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連載コラム

明るさから光の質の時代へ ライティング・フェア2011レポート

[ 2011年4月13日 ]

この度の東日本大震災において被害を受けられた皆様に心よりお見舞い申し上げます。そしてお亡くなりになられた方々のご冥福を心よりお祈りいたします。連日TVや新聞で報道されている映像や写真を見る度に被害の大きさに言葉を失うばかりです。現在の状況が一日でも早く改善する事、そして一日も早い復興を願っております。

今回のコラムは3/8(火)~3/11(金)に東京ビックサイトで開催されたライティング・フェア2011についてレポートします。最終日の3/11(金)はご承知の通り、東日本大震災が起こった日です。地震の影響で会場は15時15分に閉館したそうですが、大きな事故等はなかったと伺い、まずは安堵した次第です。ライティング・フェアは2年に一度開催されているアジア最大級の照明展示会で、今年で10回目を迎えます。例年は東京ビックサイトの東ホールで行われていましたが、今年から規模をさらに拡大し西ホールでの開催となりました。私は仕事の関係で8日、9日の2日間しか会場を訪れることができませんでしたが、スケールアップした2011年のライティング・フェアの規模は2日間では自分の興味のある全てのブースをすべて見ることができないほどで、改めて省エネやLED照明への期待度や関心の高さを実感しました。

前回行われた2009年のライティング・フェアでは展示されていた商品の9割以上がLED照明となり、その明るさも従来ランプと比較しても遜色ないレベルに達しているものがほとんどで、本格的にLED時代が到来したことを強く感じました。今回のライティング・フェアにおいても展示されている商品のほぼすべてがLED照明であることは変わりありませんが、会場では前回のライティング・フェアのようなLEDの勢いが放つ熱気のようなものは感じられませんでした。ただ、それはLED照明に対する関心が冷めたわけではなく、この2年間でLED照明が建築・照明の業界ではもちろんのこと、一般のエンドユーザーにとっても身近で当たり前のものに変化したからだと考えられます。その分LED照明に向けられる視線は厳しく、あらゆる面において要求されるハードルが高いものへと変わってきているように思います。

こういった大規模な展示会では、たくさんの商品が展示されているので見る人や視点によって何を面白いとか、新しいと感じるかが違ってきます。私自身は建築照明デザインの仕事をしていますので、主に建築照明に適した照明器具に注目しています。建築照明に適した器具とは?という事になりますが、それらを要約して簡潔に表現すると「照明器具の存在を極力感じさせない照明器具」と言えるのではないかと思います。おおげさにいうと、ただ光だけそこに存在するような照明器具と言えば良いでしょうか。そのような雰囲気を作り出すには、単に器具が目立たないだけでなく、きちんと光学制御された配光なども非常に重要です。LED照明であれば独特のグレアを感じさせないダウンライトであったり、狭いスペースに設置可能な照明器具であったり、器具の形状や使用する目的が違っていても同じ思想をもとに作られているものが建築照明に適した照明器具の条件だと思います。

LED照明が一般照明として注目される以前の展示会では、「建築照明」という点のみに注目してみると、照明器具を見るポイントや、建築照明向けの器具が充実している照明メーカー等もはっきりしていたので、展示会では要点を絞って効率よく回ることができていたような気がします。しかしLEDの登場以降、様々な企業が照明の分野に進出し、大手照明メーカーと比較しても遜色ないLED照明や、他にはない面白い特徴を持ったLED照明が展開されるようになり、よほど計画的に回らなければ上手に新しい情報を得られないようになってきました。ブースの大小に関わらず、積極的に会場を回っていると思いがけないブースに驚くような発見があったりするので、自分だけのお宝を見つけたような気分になれるのもこういった大規模な展示会の楽しみの一つです。

大きな展示会を見る際には、ただパンフレットやカタログを集めるだけではすぐに情報を忘れてしまうので、開催された年のトレンドやキーワードをいくつか見つけて自分なりに整理するようにしています。そうしておくと、プロジェクト等でそのキーワードに関連するような課題が発生した場合に、新しい情報がすぐに頭に浮かぶようになります。今回のライティング・フェア2011で私が気になったキーワードを挙げてみると全部で次の10個になりました。

  • マルチシャドウ
  • グレアレス
  • レトロフィット
  • 直管形LED
  • LED電球の進化
  • シームレスLED
  • 電源内臓
  • ワイヤレス
  • 有機EL
  • プレゼンテーション

各キーワードに関連する事例を挙げながらライティング・フェア2011についてレポートしたいと思います。

マルチシャドウ

2~3年ほど前から照明業界ではマルチシャドウという言葉をよく耳にするようになりました。マルチシャドウとはLED照明独特の影の事をさします。通常の照明器具(特にダウンライトやスポットライト)では基本的に一つ器具に対して一つのランプを使用しますが、LED照明はLEDパッケージと呼ばれる、小さな発光するパーツが集まって構成されています。個々のLEDパッケージがそれぞれ発光するため、LED照明の多くは小さなランプがたくさん集まった照明器具といえるかもしれません。従ってLED照明で対象物を照らすと、たくさんの小さなランプで同時に照らしたような状態になるため、通常の影とは違う幾重にも重なった影が出ることになります。この影の事を「マルチシャドウ」と呼んでいます。

図1
図1 LED照明の例
発光するLEDパッケージが複数集まって一つの照明器具となっている。

図2
図2 マルチシャドウの例

このマルチシャドウはLEDの欠点の一つでしたが、現在では各照明メーカーからマルチシャドウを改善した器具が展開され始めています。

今回のライティング・フェアでもマルチシャドウを解消した照明器具は大きく取り上げられていました。それらの器具の多くは、これまでのように小さなLEDパッケージを集めたタイプではなく、複数のLEDチップの光を蛍光体を含む拡散板で面発光させたLEDモジュールを採用している事です。面発光するモジュールを採用したことで、従来の白熱電球や蛍光灯のような柔らかく拡散する光が得られるようになるため、マルチシャドウが解消されるというわけです。

代表的な面発光タイプのLEDモジュールがPHILIPS(フィリップスエレクトロニクスジャパン)の「Fortimo」とXicato JAPAN(以下Xicato)の「XLM」「XSM」です。大手メーカーではコイズミ照明や山田照明などがフィリップス社のFortimoモジュール、ヤマギワなどがXicatoのXLM・XSMモジュールを採用し、マルチシャドウを解消した照明器具として展開していました。

図3
図3 PHILIPSのFortimo LED Twistableモジュール

図4
図4 専用ソケットを使用し簡単にモジュールの取付、取り外しが可能

図5
図5 実際にモジュールの取り外しを実演している様子

図6
図6  XicatoのXLMモジュールとXSMモジュール(ヤマギワのブースにて)

図7
図7 従来のLED(左)とFortimo(右)の比較
マルチシャドウが解消されている。

図8
図8  Xicatoのモジュールを採用した各メーカーの照明器具(Xicatoのブース)

図9
図9  様々なメーカーが照明器具のパートナーとしてXicatoのモジュールを採用している

拡散板でLEDの光を広げれば簡単にマルチシャドウを解消できるように思いますが、問題はそう簡単ではありません。LEDパッケージ(またはLEDチップ)の一つ一つの光量は決して大きくないので、拡散板で光を広げると、効率が大きく落ちて十分な明るさを得ることができません。それを解消するためにLEDのパワー(消費電力)を上げると、今度は発熱量が大きくなってしまい、放熱のさせ方が非常に難しくなります。熱はLEDの寿命を低下させる等、様々な悪影響を及ぼします。それらの問題をクリアした上記のようなモジュールの登場により、マルチシャドウの解消が可能になりました。これらのモジュールは発光部分が取り外し可能なユニットになっておりLEDの性能が向上すると新しいユニットに交換して使用することが可能です。

図10
図10 PHILIPSのFortimo LED Twistableモジュールを採用したコイズミ照明のダウンライト(cledyシリーズ)

図11
図11  XicatoのXSM LEDモジュールを採用したヤマギワのダウンライト(X-series)

図12
図12 面発光するCOB(Chip on board)タイプのLEDを採用したオーデリックのOPTGEARシリーズ

また、パナソニック電工のブース等では面発光するモジュールとは違い、ハイパワーなワンコアタイプのLEDを採用してマルチシャドウを解消しているものもありました。面発光モジュールを採用した他の器具と比較すると、多少輝度が目立ちますが、明るさは充分で15,000円前後の価格設定でコストパフォーマンスでのメリットがあります。

図13
図13 パナソニック電工のワンコアタイプのLEDモジュール

図14
図14 ワンコアLEDモジュールを採用したダウンライト(パナソニック電工)

図15
図15 ワンコアLEDモジュールを採用したペンダント(パナソニック電工)

グレアレス

すでに紹介したPHILPS、Xicatoに代表される面発光モジュールの登場にも関係してきますが、LED独特のグレア(不快な輝度感)を感じない器具が増えてきました。光を発する部分をフラットな面にしたことで、配光制御が容易になった為だと考えられますが、発光部分が器具の奥に取り付けられるようになりました。その結果、従来の光源を使用した照明器具と同じように、遮光角を深く取ることができるようになり、グレアが軽減されたのだと考えられます。遮光角とは一般的に天井等に取り付けられた器具(主にダウンライト)内のランプが見えなくなる角度の事をいいます。

図16
図16 遮光角とカットオフライン

遮光角の大きい(深い)照明器具ほどランプが見える範囲が狭くなります。遮光角を大きく取れるようになった事で、これまで問題視されていたLED独特の輝度感が軽減され、従来の光源を使用したグレアレスと言われている照明器具と比較しても遜色ない、不快なグレアを感じにくい器具が多くみられました。

図17
図17 面発光モジュールを使用したグレアレスなLEDダウンライトの例(ヤマギワ X-series)

しかし面発光モジュールを採用したことでLED照明のメリットであるコンパクトさが活かされていない印象を受ける器具もありましたが、今後の発展に期待します。

レトロフィット

マルチシャドウなどと並び、会場でよく耳にした言葉が「レトロフィット」という言葉です。レトロフィットとは旧型式の器械を改造して新型式にすることで、照明業界では特に従来のソケットに、そのまま差し込んで使えるLED電球(ランプ)に対して使われている言葉です。前回ライティング・フェアまでは、E26口金やE17口金を採用した白熱電球の代替ランプであるLED電球がレトロフィットランプの主役でしたが、今回のライティング・フェアではダイクロハロゲンランプ(MR16)の代替を目的としたハロゲンランプタイプのLEDランプが非常に目立っていました。ラインボルト仕様(100vで点灯可能なランプ)のLEDは以前から展開されていましたが、12v50wのローボルトダイクロハロゲンに代わるLEDランプが多くみられたのが今回の特徴ではないでしょうか?しかもトランスは変更することなくそのまま使えるというものが多く、今後魅力的な光源になるのではないかと思います。消費電力も10w以下のものがほとんどで、一般的によく使用されている110v40wや12v50wのダイクロハロゲンランプと比較すると飛躍的に省エネ性が向上します。ダイクロハロゲンランプと並べて比較すれば、明るさや光の広がり等劣る部分もありますが、LED電球のみで構成された空間ではそれほど違和感ないレベルまで完成度が高まっている印象を受けました。

図18
図18、19 DNライティングのダイクロハロゲンタイプLEDランプ
EZ10口金やGU5.3口金のランプが展開され、従来の12V使用の器具でそのまま使用が可能。

図20
図20、21 PHILIPSのE11口金のダイクロハロゲンタイプLEDランプ(40w相当)

図22
図22 その他にもφ35mm(12v20w相当)タイプも展開されている(PHILIPS)

図23
図23 φ35mm(12v20w相当)タイプのダイクロハロゲンタイプLEDランプを使って商品を照らす。(PHILIPS)

図24
図24 PHILIPSのMASTER LED Spot
EZ10口金のランプで12v50w相当の10wタイプ、12v35w相当の7wタイプの2種類が展開されている。他のダイクロハロゲンタイプのLEDランプとは違い、ランプに冷却ファンが装備されている。会場では従来の12v仕様のダイクロハロゲンランプからダイクロハロゲンタイプのLEDランプに交換して実際に点灯させる体験ができた。

図25
図25 パナソニック電工のE11口金のダイクロハロゲンタイプLEDランプ(40w相当)

図26
図26、27 大光電機のDECO-L (E11口金のダイクロハロゲンタイプLEDランプ 40w相当)調光可能なタイプも展開している。

図28
図28 ランプメーカーでもある岩崎電気のダイクロハロゲンタイプLEDランプ

図29
図29、30 ウシオライティングのダイクロハロゲンタイプLEDランプ。110v40wのダイクロハロゲンランプとほぼ同じ大きさが特徴

図31
図31、32 エス・ティー・イーのブース
主に従来光源をLEDに置き換えるレトロフィットLEDランプを中心に取り扱ったエス・ティー・イーのブース。DECOLIGHT名で商品を展開していた。ダイクロハロゲンタイプLEDランプ以外にも豊富なレトロフィットLEDランプが展開されているのが特徴。ダイクロハロゲンタイプLEDランプもE11口金だけでなくEZ10口金なども販売している。配光の種類、調光可能タイプ、珍しいφ70mmのダイクロハロゲンタイプLEDランプなども展開している。従来のハロゲンランプとほぼ同等の価格帯も魅力的である。

実際に今回展示されているダイクロハロゲンタイプのLEDランプを使用したダウンライトで統一されたホテルを訪れたことがありますが、初めはLEDランプと気が付かない程自然な雰囲気を作り出していました。

図33
図33、34 DECOLIGHTダイクロハロゲンタイプLEDランプ(E11口金 40w相当)を使用したホテルの事例(ダウンライトのみ)

ただ、現時点では白熱電球タイプのLED電球に比べ、ダイクロハロゲンタイプのLEDランプはメーカー毎に明るさ、配光、色温度、価格等の違いが大きいように思います。白熱電球タイプのLED電球と同程度の2,000円~3,000円の価格帯で展開されるようになれば、もともと白熱電球よりも高い1,000円~2,000円のダイクロハロゲンランプの場合、白熱電球に比べコスト面でもお得感があります。

直管形LEDランプ

昨年(2010年)10月8日に社団法人 日本電球工業会による規格(JEL801:2010)「L形口金付直管形LEDランプシステム(一般照明用)」が制定されました。これにより各メーカーで独自に展開されていた直管形LEDランプの方向性が変わってきました。パナソニック電工や東芝ライテック等の大手メーカーでは、この新しい規格に対応した直管形LEDランプを発表しました。会場ではこれまで主流であった既存のG13口金に対応した直管形LEDランプを展示しているメーカーも見られましたが、今後は新規格のGX16t-5口金に対応した直管形LEDランプが主流になっていくと思われます。

図35
図35 パナソニック電工の直管形LED
ブースでは来場者自ら取り外しの体験ができた

図36
図36、37 光が均質に拡散する直管形LED(パナソニック電工)。高効率の拡散膜によりLEDの光をムラなく均質に拡散させる

図38
図38、39 東芝の直管形LED。ブースでは既存の蛍光灯と消費電力や見た目の輝度感を比較している

図40
図40、41 ロームでも新規格に対応した直管形LEDを展示

直管形LEDランプを従来の照明器具で使用するためには、ソケットや電源ユニットを新しいものに変更する必要があるので注意が必要です。

電球工業会の定める直管形LEDランプの規格は下記の通り

全光束2,300lm以上(N色)
ランプ電圧95V(最大)~45V最小
最大ランプ電力33.3w
ランプ電流(mA)DC350
演色性Ra80以上
配光120度以内の光束が70%未満
口金GX16t-5

パナソニック電工や東芝ライテックのブース等で展開されていた、新規格に対応した蛍光灯の光は自然で明るさも充分であり、即戦力として期待できそうです。蛍光灯が苦手としているスムーズな調光もLEDならば比較的に容易にできるのではないかと期待しています。ただ、価格については少々割高感があります。40wの直管形蛍光灯が1,000円~1,500円であるのに対し、直管形LEDは16,000円(パナソニック電工LDL40Sの場合)で10倍近い価格です。LEDの寿命が蛍光灯の約3倍の40,000時間、消費電力が約3割~4割減と考えても少し価格が高い気がしてしまいます。しかし、先行して広く普及し始めているLED電球も各メーカーとの競争により、明るさ、光の質、価格など驚くようなスピードで改善されています。白熱電球と並びランプ代替の市場が大きい直管形LEDもLED電球と同様に急速に改善が進んでいくと予想されます。

直管形LEDの登場により、特にオフィス空間のLED化が加速するのではないかと思われます。前回のライティング・フェアからオフィス用のスクエアベースライトなどが目立つようになっていましたが、今回のライティング・フェアでは直管形LED以外にもオフィス向けの商品も随分多く見られました。

図42
図42、43 住友化学株式会社のLED導光板を使用したオフィス向けスクエアベースライト(コイズミ照明)

LED電球の進化

ECOや省エネの象徴的なアイテムとなったLED電球ですが、その一方で光が広がらない、暗い、使っていたら切れた等のトラブルのニュースもテレビやインターネットでよく見かけます。会場ではこれらのLED電球の弱点を改善したLED電球が展開されていました。多く見られたのが配光を従来のLED電球よりも広げ、より白熱電球に近い配光に近づけたLED電球です。これまでのLED電球は、電源回路やヒートシンクとのバランスで発光面積を大きくとる事が難しく、下方向の明るさには強かったのですが、水平ラインよりも上の方向には光があまり拡散していませんでした。パナソニック電工ではダブルリフレクター方式という新しいスタイルで光の拡散性を高め、従来の120度の配光から300度配光へ改善を図っています。

図44
図44 パナソニック電工の300度配光を持つ新しいLED電球(左)
右側の従来品LED電球(120度配光)と比較すると上方(実際には直下方向)の光は弱まっているが、光が全体に拡散していることが分かる。

図45
図45、46 新開発のダブルリフレクター方式(図46 左側)で、より光の拡散性を高める(パナソニック電工)

特にパナソニック電工のLED電球の大きな改善と思われたのは、断熱施工対応のS形ダウンライト、密閉形の器具で使用可能になったという事です。実は住宅建築で使用されているダウンライトの多くは、断熱施工に対応したS形という機種ですが、現時点ではほとんどのLED電球がこれらのS型ダウンライトでは使用することができません。しかし、取り付けや点灯は問題なくできてしまう為、しばらく使用していると熱の影響などで不具合を起し点灯しなくなるといった問題が起きているようです。この問題が改善されたという事は今後のLED電球の普及にとって大きな意味を持つと思います。

図47
図47、48 S形ダウンライト等の断熱施工対応器具や密閉形器具でも使用可能になった新しいLED電球(パナソニック電工)

図49
図49、50 LED電球の使用上の注意。従来のLED電球の使用上の注意(図49)には密閉型器具や断熱施工対応のS形ダウンライトの使用を禁止しているが、パナソニック電工の新しいLED電球のパッケージ(図50)にはそれらの注意書きがない。

その他では、ウシオライテインングのブースでクリアタイプの白熱電球に似せたLEDフィラメント電球が展示されていました。フィラメントにあたる部分がLEDになっていて、白熱電球のような光を放ちます。LEDが広く浸透した今でも一般のユーザーからも白熱電球のレトロで温かい光を望む声は多くあります。シャンデリアなど白熱電球独特のフィラメントの光が重要視される場面で重宝しそうなランプです。

図51
図51、52 ウシオライティングのLEDフィラメント電球。寿命は20,000時間と一般的なLEDと比較すると半分程度だが、白熱電球のノスタルジックな雰囲気を忠実に再現したクオリティの高いLED電球

シームレスタイプLEDライン照明

ニッポ電機やダイア蛍光(現在は合併してDNライティング)などに代表される、シームレスラインランプやシームレススリムランプを使用したランプ端部まで発光する間接照明用器具は、今や建築照明には欠かせない器具となり、照明関係者のみならず、建築の設計者や現場の施工者の間でも「シームレス」という言葉は間接照明器具の代名詞として定着しています。

LED照明が一般照明として展開され始めた当初から最も多く展開されたものが、間接照明用のライン照明でした。LEDの最大のウリである寿命とコンパクトさは、これまで設置が難しかった部分での間接照明を可能にしました。しかし、明るさや蛍光灯のような柔らかい光の拡散性は充分ではありませんでした。今回のライティング・フェアではそれらの弱点を改善しパワーアップした、シームレスラインに対抗するシームレスタイプのLEDライン照明が多く見られました。

シームレスラインのオリジナルであるDNライティングからもLEDのシームレスライン(LED's SEAMLESS)が展開されていました。LEDシームレスラインは先に紹介したレトロフィットタイプで、従来のシームレスラインと交換してもそのまま点灯することが可能です。モジュールのバリエーションもこれまでのシームレスラインと同様に展開されるとの事です。また、屋外で使用できるシームレスLED(防沫形)されていた事も嬉しいニュースでした。

その他では大光電機、コイズミ照明、オーデリック、ミンテイジなどでシームレスラインを意識したLEDライン照明が展開されていました。価格と明るさが今後の課題になりそうです。

図53
図53 DNライティングのレトロフィットシームレスLED(LED's SEAMLESS)。従来のシームレスラインの器具にそのまま取り付けが可能

図54
図54 屋外でも使用可能なシームレスLED(DNライティング)

図55
図55 コイズミ照明のシームレスタイプLEDライン照明
用途に合わせて広角と中角の2種類の配光を選択できる

図56
図56、57 高演色のシームレスタイプLEDライン照明(コイズミ照明)。参考出品ながら高演色で色温度、長さのバリエーションの豊富なシームレスタイプLEDライン照明も出展されていた。

図58
図58、59 LEDライン照明のバリエーションが豊富な大光電機。器具を設置するコンディションによって照射角度を調節できる(図59)

図60
図60 Mintage(ミンテイジ)のシームレスタイプLEDライン照明(Lighting Unit Premium TYPE-R)。長さや色温度のバリエーションが豊富

図61
図61 オーデリックのシームレスタイプLEDライン照明

図62
図62 ロームのシームレスタイプLEDライン照明

電源内蔵(電源一体型)

LED照明は基本的に100Vで点灯することができません。その為に電源と呼ばれる変圧器を使用して一般的な100Vの電圧で点灯するようになっています。その為、LED照明の多くは器具の他に別に電源というパーツが必要になります。どんなにコンパクトで小さなLED照明でも、器具よりも大きい電源が必要というのはよくある話で、その置き場所に頭を悩ませた設計者の方も多いのではないかと思います。

電源なしで点灯可能なLEDもありますが、それは器具に電源が内蔵されている為です。LED電球などがその代表的な例です。恐らく設計者の多くが価格や明るさよりも、とにかく電源内蔵のLED照明を多く作って欲しいと願っているのではないでしょうか?もちろん私もその一人です。実際にそれらの要望がどれだけあるのかは分かりませんが、今回のライティング・フェアでは電源内蔵のLED照明も多く展示されていて思わず嬉しくなってしまいました。

電源を器具内に内蔵することでLED照明は最大の特徴であるコンパクトさを失う恐れがあります。先ほどのシームレスLED照明にも関係してきますが、それらの器具の多くは、従来の間接照明等のLEDライン照明と比較すると大きくなっています。その理由の一つとして、シームレスLEDの多くが電源内蔵タイプであるという事が挙げられると思います。多少器具が大きくなっても、スリムな間接照明として認知されているシームレスラインと同等、もしくはそれ以下のサイズであれば、間接照明として使用する場合によほど厳しい条件がない限り問題ありません。多少の器具のサイズアップよりも電源内蔵である方が遥かにメリットが大きいと思います。今後はさらに電源内臓タイプのLED照明が展開されていくのではないかと思います。

図63
図63 オーデリックのスリムな電源内臓タイプのLEDライン照明

図64
図64 森山産業の100V屋外仕様LEDライン照明。 屋外用ではそれ程多くない電源内蔵タイプのLEDライン照明。0.9mで34,000円~35,000円という価格もコストパフォーマンスが高い。

ワイヤレス

今回の展示で最も面白いと感じたのが「ワイヤレス」というキーワードです。無線のリモコンやコントローラーを用いて照明のON/OFF、調光等を行います。特に個性的な展示を行っていたのが、テープライト等の間接照明でお馴染みのトキ・コーポレーション(TOKISTAR)のブースです。

ホテルのゲストルームのような空間に、フォーカシングダウンライトとフォーカシング&ズーミングダウンライトという2種類のLEDダウンライトが設置されていました。フォーカシングダウンライトはワイヤレスのリモコンを使って照明器具の照射方向を自由に調整できるという画期的なダウンライトです。スポットライトでこのような器具は見たことがありますが、国内メーカーでしかもダウンライトでは初めてではないでしょうか?単に機能的な面だけでなく、小型でありながらグレアもそれほど感じないクオリティの高い器具です。ホテルのゲストルームの読書灯などには最適です。

図65
図65 フォーカシングダウンライト(写真提供:トキ・コーポレーション)

図66
図66、67 フォーカシングダウンライトをリモコンで操作する(トキ・コーポレーション)。テーブルの上のリモコンで操作すると、テーブルの上を照らしていたダウンライトの照射方向が、手元のほうへ向きを変える。

また、ズーミング&フォーカシングダウンライトは照射方向を調整できるだけでなく、配光も10度~30度に調整できるというダウンライトです。スマートフォンでお馴染みのAndroid端末でも制御可能だそうです。あらかじめシーンを設定しておけば、人がいない時に壁面の絵を照らしたり、テーブルに人が座った時にはテーブルを照らしたりなど、ボタン一つで光を自在に操ることができます。まさに適光適所という表現がぴったりな照明でした。

図68
図68 ズーミング&フォーカシングダウンライト(トキ・コーポレーションのパンフレットより)

図69
図69~72  ズーミング&フォーカシングダウンライトの動き
Android端末で操作すると、ダウンライトの照射方向や配光が変化する。

もう一つ新鮮な驚きがあったのが山田照明のブースです。村田製作所の特別協力で展示されている「ZigBee(ジクビー)」システムが非常にユニークです。ZigBeeとはエリア内の複数の機器を無線で同時に制御するシステムです。システムの名前はジグザグに飛ぶハチという意味で、自分のフィールドをジグザグに飛び交いながら、蜂蜜のありかなどを情報交換するミツバチのネットワークからインスピレーションを受けて名付けられたそうです。コンパクトなZigBee専用の無線モジュール内臓LED電源を取り付けたLED照明器具であれば、コントローラーを使って複数の照明器具を個別に制御することが可能です。照度センサ、人感センサ、ショックセンサ(地震などの振動を感知するセンサ)などと組み合わせて制御することも可能で、それぞれがワイヤレスで照明器具と連動します。無線モジュールを内蔵した器具+コントローラー+小型のセンサの組み合わせで成り立つシンプルでコンパクトな制御システムも、これまでの照明制御システムにはない大きな魅力です。

図73
図73 ZigBeeシステムと連動するショックセンサ(左)、照度センサ(真ん中)、赤外線センサ(右)(山田照明のブースにて)。 *ZigBee®は、ZigBee Alliance, Inc.の商標登録です。


図74
図74 小型のコントローラーで簡単に制御が可能(山田照明のブースにて)


図75
図75、76 ペンダントやデスクスタンドをZigBeeシステムで同時に制御する(山田照明のブースにて)

ブースでは無線モジュールを組み込んだ複数のデスクスタンド(Z-LIGHTシリーズ)やペンダントがワイヤレスで同時に制御されていました。今後ZigBeeのような優れたシステムが一般的になれば設計段階で細かく点灯回路を分けておいたり、複雑なスイッチ計画といった作業がなくなる日が来るかもしれません。大げさなシステムが必要なく、1台から制御可能ということなので施設や商業だけでなく、住宅照明でも活躍の場が広がっていく事を期待します。なお、岩崎電気のブースにも屋外用LED投光器を使用したワイヤレスの調光システムが展示されていました。

図77
図77 人感センサなどで無線調光機能付きの屋外用LED投光器を点灯させる岩崎電気のLEDアイセンサシステム

有機EL

LEDのさらに次世代の照明として注目されているのが有機ELです。LEDと非常に良く似た発光原理で、発光体に有機物を用いる事からOrganic LED=OLEDと呼ばれることもあります。前回の展示に比べ、各メーカーから非常に多くの有機EL照明が展示されていました。LEDと比較すると、一般照明の分野では有機ELが2~3歩遅れて追従しているイメージですが、実用化し広く普及するのはそう遠くないと感じるような展示も見られました。NECライティングのブースでは参考出展ながら有機EL照明のみで演出した空間を提案していました。価格面はさておき、発光効率60lm/wの有機ELで構成された空間は充分な明るさがありました。

図78
図78 NECライティングの有機ELブランド「LIFEEL(ライフィール)」

図79
図79~82 天井照明、フロアスタンド、壁面照明などを使ってリビングのような空間をオール有機ELで演出(NECライティング)

またカネカのブースでは2011年3月22日から販売されるという赤、橙、白(温暖色系)、青、緑の有機ELパネルが展示されていました。寿命は光色によって違い、白は15,000時間、青は10,000時間、その他は30,000時間との事です。他メーカーに先駆けて一般照明用としての販売となるので今後の展開が楽しみです。

図83
図83、84 2011年3月22日より販売されるカネカの有機EL。形状は「正方形A(40mm四方)」、「正方形B(77mm四方)」、「長方形A(170×17mm)」、「長方形B(170×32mm)」の4パターン

図85
図85~88 寝室やバーカウンターのような空間をオール有機ELで演出(カネカ)

図89
図89 試作品の有機ELスタンドがブースで受注販売(数量限定)されていた(カネカ)

その他ではパナソニック電工、ローム、オーデリック、山田照明、PHILIPS等、様々なブースで有機ELが展示されていました。曲げることも可能なほど極薄で、透過する素材でも面発光可能など、これまでの照明とも、LEDとも違った特徴を持つ有機ELは照明器具としてだけでなく、光る建築素材としても注目度が高いようで、各ブースでは照明関係者のみならず、建築設計に携わっている方々からも熱い視線が注がれていました。

図90
図90、91 パナソニック電工の有機EL。Ra90の高演色が特徴。2011年度中に一般照明用途の有機EL照明の販売を目指す。

図92
図92 PHILIPSの有機ELモジュール「LumiBlade(ルミブレード)」

図93
図93、94 PHILIPSのLumiBlade(ルミブレード)を採用した山田照明の有機ELデスクスタンド

図95
図95、96 ロームのブースで展示されるLumiotec(ルミオテック)の有機ELモジュール
「Lumiotec(ルミオテック)」とは2008年5月に誕生した、三菱重工業、ローム、凸版印刷、他の合併会社で世界初の「照明用有機EL専業会社」

図97
図97  Lumiotec(ルミオテック)の有機ELモジュールを採用したオーデリックの天井照明のプロトタイプ

しかし現時点ではいずれも試作品段階のものがほとんどで、価格的にも性能的にも一般照明として現実的なレベルでの提案が期待されるのは次回以降のライティング・フェアになりそうです。

また、会場内の有機ELラウンジでは昨年行われたLight Bridge Association JAPAN NPOなどが主催する有機ELデザインコンペの入賞・入選が展示されており、自由な発想から提案された作品に刺激を受けました。

図98
図98、99 有機ELラウンジの様子。多くの人で賑わい、有機ELに対する関心の高さが伺える

図100
図100、101、102 有機ELデザインコンペ2010の最優秀賞作品「エキスパンドライト」。例年プロダクト系作品の受賞が多い中、建築的な視点から提案された作品が最優秀賞を受賞した

図103
図103、104 過去の受賞作品も展示されている

プレゼンテーション

照明器具とは直接関係ありませんが、今回のライティング・フェアでプレゼンテーションの手法としても面白いものがありました。我々のような仕事では自分のプランやデザインを相手に分かりやすく伝えるためのプレゼンテーションは非常に重要です。こういった展示会では優れたプレゼンテーションに出会うことができるのでいつも楽しみにしています。

図105
図105、106 巨大なLEDスクリーンを使用した圧倒的迫力のプレゼンテーション(パナソニック電工)

特に目立っていたのがi-padを使ったプレゼンテーションです。i-padを持ったメーカーの担当者が、展示商品の詳細なスペックや事例写真などをi-padで瞬時に見せてくれます。特に動きや変化のある照明を動画で解説する方法が効果的でした。

図107
図107 i-padを使った商品説明1(コイズミ照明)


図108
図108 i-padを使った商品説明2(トキ・コーポレーション)


図109
図109 i-padを使った商品説明3(マックスレイ)

また、ブースデザインで一際目立っていたのが大光電機のブースです。真っ白い壁面に手書きのスケッチやコメントをプリントしています。また壁面やテーブルに残されているたくさんの余白には、メーカーの担当者が解説をしながら直接マジックでコメント、スケッチ、寸法などを書き込んでいくというパフォーマンスを行っていました。展示器具の上手な使い方がその場で分かる秀逸なプレゼンテーションでした。ちょっとした照明デザイン講座のような雰囲気のブースは常に多くの人で賑わっていました。

図110
図110 大光電機のブース

図111
図111~114 壁面や天井に器具の取付間隔や建築化照明のディテールが手書きのスケッチや文字で表現されている

その他気になったもの

10挙げたキーワードの他に気になったものをいくつか紹介します。

図115
図115、116 東芝ライテックとBJBが共同開発したGH76p口金に対応したLED照明(東芝/東芝ライテックブース)。海外でも対応できる規格になっており、東芝ブースでは世界戦略モデルとして展開されていた。

図117
図117、118 BJBのブースに展示されているGH76p口金やその他のパーツ
BJBはドイツ発祥のソケット、スイッチ、端子台など照明にかかわるパーツを取り扱う世界的なメーカーで、GH76p口金以外にも多くのメーカーが採用している。GX53口金、PHILIPSのFortimo LED Twistableの専用ソケットなどの開発も行っている。

図119
図119 トキ・コーポレーションのLEDマイクロスポットライト。シンプルかつコンパクトな器具で商業・施設以外にも、住宅での展開が期待できる

図120
図120~122 三菱電機照明の配光が変えられるLEDスポットライト

図123
図123、124 光を拡散させたり、光を伸ばす効果のある特殊なシート(オプティカルソリューションズ)ディフュージョンレンズ、スプレッドレンズと似た効果を持つ薄い特殊なシート。その他にも様々な効果を持つシートがある。

まとめ

LED照明の勢いは相変わらずですが、以前のように光束(lm)がいくつだとか、効率(lm/w)がいくつだとかいった、明るさを競っていた時代ではなくなってきています。既にLED照明の明るさは従来光源と同等のレベルまで達していて、明るい事は当たり前の条件になっています。今回のライティング・フェアでは、マルチシャドウの解消、演色性の向上、グレアレスなLED照明、美しい光の色味(色温度)などをアピールしたものが非常に多く、LED照明は確実に明るさから質の時代へ移行しています。数年前まで我々がLED照明と思っていたものと、現在のLED照明は全く別次元のものへと進化しています。省電力で長寿命(約40,000時間)、さらに明るさと光の質を兼ね備えたLED照明は、これまで挙げられてきた弱点が一つずつ改善され、いよいよ次世代照明の完成形に近づきつつあると感じたライティング・フェアでした。

光のデザインレポート
執筆者:岡本 賢

岡本 賢(おかもと けん) 
照明デザイナー/Ripple design(リップルデザイン)代表

1977年愛媛県生まれ。2002年株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツに入社し、幅広い分野のプロジェクトに参加し建築照明デザインを学ぶ。2007年独立し、Ripple designを設立。現在も様々な空間の照明計画を行っている。
URL http://ripple-design.jp

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