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連載コラム

第14回 ALL LED照明の街「あざぶの丘」

[ 2009年2月9日 ]

はじめに

 省エネ照明シンポジウム(主催:チーム・マイナス6% 環境省)が昨年末から全国主要都市にて順次開催され、あかりから始める地球温暖化対策を提唱しています。その中部地区での開催が先月末、名古屋のナディアパーク・デザインセンター3階のデザインホールで実施され、筆者が講演いたしました。基調講演の演題は「地球環境と省エネ照明と技術革新」、その講演内容に筆者が照明計画を統括した昨年秋オープンのALL LEDの街あかりの新街区「Green Avenue あざぶの丘(分譲住宅地)」の照明計画内容などを紹介しました。この新しい分譲住宅地には、照明業界で新世代の省エネ光源と称されるLEDが、街の外構照明のすべてに設置されます。今回の連載コラム第14回は、世界で最初の試みといえるALL LED照明の街あかりの様相と、さらにこの分譲住宅地内に建てられた室内照明がALL LEDの室内照明モデル住宅も併せて紹介します。

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図1 名古屋会場で開催された省エネ照明シンポジウムの様相。
左よりコーディネーター:環境省 地球環境局地球温暖化対策課 国民生活対策室長 染野 憲治氏、
パネリスト:筆者、株式会社石井幹子デザイン事務所デザイン室長 山田 晃嗣氏、
東芝ライテック株式会社 事業本部 本部長附 松下 信夫氏、
社団法人照明学会東海支部普及部 中部電力株式会社 販売本部営業部住宅電化グループ 課長 藤田 逸郎 氏

図2 図3
図2講演を行う筆者/図3 「あざぶの丘」の街全体の照明予想図

「あざぶの丘」/街あかりのポイント

 名古屋市と豊田市の間に位置する愛知県三好町の北部(莇生<あざぶ>という地)、東名高速道路を見下ろす小高い丘にALL LED照明で街あかりを実施する分譲地(開発:トヨタすまいるライフ㈱)が出現しました。204棟すべての外構と道路・公園など、街の明かりすべてがLEDで照明計画されることは、地球温暖化対策でCO2削減に省エネ照明を推進する日本照明業界にとっても、先進性ある取り組みなのではないでしょうか。ALL LED照明にすることで従来光源を使用した場合の電気使用量比は1/3に、そして32トン/年間のCO2削減になります。
 いかに省エネとはいえ、現実的対応を考えればイニシャル・コストでかなりの割高になるLED照明器具設置は躊躇するところ(ランニング・コストを考慮すれば別)ですが、時代のニーズ(省エネ・環境共生)や21世紀の生活環境の在り方を真摯に考えるトヨタグループの姿勢の一端でありましょう。
 あざぶの丘を初めて訪れたのは2007年2月下旬、前回のライティング・フェア開催直前でした。現地案内を受けながら、数年前に訪ねた北欧デンマーク内陸地のBjerringbroという小さな自然豊かな町の情景を思い出していました。ゆるやかなカーブに沿って木々が立ち、その周囲に家々が続くなだらかな草原の丘、その夕方の光景です。環境立国で美しいデザインの国と云われるデンマーク、このあざぶの丘にはその郊外の家々のように優しく和むあかりが良く似合う!と思い巡らしていました。

図4 図5
図6
図4.5.6 あざぶの丘の照明基本コンセプトを記したプレゼン資料の一部。

 LEDは輝度が高く、眩しいため住宅への照明には不適切で難しいと思われています。確かに今までのLED活用は直視(見るため)のサインや信号など、輝度を高めた視認性強調の活用でした。いかにグレアを無くした心地よいリズムある街あかりを形成できるか、この「Green Avenueあざぶの丘」で絶えず意識したデザインポイントでした。プランニングやミーティングなど繰り返し、思考錯誤・確認しながら基本設計を進めます。そのために新たなLEDモジュールの制作や光の拡散や照射方向、そして器具の設置位置など、各種実験を繰り返し、基本計画から実施計画へ移行したのです。 2つの公園の照明計画やその公園を結ぶ遊歩道(緑道)にはどのような照明が適するか? ポケットパーク(共有緑地)や住宅地内の交差点ポール灯など地域住民の為のあかりは? 等々です。そして各住戸廻りの照明のあり方も含め、LEDオリジナル照明器具制作を実施しました。その結果、教示なければLED光源での照明とは思えないほどの落ち着いた(ぎらつくあかりない)街並みや住戸廻りの照明空間を作り出し、その上品なる照明演出は高級レジデンスの雰囲気を感じさせることに成功しました。

図7 図8
図7.8 照明基本計画から照明実施計画へ、プランの検証や実験を展開。

図9 
図10 図11 
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図9.10.11.12 オープンした「あざぶの丘」の様相(日中)。

 各住戸玄関廻りをオープン形態にし、それぞれの家のLED屋外照明器具で、道あかりを展開させるこの街は、住民協定にも定められている夜間常時点灯(100円ほどの電気代/月)によって夜の街路景観を作り出します。また地中ケーブル電線で電柱のないこの街は主要交差点の街路灯のみで、すっきりとした街並み形成が実現、夜間遠景で家並みのシルエットが浮かびあがります。又、公園にはソーラーパネルや風力発電機と組み合わせたハイブリットポールなどが配置され、公園内の電力として活用されています。

図13 図14
図15
図13.14.15 夜間の住宅外溝照明の様相。

図16 図17
図18 図19
図16.17.18.19 住宅周りに設置されたLED照明器具やソーラーパネル

 あざぶの丘には住宅街を挟むように左右に2つの公園があり、遊歩道によって結ばれています。その公園内には橋と並木道にランドマーク的ポイントが設けられており、昼と夜のそれぞれの景観を楽しめるよう配慮されています。また、公園内や住宅の近くにはポケットパークなどを設け、照明付きベンチや足元灯で落ち着いた照明演出を心がけています。
 橋の照明は手すりやデッキ部横木材に目立ちにくいようLED器具を配当し、日中でも自然材のよさが損なわれないよう工夫しました。そのため、日中の景観に照明器具が目に映らず、美しい橋を維持しています。
 並木道の照明には歩道部を明るく照らす下方照射と同時に植栽樹を照射する部分(ポールサイドから放射)とを、1本のローポールLED器具に組み込ませ、照明器具設置数を減らしてきれいな歩道空間を形成しました。

図20 図21
図22 図23
図20.21.22.23 橋の照明や並木道のローポール

図24 図25
図26 図27
図24.25.26.27 道路や公園内通路を照らすオリジナルLED照明器具

優しい住まいのあかりを!--ALL LED照明のモデル住居

 あざぶの丘は204戸の分譲住宅で、30戸前後を7期に分けて販売する予定です。その正面ゲートそばにALL LEDをめざしたモデル住居があります。 欧米では部屋全体を日中のごとく明るくするのではなく、必要な部位(ところ)のみ必要な明るさを配光する考えが定着しており、照明器具も優しいあかりで部屋に明暗を作り、メリハリのある広がりを感じさせるものが多いです。 「ALL LEDの外構照明のあざぶの丘において、住居内でもLEDで優しい照明演出空間が提案できないか?」外構照明を進める中で、事業主のトヨタすまいるライフ㈱からそのような要請があり、「住akaliプロジェクトチーム」を結成、ALL LEDをめざす住空間照明計画が始まりました。

図28 図29
図28.29 ゲートそばのモデル棟と玄関内の様子

 玄関、玄関吹き抜け、リビングダイニング、和室に寝室・・・・とモデル棟図面に照明基本構想を加え、その照明効果確認の実験を繰り返し、実用化へと積み上げます。新しいモジュール制作も加え、チームメンバーの奮闘が続きます。このインテリア照明でもっとも苦心したのは玄関吹き抜け部と和室でした。玄関は客人を迎える華やかなイメージが欲しい空間です。何か斬新なLEDシャンデリアを!そして和室には優しい和の横からのあかりが欲しい! あれこれ思考が続きます。最後まで悩ませたのが和室のスタンドですが、悩んだ分だけ出来上がった製品は上質なLED照明デザインでまとまったと自負する次第です。

図30 図31
図32 図33
図34
図30.31.32.33.34 玄関吹き抜けのシャンデリアと壁面照明器具、そしてリビングダイニングの照明空間

図35 図36 図37
図35.36.37 和室とそのスタンド照明

図38 図39 図40
図38.39.40 2階への階段部と、2階の寝室及び子供部屋の様子

ALL LEDの街づくりを終えて思うこと

 あざぶの丘の照明計画は2つの制作チームで実施しました。外構照明を「あざぶの街akaliデザインチーム」、モデル棟内照明を「あざぶの住akaliデザインチーム」(ともに筆者はチームリーダー)で、照明基本計画や照明実施計画の担当、さらには公園などのベンチやソーラーパネルなどランドスケープ的環境道具計画担当、そして実際のLED器具開発担当などと、それぞれのスペシャリストとLEDモジュール会社、器具製作会社、設置業者らの混成チームで実施しました。
 今回のプロジェクトを通じて特に配慮したことは、各メンバー間の情報共有化でした。LEDは数年前から表示用照明から演出照明へと用途展開を広げつつあります。しかしながら白色LED照明による生活空間への本格的使用事例は少なく、またLED器具自体も少なく、参考となる判断データはほとんどありませんでした。自分たちで検証、確認をしながらの実施だからこそ各々の持つ情報の共有化がこのプロジェクトを成功に導いたのだと思います。

図41 図42 図43
図41.42.43 各種の照明実験をしている様子と実験モデル棟で検証した事例。

 この街は依頼主の営業の関係上、この地域以外への広報や告知など積極的にしておらず、世界でも稀なるALL LEDの省エネ環境共生型の街を知る人は住宅購入検討者か地元の省エネ照明有識者だけでしたが、昨年末に日経BP社の技術情報サイト「Tech-On」に紹介され、徐々に広く認知されるようになってきました。新しい試みのLED照明の街「あざぶの丘」、機会があればぜひ訪れてみてください。

図44 図45
図44.45 公園内から住宅を見ての様相

補記:LED照明の街「あざぶの丘」は、事業主・トヨタすまいるライフ㈱のもと、清水建設が土木工事を実施、全体の照明計画は『あざぶのakaliデザインチーム』が行いました。外構とモデル棟の全LED照明器具は新規にデザイン製作、設置されたものです。

終わりに

 来月、ライティング・フェア2009が東京・有明の東京国際展示場(東京ビッグサイト)で開催(3月3日〜6日の4日間)されます。隔年開催で9回目となるこの国際照明総合展には日本照明業界を代表する企業や団体のみならず、日本での照明ビジネスを展開する海外からの出展ブースで会場は埋め尽くされます。日本の最先端照明技術やその用途展開(照明器具や照明デザインなど)事例などそのレベルは高く、世界から注目される今日ですから、近隣国はもとより欧米からの来場者で今回も賑やかになりましょう。

 また今回のライティング・フェア2009セミナーには、世界中の照明関係者が大いに注目している2人の学者、LEDの中村修二氏と有機ELの城戸淳二氏の両教授が登壇し、基調講演やパネル討論が予定されています。私自身もこの2人の実践されている照明技術動向や今後の展開について興味津々で、パネル討論ではぜひ色んなお話を伺いたく思っています(筆者はコーディネーターとして登壇します)。

 次回のこの連載コラム『照明技術・デザイン最新事情』は、ライティング・フェア2009の視察感想を取り上げたく思っています。お楽しみに!

照明技術・デザイン最新事情
執筆者:落合 勉

照明デザイナー
M&Oデザイン事務所代表
LBA JAPAN NPO 理事長、愛知県立芸術大学非常勤講師、照明文化研究会 会長


1948年愛知県三河生まれ、ヤマギワにて照明を実践。
1991年横浜にてM&Oデザイン事務所スタート、現在に至る。
2001年からLED照明デザインワークに特化しての活動を展開、そして2006年からはOLED照明普及にも尽力。
2006年のALL LEDの店舗空間、2008年のALL LED街あかりや住空間、2009年のALL OLED照明空間など手がけ、SSL快適照明を探求提案。
器具のプロダクトデザインや照明計画などを行う傍ら、国内外の照明関連展示会や企業などを訪れ、グローバルな照明最新情報をインプットする。コラム(http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/index.html)参照。
趣味は古灯具探索で、日本のあかり文化の認知普及活動を展開中。
2009年7月、Light Bridge Association JAPAN NPOを設立し、理事長に就任。
次世代のあかり文化を担う「あかり大好き人間」の育成を目指している。

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