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連載コラム

第29回 日本のあかり文化とSSL その3  LED Next Stage 2012とFrankfurt light+building2012

[ 2012年7月24日 ]

落合勉(M&Oデザイン事務所)
Light Bridge Association JAPAN NPO(あかりの架け橋)

はじめに

 5月、NHKラジオで復興希望の光のニュースが流れ、思わずじっと聞きいりました。福島県のあだたら高原に3.11復興に向けたソーラーLED1万2000個が点灯したと報じられました。その2日後には世界最高の自立鉄塔・電波塔スカイツリーが開業、その夜のテレビニュースで東京・隅田川の粋と江戸紫色の雅をイメージしたライトアップがはじまり、LED照明(器具数は1995台)が優しい光を放っていると報じていました。 共に省エネ光源LEDを使用しての点灯ですが、私は福島県の方に注目をしました。 復興希望の光として、県民への意気高揚にと点灯された福島のLED光は、地元のLEDメーカーが協力したソーラーパネル付きの"地産地照"でした。日中の太陽エネルギーを単3充電バッテリーに蓄電し、暗くなると自動点灯させるキットで、地元小学生のメッセージ入りでした。二本松市民らでつくる実行委員会メンバーが設営した「希望の光」、福島の夜空にかがやいていました。


図1 あだたら高原にて点灯していたLED、「復興希望の光」の様相


図2 福島県二本松市内小学校ごとに、復興のメッセージを記したLEDキットカバーが並びます。


図3 江戸のあかりを再現するスカイタワーとLEDの光


図4 ライトアップされたエッフェル塔(写真提供:山家哲雄氏)

 ところで世界一高い自立鉄塔・電波塔としてギネス認定されたスカイツリーは、634mの高さであり、タワーとしては世界第2位になります。ちなみに世界最高のタワー(塔)はUAE/ドバイのブルジュ・ハリファ(828m)で、台北101タワー(508m)同様にビル形態です。自立鉄塔・電波塔としてスカイツリーは世界一で、次に高いのが広州タワー(611m)、次いでカナダ・トロントのCNタワー(555.3m)、ロシアのオスタンキノタワー(540m)と続くそうです。
 ちなみに世界最初の自立鉄塔は、あの有名なパリ・エッフェル塔(当初312m、現在324m)です。 1889年のパリ万博記念モニュメントとして仮設置されたもので、フランス革命100周年の記念物でもあったこのエッフェル塔は、大変人気を博し、解体予定を中止、今日もパリのシンボルとなったそうです(良かったですね!)。 このエッフェル塔、世界で最初にライトアップされたタワーでもあり、当時は最先端の科学技術成果物=アーク灯やエジソンランプが使用されました。また世界初のイルミネーション広告タワーとしても知られ、その最初はシャネルのマーク点灯と記憶しています。その明記文献が見つけられず、定かな年月日は目下不明。どなたかご存知でしたら教示ください。
 世界最古(最初)の鉄塔エッフェル塔の照明の光源が電球(アーク灯も)で、最新タワーの光源はLEDと、技術革新や時流を映していますが、ともに心地良い最新シンボルのあかりです。

 今回のコラムは、前回同様「日本のあかり文化とSSL その3」と題していますが、日本のあかり文化については、前回は江戸時代の灯火具類や日本茶室空間照明について触れました。今回は今春の2つの照明展"LED Next Stage 2012とFrankfurt light+ building2012"を視察して、強く意識したことをご紹介します。それは「日本のSSL商品化は孤立しているのでは!」と感じ、そして東アジア地域製LED製品が日本市場を席巻しつつある最近の様相に疑問や不安を感じ、危機感を持ったことです。 

 まずは2つの照明展、LED Next Stage 2012とFrankfurt light+building2012のレポートから。

LED Next Stage と light + building

 世界中の照明関係者が注目する世界最大の照明展 light + building が4月15日~20日までの6日間、Frankfurtの国際見本市会場で開催され、今年も視察にきました。この照明展、2000年から開催されたもの(ドイツ・Hanover Messeから移って)で、今回で6回目(隔年開催)となります。主催のMesse Frankfurt社は、毎回展示企画内容の工夫と充実化を図ってきており、今年も規模拡大し、刺激ある展示会でした。一ヶ月ほど前に開催された東京・ビッグサイトでのLED Next Stage 2012を視察した後でしたから、日本のLED照明指向と欧州の目指す動向とが対比でき、その違い(日本の孤立化など)を感じて視察していました。尚、2つの照明展、すでにいろいろなメディアで多くの紹介がされており、しかも日本企業に関することは詳細に記してありますので、ここでは筆者が注目した事柄・観点(日本のSSLとの対比)を中心に記述します。


図5、6 フランクフルトlight+building2012の会場風景


図7.8 東京・ビッグサイトのLED Next Stage 2012の会場風景

LED Next Stage 2012から

 3月6日~9日までの4日間、開催されたLED Next Stage2012の展示は、昨年のライティング・フェア2011の延長線と受け止めた展示会でした。そう思えた理由に、昨年同様に明るさや効率UP、演色性などの基本機能重視の出展品指向と思えたからです。その象徴がLED光源と照明機能を優先させた器具たちです。 LED光源の充実化(光量UP)=既存光源のLED代替化では、パワーUPや白熱電球各種の配光に近づけた新製品出現が多数あり、さらにLED直管形蛍光ランプの各社展示などと、代替ランプへの充実がされていました。しかしながら、LEDならではの斬新な光源形態の提案は見られず・・・やはり日本は独自個性製品アピールは苦手なのか?と思ったのです。
 もう一つの象徴は、照明機能を優先させた器具たちです。LEDダウンライト(埋め込みタイプ)やLEDスポットライト(投光器)などのライティング基本器具は、昨年よりも格段に性能アップしていました。それらは発光部の性能アップで、新デザインや斬新な形態で注目した製品は見出せませんでした。確かに光色や演色性もUPし、マルチシャドウ対策もされて、従来光源の照明演出と同等で(それ以上の事柄も)実用へと進化していましたが、技術に裏づけされた新用途提案の斬新なデザイン製品は見ることができませんでした。

 企画展示コーナーの「LEDが創る 新しい価値」では、LEDの省エネ性や色光・調光の優位性など、光学的技術提案を見せており、簡潔にまとめられていましたが、用途提案(パフォーマンス)があると、なお良かったと思います。 制御や可視光通信技術など、丁寧な紹介がされていてわかりやすいのですが・・・、男性的でした。女性向け空間や美容に繋がるビジュアル展示での紹介だと、華やかにあでやかに演出できたのでは・・・、と感じた次第です。女性の社会進出が益々多くなり、これからは女性に受け入れられやすいLEDの提案展示が、あると良いのではないかと思います。


図9 同一部屋(オフィス空間)の対比で快適性を体感しながら省エネ性が表示される、
わかりやすくまとまった企画展示コーナー。


図10.11 企画展示コーナーの模様と、その中の色温度を体感させる展示の様子

 LED Next Stage2012の出展社で注目した事柄を取り上げながら記述します。


図12.13 オフィス空間でのベースライティング照明事例を「エコサーカディアン照明システム」として、
時間経過によってその照明色温度が変化する様子を紹介していたパナソニック。


図14.15 LED+SMARTを掲げ、効率も配光もさらに新技術で高まった
LED電球を展示していた東芝ライテック


図16.17 多様なLED電球を展示していたパナソニックのランプ展示の様子。


図18.19 独特の表情を持つLED電球をおしゃれに見せていた三菱電機オスラムのLED電球。


図20.21 光学配光性や、色温度や演色性など見せながら、
ベースライティングのLED製品を展示していた韓国メーカーALTO社。
建築空間への照明計画に十分対応するよう研究された高品質なものでした。



図22.23.24.25 ハイパワーの高天井用LED投光器やスポットライトを展示している各社
(三菱電機照明=図22、東芝ライテック=図23、パナソニック=図24、岩崎電気=図25)


図26. LED照明を用いて省エネ快適照明の提案として披露していた
東芝の「Weluna(ウェルナ)」という 照明評価の展示。


図27.28 LEDフラットパネル(液晶のバックライトで培った拡散発光技術を生かした面照明)
演出展示事例(図27=コイズミ照明、図28=吉日)。

 会場にはこのLEDフラットパネル照明は数多くの出展社で見られましたが、会場内でパネルを動かしたりするパフォーマンスはなく、インパクトある空間提案が欲しいと思いました。光の移動や調光・点滅などの動きの事例(LEDの特性を生かすプログラムの組み込み)は少なく、多くが天井や壁面に沿わせた固定設置での点灯でした。動きや変幻性を駆使した楽しませる演出が欲しいものです。


図29.30 空間を演出しながら、LED照明パネルを上手にバランスよく展示して見せていた、興和のブース。
ただ単にパネル器具を吊るだけでなく、実用空間を演出していました。
パネル照明のインテリア用途提案がわかりやすく、好印象を受けた展示ブースでした。
調光や点滅なども織り交ぜで展開していたら、
さらに魅力的な製品イメージや企業ブランドを印象付けられたであろうと思います。


図31 以前から注目していたクラレ社のフラットパネルがスタンド照明として展示してありました。
LED導光板として看板などで活用されているLEDフラットパネルを、クラレは2009年から発売しています。
手元照明などの近接照明として優しく心地よい演出が可能だから、今後は広く活用されるでしょう。

 品質が向上した東アジア地域の製品群が非常に多かったことも今回注目した点でした。その展示形態は外国企業として特徴ある自社製品PRし、代理店を探している場合と、日本法人として国内市場向けの売れ筋製品を展示ラインアップした出展社と二分されていて、興味深く拝見しました。


図32.33 韓国の企業LUMENSブース(図32)と中国パビリオンのSHENTHEN MTC LIGHTINGブース(図33)


図34.35 ドゥエルアソシエイツでは、LED電球やLED蛍光ランプ、
さらには屋内外LED照明器具を取り揃え、その品質の高さをアピールしていました。
東アジア地域の製品群は、日本産とのコストパフォーマンスにおいては市場競争で優位になるでしょう。



図36.37.38.39 有機EL照明パネル (パナソニック=図36、NECライティング=図37、コニカミノルタセンシング=図38、東芝ライテック=図39など)がLEDの展示会でありながら、目に付くように展示されていたことは驚きました。個人的にはもっと市場が欲しがる新用途照明提案のLED製品を見たかったと思いました。


図40.41 東アジア地域で製造するLED製品群を展示していたアイリスオーヤマ。
ホームセンターで販売する住宅向け製品から、工場や店舗などの施設向けLED製品の展開まであり、
品種の多さを来場者にアピールしていました。
低価格での直販は、全国の学校や官公庁などへも省エネ照明器具の代替対象として、
日本市場で、さらには国外へと広がりましょう。


図42 香川ダイカスト工業のブースには凄い技術の部品がさりげなく置いてありました。
特許技術で作られた薄肉・複雑形状のヒートシンクです。
「これは凄い!今までにない高性能LEDライト用ヒートシンク筐体の誕生可能だ!」
とワクワクしたほどです。
写真はNC旋盤加工したと思える「ナノキャスト法」による展示サンプル、
微細な内側の連続ギザギザなどその出来栄えは驚愕です。


図43.44 東ホールで開催されていたJAPAN SHOP2012の会場にも
LED照明を活用したサイン看板の出展(トライテラス)がありました。


図45 LED Next Stage2012では、LED照明の標準化や今後の開発に向けてを
テーマにしたシンポジウムが会期中開催されていました。
図45はそのシンポジウムの中のパネルディスカッションの模様です。
話題のスカイツリーの照明デザイナー戸恒浩人氏や、
皇居外苑LED照明化で今年度照明学会・照明賞を受賞された日建設計の海宝幸一氏らが紹介する
「今後求められる照明」の提案は、今後のLED照明のありかたを示唆をしており、有意義でした。


図46 そのほか、20以上の講演プログラムが組まれている会場内の特設LEDステージの様子

 21世紀の主要新光源と目されるLED、日本は世界のトップランナーでLEDを研究・開発してきました。しかしそれは基礎研究とその周辺部材も含めての応用研究で、実用の新用途研究、実用製品研究となると、話は別です。いかに顧客価値を創り上げるか?という「LEDによるLEDならでは」の用途提案を実施してこなかったといえます。代替製品で今、日本市場はLED製品の価格競争になりつつあります。事実、モジュールと電源さえあれば東アジア地域の国々で器具製作が可能で、しかもローコスト。今回のLED Next Stage2012、まさしくその光源代替LED製品群がオンパレードでありました・・・。LEDならではの新用途提案が、それを支える新技術と併せて一緒に展示披露されることを今後期待します。

Frankfurt light+building 2012の照明動向を見て


図47 Frankfurt light+building 2012の会場略図。
照明器具メーカーはイエロー系、照明器具・照明部品メーカーの展示館がピンク系、
建築電気設備関係がレッド、設備管理や省エネ・環境関係がグリーン

 世界最大の照明展、視察するには開催期間の6日間を有効活用しても足りないほどの規模と内容です。(詳しくはホームページを参照) 展示の概要は図48の色区分のごとく4分類になりますが、会場は中央にあるMESSE駅をはさんで2つに分けられています。各展示ホール(0~11まで)への連絡は会場内専用バスか2階部の連絡通路で移動でき、天候を気にせず視察ができ快適です。広い会場(両端歩行に20分ほど)ですので、視察対象を絞って会場巡りをすると良いでしょう。私の場合、まずカタログを入手し、付録の「floor plans」 の各ホール平面図に見たい出展社位置をマークします。そして視察するホール順序を定めてから見て廻りますが、1つのホール自体が広く(出展社数も多く、例えばホール4の2ndフロアーだけで207社)、1ホール視察するのに2時間ほどは必要です。余裕を持って視察に行かれることをお薦めします。この照明最先端動向がうかがい知れる、Frankfurt light+building 2012(以下、フランクフルト照明展と記す) で今年も注目した事柄は多くありました。その中でも特筆すべきことは、LED照明ならではの実用化提案(製品化・商品化)が多数見られたことで、それはショックでありました。ショックとは、「LED照明の実用化で日本は完全に遅れをとった!」という意味で、しかもそれを日本人デザイナーによる商品デビューでも知らされたことでした。世界のLED時流から外れつつあると受け止めたのです。そのLED照明新提案においてショックを受けた事例を、まず紹介します。

【 IN-EI 】

 "陰翳IN-EI ISSEY MIYAKE"と名づけられた再生ポリエステル樹脂(ペットボトル材料等に使用)のLED照明器具製品群です。フランクフルト照明展の広大な会場の主展示館の一つ、Hall3の1stフロアーで広い展示ブースを占めていたArtemide社に、今秋発売されると知らされた「折」の製品群が別格の展示コーナーにありました。日本人なら折り紙を連想する作品群でした。
 すでにフランクフルト照明展やミラノ・サローネ(世界有数の家具見本市)の紹介記事で、多数掲載されていますから、承知している読者も多いと思います。ですから、最初に紹介するのは知られてない他の製品にしようかとの考えも脳裏をかすめましたが、この照明展視察後2ヶ月経ても、この製品群の凄さ・すばらしさへの思いは増すばかりで、やはりこの製品群の賞賛を記さねば、と思ったのです。
 「陰翳」と日本語表示もされていたIN-EI、その下にはISSEY MIYAKE・・・、あの日本を代表するファッションデザイナー「三宅一生」の名が記されていたのです。ファッション関係者ならこの「陰翳」、三宅氏の最新の服のプロジェクトである132 5. ISSEY MIYAKEから派生したものと察知する方も多いのでしょう。その服の紹介が「132 5. ISSEY MIYAKE」として展示の壁面に掲示されていました。ちなみにその服は、英国ロンドンのデザインミュージアムが毎年選ぶ「デザイン・オブ・ザ・イヤー2012」のファッション部門・最優秀賞に輝いた革新的な服でもあります。


図48  Artemide社の展示ブース内に設置された「陰翳」コーナーの入り口部


図49 陰翳の展示風景


図50 展示会場壁面に紹介されていた「132 5. ISSEY MIYAKE」の折りたたむ服の紹介パネル。
No.1が最初に発表されたワンピースで、左のモデルが身につけている形状になる。

この陰翳IN-EI ISSEY MIYAKEですが、構造体が再生ポリエステルの折りたたみシェードで自立します。 灯具はLEDで、シェードとの固定(スタンドの場合)はマグネット脱着式で、常温程度のLEDモジュールからの発生熱では樹脂シェードへの負荷はありません。いたって構造は簡単で、イサム・ノグチの和紙提灯シリーズの「あかり/UF4-L8」(三角形の連続展開が連なる形状スタンド)などを連想しがちですが、形状体形や構造、素材などは異なります。まったく新しい概念の製品です。


図51 イサム・ノグチの和紙提灯シリーズの「あかり/UF4-L8M」
(スタンド・直径62cm×高さ195cm)の外形イラスト(筆者記)



図52,53,54 折りたたみの状態から立体への様子。再生ポリエステルの適度の硬度で形状形成され、補強構造体は使用していない。

 三角形が多様の革新的形状のLED照明器具シェード、たためば綺麗にフラットになってしまいます。材料特性を生かした、今まで見たこともない製品で、会場でさわって押したりしてみましたが、立体形状は再生ポリエステルの適度の硬度で、容易に変形はしません。
 展示品の種類はスタンドやペンダントで9アイテムでしたが、この材料なら、いろいろな形状やサイズも自由になりそうで、さらに表面加工もいろいろできそうです。再生新素材による新しい形状形成が多種多様にでき、LEDの新たな用途展開の創出に活かせると予感しました。今後エクステリア製品にもこの再生新素材は展開され、今までとはまったく異なる用途の製品が誕生するでしょう!

 この自立折りたたみ可の革新的造形は、三宅一生氏率いるReality Labなるチームが創出したもので、このチームは「社会と密接にデザインを実現し、日本のものづくりの可能性を改めて考える」 ことを目的に2007年からスタートしたとのこと。(三宅一生氏のホームページより) 一枚の布地からどう立体造形を作るのか?研究し、作品「No.1」(図50のパネル参照)の服が創りだされます。そしてその展開に、コンピューターグラフィックのソフトウエアを導入し、折りたたみの原理を活用し、スカートや、ジャケットやドレスなどが誕生します。その折りたたみ原理を、再生ポリエステルの不織布による照明器具に、転用したのでした。
 図55はパリでの発表後の2010年11月、東京六本木・ミッドタウン内の21_21DESIGN SIGHTで開催された企画展のポスターです。「REALITY LAB再生・再創造」展では「132 5. ISSEY MIYAKE」の折りたたみ服と再生ポリエステルの不織布によるプロトタイプ「陰翳IN-EI ISSEY MIYAKE」が展示されていたそうです。(詳しくは21_21DESIGN SIGHT のホームページから参照を、http://www.2121designsight.jp/program/reallab/


図55 東京六本木・ミッドタウン内の21_21DESIGN SIGHTで開催された企画展のポスター

 『この「陰翳IN-EI ISSEY MIYAKE」、日本国内で日本メーカーと製品化・商品化が検討されていたが、引き受けるメーカーがなかなか決まりませんでした。その時、21_21DESIGN SIGHTのディレクターである深澤直人氏からArtemide社を紹介されようやく製品化となった』と三宅氏はデザイン誌で語っています。折によって生じる造形、すべて鋭角の三角形で構成された「IN-EI ISSEY MIYAKE」、この折の原点は日本の折り紙です。そしてこのIN-EIの材料は、世界で唯一、ポリエステル素材を純度の高い状態で再生する技術を有する日本企業・帝人ファイバーの素材です。日本人デザイナーによるクリエイティブチームReality Labが考え、その新素材や製造も日本製で、世界トップランナーでLED研究や開発をしてきた日本で、試作検討してきたのに製品化も商品化もできなかった日本企業・・・・・、世界発信(発売)したのはイタリアの会社でした。なぜに日本企業でなくイタリアなのか?日本の照明企業の世界市場展開への意欲の低さなのか?このことを思案し、悲しくなりました。

 次いで2つ目に注目したのが"LEDダクト"です。この呼称は筆者が既存の配線ダクトレールと区分する意味で、5年前に仮につけた名で、会場では各社でこの"LEDダクト"をアレンジし、活用していました。各社ごとに商品名を記していましたが、一般的呼称を聞きそびれてしまいました。読者の中でこれから紹介する"LEDダクト"の適正名称をご存知なら教示ください。

【 LEDダクト 】

 照明用配線ダクトは、アメリカ・ライトリア社が1960年頃に店舗用スポットライト専用部品(2線)として開発発売し、その後(1975年頃)西ドイツで4線トラックタイプが開発、発売されたと記憶しています。現在世界で活用されている照明用配線ダクトの多くは2線の配線ダクトで、その入力電圧は国別に異なり、それぞれの国の規定仕様で製造販売され使用されています。ちなみに日本では100ボルト仕様が基準で、ヨーロッパでは220~240ボルトとなっています。
 21世紀の主要光源にLEDが実用普及すれば、配線ダクトもLEDタイプが出現するだろうと予想していましたが、今年のフランクフルト照明展会場には多くの出展数社がこのLEDダクトをアレンジし、展開していました。
 最初にLEDダクトなるものを見たのは、2006年のフランクフルト照明展の会場に展示されていた4線配線ダクトをローボルト電圧にした試作品でした。LED先進国であった日本でもLED照明の電球が市場に出始め、器具ではダウンライトが出始めた頃でした。その後、このLEDダクト関連で留意するものはそれほど出現していませんでした。


図56.57 2006年のフランクフルト照明展(Frankfurt light+building2006)
で、展示されていたプロトタイプのLEDダクト。
SLI SYLVANIAのブースでしたが、見逃してしまうほど壁面にさりげなく展示されていました。
(本コラムの2006年11月16日号「Light + Building2006訪問記(その2)の図15参照」


図58 2010年のフランクフルト照明展(Frankfurt light+building2010)
で、展示されていたArtemide社の埋め込みLEDダクト。
壁や床に埋め込まれたRGBのLEDダクトラインは、目立つことなく配置されていました。

 そして図59~68が今春のフランクフルト照明展(Frankfurt light+building2012)で注目したLEDダクトの活用展示の様子です。


図59.60はDeltalight社の事例、LED蛍光ランプでなく、
LEDラインモジュールにカバーをつけたタイプと、埋め込みとスポットで展開。



図61.62.63 LED照明の特性を強調した製品群が展開されていたXAL社。
アルミ押し出し基材が豊富で、そのバリエーションとして
MOVE IT 25と45のLED埋め込みダクトを展示していました。
45タイプから外して手に持っているのがLED器具。



図64.65.66 LED埋め込みダクトを主に展示をしていたイタリア照明界の老舗Flos社。
THE RUNNING MAGNETと名づけられた埋め込みダクトからLEDスポットを取り出している様子。


図67.68 1/4円弧の埋め込みLEDダクトをRGBで演出していたiGuzzini社。
(カタログでは4種のサイズ違いがあるが、展示は1種のみ)

 出展されていたLEDダクトの多くは、低電圧(12ボルト前後で、各社によって異なる)なので直接触れても安全と現地で説明されていました。今後、その規格基準がZhagaで検討され標準化が進められるでしょう。尚、このLEDダクトも出展品の多くが試作品であり、ヨーロッパメーカーは新作発表の半年後に発売されるのが一般的ですから、このLEDダクト、日本市場には来春にお目見えすると思います。コンパクトな光源体でローボルト発光のLED、その特徴を発揮したLEDダクト、世界中で普及することでありましょう。

注:Zhaga(ザガ)とは、2010年3月に設立されたLED照明器具への標準仕様作りの任意団体で、日本企業も参画してますが、主導力を発揮しているのはこの団体作りに奔走したヨーロッパ企業です。今後、LED照明器具の新用途や実用への標準化は、日本仕様ではなくZhaga仕様が世界標準の様相を示しています。このZhagaの紹介を本コラム第22回でしていますので、参照ください。

「特筆すべきこと」として、LED照明ならではの新用途提案の実用化(製品化・商品化)を、2つの異なる事柄で取り上げました。「IN-EI」という製品と「LEDダクト」です。前者のIN-EIは日本の折り紙デザインから、そして後者のLEDダクトは技術の擦り合わせで「匠の技」といえます。共に日本が得意としてきたものでしたから、これはショックでした。この5年ほどの間、日本のLED照明界の目指す方向が20世紀型光源の代替化で、新用途提案が欠けていたと、痛感したのでした。 
 
 日本が遅れをとった事例は他にもありますが、次の機会に紹介するとして、もう一つ注目したことを記しておきます。それは「KNX」です。

【 KNX 】

 フランクフルト照明展の開催期間中6日間、会場出入り口に洒落たショルダーバックを配る多くのコンパニオンがいました。集めたパンフレットをこのバッグに入れて持参する人を会場内のいたるところで見かけます。バッグには「KNX」のロゴマークがくっきりと明示。このKNXは何か?と思い、ブースを探しました。
 大手の電気設備企業が出展するHall8の入り口に、各国の解説コーナーを擁したKNXコーナーがあり、すぐに判りました。そしてZhagaとは異なる趣旨のスタンダードをめざす「KNX」なるものが、気になりました。KNX協会のホームページを見てみると、「KNXとはホームとビルコントロールのための世界的規格」と記してあります。その対象分野は10項目あり、照明(器具も含め)も対象で、国際標準(ISO/IEC)ならびにヨーロッパの標準と中国の基準にも承認されています・・・。とも記されています。今後どのような展開(規制・標準化)をするか、そしてその標準化の内容は?など、筆者にはよく判りませんが、このKNXに加入している企業社名の多くはヨーロッパにおける大手主要電設会社であり、今後のスマート・エネルギー対応と絡めると、グローバルの新しいシステムが提案され、デファクト・スタンダート形成へと移行するのでは・・・と思案しました。2010年のフランクフルト照明展で現れたLED器具製造の「Zhaga」であったように、電設でのLED工事にこの「KNX」が関与していくのかもしれません。
 省エネルギーと高効率の照明へ、世界は新しい展開を始めています。風力やソーラーでの再生エネルギー活用に積極的なヨーロッパ諸国において、LED照明はこの再生エネルギー設備機器類に対応しやすく、確実に一体化システムに組み入れられましょう。土木・建築同様に、日本の電気設備の技術の高さやその安全性は世界トップクラスと称されてきました。日本の電設工事の規格はKNXなるものとどう組していくか?注目していきたいと思います。


図69.70 Hall8.0入り口付近で英語・仏語・伊語・露語・中国語など
10数カ国の説明員を配してKNXをPRするコーナーとKNXが掲示する省エネ指標。

おわりに

 LED Next Stageとlight+buildingを視察し、藤岡市助氏のことや19世紀までの日本のあかりを思い浮かべました。明治・鹿鳴館時代の日本、植民地化の嵐のアジアにおいて、価格・品質で絶対的優位の舶来電球攻勢の中、国産カーボン電球を試作誕生させ、舶来電球との厳しく涙ぐましいまでの国内市場競争を経て、日本照明界の礎を築いた藤岡市助。それはmade in Japanへの思いであり、それを知ることは東アジア地域のLED製品の市場氾濫への対応や、日本発SSL世界商品作りにも参考になると思えるのです。

 「日本のSSL商品は孤立しているのでは!」と感じ、さらに東アジア地域製LED製品が日本市場を席巻しつつある最近の様相に疑問や不安を抱かざるを得ません。LEDならではの用途提案が日本市場に見られないからです。旧態の照明手法で光源をLEDに、白い光の省エネ光源に変えただけ・・にしか思えないのです。
 私たちは日本のあかり文化の素晴らしさを知っています。19世紀までの優しい日本のあかり空間創出の術を、LED照明に活かせたら、日本のあかり概念は世界に迎え入れられると考えます。なぜなら心安らぐ優しい穏やかな照明空間作りは日本のあかり文化であるからです。日本のあかり文化によるMade in JAPANのakali創出で、日本発の世界商品を次世代の若者たちと共に目指すべきだと思います。21世紀の日本のあかり(SSL)創りの一助になればと、思考する昨今です。

付記:
日本のあかり文化シンポジウムを、9月6日(木)山口県山口市で開催します。照明学会の全国大会初日にプログラムされ、山口大学で午後13時30分からの開演(入場無料)になります。今回のような日本のあかり文化のシンポジウムは過去にはなかったかと思います。「今こそ日本のあかり文化を生かす"古灯器に学ぶシンポジウム"」、日本のあかり文化の素晴らしさを紹介します。

照明技術・デザイン最新事情
執筆者:落合 勉

照明デザイナー
M&Oデザイン事務所代表
LBA JAPAN NPO 理事長、愛知県立芸術大学非常勤講師、照明文化研究会 会長


1948年愛知県三河生まれ、ヤマギワにて照明を実践。
1991年横浜にてM&Oデザイン事務所スタート、現在に至る。
2001年からLED照明デザインワークに特化しての活動を展開、そして2006年からはOLED照明普及にも尽力。
2006年のALL LEDの店舗空間、2008年のALL LED街あかりや住空間、2009年のALL OLED照明空間など手がけ、SSL快適照明を探求提案。
器具のプロダクトデザインや照明計画などを行う傍ら、国内外の照明関連展示会や企業などを訪れ、グローバルな照明最新情報をインプットする。コラム(http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/index.html)参照。
趣味は古灯具探索で、日本のあかり文化の認知普及活動を展開中。
2009年7月、Light Bridge Association JAPAN NPOを設立し、理事長に就任。
次世代のあかり文化を担う「あかり大好き人間」の育成を目指している。

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