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連載コラム

第19回 デザイナーが考える未来のLED照明とは ~さらに拡がるLEDの可能性

[ 2010年2月18日 ]

はじめに

 ~輝きのある日本へ~ というタイトルの新成長戦略(基本方針)が昨年末の12月30日に閣議決定され、経済産業省は日本産業界成長の要素の一つとして、固体照明分野(LEDやOLED)の市場構築を進めるとの通達を発表しました(経済産業省のホームページ参照)。 
 新成長戦略では「6つの戦略分野」を提示しており、その最初に「グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略」があります。その中の項目に、『エコ住宅の普及、再生可能エネルギーの利用拡大や、ヒートポンプの普及拡大、LEDや有機EL照明などの次世代照明の100%化の実現などにより、住宅・オフィスのゼロエミッション化を推進する。 (以下略)』とありました。21世紀の主光源と認知されているLEDとOLEDが具体的に明記されていたのです。
 最近、LED市場は携帯電話向けからテレビ、照明へと主役を代えながら拡がると言われます。昨年に本コラム欄で韓国LED事情を紹介しましたが、その韓国訪問時に見たサムスン電子のLEDテレビはその後世界中で人気を博していると聞き及んでいます。その液晶テレビなどの薄型テレビでは、2012年にはLEDテレビが5割を超すとも言われています。
 そして今後続いて急成長すると見込まれる照明分野、白色LEDの世界市場は2009年度で約28億ドル(約2500億円)でしたが、2012年には2倍超の58億ドルにもなると言われます(図1参照)。日本ではエコ・ポイント制度の交換対象商品でもあるLED電球ですが、昨年から市場に急速に普及・展開され、需要増が顕著です。日本照明業界最大手のパナソニックもこのLED電球の生産を海外に全面移管し、生産能力を、4月を目処に約4倍に引き上げ(360万個/年)ると発表(日本経済新聞2月5日付朝刊)、日本で最初に発売した東芝ライテックや新規参入のシャープなど十数社が販売合戦を競い合うLED電球の日本市場、さらに普及に拍車がかかりそうです。
 
 そのLED照明の展示会が今春3月、東京ビッグサイトで開催されます。今回が3回目となるLED Next Stage2010(3/9~12)で、最新LED照明器具やモジュールなど、世界最先端の新製品が展示されます。展示会場内にはLED照明の最新動向を紹介するセミナーも実施され、話題のデザイナー達もLED照明の使い手の立場から講演します。今回のコラムではこの講演する3人のデザイナーを取り上げます。改正省エネ法に対応した商業施設・店舗を手がける神谷利徳氏と、話題のユニクロ新宿店のファサード看板を手がけたグエナエル・ニコラ氏、そして新東京タワー『東京スカイツリー』の照明デザイナーの戸恒浩人氏です。個性豊かで才能あふれる新世代のデザイナーがどのようにLED照明を使いこなしているのか、最近の仕事ぶりも交えて紹介します。尚、最近視察した2社のLED照明の新製品発表会も併せて紹介します。

図1
図1 白色LEDの世界市場規模
(日本経済新聞2010年1月7日付朝刊)

図2
図2 各社がそれぞれ発表するLED電球

改正省エネ法に対応した未来型店舗をデザイン/神谷利徳氏

 2010年4月から改正省エネ法が施工されます。省エネ法は第2次石油危機を契機に1979年に制定されました。その正式名称は「エネルギーの使用の合理化に関する法律」で、当初は鉄鋼業のような産業部門を対象にスタートしました。そしてその後の改正で運輸部門を、さらに大規模事業所なども含むようになり、日本は世界最高レベルの省エネ実績を残してきました。そして今回の改正省エネ法で、規制単位を事業場から事業者全体となり、ファミリーレストランや居酒屋などチェーン展開している飲食・小売・流通企業なども対象になる可能性が生じました。(基準は年間使用の電気・ガス、灯油などの全エネルギーが原油換算で1500キロリットルを超えるか否か)。
 飲食店などの商業施設・建築デザイナーとして数多くの店舗設計を手がけてきた神谷利徳氏によると、居酒屋でしたら8店舗以上の、またファミリーレストランですと15店舗以上の事業展開されている企業は、改正省エネ法の対象に該当すると指摘します。小規模でも数店舗展開されている事業者は全国に数多いことと思われます。そして対象と指定された企業には3つの成すべきことが生じます。
1.2010年7月末日までに市域の経済産業局に年間エネルギー使用状況届出書の提出。
2.エネルギー管理統括者(役員クラス)の決定。
3.中長期計画書(1%以上の年間削減)と定期報告書の提出。
これらに違反すると罰則が定められており、真摯に対応しなくてはならないのです。
 すでに1000軒以上の商業施設等を手がけてきた神谷氏は、今回の改正省エネ法の主旨や、温暖化防止のためのCO2削減にLED照明を用いることの意義、そして、改正省エネ法を遵守しながらの経営改善の指南などについて、数々の具体的事例(ゼットンのアロハテーブルや一風堂)を用いて講演されます。 3月のLED Next Stage2010の会場講演、楽しみです(スケジュールは特別企画よりご覧ください)。

図3 図4
図3.4 焼肉店「小肥羊」(札幌)のLED照明事例

図5 図6
図5.6 個室居酒屋「Serge源's」錦店2FのLED照明事例

図7 図8
図7.8 ラーメン店「一風堂」(東京・銀座)のLED照明事例

図9
図9 神谷利徳氏/www.kamiyad.jp(図3~9 神谷デザイン事務所提供)

多才なデザイナーが考えるLEDの今後の可能性/グエナエル・二コラ氏

 2008年のミラノ・サローネで、グエナエル・ニコラ氏は「LIGHT LIGHT」というLEDのインスタレーションを発表し、注目されます。さらに昨年はお台場の「レクサスRXミュージアム」にて、ファイバーによる光のインスタレーションを実施し、好評を得ます。共に光のアートですが、今までのプロダクト的アート作品とは違い、空間を有効活用して点滅による時間差と光の動きに、表現の重きをおいています。ニコラ氏はインテリアデザインを手がけてきた経験から、光の活用はとても重要で、いつも意識していると語ります。また「日本のテクノロジーは素晴らしい、LEDの光と出会い、自身の描くイメージが表現できるようになってきた」とも語ってくれました。
 実は筆者がニコラ氏に注目したのは昨年4月、東京新宿駅西口にオープンした「ユニクロ新宿西口店」の外観ファサードデザインです。昼間の白い壁面は、夜間になると目地部に仕込まれたロープ(640m)状の白色LED光で違う表情を作り出します。これがとても印象的でした。
 ニコラ氏は目下、超売れっ子で多忙のようです。今春のサローネで発表する新しいインスタレーションと東京青山のカバンショップの外観ファサードのデザインを計画実験中で、共に光を使っての演出とのことでした。運よく実験の様子を見させてもらいましたが、ユニークな作品になること間違いないと思えました。作品完成のお披露目が楽しみです。
 1966年フランス生まれのデザイナーのグエナエル・ニコラ氏、インテリアデザイン(仏国にて)とプロダクトデザイン(英国にて)を学び、来日します。そしてフリーランス活動をして今日に至ります。氏のデザイン領域は時計や携帯電話等のプロダクトやロゴなどのグラフィック、さらにはインテリアデザインや建築までもと、その活躍の幅は広く多才です。そしてコンピューターグラフィックを駆使しての3D表現テクニックは素晴らしく、クライアントに大好評と聞き及んでいます。3D に光の時間を組み込み、映像化した氏のデザインイメージ表現は立体的でもあります。今後の新しい創作が楽しみです。
 ニコラ氏の講演ですが「商業施設デザインにおけるLED照明採用事例と今後の可能性」というタイトルです。こちらも楽しみです(スケジュールは特別企画よりご覧ください)。

図10
図10 2008年の「LIGHT LIGHT」/LEDのインスタレーション

図1
図11 2009年の「レクサスRXミュージアム」のエキシビション/ファイバーによる光のインスタレーション

図12 図13
図12・13 2009年4月オープンした「ユニクロ新宿西口店」(昼と夜の概観)

図14 /><br />
<span class=図14 グエナエル・ニコラ氏/www.curiosity.jp
(図10~14 キュリオシティ提供)

今注目の若手照明デザイナーが考える近未来の照明デザイン/戸恒浩人氏

 2009年の10月に東京スカイツリー(2012年春開業予定)のライティングデザイン決定の正式発表がありました。そのデザイナーの名は1975年生まれの新進気鋭の戸恒浩人氏です。7社による指名コンペによって競われた世界一の高さ634mを誇る電波塔の照明デザインは、「粋」と「雅」のコンセプトでまとめられたものでした。2つの要素でのデザインコンセプトは、3月のLED Next Stage戸恒氏のセミナー講演「LEDが描く近未来の照明デザイン」で詳しく紹介されると聞いております。LEDの光で包まれるという東京スカイツリーの光景、講演にて拝聴いただきたく、ここでは省略※1いたします。
 戸恒氏は有限会社シリウス ライティング オフィスを立ち上げてから今年で6年目、その前は日本を代表する空間照明デザイン設計の会社で8年ほど実地体験の修行をしています。建築を大学で専攻していた戸恒氏は大学3年時に入社する照明設計会社で半年アルバイトを経験しています。この時に、照明計画の仕事に興味を深めたのでした。以来15年、空間建築照明を実践しています。
 ところで戸恒氏は本コラム欄で紹介したALL LEDの街「あざぶの丘」の基本計画に参画もされたり、それ以前からも浜離宮恩賜庭園などLED照明について種々取り組んでいます。今回の東京スカイツリータワーでは新たなるLED照明の提案がなされ、多くの人々に感銘を与えることでありましょう。東京スカイツリーのLEDにより、私たちは身近な存在としてLED照明を感じ、日本のLEDが広く早く、普及する大きな弾みとなりましょう。
 LEDの今後について戸恒氏は、次のように語っています。「LEDのモジュールが基準化され(電源も)、さらに電気の無線送信が可能になる近未来には、LEDの照明はもっと自由に誰もが取り扱えるようになるでしょう。半導体のLEDだから、パソコンによってプログラム調光など簡単に操作可能でしょうし、そして照明器具よりサ-ビスやメンテなどのネットワークが重要になると思うのです」と語っていました。
 そしてさらに「LEDによる照明システムは送電方法の革新だけでなく、照明演出にも変革を見せると思います。例えば、若い照明デザイナーの中にはLED照明をグラフィック化して演出したりラッピング化したりと、既存概念にとらわれない提案が具現化されていくことでしょう。」と語ってくれました。
 東京スカイツリーの新しい光の提案を通じて、戸恒氏には未来のLEDの展望が見えているように感じました。3月のLED Next Stage2010戸恒氏のセミナー講演、拝聴したいと思います(スケジュールは特別企画よりご覧ください)。

図15
図15 完成予想図の東京スカイツリー(提供:東武鉄道㈱ 東武タワースカイツリー㈱)

図16
図16 粋の東京スカイツリー(提供:東武鉄道㈱ 東武タワースカイツリー㈱)

図17
図17 雅の東京スカイツリー(提供:東武鉄道㈱ 東武タワースカイツリー㈱)

図18
図18 戸恒浩人氏/www.sirius-lighting.jp(シリウス ライティング オフィス提供)

※1 東京スカイツリーのライティングデザインは、www.tokyo-skytree.jp のNEWS RELEASE参照

LED照明の新製品発表会 その1/遠藤照明

 新年早々の1月12日~15日に、遠藤照明が東京・青山ショールームでLED照明の新製品展示会を開催したので、視察してきました。LEDダウンライトを中心とした店舗商業施設向け製品群(LED照明の新シリーズ「LEDZvol.2」)を展開、店舗設計者は省エネとランニングコストで採用しやすくなったといえます。今まではLED照明器具の品揃えが少なく、ハロゲンやセラメタ光源と混合で店内照明計画をしなくてはなりませんでしたが、今回の遠藤照明のLED照明製品群はハロゲンタイプからCDMやセラメタ150W相当の照度と色温度を実現し、幅広く適応できるLED照明器具を揃えたのでした。これなら光色の違いもなくLEDだけの店舗照明計画も容易となります。省エネ光源であるだけに、ランニングコストでは他の光源製品(蛍光ランプを除く)より大幅に下回ります。「従来品と同等価格!消費電力1/3!」のキャッチフレーズを全面に提示しての今回の発表会、国内同業他社も早急に対応(追随)することになりましょう。そしてLEDモジュールですが、66Wから7Wまでの9種とオプションを揃え、その搭載器具点数はダウンライトやスポットなどあわせて702機種を2月1日からで順次発売開始しました。このモジュールは約2WのLEDデバイスを共用し、ワット数によって使用個数に違いがあります。演色性はRa85で一般店舗には十分といえます。
 製品の配光ですが、LEDデバイスに適応する光学制御レンズを独自に設計開発したとのことで、ムラの少ない均一な配光を実現(狭角と広角)していました。そしてコストパフォーマンスについてですが、アジア(タイと中国)での海外生産とパーツの共通化が大きく寄与しているようです。
 尚、今回のLED照明製品群には調光タイプはありませんが、3月から順次追加発売するとのことで、更なる充実化をはかる遠藤照明の店舗向けベースライティング製品群、今春4月からの改正省エネ法を見据えた商業施設向けには誠にタイムリーなる発表といえましょう。

図19
図19 遠藤照明・展示会場の様子

図20
図20 会場に貼られたポスター

図21
図21 使用LEDモジュールとその配光を示したパネル

図22 図23
図22.23 使用LEDモジュールと光学制御レンズ

図24
図24 9種のモジュールの説明パネルコーナー

図25
図25 高天井向け66Wタイプのダウンライト展示の様子

図26
図26 LED照明器具で展示したデモンストレーションルーム

LED照明の新製品発表会 その2/三菱電機照明

「三菱電機グループ総合展示会in神奈川」、と題した発表会が神奈川県鎌倉市大船であり、LED等の照明新製品は三菱電機照明ショールームにて2月3日~5日開催され、視察してきました。商業施設店舗やコンビニエンスストアを想定したLED照明器具の新製品も設置、演出されていました。
 直管(FLR40×2灯相当)の天井直付け専用形のLED照明器具がコンビニエンスストアを想定する空間に展示されていました。約4万ルーメンの全光束(Ra70)とのことでした。 他にもブランドショップやオフィスの想定空間も設営され、3月のLED Next Stage2010へのデモンストレーション展示の様相と受け止めた今回の視察でした。

図27
図27 ドラッグコンビニイメージの想定空間

図28
図28 オフィススクエアのLED照明器具事例

図29
図29 LED電球の展示コーナー

次回の本コラムでは、筆者が見た「LED Next Stage2010」の視察記をご紹介しようと思います。各出展社がどんな最新のLED照明・光源・周辺部品を出展するのか、今から待ち遠しいです。ご興味がある方は是非ご来場になって、LED照明の市場や技術の進捗状況を確かめられると良いのではないでしょうか。

照明技術・デザイン最新事情
執筆者:落合 勉

照明デザイナー
M&Oデザイン事務所代表
LBA JAPAN NPO 理事長、愛知県立芸術大学非常勤講師、照明文化研究会 会長


1948年愛知県三河生まれ、ヤマギワにて照明を実践。
1991年横浜にてM&Oデザイン事務所スタート、現在に至る。
2001年からLED照明デザインワークに特化しての活動を展開、そして2006年からはOLED照明普及にも尽力。
2006年のALL LEDの店舗空間、2008年のALL LED街あかりや住空間、2009年のALL OLED照明空間など手がけ、SSL快適照明を探求提案。
器具のプロダクトデザインや照明計画などを行う傍ら、国内外の照明関連展示会や企業などを訪れ、グローバルな照明最新情報をインプットする。コラム(http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/index.html)参照。
趣味は古灯具探索で、日本のあかり文化の認知普及活動を展開中。
2009年7月、Light Bridge Association JAPAN NPOを設立し、理事長に就任。
次世代のあかり文化を担う「あかり大好き人間」の育成を目指している。

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