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連載コラム

第31回 Akali light the World  ~素晴らしい日本のあかり~

[ 2013年8月7日 ]

落合勉(M&Oデザイン事務所)
Light Bridge Association JAPAN NPO(あかりの架け橋)

はじめに

 2013年4月1日、日本照明工業会が発足しました。日本の照明界にとって大きな始まりの象徴に思えます。この出来事、世界の照明市場に着目し本格的に適応しようとするもので、21世紀照明への本格的な取り組みが始まる日本照明業界のBig Newsです。
 このコラムを記し始めて10年が過ぎましたが、私には最大のそして最高のパフォーマンスのように思える誠に素晴らしい出来事です。この新生工業会は、20世紀の日本照明業界とは異なる新しい活動形態の為に、省エネ環境共生型・21世紀の主光源であるLEDや有機EL(OLED)のグローバル実践展開の為に、光源の日本電球工業会と照明器具の日本照明器具工業会とが合併したものです。これからのTPPをも見据えたグローバル事業展開にふさわしい体制へ活動し始めたのです。会員数は2013年7月12日時点で177会員(172社5団体)とのこと。ぜひ、日本照明工業会のHPをご覧ください。


図1 一般社団法人 日本照明工業会の第一回定時総会が5月16日に開催された。
写真は総会会場での様子(写真提供:一般社団法人 日本照明工業会)

 今日の日本の照明環境は世界トップレベルと言って過言ではありません。安全で快適な省エネ照明への維持や形成に、電球と照明器具の2つの照明工業会は連携し尽力してきました。
 1933年(昭和8年)設立の、日本国内で多用される電気の光源〈電球類〉やその周辺部品(ソケットやトランスなど)の技術発展、及びその普及に貢献してきた日本電球工業会と、1942年(昭和17年)に設立され多種多用な照明器具の、安全で快適な省エネ製品としての規格標準化やその普及に貢献してきた日本照明器具工業会、この2大照明団体が日本産業界の発展と振興に尽力してきた功績は大きなものであります。

 21世紀の主光源と認知されるLEDやOLED〈有機EL〉は従来光源とは異なり、電気エネルギーが直接的に光エネルギーに変換する半導体光源であり、その発光体自身が照明器具にも成り得る要素を有しています。このことはいくつもの事例を交えて今まで紹介してきましたが、今後さらに新しい多種多様な用途形態が考案発明され、そして実用化され、世界商品として普及していくと目されます。日本は世界トップランナーでLEDの研究開発を成し遂げ、世界に先駆けLED市場が急速に形成されつつあります。今後の新用途提案製品への安全性確保や品質安定への標準化には、世界中で理解されるコンセプトが望まれます。それもスピーディーにアカデミックに、であり、長い灯りの歴史を有する日本、ブランド化と最新テクノロジーのトップランナーである日本、LED市場を展開するスマートさを持ち合わせた日本から発進するLEDならではのNewDesign、"Akali" が望まれると思考します。

 それゆえに、新生"日本照明工業会"の発足は、本当にタイムリーな素晴らしいビッグニュースだと思えるのです。
 今回のコラム31回目は、この日本照明工業会に関わる事柄を中心に記します。まずは新生日本照明工業会の前身・日本照明器具工業会と日本経済新聞社が主催したライティング・フェア2013(第11回国際照明総合展)のことを取り上げます。

ライティング・フェア2013(第11回国際照明総合展)について

 2013年3月5日(火)~3月8日(金)までの4日間にわたって開催されたライティング・フェア2013は出展社数233社、出展小間数803小間と過去最大で、来場者数7万7千人(前年比30%増)と大盛況のうちに閉幕しました。今年のテーマは「Think Innovation, Feel Lighting」で、展示会のコンセプトは「Akali light the World」とのこと。コンセプトのAkaliは「r」でなく、「l(エル)」を使用していました。あたらしい日本のあかり創出を願って、lightingの「l(エル)」としたのでは・・・、と推察。 従来のAkariとは違う新鮮なあかりをイメージした次第です。
 今回も前回同様に海外からの出展社(91社)も多く、企画展示や注目する最新の照明事例紹介の講演会、さらには夜間の夜景バスツアーなども開催され、盛況でした。

 出展社の展示動向としては、昨年までとは変わった様相を示しており、日本照明界の新しい動きを彷彿とさせていました。LEDの明るさを強調し展開していた昨年の展示から、LEDならではの"実用新用途の提案"、いわゆる"スマート"な省エネ照明演出システムの導入でした。それは半導体光源・LEDの多様制御が可能である特性を生かしたもので、日本を代表する主要企業ブースのメイン展示にそれらが見られました。各社それぞれに特徴を持たせた制御システムやセンサーを活用、明暗や色調光などを組み合わせて、LEDによる快適照明事例の提案をしており、国内だけでなく海外来場者もそれらの様相に注目していました。

 ルーメン/ワットの効率追求も重要で、今後も各社は積極的な開発をしていくことでありましょう。今回のライティング・フェア2013には発光効率200ルーメン/ワットを超える白色LEDのマルチチップ・パワーLEDも展示されており、LEDの発光効率が蛍光ランプを優に超え実用になりつつある事も実感しました。
 さらに明るさ追求だけの"単なる賢い省エネ照明"から、いかに快適な照明演出をすべきか? 心地よいLED照明空間の創出へ「日本照明界のLED演出形態創造年」として、今年のライティング・フェア2013は称されることになりましょう。 その事例、パナソニック、東芝ライテック、そして山田照明など紹介します。


図2.3 山田照明の出展ブースと主要展示類の一つ無線システム照明演出装置
(ZigBee Alliance)を実演演出している様子。山田照明の看板商品ZライトLED版も活用しながら、省エネで簡単、快適なオフィス照明をiPhoneやタッチパネルで操作していたZigBeeでした。

 既に世界の照明業界大手も採用を検討しているこのZigBee、低コストで低消費電力でワイヤレスセンサーネットワーク構築に適した無線通信規格の一つで、BluetoothやUWB(Ultra Wide Band, 超広帯域無線通信)」などの無線PAN(wireless personal area network)に属するものです。伝送速度は他の無線PANに比べ遅いのですが、一つのネットワークに多数(6万個程)の端末が接続できるという。使用への設定も簡単とのことで、中高年でも簡単に操作できるとのことでした。しかもボタン電池で約1年間、単三電池2本なら2年間も可動とのことで、家電や各種センサーを組み合わせた住宅やビル、さらには工場のオートメーション用インフラに活用が検討されている無線制御システムです。
 このZigBeeを照明用LEDの用途環境向けにいち早く開発した村田製作所製の無線通信モジュールとLED照明用電源モジュールを、山田照明の主要製品に搭載し、タスク&アンビエント照明システムとして積極的にPRしていました。LED照明の無線制御システムの市場は急速に世界で広がっていくでありましょう。
 ちなみにZigBeeとは、ジグザグに飛ぶミツバチをイメージした造語『ジグ(Zig)のハチ(Bee)』で、ミツバチが蜜を求めて飛び回り仲間たちと情報交換する様子が、ノード同士(ここではタッチパネルPCやZライト照明器具類などの個々の製品を示す)が自在にネットワークを構築しデータをやり取りするのと、似ているところからきているとのことです。


図4,5 東芝ライテックのブース。オフィス空間でスマート照明事例とHEMSを使用した住宅の「Smart HOME Lighting」をメインに紹介していました。

 照明器具の個別制御システムを「T/Flecs(ティ・フレックス)と称した東芝の省エネ照明システムの事例で、T/Flecs用の器具とスイッチとセンサーをT/Flecs2線式信号線に接続することで、煩雑な回路区分や調光区分変更も容易とのこと、設定はパソコンででき、MES(省電力照明制御システム)との組み合わせでビルなどのトータル照明管理もできると解説されていました。
もう一つのメイン展示紹介は、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)使用の事例で、平成23年度エネルギー管理システム導入促進事業補助金(HEMS導入事業)対象の東芝製家庭照明機器を用いた快適省エネ照明でした。家電機器をネットワークでつなぐ制御装置やエネルギー計測ユニット(機器)や夜間蓄電装置(電源)などとの組み合わせで、賢い省エネ照明を提案していました。このSmart HOME Lightingには対象電気機器製品を結ぶためのインターネットワーク体制が必要です。PCやスマートフォンでの利用もでき、今後の新築住宅への普及が検討されましょう。


図6,7 今年も多くの来場者でにぎわっていたパナソニックの展示ブースの様相で、住宅用照明・近未来・非住宅照明と3区分けした展示ブースでした。

 次の紹介は各種新製品が多様に出展していたパナソニックの展示ブースで、その中で注目したのは目に優しいLED照明の提案でした。パネルミナと称した拡散透過光を活用した製品で、LEDならではのコンパクト性を生かしたフォルムと、液晶テレビで研究開発してきた日本の巧みな技術部材「導光板」とを組み合わせていました。このLEDならではの発光部の提案、思わず「これはすばらしい!」と声を発しステージ正面に映し出される映像を注視したのでした。
 この導光板活用の方式は数年前のJAPAN SHOPにてLED看板照明で見かけましたが、今回のように光量まで研究したものではありませんでした。このパネルミナ、今後いろいろな住宅・店舗照明器具に応用展開されそうで、楽しみです。
 なお、21世紀の半導体光源活用には、光源部だけでなく適切なコントロール(制御部)や任意の照明演出用電気供給(電源部)も大切です。今回の展示ではその制御や電源の新提案に出会えませんでしたが、次回の発表に期待します。


図8,9 ランプと器具とが別のグループ会社であった三菱電機グループ、統合した三菱電機照明として初のライティング・フェア出展ではLED照明ブランド「MILIE」(ミライエ)をアピールしていました。

 三菱電機照明にはLED照明制御システムとして認知されている「メルセーブシステム」がありますが、その最新版として販売するMILIEは、照明器具1台ごとに接続したコントローラーを天井裏に設置し、スマホで1台ごとにも点滅調光などできる使いやすい無線通信システムです。スマホには専用アプリ(応用ソフト)を取り込み、簡単できめ細かい制御が可能になり、センサーを有するコントローラーで人の在室にあわせた省エネ照明も可となっていました。また照明だけでなく空調との連携も可とのこと、オフィスや店舗などへの展開をアピールしていました。


図10、11 照明と音を組み合わせたシーンを空間事例ごとに展示演出していたNECライティング、LED照明の新用途提案に熱心である企業姿勢には好感を持って何度も視察しました。

図10は iPhoneで操作できるスピーカー付きLEDシーリング「Cross Feel」の様子が壁面映像に映っている様子です。センターには透明にもカラー模様にもできるOLED照明パネルのデモを展示しており、長年のOLED照明開発を手がけてきた高い技術がうかがい知れました。その右にはNECライティングが推奨する平成23年度エネルギー管理システム導入促進事業補助金(HEMS導入事業)対象の製品機器が分かりやすく掲示されており、クラウド型でありスマートフォンやタブレットでモニター操作できるとのことでした。


 ライティング・フェアのことを記しながら世界最大の照明展として知られるFrankfurt light + building(以下、フランクフルト照明展と記す)でのLED照明動向の出来事を思い出します。2004年時では、カラー照明演出が空間照明にも多用され、モノクロ照明からカラーへ!と変わったこと、このコラムでも紹介しました(2004年7月8日付け本コラム参照)。そして2010年のフランクフルト照明展(2011年のMilano Euroluce でも)は、LEDの新用途提案器具が世界に先駆け多数出現しました。その次の2012年のフランクフルト照明展に至っては、完全に明るさ追求姿勢は消え、器具によるLEDならではの新形態(デザイン)が多数展示されたのでした(第29回目の本コラム参照)。


図12,13 カラー演出照明が展開されたFrankfurt light + building2004の会場風景


図14,15 LEDならではの新形態(デザイン)提案のユニークな製品たち(Frankfurt light + building2012)

 本コラムで日本のLED照明は世界トップランナーで快進撃をしていると、2年ほど前まで記していましたが、最近では"日本でなくヨーロッパに移行した"と読み取れる記事を書いています。愛読してくださる本コラム読者なら判読して下さったことと思います。
 2005年以降、LED照明で日本を中心とする東アジア地域の国々に先行を許していたヨーロッパ老舗大手照明会社は、本格的にLED製品開発に取り組み始めます。その効果は2008年頃から見え初めます。そして2010年、2011年の欧州ビッグ照明展では明確な"かたち"(New DesignのLEDプロダクト新製品)となって多種多様発表されました。その圧倒的な物量の多さには目を見張るばかりで、明るさよりLED照明の新用途提案、つまり新形態(デザイン)の提案が目白押しでした。2012年のフランクフルト照明展を視察した時には「完全に日本LED照明の先を行った・・・」と容認したのでした。
 とはいえ、ものづくりやその使い方(親切・丁寧な)、さらには世界が認める日本的distribution(サービスを含めた商流)では決して後塵に甘んじることない技量を有するMade in Japan。LED照明製品はその技量が生かせる対象品であると洞察し、新たな日本的提案商品に期待していました。その例が今年のライティング・フェアで拝見できた"スマート"な省エネ照明演出システムです。

 LED照明、20世紀光源による照明概念では、快適照明空間演出は困難(できないと思っている)である事を体験した筆者は、LEDによる新用途(新形態のデザイン)提案が必要であると本コラムを通じて唱えてきました。それはLEDの名が示すようにDiode(半導体)の光源であり、デジタル信号で今までできなかったことを可能にした新照明光源ですから、新しい概念(コンセプト)創出をしつつ、新用途の提案をし続けることが不可欠である、と学習(失敗を繰り返し実践)したからです。

 ところでLED照明では、発光部(LEDデバイスやLEDモジュール)を重視しがちになりますが、自由に発光させるにはその展開をコントロールする制御部(プログラムシステムも包含した)が容易に適用できなければなりませんし、その制御部(コントローラーとも称される)に最適な質容量の電気を安定供給する良質の電源がなくてはなりません。3ボルト前後の20ミリアンペアで発光するLEDの基本発光原理は、デリケートな弱電のエリアであり、100ボルト以上の交流使用照明などの強電の電気工学とは異なる弱電流工学(一般的に50ボルト以下)の電子工学領域(通信・制御・情報分野に対応)となります。20世紀の光源による照明知識だけでは、LEDの快適照明演出には不十分(単なる代替化でしたらOK)と唱えるのです。

 しかもLEDは発展開発途上の進化し続けている光源で、その新技術や新用途の提案は日進月歩のごとく変化しています。それも発光部、制御部、電源部それぞれの専門分野の企業間で競い合いながら市場提案し続けているのが世界の実情です。例えばコンパクトで使いやすい電源が開発されれば制御部や光源部とのマッチングを確認しなくてはなりません。誤動作を生じるかもしれないからです。それは制御部も光源部も同様で、絶えず進化する部品採用による誤動作確認も含めての適応化が必要となります。

 そしてこの光源部+制御部+電源部の組み合わせには、それなりの高度な知識や技術が必要で、しかもそれぞれの分野のエンジニアとの協調がなくては安全で適切効果は形成できません。つまり個別の主要部品ではありますが、組織的に連携意識を持って協創していく"ものづくりの精神(擦り合わせ)"が必要と言えましょう。このことは集積回路製造で培われた日本の技術と、日本の先人が築いてきた工芸の心をもってすれば、半導体光源のLED商品は「日本的世界商品」となりえると思えるのです。

 ライティング・フェアで拝見できた"スマート"な省エネ照明演出システム、協創の新提案といえましょう。今年はセンサーなどと組み合わせたシステムの新提案でしたが、その照明効果を視覚的なる形、つまり照明器具としても出現して欲しいと思いました。LEDならではの造形製品の出現を!です。 20世紀の照明器具形態活用の"スマート"な省エネ照明演出システムでなく、LEDならではの形態デザインのスマート照明提案を期待します。

 先に述べた演出システム以外に注目したブースが多々ありました。その中から特に留意した事柄を紹介して、今年のライティング・フェア2013レポートを終えます。

・ケイエムダブリュジャパン
 韓国の通信機器製造会社で、携帯電話などにも応用されている放熱技術には独自の技術ノウハウがあるとのこと。LED発光部ボディーを密集した器具製造でも放熱対策が効率よくされ、小型のLED高効率器具などに注目しました。数年前のソウル・LED照明展ではそれほど注目した製品がありませんでしたが、今回の出展品の反射光活用のグレアレスLED器具は、LED特性を熟知した商品であり、素晴らしい製品だと思います。


図16,17ケイエムダブリュジャパンの展示製品

・ちゅうごく地域LED関連産業クラスター
 日本の中国地方4県(島根県、鳥取県、山口県、広島県)が連携して、LED関連製品製造企業の支援出展をしていました。その中で島根県の島根電子今福製作所が出展していた植物工場用LED照明は、産学協業での成果展示で実用が期待できそうで楽しみです。
鳥取県産業振興機構からの出展社・フィアライトのCOB技術をベースにした直管LEDランプに多くの人から注目され質問を受けていました。このフィアライト、LED電子工学に強く、OEM対応もできるとのこと、地域の商業施設LED照明にも実績を持っているとのことで、地域でのLED照明産業形成に期待した次第。
 山口県からの出展社ブルーウェーブテクノロジーズのLEDモジュール+レンズの製品には新技術の採用(熱抵抗を少なくしたセラミックデバイスでヒートシンクを小さくすることが可能)で小型化に成功した製品が展示されており、しかもその製造工場は障害者の方々が勤務できる新工場で生産するとのこと。この高度のLEDモジュール製品が広く認知活用されることを願った次第。


図18 フィアライトなどの中国地方四県からの出展ブースの様相


図19,20 ブルーウェーブテクノロジーズのLEDモジュール+レンズのデバイスと新工場を紹介する写真パネル

・TONS LIGHTOLOGY
 フランクフルトの照明展で何度か見ていたこの台湾企業、ようやく日本市場での展開を、と初出展をしていました。筆者はこのTONSの工場やショールームを以前見学していたのでわかるのですが、今回の小さく簡素で、展示品を絞り込んだ少数点数の出展ブースではこの会社の素晴らしさは分かりにくいだろう・・・と思いました。なぜなら出展ブースの展示品はごくごく一部で、商業施設用LED照明器具でしたら世界トップクラスの質と量を有す会社と筆者は見ているからです。その主要販売対象は欧米で、欧米主要照明会社のOEM製造も手がけており、世界の規格基準に対応できる製造検査施設の完備された工場で製造されていたことを、筆者は知っているからです。日本での今後の活動に注目です。


図21 22、TONSの出展ブースと一部の展示製品

・サンケン電気
 LEDチップからデバイス、モジュールやその関連部材まで全て自社製造を手がけているサンケン電気、本来は電源メーカーの老舗であり、強電・弱電両業界には知られた存在のこの会社が、LED照明器具も自社製造し、展示していました。技術には定評あるサンケン電気、電源部と直管部を一体化した新製品「LEDスリムベースライト」など、注目を集めていました。


図23 製品「LEDスリムベースライト」を正面に展示していたサンケン電気ブース


図24 LEDの微妙なちらつきを防止する技術を示した回路の説明パネル

・SD. Hess Lighting
 ドイツ・フランクフルト照明展にも出展している老舗メーカーHessとの合弁会社SD. Hess Lightingは、九州・大牟田の道路照明信号機メーカー大手の信号電材株式会社の一角にあります。今回展示されていたのは昨年のフランクフルト照明展で高い評判を得た防犯カメラ内蔵タイプの美しいデザインポール等で、信号機と一体化させた街路灯とともに、会場内ではひときわ目立っていました。


図25 SD. Hess Lightingのブースと防犯カメラ内蔵型ポール灯などが並ぶ様子

・ライティング創
 長年にわたり商業空間照明計画を実践してきたデザイナーが、自ら使いやすいLED照明器具を創り出し、本格的に発売し始めたライティング創のブース、デザイナーのブースらしく軽快でさわやかな快適照明空間を演出していました。メイン出展のLED製品は放熱効果を持たせた基本モジュールにオプションリフレクターが容易に装着できる小型コンパクトなダウンライトで、使いやすい製品でした。これならコストパフォーマンスもあり、着脱容易なリフレクターのスポットライトにも展開できるでしょう!展示替えでの配光対応簡易型のダウンライトやLEDスポットライトなら、プロでなくても効果的な店内の照明演出ができるでしょう。現場を知り使いやすい照明器具を自ら創り出し市場提供するデザイナーブランド商品が、日本照明界にも展開し始めたことはすばらしい。このデザイナーブランド商品、ヨーロッパでは多く見られることで、今まで日本で育たなかったことが不思議です。ライティング創の今後が楽しみです。


図26、27 ライティング創のブース外観とメイン出展のLED製品基本部材

・有機EL照明について
 今年も会場の中で、蛍光ランプの次期光源と目される有機EL(OLED)パネルが、各社特有の様相で展示されていました。ようやく量産仕様の規格が整備されてきたLEDと違い、本格量産化はこれからと目されるOLED、先行するパナソニックの展示様相と次のOLED製法と目される表面実装形を試作展示していた日立アプライアンス、さらにはOLED光源を仕入れ新用途デザインを提案していたコイズミ照明など、それぞれの各社OLED取り組み状況が垣間見られました。


図28  パナソニックのOLED展示コーナーの様子


図29 東芝ライテックのOLED展示コーナー


図30 NECライティングのOLED展示コーナー


図31 日立アプライアンスのOLED展示コーナー


図32 コイズミ照明のOLED展示コーナー

終わりに

その1 照明デザインと今後 (New Lighting Designのプロジェクション・マッピング)

 デザイン(Design:英語)、この言葉は私たちの日常生活の中で多用されており、その意味は形態とも設計とも、図案や模様、さらには空間やシステムや思想とも訳されている、また都市や人生計画にも用いられ、その範疇は留まるところを知らない使い勝手の良い言葉です。ここでデザインとは?を語るつもりはありませんが、今後の照明のあり方、特に照明デザインについて最近留意し始めた事柄があり、その事を記しておきたいと思います。
 Lighting Designには4種の職業エリアがあります。このことを明示する文献は少ないですが、近代の建築・デザインの照明実業界では現実の職業として確立されてきていますから、認知されるべき"ライティングデザイナー"の4職種と言えましょう。
 ご存知の方は少ないかもしれませんが本来のライティングデザイナーは、舞台やステージなどの照明演出家を示します。アメリカ映画の終了間際にキャストなどが映し出されますが、Lighting designerも表示されます。映画が作られ始める19世紀後半から照明演出家は職業として存在していましたから、この分野のライティングデザイナーとしては本家と言えましょう。現代ではStage Lighting designerと明示したほうが分かりやすいかと思います。 
 次は近代建築とともに確立した職域Architect Lighting designです。20世紀になるとコンクリートと鉄とガラスが建築に多用され、電気による照明普及と相まって建築化照明が流行りだします。そして建築空間への照明演出にもこだわるようになり、空間の照明演出への関心が高まります。本格的に建築空間照明演出家として生業が成り立つのは第二次戦後大戦後になってからと言われ、日本ではEXPO`70(大阪万博)以後に活躍が始まりましたが、日本でこの分野を開拓したライティングデザイナー石井幹子氏は有名で、その功績は偉大です。この建築物との照明演出計画の職域はArchitect Lighting designerと言えましょう。
 近代建築や近代デザインの源流とも称される芸術学校バウハウス(bauhaus:ドイツ語で「建築の家」の意。1919~33年の14年間存続した)では、建築や工業製品のデザインばかりでなく、ファッションや演劇・舞台、印刷やグラフィックなどに近代的生産システムの考えが導入展開されました。現代の照明器具様式の主流となっているモダンデザイン(機能主義)もこのバウハウスから始まったと言えます。量産部品を組み立て製品化するシステムを展開した照明器具のスタンドは「The Bauhaus Lamp」として特に有名で、現在も量産品として生産され世界中で愛用されています。このような生産する照明器具をデザインする人もライティングデザイナーと称されます。日本ではフリーランスを生業とする人よりも企業内デザイナーに多い分野です。
 4番目はイルミネーションのライティングデザイナーです。LEDによって看板や競技場の掲示大画面やビル壁面の大型ディスプレー表示など、多種多様なる表現が可能になりました。ネオン管や蛍光ランプなどによる表示・看板演出全盛だった1980年代までとは大きく様変わりした屋外照明演出です。そして植え込みや樹木などに多数の点滅LEDを使った照明演出を生業とする人たちも電飾の職域としてIllumination Lighting designerと称されます。
 以上の4種が"照明デザイン"の職業領域と最近まで認知していましたが、数年前からステージ・ライティングデザイナーの領域から、新しい照明演出が出現して活動し始めており、筆者はNew Lighting designの5番目の職域と考察しています。LEDのプロジェクターを用い空間と映像を合成させる新しい空間演出のライティング(照明演出)で、数台のプロジェクターを操作することにより光(映像)が交差し、重なり、動き(既成概念の照射の静止でなく可動する光演出)を創ります。今までの概念とは異なる光演出であり、今後はさらなる進化が想定できます。このライティング、現在はプロジェクション・マッピングと名づけられ、世界中で大きな反響を呼んでいるのです。
 このプロジェクション・マッピングはディズニーランドでも常用されており、建築物への照射により空間を自由に演出(変化)するのです。RGB・LED使用プロジェクターは音との合成・同期も容易ですから商業施設やイベント空間演出など様々な用途に展開されてきています。昨年の年末、リニューアルされた東京駅へのプロジェクション・マッピングイベントは凄い見学者数を集め評判となりました。予想以上の大観衆の為、交通にも支障をきたし一晩で中止となったことは、ニュース放映でご承知の方も多いかと思います。ぜひ見たいと予定していたのが見られなくなってしまい、残念に思っていました。
 関心を持っていた東京駅プロジェクション・マッピングの事例を、ステージ・ライティングデザイナーの団体・日本照明家協会主催の「舞台・テレビジョン照明技術者技能認定制度・公開講座」で映像を見ることができました。本格的なステージ・ライティングデザイナー育成を目的にしたこの講座は、古典芸能の舞台照明から最新建築物とのコラボレーション照明までの基礎から最新技術まで教育しており、その豊富なカリキュラムには驚きましたが、最新のプロジェクション・マッピング事例もいくつか視聴でき、特に東京駅のすばらしいプロジェクション・マッピングに見入りました。(尚、今ではネット上でも見られるようですので、お試しください) プロジェクション・マッピングは新たなるライティングデザイナーの職域として世界中で進行中で、大きな市場になるであろうと注目しています。

その2 日本のあかり文化と今後

 日本のあかりの資料館としてその質・量ともに日本一と認知する展示館「神戸らんぷミュージアム」が今春3月末で休館となりました。神戸の中心、三ノ宮駅と元町駅の中間の海側に位置する「旧居留地」の愛称で呼ばれる地区にありましたから、照明関係者でしたらご存知の方も多いかと思います。神戸市役所や市立博物館などもあるこの地区は、観光名所のメリケン波止場に続く地元「神戸っこ」市民の散策エリアともいえる所です。2009年4月に神戸らんぷミュージアムは淡路・阪神大震災後"復興のあかり"を象徴するごとく、オープンしました。それは幸運のエピソードを持って・・・でした。
 日本有数のランプコレクションを誇った神戸市北野地区にあった「北野らんぷ博物館」の貴重なランプの数々を関西電力が受け継いだのは、1988年(昭和63年)でした。整理・保全をしながらミュージアムの開設準備が進められる中の1995年(平成7年)、神戸の街を淡路・阪神大震災が襲いました。しかし当時、ランプのコレクションは別の場所で保管されていたため奇跡的に難を逃れました。そして復興地域の変電施設ビル内に、神戸らんぷミュージアムとして難を逃れた日本の古燈器や石油ランプなどが展示されオープンしたのでした。
 運よく残されたこれらの貴重なあかり古燈具類、それらをわかりやすく分類展示されてきた神戸らんぷミュージアム、諸般の事情から3月末日をもって休館と公知され、開館の目処は立たずで・・・、再び見学は難しいであろう・・・と判断し知人友人を誘って休館直前に見学してきました。


図33 たいまつや松の根っこ小木を燃やしてあかりを灯した「火でばち」などの展示コーナー。


図34 日本の和ろうそく(日本特有の松脂ろうそくやハゼの木の実から生成したろうそく)の製造方法や種類を分かりやすく展示されている。


図35 日本・和風建築に適応する数々の行灯の展示の様相


図36 洋燈の代表的ガラスホヤ付ランプの各種。形態や構造特徴などを紹介した判りやすいビデオ説明を聞きながら見学できる展示会場


図37 明治・大正、そして昭和と近代化とともに変遷する照明の様子を展示するコーナー。照明学会が昭和6年に発刊した"日本のあかり教本"と称される「日本古燈具大観」のオリジナルやその編集原稿や資料などの貴重なる品々も展示されていた

 今回の見学は、日本のあかり文化をこよなく愛する人たちの研究会(照明文化研究会で筆者も会員)有志ら20名で、一日かけての見学は貴重な時間でもありました。日本のあかり資料館として日本一の展示内容を有するこのミュージアム、現在見られることはできませんが、日本のあかり文化の素晴らしさを学ぶ若者たちの為にも、早期の復館を願う次第です。

 この2年ほど、日本のあかり文化とLEDやOLED照明との関連性について幾度か取り上げてきました。 LEDが照明器具として市場導入される直前の2005年、私は幸運にもLED照明計画やそのためのLED製品開発に携わる機会を得ました。しかしその対応には失敗を繰り返してのものでした。その失敗で、従来光源で培った知識・経験では心地よい照明環境が得にくいことに気づきました。20世紀の光源とは異なる仕様のあり方を探し求め始めたのでした。そのときに教示を受けたのが日本の古燈具であり、そして日本建築空間での採光(書院造りのあかり障子であり、数寄屋の茶室)でした。それらのことは日本のあかり文化の素晴らしさと称して、この2年ほどの間に私見を記してきました。また数年前に聴講した日本古代からの染色を研究されている吉岡幸雄氏の講演で、奈良時代の染色には中国からの蜜蝋を用いていたと教示され、奈良時代の蜜蝋は燃焼の為の蝋燭より染色の為の蝋使用が多かったのでは・・・と、気づかされました。そして奈良時代のあかりは?どの程度だったか?さらに日本のあかりのルーツは?と関心が広がり始めました。


図38 最近の筆者が関心を寄せる事柄「ワードマップ・コンセプト」(照明学会の通信講座で使用したものから抜粋掲示)

 日本のあかりを研究する人たちの会(照明文化研究会)の長老たちの書き残された文献や、あの日本古灯器大観にも、その日本のあかりのルーツの記載は明確ではなく、関心がさらに募ります。1000年の歴史を有すると云われる日本のあかり文化、杉と真竹と和紙の素材特性を生かした古燈具や日本建築空間には、心地よい照明要素が潜んでいると、私には思えて仕方ありません。
 最近の自問自答を記し、この10年余の連載コラム「照明技術・デザイン最新事情」を終了いたします。
永きにわたりご愛読くださり、ありがとうございました。
今後は「日本のあかり」をより探求し発信していきたいと願ってやみません。
「日本のあかり文化知らずしてLEDを語るなかれ、桂離宮を知らずしてOLEDを謳うなかれ!」と自らに言い聞かせて・・・。

照明技術・デザイン最新事情
執筆者:落合 勉

照明デザイナー
M&Oデザイン事務所代表
LBA JAPAN NPO 理事長、愛知県立芸術大学非常勤講師、照明文化研究会 会長


1948年愛知県三河生まれ、ヤマギワにて照明を実践。
1991年横浜にてM&Oデザイン事務所スタート、現在に至る。
2001年からLED照明デザインワークに特化しての活動を展開、そして2006年からはOLED照明普及にも尽力。
2006年のALL LEDの店舗空間、2008年のALL LED街あかりや住空間、2009年のALL OLED照明空間など手がけ、SSL快適照明を探求提案。
器具のプロダクトデザインや照明計画などを行う傍ら、国内外の照明関連展示会や企業などを訪れ、グローバルな照明最新情報をインプットする。コラム(http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/index.html)参照。
趣味は古灯具探索で、日本のあかり文化の認知普及活動を展開中。
2009年7月、Light Bridge Association JAPAN NPOを設立し、理事長に就任。
次世代のあかり文化を担う「あかり大好き人間」の育成を目指している。

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