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連載コラム

人に寄り添う光 ライティング・フェア2019レポート

[ 2019年7月12日 ]

 2019年3月5日~8日の日程でライティング・フェア2019が東京ビッグサイトで開催されました。少し遅くなってしまいましたが、建築照明デザインの視点からライティング・フェア2019を振り返ってみたいと思います。

 これまでもこのコラムで何度も紹介してきましたが、ここ数年の大きな流れで各照明メーカーのプライベート展示会の存在感が大きくなってきました。その影響もあるのだと思いますが、LED NEXT STAGEも含め、国内の大規模な照明展示会では出展社が減少傾向にあり、今年のライティング・フェアの会場でも一部の大手照明メーカーが出展していないなど、その流れを改めて感じました。逆に魅力ある製品を作っている中小のメーカーにとってはこれまで以上に製品を注目してもらえるチャンスが増えるという見方もできます。このような流れは時代のニーズに合わせた変化であり、ある意味LED照明が成熟してきたことの証でもあるので、決して悪いことではないと考えています。

 しかし、そうは言ってもさすがに国内最大規模の照明展示会であるだけに、ライティング・フェアに照準を合わせている照明メーカーは多く、目を引く新しい製品に出会うことができました。

    
図1、2 ライティング・フェア開会式、会場の様子

今回のライティング・フェアで気になったキーワードは下記の2点です。

  • HCL(ヒューマンセントリックライティング)
  • コンパクトスポットライト

 HCLとはヒューマンセントリックライティングの略で、一言でいうと「人に寄り添う光」と言えるのではないかと思います。数年前までは人の生体リズムに合わせて、光の明るさや色温度を変化させるサーカディアン・ライティングという言葉が注目されていましたが、HCLはそこから一歩進んで、人の感情や心身の状態、そして個人のライフスタイルに合わせて光が変化する、よりパーソナルで高度に制御された照明の事を指します。

 ライティング・フェアのオープニングでJLMA(一般社団法人 日本照明工業会)から発表されたLighting Vision 2030でも2030年までの照明業界の動向のロードマップとして、HCLの普及が大きなテーマとして掲げられていました。同じくオープニングの基調講演では日建設計の海宝氏(設備設計グループ 技師長)からも、これからのLED照明は「省エネ」から「光の質」へ移行し、光が人間の心理に与える影響について実験的な試みを行っている事例などについて紹介され、HCLが今後の照明業界の大きなテーマとなる事を感じました。これまで光の質と言えば色温度や演色性、配光などについて注目されていましたが、これからの光の質は心理や健康など、人間の感情や身体に光がどう働きかけるかが重要なポイントになります。


図3 Lighting Vision 2030の発表(日本照明工業会 会長 道浦 正治 氏)


図4 海宝 幸一 氏(日建設計 設備設計グループ 技師長)の基調講演の様子

 今回のライティング・フェアではこのHCLに着目した照明がいくつか見られました。会場に設けられたコレカライトスタジオでは「コレカライト あかりがつながる あしたが変わる」をテーマとした企画展示が行われ、そこではAGC株式会社が提案する新しいパネル照明が展示されていました。このパネル照明は天窓のように空の景色の移り変わりを表現したり、時にはアートのようなグラフィックを表示するなど、時間や音楽に合わせて様々に変化するというもので、照明器具のジャンルにとらわれない新しい照明です。

    
 
    
図5~8 AGC株式会社のパネル照明

 三菱電機照明のブースでも窓を模したパネル照明「青空照明」が展示されていました。このパネル照明の特徴は実際の空が青く見えるレイリー散乱(太陽光が大気で散乱されることによって、空が青く見える現象)に着目し、本物の空の色を再現しようという試みです。LED照明はエッジライトでパネル側面から発光し、光散乱体を組み込んだパネルがレイリー散乱のようなこれまでにない光の表情を生み出すという仕組みです。実物の光を見てみると、確かにこれまでのLED照明の青とは異なり、透明感のある抜けるような青が表現されていると感じました。こういう照明が地下空間のような窓のない空間で採用されれば、そこで活動する人間にとっては外にいるような疑似体験ができ、心身に与える影響も少なからずあるのではないかと推察します。


図9 三菱電照明のブース

    
 

図10~12 三菱電機照明の青空照明
レイリー散乱を再現した空の青色が最大の特徴である。

 現時点で空の表現を試みた照明の中で最も再現性の高いものはイタリアのコールクス社のCoeLuxではないかと思います。(ライティング・フェアには出展していません。日本ではラフォーレエンジニアリング株式会社が取り扱っています)青空の表現はもちろん、陽射しまで再現していて一見すると天窓か?と思ってしまうほどの完成度です。

 このように空を再現した窓のような照明が徐々に増え始めていますが、空を映像化する事が重要なのではなく、閉鎖された空間の中で太陽光を疑似体験する事によって解放感を感じたり、時間の経過を感じる心理的効果が重要なのです。人間の生体リズムは太陽光に大きな影響を受けており、太陽光の色温度変化に合わせ、照明の色温度や明るさを変化させるサーカディアン・ライティングが数年前から注目されるようになりました。そこから照明はさらに進化し、太陽光や空を再現しようとした時に「窓照明」という発想がごく自然に生まれてきたのではないかと思います。もちろん窓照明=HCLという事ではありませんが、現時点で窓照明がHCLを象徴するような存在の一つである事は間違いないと思います。

 また、HCLを実現するためには高度な照明制御が必要になります。照明がLEDに移行して以来、照明の制御はアドレスを持たせた個別制御、そして器具とコントローラーに配線を必要としない無線制御へと進化してきました。さらに最新のものではスマホやタブレットの専用アプリで制御可能なシステムはもちろん、スマートスピーカーと連動した照明システムまで登場しています。照明制御システムの高度化と誰でも容易に扱う事ができるスマートさがHCLのさらなる普及のカギになるでしょう。

 シグニファイジャパン(旧フィリップス)のブースでは以前から発売されているスマホアプリで制御可能なLEDカラー照明「Hueシリーズ」とスマートスピーカーを連動させたシステムが展示されていました。Hueシリーズは照明器具というよりも家電的装要素が強く、ランプ交換やコンセントに差すだけで点灯可能な電気工事不要のLED照明であるため、誰でも簡単に楽しめます。現在はLED電球タイプに加え、テープライトタイプ、デスクスタンドタイプもあり、住宅のリビング程度であれば工夫次第で様々な光のデザインが楽しめます。ここにスマートスピーカーやスマホアプリが加わると一般のユーザーでも自分のライフスタイルにあった光のシーンを遊び感覚で作る事ができます。私のように照明デザインを生業としている者にとってこのような製品が一般ユーザーの身近になったことはうれしい反面、脅威も感じます。


図13 シグニファイジャパンのブース

    
 

図14~16 スマートスピーカーを使ってHueシリーズを制御している様子

    
図17、18 可視光によるモバイル高速通信「Li-Fi」
光を使ってWi-Fiのようなモバイル高速通信を行うLi-Fiという技術。Wi-Fiに比べ安全性が高いが、壁などの遮蔽物を貫通する事はできない。光をノートパソコンに接続した受光部で受ける事により、インターネットなどのネットワークに接続する事ができる。

 コイズミ照明でもシーンコントローラー、スマホアプリ、スマートスピーカーを組み合わせた制御システム「Tree」を出展していました。

    
 
    
図19~22 コイズミ照明のスマートスピーカーと連動した照明システム「Tree」

 ライティング創ではkelzという無線制御システムが展示されていました。このシステムのメリットはシンプルさです。システムに対応した器具、専用のゲートウェイ、スマホがあればOKです。ライティングレールに対応しており、信号線が不要なので、リフォームなど後付でもこのシステムであれば採用可能です。もちろん、器具1台ごとにアドレスがあるため、個別制御可能です。ライティング創のコンパクトで高品質な照明器具と組み合わせることで、非常に魅力的な製品となりそうです。


図23 ライティング創のブース


 
    
図24~26 無線制御システム「Kelz」とライティング創の照明器具を組み合わせた展示

 調光、照明制御のエキスパートであるルートンアスカのブースではホテルのゲストルームを作り、スマホやタブレット、ナイトパネルなどを連動させ、照明のみならず空調の制御はもちろん、ホテルの滞在に関わるあらゆるサービスを一つにまとめる事ができるmy roomというシステムが展示されていました。世界中から不特定多数の人が訪れるホテルのゲストルームという空間ではそれぞれのゲストに対して心地よい光環境を提供する必要があります。そういった意味でルートロンンの高度な照明制御技術を用いHCLを実践する場としては最適ではないかと思います。


図27 ルートロンアスカのブース

    
図28、29 my roomシステムの専用パネル
光るボタン表示は部屋が暗くなるとセンサーが感知してボタン表示の明るさも光量が絞られ、夜間の睡眠を妨げないよう配慮されている。調光器の専門メーカーらしい細やかな配慮である。

    
 
    
図30~33 タブレット+専用アプリで空調や照明の制御はもちろん、滞在中のあらゆるサービスをタブレット一つで管理する。

ここからは、その他に印象に残った製品を紹介します。

■遠藤照明

 サッシメーカーの大手である不二サッシ株式会社、ガラスメーカーのフィグラ株式会社と遠藤照明の3社のコラボレーションによって生まれたファサード照明「アルビームシステム」が存在感を放っていました。すでに以前から販売されていた製品ではありますが、このような新しいコンセプトの製品がこうした大規模な展示会で主役として紹介される意味はとても大きいと思います。専用のサッシにLEDライン照明を組み込み、配光制御されたレンズでファサードを光で照らします。フィグラが加わることでガラスには光をより受けやすい特殊な加工を施すことも可能です。ガラスを照らすパターンや、外側のサッシに照明を組み込んで光のラインを直接見せるパターンなどにも対応可能です。

 照明を組み込んだファサードシステム自体が一つの製品となっているので、一般的な建築化照明(建築施工で照明器具の設置スペースを作り、電気施工で照明器具を取り付ける)に比べて施工の手間やコストが抑えられる反面、これまでの照明器具とは導入や設置のプロセスが異なる事が予想され、その点をどうクリアしていくかが気になりました。

 まず、誰の発信で器具が採用されるのか?このシステムは建物のファサードデザインそのものになるので、照明デザイナー側から提案するのか、建築の設計者側から提案するものなのかという事に興味があります。もし照明デザイナー側から提案するのであれば、ファサードライトアップを効率的かつスマートに行うならこういうシステムがありますよ、と設計者に対してこのシステムを紹介するケース等がイメージできます。ただ、このようなシステムは建築の設計自体を変更・調整する必要が出てきますので、かなり早い段階から照明デザイナーや照明メーカーに関わってもらう必要があります。そう考えるとこのシステムは、照明デザイナーを介さず自分で設計方針の意思決定ができる設計者や建築家の発信で建築に組み込まれていくケースも多いのではないかと思います。

 また、工事区分やコスト配分について気になります。これまでの建築化照明であれば、建築と電気で施工区分が分かれ、サッシは建築の予算、照明器具は電気の予算で見込んでいました。照明器具とサッシが一体になったこのシステムは現場に導入されるとどのようになるのか?一般的な照明器具と違ってこのようなコストや工事区分の整理も重要になってくると感じました。既に竣工した事例も多いので、そこでストックされたノウハウなども一緒に展開してもらえるとより採用率が高まるのではないかと思いました。

    
 
    
図34~37 遠藤照明のブース
サッシ、ガラス、照明が一体になったアルビームシステムをアピールするブースデザインとなっている。


図38 サッシ、ガラス、照明が一体になったアルビームシステム

    
 
    
図39~42 アルミの押し出し材とLED照明を組み合わせた間接照明やペンダント
押し出し材を用いる事で、建築造作で間接照明の納まりを作る必要がない。

    
図43、44 手摺とLED照明が一体になった製品
一体化する事で従来の手摺間接照明に比べよりスリムな手摺照明となる上、事前の調整や施工の手間を大幅に削減できる。


 
    
図45~47 新しくなった無線調光システム「Smart LEDZ Fit」
これまでは専用のタブレットを用いて照明コントロールしていたが、スマホアプリからも操作が可能になった。色温度可変の器具と組み合わせて調光・調色も可能。

■盛光SCM

 大阪発のメーカー、盛光SCMのStick seriesという照明器具が気になりました。その名が示す通り、直径22mmの黒いスティック状のモジュールがベースとなり、トリムやグレアレスコーンと組み合わせると極小のダウンライトとなり、モジュールをペンダントとして使ったり、スポットライトのように直付け照明として用いる事も可能です。連灯用のプレートも用意されているので複数台をユニットとして設置でき、プレートも直線だけでなく曲線などのカスタマイズにも対応しています。消費電力 8.5w、光束は 243〜438lmで、配光も狭角、中角、広角が揃っていて、コンパクトながら十分な明るさも期待できます。このStick seriesは設計者やデザイナーが自由にパーツを組み合わせられることをコンセプトとしたブランド 「NEEL」(空間に必要 "Need" + 光 "Light")の製品です。

 こういったコンパクトな照明システムは海外ではよく見かけるようになりましたが、まだ日本では馴染みがありません。既製品で展開されている器具のバリエーションの豊富さはもちろんですが、プロジェクトごとに合わせたカスタマイズの相談にも柔軟に対応ができそうなシステムに期待が高まります。パズルのように組み合わせて好みの照明器具を完成させるスタイルは、使いこなす側にも相応の光の知識と柔軟な発想が求められます。


図48 盛光SCMのブース

    
図49、50 Stick seriesのモジュール

    
 

図51~53 モジュールと組み合わせる連灯用のプレート
様々な形状のプレートを制作している。


図54 直付け照明やペンダントとしても使用可能

■SD Lighting

 堅牢かつ良質な屋外用照明を数多く展開しているSD Lightingのブースでは、ウシオライティングとコラボレーションした屋外用の演出照明が目を引きました。プロジェクションマッピングなど映像と光の表現がボーダレスになりつつあり、昨今では仮設ではなく常設可能な屋外用プロジェクターや、映像表現が可能な屋外用照明の需要が高まっています。しかしながら常設となると、途端にハードルが上がり、選択できる器具が極端に少なかったり、大掛かりな設備や高い費用が必要になる事がほとんどです。もともと、映像表現が得意なムービングライトやプロジェクターなどを取り扱っている、ウシオライティングと、屋外照明が得意なSD Lightingがコラボレーションする事で、屋外に常設可能なムービングライトやプロジェクターの実現が可能になりました。(現時点ではテスト段階)


図055 SD Lightingのブース

    
図056、057 屋外常設可能なムービングライト
ポールとムービングライトの組み合わせ。防水性の高いクリアケースの中に室内用のムービングライトが設置されている。

 ポールに設置したムービングライトはインテリア用の器具ですが、防水性のあるクリアケースに入れる事で屋外の設置が可能になります。インテリア用の器具を用いる事ができるので、コンパクトなムービングライトが使用できます。


図058 屋外で常設可能なプロジェクター

 屋外で常設可能なプロジェクターは、プロジェクターのケースと取り付け台をSD Lightingが制作しています。ウシオライティングとSD Lightingの得意分野の的確なマッチングは、時代のニーズに合致した理想的なコラボレーションだと感じました。

    
図059、060 ドイツの照明メーカーMEYERのゴボスポットライト
MEYERの照明器具はSD Lightingで取り扱っている。ロゴや模様、画像などが描かれたゴボと呼ばれる種板を用いる事で、映像を照射する事ができる。屋外で使用できるものは少ないため貴重な存在である。


図061 ドイツの照明メーカーMEYERの照明器具
ゴボスポットの他にもSD LightingではMEYERの照明器具を豊富に取り扱っている。

■トキ・コーポレーション

 独自の視点で開発された間接照明を豊富に取り扱っているトキ・コーポレーションのブースでは、ミニマルポイントライティングというテーマのもとコンパクトで高品質な照明が展示されていました。新製品はもちろん、これまであった製品もテーマに合わせて器具の特徴を再整理する事で、器具の魅力がより際立って分かるようになっていました。器具の特徴をまとめたカードを集めてストックするというアイデアも良かったと思います。


図062 トキ・コーポレーションのブース

    
 
    
図063~066 ミニマルポイントライティングというコンセプトで作られたブース
ショップをイメージしたブースデザインで、照明以外の小物にもこの展示のためのオリジナルのブランドロゴラベルを貼りつける等、細部にわたる作り込みがすごい。


図067 各器具の特徴をまとめたカード。リングが用意されていて、来場者はスタンプラリーのようにカードを集める。

 特にマイクロフットライトという小型のフットライトが印象的でした。ホテルのゲストルームではナイトランプとしてベッドのサイドテーブルにフットライトや足下の間接照明を設けます。就寝後、深夜に起きて照明を点灯する事もあるため、目が覚めてしまわない、でも足元はしっかり照らすという絶妙な明るさが求められます。しかし、実際にそういったニーズに応えられる器具の選択肢は多くありません。このマイクロフットライトは絶妙な明かりに仕上がっていると思います。さらにコンパクトで目立たないのですから言うことがありません。ホテル需要が過熱する中、注目度の高い器具です。


図68 マイクロフットライト
直径30mmの極小サイズフットライト。ただ小さいだけでなく、グレアにも配慮した設計となっている。

 マイクロライトキャノンというコンパクトスポットの完成度も高いと感じました。ローボルトで点灯するため専用のレールを使用しますが、消費電力2.6w、配光は16°、24°、30°の3種類があり、什器や美術館などの展示照明としてはもちろん、多灯すれば主照明としても充分に使える仕様です。また灯体はアルミの切削で制作されているため、コンパクトながらもしっかりとした質感があり、高級感もあります。展示照明としての機能も充実しており、専用の調光用マグネットで器具に触れると、個別調光する事も可能です。工夫次第で可能性が広がる器具です。


図69 マイクロライトキャノンと個別調光用マグネット

■DNライティング

 DNライティングも間接照明に特化したメーカーですが、今回の展示ではコンパクトスポットライを大きくアピールしていました。この製品についてはすでにDNライティングのプライベート展示会でも発表されていて、前回のコラムでその様子をレポートしているので詳細は省きますが、魅力的な製品です。


図070 DNライティングのブース

    
 
    
図71~74 このコンパクトさでスポットライトの首が90°振れる点も良く、デザインもクセのないシンプルな形状で非常に好感が持てる。バリエーションは1wタイプのR-EX1、2wタイプのR-EX2、2wのショートタイプのR-EX3の3タイプ。配光は何れも20°配光のみ。1灯8,000円~9,000円という価格設定も非常に良い。

■FEELUX JAPAN

 FEELUXも前述の2社と同様に間接照明に適したLED照明を数多く取り扱う韓国発のメーカーです。2~3年ほど前から間接照明特化した専業メーカーから、屋外で使用可能なドットレスの面発光フレキシブルライン照明(LED独特ドット感がなく均一に光り、かつ自由に曲げられる照明)が発表されるようになりました。その流れを受けてFEELUXからも面発光フレキシブルライン照明が新しく発表されました。器具の配線出し方を選択できるなど、この時期に発表されるだけあって、他社製品の研究も十分にしていることが伺えます。何より驚きなのは価格です。屋外用のLEDライン照明は厳しい設置環境に耐えうる仕様が要求されるため、必然的に価格が高くなってしまいます。しかし、この器具は1mあたり11,200円という価格です。この価格であれば、スリムかつ面発光で曲がるという特性も生かし、屋外のみならず室内でも積極的使ってみたいと思えます。


図75 FEELUX JAPANのブース

    
 

図76~78 新しく発表された屋外で使用可能なドットレスの面発光フレキシブルライン照明

 また、FEELUXは昨今トレンドになりつつあるコンパクトスポットをいち早く販売しているメーカーでもあります。今回はサンプルの展示という事でしたが、従来の製品よりもさらにハイパワーなコンパクトスポットの展示も見られました。このコンパクトスポットを専用レールに取り付けますが、レールにはライン照明も取り付け可能です。

    
 

図79~81 参考出品されていたコンパクトスポットライト。それ以外に同じ専用レールで使用可能なライン照明も展示された。日本ではまだ少ない照明システムだけに、今後の展開が期待される。

■パナソニック

 パナソニックのブースでは屋外用のコンパクトなフルカラー(RGBW)投光器(カラー演出が可能な投光器)「ダイナセルファー」が展示されていました。この器具の優れている点はスタンドアローンで操作が可能という点です。カラー演出が可能な照明器具は必ずと言っていいほどDMX制御でコントロールします。このシステムでは器具1台から個別に細かく制御できるため、複雑な演出照明に対応ができます。そのため、演出プログラムの作成にコストがかかる上、プラグラムの更新も基本的に専門の技術者でなくては難しいため、照明器具以外のイニシャル・ランニングコストがかかります。

 昨今では一般的になってきたライトアップですが、このDMX制御の複雑さとコストがプロジェクトの規模によっては足かせとなる場合もあります。そこで登場したのがスタンドアローン制御が可能なダイナセルファーです。この器具は手動で点灯色を選択できたり、簡単な色のループ変化などにも対応でき、調光も可能です。器具毎に設定するため、大量の器具を同期させて演出する事は難しいですが、小規模なライトアップではDMXプログラムの作成費用も抑えつつ、十分な演出効果が期待できます。配光も17°と58°の2種類があり、使い方次第で様々な光の表情を作ることができそうです。ありそうでなかった良い器具だと思います。


図82 パナソニックのブース

    
 
        
図83~87 スタンドアローンで制御可能なダイナセルファー
パナソニックのフルカラー投光器は「ダイナ」の名前が付けられているが、ダイナセルファーはその最新機種。手動でボタンを操作する事により、色を選択したり、単純なシーンを作ることができる。

■ビートソニック

 建築照明デザインの仕事をしていると、照明器具だけでなく、ランプについても多くの質問を受けます。特に白熱電球を模したフィラメントタイプのLED電球で良いものがないかという質問が多いです。ネットショップなどで検索すればたくさんの製品が出てくるのですが、照明のプロとして自信を持っておススメできるものは何か?いつも悩みます。ビートソニックでは自社でデザインしたフィラメントLED電球「Siphon」シリーズを展開しており、様々なデザインが選べます。また、調光についても国内メーカーの調光器とのマッチングテストをおこなっており、適切な調光器を選択すればスムーズな調光が可能です。なかでもハーフミラータイプのLED電球が気に入りました。ソケットと電球というシンプルな組み合わせで間接照明の効果を簡単に出せる事もあり、デザインのネタとしてはよく持ち上がります。しかし、前面をミラーで遮光した電球はLEDに移行してから良い商品がなく、実現しないことがほとんどでした。この製品はサイズはもちろん、ミラー部分がブロンズやゴールドというデザインも選択できるので様々な使い方ができそうです。


図88 ビートソニックのブース

    
 

図89~91 様々なバリエーションのLEDランプが展示されている

    
 

図92~94 フィラメントタイプのLED電球でありながらスムーズな調光を実現



図95 ハーフミラータイプのLED電球
間接照明として用いる事も可能。

■ENLIGHTEN ASIA 2019

 最後に私が所属している日本国際照明デザイナーズ協会(IALD JAPAN)がライティング・フェアとコラボレーションして開催されたENLIGHTEN ASIA 2019を紹介します。このイベントでは国内外のスピーカーを迎えて光に関する数々のセミナーを行ったり、夜景バスツアーや照明デザイナーがガイドをする会場ツアー行うなど、様々な企画で会場を盛り上げました。ENLIGHTEN ASIAも2019年で4回目を迎え、日本の照明デザイナーが開催する光のイベントとして少しずつ定着してきたのではないかと感じています。ライティング・フェアには単に照明展示会としての機能だけでなく、国内はもちろんアジアや世界に日本の光を発信する光の総合イベントとして需要な役割を担っています。今後も変化を繰り返しながら継続していくことを望みます。


図96  ENLIGHTEN ASIA 2019のセミナーの様子


図97  ライティング・フェアとIALD JAPANのコラボレーション企画「コレカライト探検ツアー」の様子

■まとめ

 過去2回のコラムで国内外の照明展示会の様子をレポートしていますが、コンパクトスポットが増え始めているように感じます。特に海外では専用のレールとライン照明と組み合わせ個別調光制御が可能なシステム照明は多くのメーカーが採用しています。その流れが地味ではありますが時間をかけて徐々に日本国内でも浸透しつつあるように感じました。日本の製品はシステム化という面ではもう一歩という所だと思いますので、今後の進化に期待したいと思います。

 また、試作品や実験段階のものも多いですが、HCL(ヒューマンセントリックライティング)は今後の照明デザインには必要不可欠になってくると感じました。光と心理、光と健康など、単純に美しい・心地良い照明デザイン以上のものが求められる時代に突入していることを常に自覚しながら仕事しなければなりません。

光のデザインレポート
執筆者:岡本 賢

岡本 賢(おかもと けん) 
照明デザイナー/Ripple design(リップルデザイン)代表

1977年愛媛県生まれ。2002年株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツに入社し、幅広い分野のプロジェクトに参加し建築照明デザインを学ぶ。2007年独立し、Ripple designを設立。現在も様々な空間の照明計画を行っている。
URL http://ripple-design.jp

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