、ブースの壁面にはプロジェクションマッピングのように時折映像のようなものが浮かび上がるのですが、ブースを見回したところプロジェクターらしきものは見当たりません。演出を注意して見ているとブースの天井に設置されたコンパクトな角形のLED投光器が設置されており、この照明の効果によって映像が浮かび上がっているようです。メーカーの担当者に話を聞いてみると、これはLEDのブラックライトだそうで、壁面にはブラックライトに反応する塗料でグラフィックが描かれており、ブラックライトで照らされると浮かび上がる仕組みになっています。昔はカラオケボックスなどでよく見た演出ですが、用いる機種と見せ方を変えるだけでここまで洗練された演出になるとは正直驚きました。

    
図008、009 ブラックライトによる照明演出
壁面がブラックライトで照らされると特殊な塗料で描かれた模様が浮かび上がる。


図010 壁面を照らす小型のLEDブラックライト投光器

ブラックライトによる演出は単純な手法でありながら誰もが驚く効果が出せるため、小型でハイパワーなLEDブラックライトが使えるとなると新しい光のデザインが生まれそうな予感がします。この器具はIP67という事で屋外でも使用できるので、その点においても演出の幅が広がりそうです。

また、このブースではまだ販売はされていないとの事でしたが、ワイヤレスでDMX制御可能なハンディタイプのRGB照明、いわゆる懐中電灯のような照明も展示されており、演出プログラムに合わせてこの照明も色が変化します。イベントなどでは魅力的なアイテムになりそうです。


図011 DMX制御可能なハンディタイプのRGB照明


図012 ドットタイプのLED照明
前回のライティング・フェアに出展されていたものはRGBタイプであったが、今回のドット照明はフラッシュライトの効果が出せるタイプ。ありそうでなかった器具。

■SGM JAPAN

SGMは1975年にイタリアで設立され、現在はデンマークに本社および生産拠点を置くメーカーです。先に紹介したANOLIS(アノリス)と同じ分野の製品も多いですが、どちらかというとステージライティングの色が強いメーカーだと思います。日本で馴染みのある照明メーカーで例えるならば、ANOLIS(アノリス)はカラキネやTRAXONに近く、SGMはMartinのようなイメージと言えるのではないかと思います。


図013 SGM JAPANのブース

今回のすべての展示の中でもトップクラスにインパクトがあったのが、水に打たれ続けているムービングライトの展示です。ご存知の通り、ムービングライトは大規模な展示会やLIVE、舞台など様々なエンターテイメントの場で力を発揮する照明器具です。反面複雑な機構と、すべてが電気、デジタル制御されているため、水に非常に弱いという弱点があります。以前より、屋外で使用可能なムービングライトもありましたが、それでも長期の屋外常設や、直接雨の影響を受けやすい長時間の上向きの設置などが難しいものがほとんどでした。ムービングライトを大きなカプセルで覆って屋外用としている機種などもあったと思います。

    
図014、015 水に打たれるムービングライト

ですから、このようなパフォーマンスに驚きました。完全防水のLEDムービングライトは世界初とのことです。ムービングライトですから当然サイズは大きくなりますが、色温度可変(2000~10000K)やカラーライティング、機種によっては配光可変やゴボまで使用可能で、もちろん照射方向も自由に調整できます。上位機種には除湿機能も搭載されています。これだけできて屋外でも使用可能となれば器具の大きさなど小さな問題と言えるのではないでしょうか?

その他、SGMでもブラックライトのLED小型投光器が展示されていました。こうした器具の選択肢が増えることは非常にうれしい限りです。


図016 小型投光器タイプのブラックライト(写真中央)

また、バッテリーで点灯するコードレスタイプの小型投光器、ムービングライトもあります。IP65で屋外でも使用可能、ワイヤレスでDMX制御も可能ですので、イベントなどではこれまでにない新しい演出が可能になりそうです。


図017 バッテリータイプのムービングライトと小型投光器

■FKK

間接照明に用いるLEDライン照明を数多く取り扱っているFKKのブースでは、新しくフレキシブルタイプのLEDライン照明が展示されていました。国内ではまだこのタイプの製品を扱っているメーカーは少数でバリエーションも多くありません。今回はインテリア用のフレアラインミニ(幅10mm×高さ10mm)、屋外(軒下)で使用可能なフレアライントップ(幅16mm×高さ16mm)、フレアラインサイド(幅11.5mm×高さ20mm)の3種類が展示されていました。


図018 FKKのブース

インテリア用のフレアラインミニは3面が発光し、屋外用のフレアライントップは曲げ方向に対して平行な面が発光するタイプ、フレアラインサイドは曲げ方向に対して直交する面が発光するタイプとなっています。曲げ方向に対して2種類の発光面を用意しているメーカーは国内でもほとんどなく、この器具であればどんな曲げ方向や設置場所にも対応が可能だと思います。屋外用の機種がある点も非常に良いと思います。器具の長さも最長でインテリア用は5m、屋外用は4mまで対応可能なので、継ぎ目もできるだけ減らすことができます。価格はインテリア用が約1mあたり16,900円、屋外用が約1mあたり21,000円となっており、この価格設定もコストパフォーマンスが高く魅力的です。

    
図019、020 ブース壁面に展示されたフレアライン


図021 新製品のフレアラインシリーズ

ただし、この器具はコネクタ連結になりますので、連結して使用する場合はコネクタを置くスペースを確保する必要があります。屋外用のコネクタはインテリア用のものより若干大きくなるので、その点は考慮しておく必要があります。屋外用のフレキシブルLEDライン照明はLUCIが取り扱っているドイツのLED LINEAR社のモノがよく知られていますが、この分野では日本は海外の製品に後れをとっているのでこういった製品の登場はうれしい限りです。

■ニッシントーア・岩尾(同時開催の商空間・住空間NEXTに出展)

プロジェクションマッピングなど、照明演出の世界では一般照明と映像の境界がボーダレスになりつつあり、大きなプロジェクトでは映像による光の演出の要望が年々高まっているように感じます。しかし、ドットLEDによる映像装置(LEDディスプレイ)は昨今の流行よりもさらに前からあり、現在も進化し続けています。私自身はこの分野の照明についてあまり詳しくないのですが、ニッシントーア・岩尾のブースに展示されていた最新のLEDディスプレイに驚きました。


図022 ニッシントーア・岩尾のブース

LEDディスプレイではテープライト(もしくはネットタイプ)、バータイプ、パネルタイプのいずれかを用いるのが一般的だと思います。ガラスなどと組わせて映像+透けるという効果(映像が写し出されているLEDディスプレイの後ろが透けて見える)を出したい場合はテープライトタイプやバータイプを用います。ブースに展示されているディスプレイもバータイプのLED照明を使って透過性のあるディスプレイを作っているのですが、私がイメージしていたものとちょっと違っていました。通常バータイプのLED照明は幅広の面にLED照明が取り付けられていますが、展示されているモノはいわゆるバーの小口面にLEDが設置されています。(図025参照)これにより、LEDを密に設置しても高い透過性が保てるため、非常に鮮明な映像を映し出す事ができます。また曲面のフレームにも設置できるため曲がるディスプレイも可能です。

    
図023、024 高い透過性と鮮明な映像が得られるCurve wall transparent LED screen


図025 バーの小口部分にLEDが取り付けられている。

マグネットで貼りつけるように設置する曲がるディスプレイにも驚きました。パネルの裏にはコネクタがあり、コネクタを差し込んでスチールの設置面に貼り付けるだけという簡単さです。

    
図026、027 曲面に設置可能なマグネットタイプのLEDディスプレイ

    
図028、029 マグネットディスプレイを外した状態
ディスプレイの裏側にはコネクタがある。

■Izzy Creation

Izzy Creationのブースに展示されていたLED電球のクオリティが高く気に入りました。昨今のLED電球は明るさ、光の広がり、価格の面でもどんどん完成度が高くなっていますが、そのほとんどがヒートシンクに覆われている影響で白熱電球のように球体全体が発光しません。Izzy Creationで取り扱っているLED電球は、白熱電球と同じように球体全体が均一に発光するLED電球(配光角:315°)です。


図030 Izzy Creationのブース

ランプのサイズも白熱電球とほぼ同等のサイズになります。昨今フィラメントタイプのLED電球はよく見るようになりましたが、このようなLED電球はありそうであまりなかった製品だと思います。調光も非常にスムーズできるので、ホテルのゲストルームなどにも適した光源です。

    
図031、032 315°配光のLED電球
消灯時の見た目も白熱電球と遜色ない印象。

    
図033、034 スムーズな調光が可能
下限レベルの調光も安定している。調光器のマッチングがうまくいけばホテルのゲストルームなどに採用したいランプ。

■徳島県 ブース内「Flumie」

徳島県のLEDを扱う優れた企業が集まるLEDバレイ徳島のブースで、「Flumie」という一輪挿しに活けられた花のようなLEDのデスクスタンドが目に留まりました。


図035 徳島県のブース

    
図036、037 一輪挿しの花のようなデスクスタンド「Flumie」

花弁1枚、1枚にLEDが組み込まれていて、その光を受けた花弁が柔らかく光を拡散させます。直接光源が見えませんので、嫌なグレアを感じることもありません。また花弁は簡単に取り外しが可能で、色や形を変えた花弁を入れ替えると、また違った光の花を楽しむことができます。充電式となっていますのでコードレスで使用できることも魅力です。

    
図038、039 花弁を交換する事ができる

同時開催の建築・建材展、JAPAN SHOPにも気になる照明がありましたので紹介したいと思います。

■ゴーリキアイランド(同時開催の建築・建材展に出展)

時代や流行に左右されない普遍のデザインというものがあると思いますが、照明においては船舶照明がその一つに挙げられるのではないでしょうか?ラフで無骨でシンプルなデザインは根強い人気がありますし、何か空間にアクセントがほしい時に重宝するアイテムで個人的にも好きな照明です。ゴーリキアイランドは特に船舶照明に力を入れたメーカーです。それもそのはず、ゴーリキアイランドはもともと造船業が専門の会社ですので、形だけを模倣した船舶照明とは一線を画す、正真正銘の骨太な船舶照明です。


図040 ゴーリキアイランドのブース

    
図041、042 美しくディスプレイされた船舶照明の数々
真鍮の風合いや輝きが美しい。

ブース正面の壁面にディスプレイされたたくさんの船舶照明の迫力とプロダクトとしての美しさにしばし圧倒されました。オーソドックスな真鍮タイプのものや、ポップにカラーリングされたものなど、バリエーションも様々です。コストパフォーマンスが非常によい所も見逃せません。照明の他にも真鍮製のトイレットペーパーホルダー、スイッチプレート、ドアノブや取っ手なども取り扱っています。


図043 トイレットペーパーホルダー、スイッチプレート、ドアノブや取っ手なども取り扱っている。

■LUCI(同時開催のJAPAN SHOPに出展)

冒頭でも少し触れましたがLUCIは今回もJAPAN SHOPに出展していました。LUCIの製品群を考慮すると非常に良い選択だと思います。LUCIのブースでは2017年のライティングフェアで取り扱いを発表したドイツのLED LINEAR社の製品が最もスペースを割いて展示されていました。IP67、IP68クラスのLEDライン照明で、床埋め込みに対応した機種もあります。


図044 LUCIのブース

    
図045、046 LED LINEARの展示
床面に埋め込まれたLEDライン照明

個人的に気になったのは新しく発表されたルーチ・フラットフレックスミニクス、ルーチ・パワーフレックスイルメです。フラットフレックスやパワーフレックスはもともとLUCIのテープライトとしてあった製品ですが、これを均一な面発光のバータイプの照明にグレードアップさせたものです。近年面発光タイプのLEDライン照明が充実してきたことで、ドットLEDを使用したテープライトを採用する機会は大幅に減ってきています。私自身もよほどの理由がない限りテープライトを選択することはなくなりました。


図047 2つの新製品、ルーチ・フラットフレックスミニクス、ルーチ・パワーフレックスイルメ

ドットLEDを用いたテープライトは広角配光とは言っても点光源の集まりであるため、光の指向性が強く影やカットオフラインが出やすくなります。そのため、間接照明には柔らかい拡散光が特徴の面発光タイプのLEDライン照明を用いることが必然的に多くなります。

この新しい2つの製品はそういった昨今の照明事情に合わせて登場した製品ではないかと推察します。明るさはテープライトとほぼ同じ設定になっていますので明るすぎず、LUCIの他の面発光LEDライン照明とバッティングする事もありません。

Light + Building 2018

ここからは同時期の3/18~3/23にドイツのフランクフルトで開催されていた世界最大級の照明見本市、Light + Building 2018について簡単にレポートしたいと思います。今年は仕事の都合で1日しかゆっくり見ることができないスケジュールだったのですが、世界の照明のトレンドを直接感じられる貴重な機会なので思い切って行ってきました。

今回のLight + Buildingで印象的だったのはなんといっても寒さと雪でした。例年よりも少し早い開催であったことも影響していると思いますが、私の記憶では10年ほど前に一度雪が降ったことがありましたが、それ以来の銀世界のフランクフルトです。Light + Buildingの詳細についてはこれまでのコラムで何度か紹介しておりますので、そちらをご覧ください。(Light + Building 2012Light + Building 2014)世界最大級の照明見本市だけあって会場全部を見ようと思うと、どんなにペースを上げても最低3日はかかる規模です。


図048 雪景色のフランクフルトメッセ
Light + Buildingはフランクフルトにあるフランクフルトメッセで開催されている。

弾丸スケジュールであったため、ごく一部のブースしか見られませんでしたが、その中で興味を惹かれた製品や印象に残ったブースを写真を中心に紹介したいと思います。

■CALEX

CALEXはオランダのメーカーで、フィラメント電球を模したLED電球を数多く扱っています。日本でも同様の製品は多く見かけますが、このメーカーのランプは大型のものが多く、ランプの形状やフィラメントの形状も様々で見ているだけで楽しくなってしまいます。単純にこのランプだけで構成された空間でも十分に成立するクオリティです。

    
図049、050 CALEXのブース

    
 

図051~053 CALEXのLEDランプ
様々なデザインやサイズのLEDランプが揃っている。

■ETTLINLUX

このメーカーは以前にも紹介したことがありますが、光の効果を変化させる特殊なフィルムを扱っています。似たようなものは日本にもありますが、このメーカーのものは3次元的に光のイメージが変化するという非常にインパクトのある製品です。仕掛けは裏面にLEDがあるだけというシンプルさも素晴らしいです。


図054 ETTLINLUXのブース

    
図055、056 フィルムの効果で偏光したLEDの光

    
図057、058 フィルムの背面にLEDがあるだけというシンプルな仕掛け

■KLEWE

KLEWEは屋外照明を中心としたシンガポールのメーカーです。コンパクトでシンプルなデザインが特徴ですが、中でも屋外で使用可能なスタンド照明が素晴らしい製品でした。充電式でワイヤレスでも使用可能ですから、室内外、そして施設のジャンルを問わず使用可能です。ぜひ日本でも発売してほしい商品です。


図059 KLEWEのブース

    
図060、061 屋外用でも使用可能な充電式のスタンド「ABATJOUR」
IP65という仕様は安心して屋外で使用できる。

    
 
    
図062~065 その他にもコンパクトでシンプルな屋外照明が揃っている。

■FILIX

FILIXはクロアチアの屋外照明をメインに取り扱うメーカーです。私は初めて知ったメーカーでしたが非常に丁寧に作られた製品からは職人魂が感じられ、堅牢性の高そうな器具である印象を受けました。


図066 FILIXのブース


図067 IP68の地中埋設LEDライン照明


図068 IP67のフレキシブルタイプの地中埋設LEDライン照明

    
 

図069~071 発光部分を変えられるボラード照明
灯体部分に付いているつまみを回すことで、光る方向を変えられるボラード照明。前周配光、1/2配光、1/3配光、1/4配光など。

    
図072、073 その他にもしっかりとした造りの屋外用照明が展示されていた。

■RobLight

RobLightはデンマークのメーカーで、LEDと光ファイバーを組み合わせた照明器具を作っています。LED照明のコンパクト化、高効率化が進むとともに、光ファイバーを使った照明手法はだんだん少なくなっていきましたが、メンテナンスを光源ボックスがある場所に集約できたり、光源ボックスを離すことで設置が難しい環境でも器具の設置ができるなど、メリットはあります。光源をLED化することにより、これまで以上に発光効率を高めたり、メンテナンスの頻度を減らすことも可能です。


図074 RobLightのブース
他では見られないコンパクトなファイバー照明システム

    
図075、076 展示テーブルの裏面にはLEDの光源ボックスが隠されている

■LED LINEAR

LUCIでも取り扱っている、屋内外のLEDライン照明を豊富に取り扱っているドイツのメーカー。今回はインテリア向けのグレアレスに注力したライン照明の展示が多くみられました。


図077 LED LINEARのブース

    
図078、079 グレアに配慮したLEDライン照明

■XAL

XALはオーストリアの照明メーカーです。意匠性に優れた製品、リニア照明システムや建築と一体となるような照明器具など幅広く展開しているメーカーです。

    
図080、081 XALのブース


図082 スピーカーや照明の意匠を統一化した器具デザイン

UNICOという角形のダウンライトが展示されていたのですが、この器具が今回のLight + Buildingの中で最も印象に残った器具でした。UNICOは約60mm×60mmの小さな角形のダウンライトで、狭角配光、ベース照明になる超広角配光、ウォールウォッシャー配光などがあります。これをユニット化して組み合わせることで、一つのユニットで様々な配光を使い分ける照明となります。それぞれのダウンライトはDALIで制御可能なので、個別に点灯・調光することも可能で、シーンコントローラーを用いれば、様々な光のシーンを登録したり、呼び出す事もできます。またコンパクトでも十分な光量があり、小型化、高効率化が進んだ現在のLED照明だからできる器具だと言えます。

    
 

図083~085 UNICOの展示
図083がベースダウンライト、図084がウォールウォッシャー、図085が狭角配光のダウンライトが点灯した状態。展示のUNICOは9個のダウンライトが集まったユニットになっている。よく見るとそれぞれの写真で点灯しているダウンライトが違っていることが分かる。


図086 展示されていたUNICOの仕様
9個のダウンライトの配置が良くわかる。CRIも90あり、全体的な光の質も非常に高い。


図087 UNICO ダウンライトの配光バリエーション


図088 UNICO ダウンライトの組み合わせパターン
このパターンに9種類の配光を組み合わせることができるので様々な機能をもった照明ユニットを作る事ができる。


図089 UNICOと同様に異なる配光を組み合わせたダクトレール仕様の照明


図090 Φ60のコンパクトダウンライト
丸型、角型があり、コーンの素材やカラーバリエーションも豊富にある。

    
図091、092 MOVE IT 25 trimless system
極細のスリットにスポットライトやライン照明を組み込むシステム。以前からこのようなシステムはあったが、より細く洗練された意匠となっている。DALIやZIGBEEといった照明制御と組み合わせる事も可能。

■Kreon

Kreonはベルギーの照明メーカーで、コンパクトなLED照明が豊富にそろっています。今回はペンダントのような吊り下げ形のライン照明「fuga」が印象的でした。


図093 Kreonのブース


図094 コンパクトなLEDライン照明が豊富に揃っている

    
 

図095~097 吊り下げ形のライン照明「fuga」
直線やL型のものがあり、組み合わせ次第で様々な光のパターンを作り出すことができる。

■Viabizzuno

Viabizzunoはイタリアの照明メーカーです。これまでも何度もコラムで紹介してきましたが、個人的にLight + Buildingでは一番楽しみにしているブースです。照明器具だけにとどまらず、ブースのデザイン、配布資料のデザイン、webのデザインなどトータルで独創的なデザインやブランディングが際立っているメーカーです。今回も一際異彩を放つ発信力のあるブースでした。

    
 
    
 

図098~102 シェルフ型の照明とLEDディスプレイを組み合わせた巨大なブース壁面
アート作品のような問答無用の迫力がある。


図103 ブースの内部
外側の壁面のイメージとは一変して独創的でエレガントなブースデザインが目を引く


図104 今回の主力製品は光源ユニットに様々なオプションを組み合わせる照明システムである

    
図105、106 光源ユニットとガラスグローブを組み合わせる

    
図107、108 今回見た中で最もコンパクトなスポットライト
専用のレールシステムで点灯する。

その外、日本の企業やデザイナーも多数出展していました。

■トキ・コーポレーション(以下TOKISTAR)

ラスベガスのライトフェアーなどでは常連のTOKISTARですが、Light + Buildingへの出展は今回が初めてとの事。世界でも知られているTOKISTARの製品や技術にヨーロッパの人々も驚いたと思います。


図109 TOKISTARのブース

    
 

図110~112 日本でもおなじみのLED版のイグゼビタ
バーチャルフィラメント技術により、白熱電球のような煌めきを実現している


図113 バイオメタルで羽ばたく蝶のオブジェ
照明器具とは別にTOKISTARが独自に開発しているバイオメタルは、電源をON/OFFすることにより伸び縮みする特殊な金属。その効果を活かして蝶が羽ばたくような演出を行っている。

    
図114、115 バイオメタルの機能を分かり易く解説したオブジェ
電源がOFF状態だとバイオメタルが伸びて、クリスタルの位置が下がる。通電するとバイオメタルが縮んでクリスタルに光が灯り上昇する。

■ミネベアミツミ

コイズミ照明や山田照明、ヤマギワなどでもミネベアミツミの多機能スポットライトSALIOTを取り扱っていることもあり、日本の照明業界の中では認知度が高まっているミネベアミツミが出展していました。SALIOTは非常に画期的な器具です。少し大きめなスポットライトですが、スマホを使って照射方向を自由に調整でき、配光可変、色温度可変も可能なまさに何でもできてしまう照明です。高演色タイプの機種もあります。さらにフォーカシング調整したシーンを登録して、そのシーンを自由に呼び出す事もできてしまうというこれまでにない照明です。非常に洗練されたブースデザインでしたが、この画期的な照明器具の魅力が十分発揮されていなかったのが少々もったいないように思いました。

    
図116、117 ミネベアミツミのブース
多機能スポットライトSALIOTシリーズが多数展示されている。


図118 色温度や配光、照射方向がスマホの操作一つで簡単に変えられる。

■LUCI

日本では販売されていない新しい製品が展示されていました。


図119 LUCIのブース


図120 浴室で使用可能なIP65の防湿型のライン照明「EFRO」
ホテルなどでも浴室の間接照明が採用されるようなり、防湿型のライン照明の需要が高まっている。そういった需要にピタリとあてはまる器具。「いい風呂」をEFROとしたネーミングセンスに好感が持てる。


図121 IP67のフレキシブルタイプのライン照明「UQ」
この分野は世界的にも機種が増えているのでライン照明に特化した照明メーカーとしては持っておきたいジャンルの器具。


図122 IP65のフレキシブルタイプのライン照明「KINU」
コチラはUQよりも薄く細いので、さらに曲げやすくスリムなフレキシブルなライン照明。

■OLED Worksのブース

OLED Worksは世界中のデザイナーがOLEDを使ってデザインしたプロダクトを展示しているブースです。そこに日本人デザイナーがデザインした「ittan」というプロダクトが展示されていました。ittanは株式会社グロオレッドの製品で、デザイナーは建築やプロダクトまで幅広く手掛けるウルトラパスタの稲田真一氏です。稲田氏は2010年の有機ELデザインコンペでも最優秀賞を獲得しています。


図123 OLED Worksのブース

    
図124、125 有機ELを用いたブラケット照明ittan
取っ手のように持ち上がった部分の裏面にも有機ELが組み込まれていて間接光としても使える。薄い金属の素材に薄い有機ELを組み合わせることで、軽やかさを失わないデザインとなっている。

昨今はLED照明の勢いに少々押され気味な気がしている有機ELですが、このようなプロダクトが今後も続々と出てくることを期待します。このプロダクトからも感じますが有機ELは照明器具というよりも家具や建具、ガラスなどと組み合わせて光る建材的な使われ方が理想的な気がします。

■まとめ

特にLight + Buildingで感じた事ですが、LED照明は照明器具から照明システムに移行しつつあるように思います。以前よりヨーロッパでは押し出し材で作った細いスリットにライン照明やスポットライトを組み合わせた照明はありましたが、今回のLight + Buildingではこれまで以上にそのような照明システムを見かけました。特にスポットライトの小型化が以前よりも進んでいるように思います。より細く、より洗練された意匠に進化し、器具の個別、ワイヤレス制御など高度な照明制御が可能になっています。

    
 
    
 
    
図126~131 スリットとコンパクトLED照明を組み合わせた照明システム

例えば、空間には細いスリットが一本あるだけでそこにライン照明やコンパクトスポットやコンパクトダウンライトを自由に組み合わせて、最適な光環境を作る。建築と照明が一体化した照明システムです。そして、それらの器具はスマホで個別にワイヤレス制御が可能といった具合に、ハード面でもソフト面でもシステム化されています。

そのような手法とは対象的に部屋にはプロジェクターがあるだけで、ある時は照明を模した光のイメージが投影され、ある時は森林をイメージした映像が窓に投影され、ある時は空の映像が天井に投影される。映像と照明がボーダレスになった照明システム。すべてスマホやタブレットで制御できる。こういった空間も今後は増えてくるのではないかと思います。

我々も照明システム自体をパッケージとして提案しなければならい時代に突入していると感じます。

そして、毎回思う事ですが、やはり海外には魅力的な屋外用照明が多くあります。このところ日本の屋外用LED照明市場も盛り上がりつつありますので、自由な発想から新しい屋外用LED照明が生まれることを期待します。

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岡本 賢
執筆者:岡本 賢

岡本 賢(おかもと けん) 
照明デザイナー/Ripple design(リップルデザイン)代表

1977年愛媛県生まれ。2002年株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツに入社し、幅広い分野のプロジェクトに参加し建築照明デザインを学ぶ。2007年独立し、Ripple designを設立。現在も様々な空間の照明計画を行っている。
URL http://ripple-design.jp

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