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連載コラム

第13回 「変動する世界環境と照明業界について」

[ 2008年10月24日 ]

はじめに

 今春からの原材料高騰の動きは私たちの生活に影響を与えつつ、その動きは他の要因(サブプライム問題や温暖化等)とも関連し大きくなりそうで、照明業界も変革を余儀なくされているように思えます。今春開催された世界最大の照明展Frankfurt Light + Building 2008から半年が経ち、その照明展会場で発表された最新事例(試作やサンプルなど多い)の商品化にもその影響を与えたといえます。

 この半年間の変動は、確実に省エネ・省資源、そして環境共生のグローバル化を押し進め、新たなる方式や形態を創出するでありましょう。決して過去の形態が維持されることなく、それは照明の世界も同じように・・・・。

 前回のこのコラム(第12回)では、Frankfurt Light + Building 2008展示の新光源による照明形態や新しいビジネスのあり方、そして新フォルムの照明器具や新形パーツ等を紹介しました(「Frankfurt Light + Building 2008を視察して」参照)。特に新ビジネス形態"LED事業システム"の発表展示には、永年視察を続けてきた私ですが大きな驚きとショックを受けました(もう少し先になると予想していたので)。そのビジネス形態は今後急速に従来型商流を変え、また照明器具形態や工事のあり方も変えることになりましょう。新たなる思考へのビジョンが必要です。

 その事例紹介に欧州出展企業を前回紹介しましたが、日本企業の出展社もFrankfurt Light + Building 2008会場に10社ほどありました。今回はその日本企業出展社の様子を紹介するとともに、世界のLED大国になろうとしている中国でのLED展(第一回上海LED展)の様子や、今夏開催された日本での照明メーカー新製品発表会の様子など紹介します。

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図1、2、3 Frankfurt Light + Building 2008会場で見られた「LED事業システム」の発表事例。
住宅や店舗、屋外ごとに支柱スタイルにまとめ展示していたOSRAM社

日本出展社の半分はランプメーカー

 世界の照明界が注目し世界中からその関係者が集まる世界最大の照明展に、先進国でアメリカに次いで大きな照明市場を持つ(1兆2000億円)とされる日本からの企業も出展していました。会場展示の様相は各社工夫を凝らし、広い会場ですが見る者を飽きさせることなく多様で華やかでありました。日本からの出展社も展示演出に配慮しており、訴求力ある出展品にそのブースは多数の来場者で賑わっていました。

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図4 ホール4の2ndフロアーに出展した日亜化学工業のブースとその様相
図5 展示中央に配置されてショーケースを囲んで商談するエンジニア達と
熱心に正面壁面のLEDガジェットを見るバイヤー達。
左壁面はLED電球に配光を変えるオプションをつけて実演している。

 世界トップレベルの高演色(Ra96)・高効率(100lm/w)などのLED使用のデバイスやモジュールを多種展示していた日亜化学工業のブースはALL LED照明での演出でした。その様相はLED展示ブースとは思えないほど(従来のLED照明特有の眩しさや派手なパフォーマンスはなく)、落ちついた高級ブランドの店舗の雰囲気でした。

 配置されたソファーやショーケース脚部には、今日のLED照明幕開けへの象徴でもあり、1989年に世界で最初に量産化技術を確立し、日亜化学工業の名を一挙に世界に知らしめた高輝度青色LEDが設置されています。そして展示は、3分類(プロダクト展示とショーケース、そしてガジェット)に区分けされていました。画像4の手前のオブジェ(LED-IKEBANA/作品名)は世界最小のLEDスポットモジュールを組み込んだプロダクト作品で、行き交う来場者にLEDアートの可能性を提案していました。他にLED電球類と高照度用LED街路灯がプロダクト見本として展示していました。

 出展注力していたのは特製ショーケース内の0.1ワットからハイパワーの1ワット、2ワットを搭載した各種LEDデバイスやモジュール(44 種)で、形態が見えるように展示され、あたかもジュエリーの展示を想いださせるものでした。そして新製品LEDは壁面パネルとガジェットにて紹介していました。このガジェット、実際の配光がボタン押しで照射され、照射色光も目視確認できる新機構の装置で、右上小型液晶画面の表示情報も合わせて判りやすい情報提供ツールでありました。

 斬新で簡潔にまとめられたこのLEDガジェットを用いながらの展示ディスプレイ、LEDの豊富な種類や高い性能だけでなく、その特性らを美しく上質に披露した今回のブース、世界一のLEDメーカーと、改めて認識した次第です。

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図6、7 展示中央に配置されたショーケースと正面壁面のLEDガジェット。
(A〜Jまでのボタンを押すとそれぞれのLED照射光が配光分布の上に表示され、
右上の液晶に情報が示される)

 LED量産化を世界で最初(1976年、赤色LED)に成功したスタンレー電気、数々の白色LEDモジュール群を揃えて展示(フランクフルト照明展に初出展)していました。このスタンレー電気、LEDの生産販売を開始して30年、長い歴史(数々の実積)とその培われたノウハウで多様なLEDモジュールやLED照明への基礎技術を有しております。

 赤や緑などの色光LED生産のほかに、数年前からは白色LEDの開発生産も本格化し、一般照明業界(自動車や産業機器分野ではない)向けに各種のLEDモジュール(電球色など)を開発発表してきました。その先進性は道路照明用の5.5ワットものハイパワーLEDモジュールを3個搭載したLEDユニット、ウエッジベースタイプのLEDモジュール「スナップ-イン」、演色評価数95の3ワットLEDにオリジナル光学レンズと組み合わせたスポットモジュール「シングル3W」、さらには直径100ミリで薄さ8ミリの「ディスク10」などに見られ、世界に先駆けたユニークなモジュールは大いに注目されていました。

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図8、9、10 スタンレー電気の出展ブースとその様相

 照明界で1ワット当たり100ルーメンを越える蛍光ランプ並みの高効率LEDランプ(CL-L220)がシチズン電子ブースに展示されており、点灯した状態では直視できないほどの眩しさでした。この明るさには世界の照明関係者らの多くが関心を示していました。今回のシチズン電子は明るさ追及の LEDランプだけでなく、幅広く色温度展開(2900K,3500K,4100K,5000K,6300K)したもの(図13)や高い演色評価数(Ra=95)を有するランプ(CL-L102)など多種多様のLED光源を展示し、見どころが多くありました。

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図11、12、13 世界最高級の明るさのLEDを開発発表していた
シチズン電子の出展ブースの様相。

 日本からの出展社として、高輝度LEDバックライトの照明パネルで注目を集めていた吉川化成や、LEDの蛍光管型ランプのモモ・アライアンスのブース、さらにはアイランプのブランドで知られる岩崎電気なども出展していました。

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図14、15 高輝度LEDバックライトの照明パネルや世界最小のLEDスポットモジュールなど 展示していた吉川化成の出展ブースの様相

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図16、17 40ワット直管蛍光ランプ形状のLEDランプ展示で異彩を放っていた
モモ・アライアンス(本社・岡山)の出展ブースの様相。

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図18 LEDランプ以外にもセラミックメタルハライドランプなど
展示していた岩崎電気のブース

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図19 小型スポットライトのLED照明器具を出展していた
オリンピア照明のブース

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図20 パナソニック電工のヨーロッパにおける
照明会社(海外連結会社)のVossloh Schwabe

 フランクフルトの照明展を3回に分け、このコラム(6/27の「街あかりについて」の中でのLuminare、そして前回8/24の Frankfurt Light + Building 2008ではヨーロッパ企業の出展概容や会場内の様子、そして今回の日本企業など)に紹介してきました。その内容は会場内外を席捲していたLEDランプやその照明器具を主に取り上げましたが、現市場で多用されている蛍光ランプやセラミックメタルハライドランプ搭載器具も、また数年後から製造停止が報道されている白熱ランプ使用器具も会場には多数展示されていました。新旧の光源やその搭載器具が混在する照明展であり、省エネルギーで環境共生型光源への変換を強く感じさせた展示会でもありました。

 フランクフルト照明展1ヵ月後の5月、中国上海でLED展が開催されました。国を挙げてLEDの生産普及を押し進めている中国で、しかも2年後に万博開催を控え猛烈なる再開発展開中の上海でのLED展、その様子など知りたく視察してきました。上海の街にもLED照明が溢れ始めていました。

上海LED展を視察

 上海市内中心街西地区にある「上海世貿商域」という名の国際見本市展示会場で、5月9日から3日間開催されました。出展社数は50社ほどで中国企業の出展社が多数を占めていました。会場の端には特設照明セミナー会場が設けられ(初日と2日目と)、その講演の多くが日本人講師(山口大学の田口常正教授、照明デザイナーの石井幹子氏やLED照明推進協議会の下出澄夫氏ら著名人)で占められ、日本のLED照明への期待の大きさを感じました。

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図21、22 上海LED展会場の様子

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図23、24 LED照明推進協議会の出展ブースの様相

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図25、26 会場内の中国出展社のブース

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図27、28 会場内の台湾出展社のブース

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図29、30、31 日本企業の出展ブース

 出展企業はLED素子メーカーからパッケージやモジュール製造メーカー、さらには器具製造会社やLED照明演出計画会社など、多様でした。その出展内容ですが、3月に東京で開催されたLED Next Stageや4月のフランクフルト照明展とは5〜6年の時の差を感じましたが、中国の進捗テンポを考えればこの程度の差は大きなものではないと思われました。

 中国政府は半導体照明中心基地を定め、LED照明器具の普及に特別の配慮を実施しています。その指定地域は5政令都市(上海、アモイ、南昌、深セン、大連)で、この地域でのLED照明器具使用時に特別なる奨励援助をしていると、会場主催社から聞きました。中国の電力事情を考えると、省エネ光源の LED照明普及は大切な国策の一環とされること、理解し納得した次第です。国を挙げて21世紀型新光源普及に積極的展開を推進するその事例は、街路灯など多方面に示されています。上海においてもビル・ファサードのイルミネーションなど、目を見張るものがありました。

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図32 会場内に掲示されていたマップ。LED照明普及促進を示す5政令都市が示されている

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図33、34、35 上海市内のイルミネーションの様相。
5年ほど前からLED化が展開され、新築ビルの外装照明演出はLEDが中心となっています。

照明各社による新製品発表会

 世界各地での主要照明展が終了した6月になって、日本の照明各社それぞれが新製品発表会を国内で展開しました。全ての発表会は視察できませんでしたが、パナソニック電工(旧松下電工)やヤマギワ、コイズミ照明などは住宅照明を中心に展示していました。

 パナソニック電工の照明新製品発表会は「あかりと電気設備、新商品内覧会」と名し、LED器具はもとより蛍光ランプ搭載の省エネを主軸とした製品で構成されていました。HomeArchiやエクステリア器具など多種多様な新製品展示が展開されていました。中でも住宅リビングをシュミレーションした空間には蛍光ランプによる快適照明事例が示され、興味を持ってその説明を聞く視察者で溢れていました。

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図36、37、38 パナソニック電工の新製品発表会展示会場の様相。

 6月3日から7月9日までの1ヶ月間にも及ぶロングランで、北海道・札幌から九州・福岡まで主要都市6箇所で新製品発表会をしたのがオーデリックで、「New Lighting Fair 2008」と題し、和風照明器具(沖縄の壷屋焼きや長崎県の波佐見焼き、徳島県の組子)やシャンデリアなど住宅照明を主に展示していました。

 6月11日からはコイズミ照明が「cledy発表会」と名づけ、東京のショールーム改装お披露目を兼ねてスタートしました。会場は名古屋、福岡、大阪と1ヶ月間ほどの巡回でした。LEDダウンライト(白熱60ワット相当)の展示会場では、同様各社の製品と対比したデモンストレーションコーナーがあり、興味深く視察できました。

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図39、40、41 コイズミ照明の新製品発表会展示会場の様相。

 また、ヤマギワは6月4日から東京・秋葉原のリビナ館にて新着輸入照明器具を中心とした新作照明発表会が実施されました。アルテミデやルーチェプランなどイタリアの有名モダンデザインメーカーのオリジナリティー溢れる製品は、カラフルで華やかな雰囲気を演出していました。

 そして8月に大光電機が、「D's Wave」と題した2008年新製品発表会を東京で開催。高気密断熱施工のLEDダウンライトSG型(白熱ランプ60ワット相当)が発表されていました。

 これら照明各社の新作発表会には新カタログの発表配布を推進させることとともに、省エネ光源搭載器具増強による環境共生企業としての姿勢表示に注力していると感じました。その事例に、パナソニック電工、コイズミ照明、大光電機は住宅空間向けSG型LEDダウンライト(白熱ランプ60ワット相当)の発表には、展示配慮がされていました。

 このSG型LEDダウンライトに留意すべきニュースが今夏発表されました。新製品発表会はありませんでしたが、SG型LEDダウンライトで先行する東芝ライティックが白熱ランプ100ワット相当タイプを発売開始するとのニュースです。今後の新築省エネ型住宅需要の増大に伴い、これらSG型LED ダウンライトは急速に普及していくことでありましょう。

有機EL照明コンペ

 最近、注目されてきた有機EL照明のセミナーが7月初旬から全国主要6都市(東京・大阪・名古屋・札幌・福岡・山形)で巡回実施されました(8月末まで)。

 有機ELはLED同様に日本の技術が先行している次世代の光産業を担う産物と称されています(昨今ではソニーの有機ELテレビが話題に)。しかしその実用化はまだ始まったばかりと言えます。研究開発には世界の先進国だけでなく、近隣の韓国や中国なども積極的に開発研究を進めており、一部には製品化(携帯電話機など)もしているほどです。その有機ELの中で照明としての活用研究も進められており、世界トップランナーとして先行している山形県・有機エレクトロニクス研究所が実用に向けてのデザイン公募展を企画発表、その告知を兼ねてセミナーが開催されたのでした。セミナーには照明業界の方々はもとより、異業種(建築インテリア業界、電機業界や化学原材料業界、大学研究者など)の専門家の方々や学生達とバラエティーに富んだ聴講者でありました。(筆者はこの照明セミナーに講師の一員として同行)

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図42 東京会場の聴講風景/図43 大阪会場で昨年の最優秀作を囲む聴講者たち

 有機ELとは、オーガニックエレクトロルミネセンス(有機電界発光)を意味し、発光性の有機物が電気の刺激を受けて発光する現象を言います。薄く面状に発光体を形成でき、多彩な発光色が得られるため、フラットパネルディスプレイとしてその実用化が展開中です。自らが明るく発光し、鮮やかで美しいコントラストの画像を実現できるため、次世代のディスプレイの本命として位置づけられテレビをはじめとするAV機器としての製品化に向け急速に開発がすすめられています。最近ではその薄型面発光という特徴を生かした次世代の照明器具として、明るさも実用レベル並みとなり、量産化の動向(コストダウン)が注目を集めています。

 この有機EL照明用パネルを用いて新しい照明デザインを広く全国から募集する今年のコンペ(第3回目)、どのような作品が誕生するか? 楽しみです。(詳細は有機EL研究所のHP参照)

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図44 有機ELの構造(有機EL研究所HPより)

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図45 第1回目の最優秀作の「F-LIGHT」

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図46 第2回目の最優秀作の「EL-CHANDLIEA」

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図47 有機EL照明パネルだけで照明演出された空間事例

 4月のFrankfurt Light + Building 2008での日本企業出展社の様相、5月の中国・上海LED展、そして6月〜7月にかけての日本照明各社の新製品発表の様子を、最後に7月〜8月にかけての有機EL照明セミナー(照明コンペ告知を兼ねて)を記した今回のコラム、これらは私自身が関与したことの半年ではありました。この間、世界の動向はとても大きな変異表出(原材料の高騰や金融問題や自然災害など)がなされ、私たちの生活環境へ真摯なる対応を余儀なくされつつあるように思われます。無駄・ロスなき日常生活を! であるかと。それは照明においても然りでありましょう。

 次回のコラム第14回は、オールLED照明による省エネ・環境共生型の街のあかり「Green Avenue あざぶの丘」(分譲地)を紹介したいと思います。この分譲地ですが今秋街開きで、分譲地に建てられたモデル住宅棟(オールLED照明化)ともども、実用的 LED照明事例のあれこれを紹介します。

照明技術・デザイン最新事情
執筆者:落合 勉

照明デザイナー
M&Oデザイン事務所代表
LBA JAPAN NPO 理事長、愛知県立芸術大学非常勤講師、照明文化研究会 会長


1948年愛知県三河生まれ、ヤマギワにて照明を実践。
1991年横浜にてM&Oデザイン事務所スタート、現在に至る。
2001年からLED照明デザインワークに特化しての活動を展開、そして2006年からはOLED照明普及にも尽力。
2006年のALL LEDの店舗空間、2008年のALL LED街あかりや住空間、2009年のALL OLED照明空間など手がけ、SSL快適照明を探求提案。
器具のプロダクトデザインや照明計画などを行う傍ら、国内外の照明関連展示会や企業などを訪れ、グローバルな照明最新情報をインプットする。コラム(http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/index.html)参照。
趣味は古灯具探索で、日本のあかり文化の認知普及活動を展開中。
2009年7月、Light Bridge Association JAPAN NPOを設立し、理事長に就任。
次世代のあかり文化を担う「あかり大好き人間」の育成を目指している。

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