連載コラム

輝きの裏側にあるもの

[ 2011年1月12日 ]

冬の恒例行事

冬の恒例行事の一つとしてすっかり定着したイルミネーションイベントは、クリスマスシーズンに合わせて11月上旬~中旬頃から設置、点灯が始まり我々を楽しませてくれます。特に東京では様々な場所でイルミネーションイベントが開催され、六本木ヒルズや丸の内など、イルミネーションの代名詞的な場所がいくつか存在します。

図2図1 六本木ヒルズ

図3図2 丸の内

ここ数年イルミネーションのムーブメントは勢いを増し、日本各地でイルミネーションイベントが行われるようになり、見る側の目も非常に肥えてきているように思います。それでも尚、たくさんの人を惹きつける都内の定番イルミネーションスポットでは、毎年同じ手法を繰り返すのではなく、少しずつ改良を重ねたり、新しいアイデアを加えたりしながら去年よりも美しく見える様に様々な工夫がされているのだと思います。今回はイルミネーションを美しく見せるテクニック、昼間の見え方、イルミネーションの取り付け方等、夜のイルミネーションを見るだけでは分からない隠れた照明デザインのテクニックに注目して都内の幾つかのイルミネーションイベントを調査してみました。(六本木ヒルズ、東京ミッドタウン、丸の内、表参道、新宿サザンテラス、新宿ミロード/モザイク通り、カレッタ汐留等)

昼間も美しく

イルミネーションが行われるような場所は、基本的に人が多く集まる場所です。そのような場所は夜だけでなく昼間もたくさんの人が行き来する為、都市景観の観点から考えると配線やLED照明の昼間の見え方も重要です。元々イルミネーションのようなイベントを想定していない場所ではイベント用の電源を用意していないため、樹木などの足元に沢山の配線やモールが見えてしまい、昼間の印象が良くありません。今回調査した場所ではイルミネーション用の電源が最初から樹木の足元に用意されているものや、低木植栽や人の目に見えない場所に配線を隠すなどの配慮がされていました。


図3・4 六本木ヒルズ 植栽の足元にイルミネーション用の電源があり、低木植栽などで目立たないように計画されています。


図5・6 東京ミッドタウン 足元には電源や配線の存在が無く(一部の樹木は平面に配線を隠す)、上空で樹木の間に配線を渡しています。


図7 ミッドタウン・ガーデン
人通りの多い通路部分はパネル状のインターロッキングの下に配線を通しています。


図8 丸の内 東京ミッドタウンと同様に足元には配線が無く、
上空で配線を渡す手法をとっています。


図9・10 新宿サザンテラス 低木植栽の足元に配線を隠し、
人通りの多い場所からは見えないように配慮しています。


図11・12 新宿サザンテラス イルミネーション用の分電盤が設置され、
そこから低木植栽の裏に配線を通しています。


図13・14 表参道 イルミネーション用の専用電源は無いですが、
人通りの多い通路側に配線が見えないように配慮しています。


図15 表参道 横断歩道や車道を挟むエリアではポールが立てられ、
ポールとポールの間に配線を渡しています。

六本木ヒルズのように新しくできた街はイルミネーション用の電源を確保している為、昼間も美しい景観をつくり易い条件が整っていますが、そういったインフラが整っていない場所でも、出来るだけ配線や照明が人の目に入らないような工夫が随所に見られました。特に丸の内のイルミネーションは昼間も存在感をほとんど感じる事がなく、洗練された街の景観に溶け込んでいました。

光の造形物

最近のイルミネーションでは単に樹木にイルミネーションを取り付けるだけでなく、ワイヤーや骨組みなどを使って造形物を作り、平面的な演出ではなく、立体的な光の演出を行うような試みが増えてきました。夜間は圧倒的な照明効果を期待できますが、昼間はどうしてもワイヤーや骨組みの存在が気になってしまいます。しかし、こればかりはイルミネーションの見せ場であり、短期間の仮設照明として割り切って考える必要があるでしょう。


図16・17・18 六本木ヒルズ昼の風景
昼間見ても造形物として美しい光のオブジェになっています。


図19・ 20・ 21 六本木ヒルズ夜の風景
夜は昼間と違う表情をみせています。


図22・23 ミッドタウン・ガーデン昼の風景
夜の演出の為に昼間はどうしても造作物が目立ってしまいます。


図24・25 ミッドタウン・ガーデン夜の風景
圧倒的な物量のLEDによる光の演出は圧巻です。


図26・27 新宿ミロード/モザイク通り 昼の風景
通りの上空にLEDが設置されている為昼間もそれ程気になりません。


図28・29 新宿ミロード/モザイク通り 夜の風景
レイヤー状に重なった光のカーテンが美しい照明手法です。

LEDの特徴と取り付け方

使用しているLEDも各エリアによって特徴がありました。また、LEDの取り付け方にもそれぞれ特徴があり、それによって夜間の見え方が変わってきます。
[六本木ヒルズのLEDの特徴]


図30・31 六本木ヒルズでは砲弾型LED(写真30)と平らな広角型LED(写真31)の2種類が使用されていて、白色、青色の2色で展開されています。


図32・33 六本木ヒルズ 光は砲弾型が狭い配光(図32)で、広角型(図33)の方は光が横に広がり真ん中の光が抜けて見えるのが特徴です。

[六本木ヒルズのLEDの取り付け方]



図34・35 LEDの取り付け方は縦方向に巻き付けたLEDの上に横方向からスパイラル上に巻き付ける縦と横の組み合わせになっています。
LEDのピッチは100mm。

[六本木ヒルズの夜の景色]



写真36・37  配光の違うLEDを組み合わせることで他には無い煌きのあるイルミネーションになっています。
白色のLEDの量が多く、白と青の色味のバランスが絶妙です。

[東京ミッドタウンのLEDの特徴]



図38・39 東京ミッドタウンは広角型LEDのみで統一されています。
太く頑丈そうなLEDで白色と黄色(電球色)の2色で構成されています。

[東京ミッドタウンのLEDの取り付け方]



図40・41 六本木ヒルズとは逆で横方向のLEDがメインとなり、
その上から縦方向にスパイラル状にまき付けながら丁寧に取り付けられています。LEDのピッチは100mm。

[東京ミッドタウンの夜の景色]



図42・43 他の場所に比べて樹木に取り付けられているLEDの密度が高い印象を受けます。
とても洗練されたイルミネーションですがLED本体が太く短い為か光の動きはあまり感じられません。

[丸の内のLEDの特徴と取り付け方]



図44・45 丸の内のLEDは砲弾型LEDのみで統一されています。
配線から細長く伸びたLEDが特徴的です。
LEDのピッチは100mmで、縦方向に統一してLEDが取り付けられています。

[丸の内の夜の景色]



図46・47 シャンパンゴールド一色のLEDが非常に印象的で、丸の内らしい品のある光になっています。
細長く飛び出たLEDが風にゆられると独特に煌きが生まれます。

[新宿サザンテラスのLEDの特徴と取り付け方]



図48・49・50 広角型のLEDを使用しています。基本的に横方向にスパイラル状に取り付けられています。
葉が茂っている樹木には葉の上からLEDを巻きつけています。

[新宿サザンテラスの夜の景色]



図51・52 青色、白色、黄色(電球色)の3種類LEDをエリアや樹木によって使い分けています。
葉の上からLEDを巻きつけた常緑樹の光のボリュームは圧巻です。

[新宿アイランドのLEDの特徴と取り付け方]



図53 新宿アイランドのLEDはRGBタイプのLEDが採用されています。一つのユニットにRGB3色のLEDチップが組み込まれているため、通常のイルミネーション用のLEDに比べ光の粒が大きくなります。
縦方向に統一し、グリッド状に見えるように取り付けられています。
他のエリアに比べてLEDの量は少なめです。

[新宿アイランドの夜の景色]



図54 LEDの量は少ないですが大粒の光の効果で昼間の姿から想像できないくらい品の良いイルミネーションです。

[表参道のLEDの特徴と取り付け方]





図55・56・57・58 広角型のLEDを使っています。100mmのピッチのLEDを100mmの間隔で縦方向に取り付けられているので、新宿アイランドと同様にグリッド状に近い配置になっています。
表参道のケヤキは大きいものが多いですが、樹木の上のほうまで間隔を保ちながら丁寧に取り付けられています。

[表参道の夜の景色]



図59・60 電球色のLED1色で統一されています。全体的に均一に配置されたLEDの密度が規則的に見える事無く自然な感じで煌いています。
光のバランスも適度で表参道の雰囲気とマッチしています。

[全体を通して]



図61 六本木ヒルズ

あくまで私個人の好みですが、やはりイルミネーションのトップブランドというイメージが強い六本木ヒルズのイルミネーションは、全体のバランスが非常に良く他のエリアには無い宝石のようなLEDの輝きを感じました。指向性の強い砲弾型LEDは人が歩いて移動すると輝度を感じる方向が変わり、光に動きがあるように見えます。逆に光が広がる広角型のLEDは色々な方向から輝度感を感じることができます。この2つのLEDを混ぜて使うことで独特の輝度感を生み出していると思われます。また丸の内のLEDにも見られましたが、配線から細長く伸びたLEDを使うことで風によってLEDが動き自然な煌きが生まれます。細かく調査をするにつけ、これは偶然の産物でなく、意図的に仕組まれた演出であると言うことが良く分かります。プロジェクトに関わったデザイナーさんや職人さんのこだわりを感じました。

動きと音のある演出

単にLEDが光るだけでなく動きや音を組み合わせた派手な演出も見られるようになりました。特にカレッタ汐留ではストーリー性のある光の演出が行なわれています。



図62・63・64・65 カレッタ汐留



図66・67・68・69 ミッドタウン・ガーデン



図70・71・72・73 新宿アイランド

イルミネーションの今後

冬のイルミネーションが定番化し、日本各地の様々な場所で目にすることが出来るようになった現在では、ただ照明を樹木に巻きつけただけでは目新しさがありません。見る側の心理としては、昨年以上の演出を期待しますし、同時に省エネ意識が高まった現在ではイルミネーションにも省エネ性を求めてしまいます。丸の内のイルミネーションに使用されている全85万球のLEDのうち、20万球のLEDは昨年使用していたLEDに比べ、明るさは同等に保ちながら消費電力を1/3に抑えたものを使用しているそうです。カレッタ汐留や東京ミッドタウン等の凝った演出もそうですが、きれいなイルミネーションであるのは当たり前で、美しさ+αのイルミネーションデザインが求められているように思います。今後のイルミネーションは冬以外の季節で実施したり、音や映像を使った演出の高度化や、さらに高性能化したLEDによる省エネイルミネーションが展開されていくと思われます。

また、イルミネーションは単なる光のイベントだけでなく周辺の商業施設などの経済効果にも影響します。美しく話題性のあるイルミネーションにはたくさんの人が集まります。人が集まると周辺の商業施設なども活性化します。活気のあるイベントにはスポンサーが付いたり、協力者が集まり、次のイベントへ設備投資が見込める場合もあります。こういったプラスの連鎖がイルミネーションイベントを支えているのではないかと思います。今回の調査で都内の数箇所のイルミネーションスポットを回りましたが、そこを訪れる人の顔はみな笑顔でした。光のイベントによって街や人が活気付いている様子を実感でき、照明業界に携わるものとして非常に嬉しく思いました。今後もさらなる省エネ化で地球に優しく、日本を元気にする光のイベントとして益々進化し続けて欲しいと願います。


光のデザインレポート
執筆者:岡本 賢

岡本 賢(おかもと けん) 
照明デザイナー/Ripple design(リップルデザイン)代表

1977年愛媛県生まれ。2002年株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツに入社し、幅広い分野のプロジェクトに参加し建築照明デザインを学ぶ。2007年独立し、Ripple designを設立。現在も様々な空間の照明計画を行っている。
URL http://ripple-design.jp

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