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連載コラム

第21回 LED Next Stage2010を視察して(後編)~Light+Buildingの報告も交えて

[ 2010年6月18日 ]

はじめに

 4月中旬に世界最大の照明展「Frankfurt Light+Building 2010」があり、視察してきました。その1ヶ月ほど前のLED Next Stage 2010(3月9日~12日東京ビッグサイトで開催)と比較すると、いくつかの相違点が見られ、双方のユニークな事柄が際立って感じられました。その相違点とはフランクフルトは「LEDの照明演出」に、LED Next Stageは「照明光量とその色光」に重点を置いていたということです。そのことなど留意しながら、今回のコラムを記したく思います。

 まずは前回のコラム、「LED Next Stage2010を視察して(前半)」で国内の主要照明メーカーと新規参入メーカーの傾向と、LEDメーカーの展示概要などを取り上げました。それらは省エネ性を訴求する展示志向で、ハイテク技術による明るさ(光量UP化)とその色調、および既存器具の代替による省エネ性の対比を前面にだした展示内容でした。
 海外からの輸入製品の展示の様子も一部紹介しましたが、国内外問わず未紹介のユニークな新作や日本市場向けLED製品もありましたので紹介します。

図1 図2
図1、2 LED Next Stage2010の日本出展主要照明メーカー各社の品揃え3点セット「LED電球、LEDダウンライト、そしてオフィス用LEDフラット照明器具」を、それぞれの既存対象器具との省エネ効率を判りやすく表示し、展示していたNECライティングのブース。

図3 図4
図3、4 チップから照明器具、さらにはLED検査機まで製作している星和電機のブースでは、
LEDの省エネ性や耐久性を生かしたLED防爆器具等を展示していました。

図5 図6
図7
図5、6、7 商業・店舗空間へのLED照明器具を展示していた大光電機のブース。スポットライトやペンダント等の展示の中に直管形LEDベースライトの展示コーナーがありました。特にLED蛍光ランプFL型の特定固定具においては、省エネ性の訴求だけでなく安全性についても明確に表示しており、日本の照明専門メーカーとして、確かなる安全仕様で、コンプライアンス遵守へ取り組む正しい姿勢といえます。

LED Next Stage2010の輸入展示製品

 海外輸入製品の展示には日本法人からの出展品と海外メーカーからの出展品に大別され、さらに照明器具かLEDモジュールを重視した販売か、でも区分けでき、それぞれ出展目的が異なっています。その海外メーカーの出展で気になった点がありました。
 モジュールでの展示出展社としてはSEOUL SEMICONDUCTORが韓国法人として出展していましたが、本格的にLED照明への参入を始めたサムスンやLGの日本法人は出展していませんでした。しかしながらサムスンやLGのLEDパッケージはLED照明器具に組み込まれ、日本の輸入販社によって会場に多数展示されていました。また台湾最大(世界第3位)の薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ(TFT-LCD)メーカーであるAUOグループも、LED照明部門の子会社の2社製品をほんの一部ですが紹介していました。また以前に、本コラム欄でも紹介した香港LED照明業界で最大手グループの1社といわれるNEO-NEONも出展しておりましたが、その展示されていた商品数は筆者の知るNEO-NEON製品のほんの一部でした。
 気になった点とは、韓国、台湾、中国でそれぞれ大手と言われるLED照明メーカーの出展規模が非常に小さく、アピールしていなかった点です。中国も韓国もそして台湾も派手なパフォーマンスが好きな国民性であり、それなりの豊富な資金と技術も有している企業ですからもっと積極的なPRと展示があっても良いのに・・・と思ったのです。
 消極的の理由として、今春に日本のLED照明器具の規格が発表されると噂されていましたから、直前の無認可製品での出展は避けたとも言えましょうし、日本市場が停滞していたこともあるでしょう。会場には中国語やハングル語を話す人々も多くいましたから、日本のLED市場や技術動向など情報収集もあったと思考します。製品作りに迅速と言われる中国や韓国そして台湾、今秋以降日本市場に本格的販売が展開されるのでは?と推察されます。
 
 LED Next Stage2010展示製品の半分は、輸入LED製品で占められていました。このことは確実に日本照明市場のグローバル化を示している訳ですが、しかしながらLED製品には未だ明確な標準規格がなく、展示製品は出展各社の安全判断に委ねているのが実情です。市場普及している製品には良否のバラつきが生じていると聞き及んでいます。日本も一体となって世界の公的機関でその標準規格制定を進めていますが、1日も早く制定され、安全で品質確かなLED製品の普及を願う次第です。

図8
図8 SEOUL SEMICONDUCTORのブース

図9
図9 AUOグループブース内にWellypowerとLextar社の名が示されていました。RGBのLEDイルミネーション製品から、LED電球やLED蛍光管FLタイプ、さらにはLED器具やLED照明フラットパネルなど多様な製品を有していることがうかがい知れます。20世紀型照明器具の代替で、デザイン面での先進性は見受けられなかったですが、斬新なデザインでの市場導入が今後されるであろう注目の一社です。

図10 図11
図10、11 Luciというブランドで照明業界に参入してきたコンテンツ、IT情報化と共に多用認知されたこの「コンテンツ」(デジタルデータの中身という意味)という言葉を社名に用いて、今や商業施設や店舗向けLED内装照明演出会社として存在感を示しつつあります。アミューズメント施設のLED照明を手がけた後の2005年のJAPAN SHOP出展の頃から、本格的な内装向けLEDモジュールの販売を展開。会場では評判の薄型簡易防雨チャンネル文字(サムスン製チップ使用)など、使いやすく品質も良い製品群が展示されていました。

図12 図13
図12、13 昨年創業の新会社ドゥエル アソシエイツの出展ブース内。おしゃれに白と黒に統一された内装デザインに展示設置された中国製のLED照明器具、なかなか上質な仕上げでありました。このレベルの仕上げであるなら、品質に一過言ある日本市場でも通用すると思われました。また展示製品のデザインも、センスよくフィニッシュされており、中国にも照明器具プロダクトデザインを知るデザイナーが活躍し始めていると感じました。

図14 図15
図14、15 香港のNeo-Neon社、LEDパッケージから社内生産し、イルミネーション製品から住宅、施設、屋外のあらゆるLED照明器具を生産している。それらを全世界へ輸出している非常に大きなLEDメーカーです。その様相をまったく感じさせない簡素な小ブースでの日本初出展でした。新鮮なるデザインではないので、じっくり視察しないと見過ごしてしまうほどですが、LED電球から、各種幅広いLED製品が展示されていました。

 ヨーロッパからの出展品もありましたが、海外からの出展品の大部分は隣国からのもので、しかもその多くは最近創立し新規に事業展開しはじめた日本の輸入販社が取り扱っているものが多く、改めて再認識し驚いた次第です。前回の本コラムで紹介したLEDISON、エフェクトメイジもそうですし、SOFTRAY、テス・ライティング、コスモテクノ、SOFTRAY、サンジェルマン等々です。さらに日本市場に、新たなる新規性あるLED製品でビジネス展開をしようとする出展社も多数ありました。その中で筆者が特に興味を持った出展社を紹介します。
 台湾パビリオンに出展していたDiamontex社の、通電OFFにしても10分ほど弱光点灯し続けるという「オートデミングLED電球」と、同社の無線点灯方式の水中LED器具「エンジニアプラスチックLED水中ランプ」(ユニークな発想とシンプルな構成でのものづくり思考が伝わり、とても気に入った製品です)。前者は蓄電コンデンサーの原理を活用すれば可能で、後者は磁石活用の磁力線で電流が流れるフレミングの法則を活用したもの。共に省エネ光源LEDだからこそ応用できた製品で、私自身購入したく思った次第です。台湾から販売取引先を求めて出展したこのDiamontex社の新規性ある製品、日本市場で出会えること楽しみです。

図16 図17
図18
図16、17、18 各種の輸入LED製品を展開していたブース事例
(図16:SOFTRAY、図17:テス・ライティング、図18:サンジェルマン)

図19 図20
図19、20 台湾パビリオンエリアに出展していたDiamontex社のブースと、注目した「オートデミングLED電球」(下)と「エンジニアプラスチックLED水中ランプ」(上)。

 今年も盛況であった第3回目のLED Next Stage2010、次回は2012年3月の開催になります。そして来年2011年3月8日からはライティング・フェア2011が開催、どのように進化したLED照明が出てくるか楽しみです。

 LED Next Stageの開催年には、その1ヶ月後のドイツ・フランクフルトで世界最大の照明展が開催されます。今年の春は、この2つの照明展を視察することが楽しみであり、また大切な学習でもあります。そのフランクフルトの照明展で留意した事柄7つについて記します。 1、Emotions 2、有機EL照明世界デビュー年 3、新規参入(2008年と対比して) 4、Zhaga(ザガ) 5、在来光源器具のLED化 6、アジア 7、SSLへの人材育成 の7点です。

フランクフルト照明展を視察して/その1 Emotions

 4月11日から始まった世界最大の照明展「Frankfurt Light+Building2010」、今年も盛大に開催(4/16までの6日間)されました。隔年開催のこの照明展は2000年から始まり、今年で6回目で、内容も時流に合わせ充実してきています。今年の様相は省エネ・環境に焦点を置いたイベント(Green Buildingと名した企画展示を新設し、ヨーロッパのビル施設への省エネ提案やエネルギーと照明に関する各種のセミナー)を取り揃えていました。会場構成は今回も大きく2つに区分けされており、会場中央を走る鉄道線路をはさんで、東側が照明器具メーカーの出展ホール、西側が照明と関連する電気エンジニアリング&建築オートメーション関連(建築・インテリアの照明部材および設計等)です。展示会場はForum0と表された会場を含めてHall1~11までの12の各建物で構成され、連絡通路で結ばれています。会場端から端までの移動には、30分ほど要し、6日間の期間中に全体を視察することが難しいほど広大な展示会場となっていました。

図21
図21 Frankfurt Light+Building2010の会場マップ

図22 図23
図24
図22、23、24 会場内の連絡通路と照明会場となる東側中央の広場の様子

 照明のデザインを生業としてから海外照明展を毎年視察に行くようになり、はや35年にも(途中4回ほど欠ける)なってしまいました。このFrankfurt Light+Buildingは開始年の2000年から見続けてきましたが、会場規模は年々大きくなり今年は昨年より1ホール増えました。いやはや、本当に広い会場です。東京ビッグサイト全館の展示面積の5倍ほどあるかと思われます。そのフランクフルト会場の出展各ブースを視察して廻り、全館通じて確信したことはLED照明が会場の主要花形製品として演出展示され、中心商品となっていることでした。会場はLED、またLEDでありました。そのLEDですが、前回の2008年と明らかに異なる点があります。それは実際に使用できる状況=実用空間をLED照明器具で演出(仮設空間を設置して)していたことです。しかもその目的は省エネ効果の掲示でなく、快適性の表示(訴求)であり、情感豊かな演出の可能なLED照明のすばらしさを、実演していたのです。つまりDemonstration ModelをLED器具のみで実用演出していたのです。このことは前回までのLED光量不足をカバーする展示方法と異なり、実用の為の光源&器具であることを印象付けし、本格的な市場到来を示していると受け止めました。
 この情感溢れるLED照明演出は会場のそこかしこで見られましたが、最も顕著にいろいろな演出実践していたのが世界を代表する照明メーカー、オランダのPhilipsでした。多くの情感、つまりEmotionsが今回の視察で最も強く感じた事柄です。

 欧米の人たちは日本人や中国人などと違い、明るい空間を特に要求しません。必要最小限の明るさが適所にあればよしとする傾向にあります。最近の明るくなったLED光源の光量で、一般的使用が可能と判断し、実用可能と多様なる器具化を試み始めたようです。
 LEDは小型軽量の発光体であり、器具の小型化と照明演出の適所照明に適しています。まして強い煌々(こうこう)とした光を好まない欧米人の嗜好から、適度の光量は快適でありローボルトで点灯するLEDは240V点灯の既存光源より格段に安全であります。日本市場が要求する明るさのおよそ半分程度でよいと、筆者の経験・知識から判断できます。省エネ指向もありますが、このことからもFrankfurt Light+Building 2010でLEDは実用化に向けいっせいに展開し始めたと思います。会場の各ブースでは個性豊かなLED照明器具達が、各種の用途提案を試みていたのです。それは1ヶ月前のLED Next Stage 2010の省エネ効率を展示の主としたことと、趣が異なると感じたのです。

図25 図26 図27 図28 図29
図25、26、27、28、29 Philips社のブースとLED照明による
「Emotions」にあふれた事例

図30
図30 Delta Light ブース内のLED照明演出空間事例

図31
図31 Hall5.1~6.1にあるこれからのトレンドを紹介した企画
「Trends 2010-11」 のLED照明演出空間事例

フランクフルト照明展を視察して/その2 有機EL照明世界デビュー年

 LEDの照明演出事例がそこかしこで見られた会場に、OLED=有機EL照明は希少(全出展社約2,100社の1%弱)出展社数でしたが、大きな注目を集めていました。このOLED、前回のFrankfurt Light+Building2008までの展示方法とは大きく異なり、パネル単体の展示からLED同様に照明器具化した展示が多くなったのです。10年ほど前のLEDの出現導入時とは明らかに異なる様相(LEDは10年弱年数がかかったのに対し、OLEDは1~2年の短期間で器具化)をしていました。
 確かに現在でのOLED製品は一般購入価格として、まだまだかけ離れて高額で、しかもその品質は実用化レベルで安定しているとはいえない代物です。今までの観念でしたら未だテストピースであり、器具化など思いも寄らないことでありましょう。しかしながらその代物を器具化し出展していたのが、名だたる大手企業やその関連企業、さらには公的事業体から支援受けたベンチャー企業であり、しかも然るべき事業形態(グローバルビジネス)を念頭に取り組む姿勢がうかがい知れ、驚いたのでした。
 "OLED照明器具"の出現、未だ輝度、光色、サイズとも未熟であり、照明器具化には2年ほど先と予測していた小生ですが、欧米大手企業の真剣なる取り組みを感じた今年のフランクフルト照明展でした。有機EL照明世界デビュー年、2つ目に留意した事柄でした。
 補足ですが、会場展示のOLED照明器具には各国の第一線のデザイナーが活用されていたことも気になりました。それは既存の光源代替提案ではなく、21世紀型の新提案を真剣に試みている証であると受け止めました。

 今後OLEDの基礎研究は光学系や有機材料系、さらには化学系の各社が積極的展開を示し、さらに応用研究と実用研究が各種の産業界で急速にしかも世界的に実施されましょう。そしてそのスピードはLED照明より短期間で、次回2012年のフランクフルト照明展では数多く新たなOLED照明が見られるでありましょう。
 
 LED同様にOLED照明も日本は世界トップランナーで研究開発してきましたが、近隣諸国や欧米の様相は一挙に実用化を試み、市場導入をと考えているように思えます。今後いかに日本でOLED照明の実用化を促進するか、真摯に取り組まねばならないと思われます。近隣諸国や欧米では、国家的戦略で速やかに自国内実用化を進めています。日本の今までの一研究所や民間企業の力量に委ねる時代でなく、国を挙げて次代の産業形成をすすめること、世界の潮流のようです。

図32
図32 Philipsの有機EL展示事例

図33
図33 IngoMaurerのブース内有機EL展示事例

図34
図34 Osramの有機EL展示事例

図35
図35 Zumtobelの有機EL展示事例

図36
図36 PhilipsグループカンパニーのModular(ベルギー)の有機EL展示事例

図37
図37 Blackbody(フランス)の有機EL展示事例
(Philippe Starckデザインのスタンド)

図38
図38 Verbatim(三菱化学)の有機EL展示事例

図39
図39 OLED JAPAN(NEDO)の有機EL展示ブース外観

図40
図40 OLED JAPANブース内の有機EL照明の明るさに注目する来場者達

図41
図41 OLED JAPANブース内で用途提案と各種のOLEDパネルの紹介
(右端は300ミリ角の世界最大有機ELパネル)

図42
図42 OLED JAPANブース内に展示された
NECライティングの有機EL照明コーナー

図43
図43 OLED JAPANブース内に展示された
パナソニック電工の有機EL照明展示コーナー

OLED JAPANと名したNEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の出展ブースには世界トップの輝度と品質を誇る日本の有機EL照明が輝いており、世界の照明関係者を驚かせていました。この有機EL照明パネルは山形県の有機エレクトロニクス研究所で制作されたもので、一昨年の「ライティング・フェア2009」でのOLED CAFEをアレンジし、移設したブースです。今回の移設ブースには新たにパナソニック電工とNECライティングの新作有機ELパネルも展示され、日本の技術の高さが認知されたOLED JAPANのブースでした。

 次いで留意したことは3番目の「新規参入(2008年と対比して)」というキーワード、つまり初めて聞く出展社が非常に多くなったことです。それらはLED光源を用いた製品群で出展ブースを照らしていたのです。その国別の差はなく、各国ごとにLED照明事業を新規展開しようとする企業が表出してきたことを示しているようです。世界の照明界が変わり始めようとしていることが実際に肌で感じられました。 この新規参入の出展企業と、そのLED展示の様相は残りのキーワードを含めて次回の続きとします。

照明技術・デザイン最新事情
執筆者:落合 勉

照明デザイナー
M&Oデザイン事務所代表
LBA JAPAN NPO 理事長、愛知県立芸術大学非常勤講師、照明文化研究会 会長


1948年愛知県三河生まれ、ヤマギワにて照明を実践。
1991年横浜にてM&Oデザイン事務所スタート、現在に至る。
2001年からLED照明デザインワークに特化しての活動を展開、そして2006年からはOLED照明普及にも尽力。
2006年のALL LEDの店舗空間、2008年のALL LED街あかりや住空間、2009年のALL OLED照明空間など手がけ、SSL快適照明を探求提案。
器具のプロダクトデザインや照明計画などを行う傍ら、国内外の照明関連展示会や企業などを訪れ、グローバルな照明最新情報をインプットする。コラム(http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/index.html)参照。
趣味は古灯具探索で、日本のあかり文化の認知普及活動を展開中。
2009年7月、Light Bridge Association JAPAN NPOを設立し、理事長に就任。
次世代のあかり文化を担う「あかり大好き人間」の育成を目指している。

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