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連載コラム

第22回 Light + Buildingの視察(後編)と2つの研究会(LEDとOLED)

[ 2010年8月26日 ]

はじめに

 東京・上野の東京国立博物館・平成館にて開催されている展覧会「誕生!中国文明」を見てきました。どのような古灯具が展示されているか、確かめたく鑑賞してきました。
 中国大陸を西から東へながれる中国3大河川の一つ、黄河の中流域に位置する中国王朝発祥の地、河南省で出土された数々の名品が展示されて中国文明の誕生と発展の様相が紹介されていました。紀元前2000年頃の中国王朝最初といわれる夏(か)の始まりから、その後の商(殷)・後漢・魏(三国時代)・北魏・北宋と、その北宋が滅亡する12世紀頃まで歴代の王朝の都は河南省に置かれ、この間、河南省は中国の政治、経済、文化の中心地として栄えます。この展覧会は「王朝の誕生」、「技の誕生」、そして「美の誕生」という3つのテーマで構成され、青銅器、金銀の器や漆器、さらには陶磁器など中国文明誕生時の工芸技術の高度な様が見られました。今回は中国河南省にある博物館の一部の名品出展と聞き及んでいましたが、それでも感動しました。できたら現地博物館に行き、素晴らしい工芸品の数々を直に拝見、学習したく思った次第です(展覧会は9月5日まで開催)。

 その堪能した展示会に感動した数日後の日経朝刊(8月4日)で、現代の現実的実情を示した記事を読み、改めて今年前半の中国訪問時の事柄を思い浮かべたのです。その記事見出しには"中国、外資悩ます「自国優先」"とあり、8年前に世界貿易機関(WTO)加盟した中国だが、国際ルールに従う商取引は不十分で、むしろ経済ナショナリズムが台頭してきていると指摘していました。また記事には、全米の商工会議所が7月下旬発表した報告書のことが紹介されており、「中国が2006年に打ち出した『自主刷新』運動は自主技術育成への政策だが、外資から見れば歴史上、類を見ない規模の技術窃盗計画と評した」とありました。確かに米国は、中国をWTOに知的財産権問題で提訴するという話題を何度か数年前から聞き及んでいましたから、この記事指摘も一理あると思いながら今年1月のことが脳裏をかすめました。
 今年1月の中国訪問時に、新幹線「こまち」の改良型新幹線を見たいと思っていました。何しろJR東日本から車両「こまち」を購入し、さらにドイツ・シーメンスのTGV技術を加えて時速300キロ列車に完成させたと現地通訳者から聞いたこの改良型、さらに昨年から中国版新幹線として『中国発の「国産」新幹線』とも発表されたりしていましたから、見たいと願っていました。 しかし残念ながら新幹線の専用線路は見ましたが車体を見ることができませんでした(日本のように頻繁には走行してないようです)。ところで中国では、この改良型を国産新幹線として発表し、しかもそれを海外(ブラジルの高速鉄道計画)に売り込んでいると聞きますから、中国の商魂たくましさを感じます。

 LED照明についてもこの中国パワーには驚きます。LEDランプも手作りで自製すると自慢するほどの器用な中国の人たち、今ではLEDチップ製造・MOCVD装置も導入し、自製化を推進しています。世界の工場と評され、LED照明器具もOEM生産し、それを複製しアレンジし世界に供給するパワー。今春のフランクフルト照明展Light+Buildingの会場にはその中国製器具が多数見られました。 その照明展視察報告として前回のコラム欄では、留意した事柄7つのうちの2つ、「Emotions」と「有機EL照明の世界デビュー」について解説しました。今回はその後編として残りの5つ「新規参入(2008年と対比して)」、「Zhaga(ザガ)」、「在来光源器具のLED化」、「アジア」、「SSLへの人材育成」を説明します。そして最近注目した2つの研究会(LEDとOLED)のことも併せて記したく思います。

フランクフルト照明展を視察して/その3 新規参入(2008年と対比して)

 世界最大の照明展「Frankfurt Light+Building2010」の会場は広く、東京ビッグサイトの国際展示会場5倍ほどの展示面積を有しています。しかも各出展ブースは日本の展示に多い、通路から展示品全体が見渡せる形態ではなく、個々の出展製品の特性を引き立たせる個別部屋を造作し、形状だけでなく光の演出効果(配光分布や光質)に注力した展示形態が多いのです。そのため各ブース内に入り、各部屋を見て廻るので視察するのに歩き続けなくてはなりません。しかも時間も掛かるというわけです。その為か継続して出展する企業の展示会場の場所は、顧客のために変更することは少なく(探す手間が省け)、毎回同じ出展位置であることがほとんどです。だから長年来場してきた筆者も、それぞれのホールにどこの企業が出展しているかをほぼ記憶しています。

図1
図1 Frankfurt Light+Building2010の会場マップ

 しかし、今年のLight+Building会場は勝手が違いました。何しろ聞いたこともない企業名が会場内のそこかしこに出展していたのです。特にHall4にはLED製品を主に展示している企業が多数あり、半数近くの出展社は前回と代わっていました。その多くはLED照明製品を取り扱う社歴の若い企業が多いと感じられました。また国別ではドイツからの出展はもちろん多いですが、新規出展という観点では、イタリアやスペインさらには韓国・台湾などドイツ以外の企業が目だったHall4でした。
 会場全体の国別出展社数ではドイツが858社と、全体2,177社の40%も占めてはいますが、LED製品の出展ではドイツ以外の国々が目立ちました。特に韓国や台湾は顕著で、しかも展示ブースも出展製品ごとに配慮した充実の展示が見られ、世界販売へ積極姿勢を垣間見ることができました。日本の出展ブースが、東芝以外は小ぶりで簡素な印象であるだけに、韓国・台湾の積極姿勢をなおさら感じてしまいました。この韓国・台湾出展製品ですが、提案新規性はないので留意するまでではありませんでしたが、展示点数ボリュームの大きさや目立つ展示ディスプレーは世界にアピールする強い意気込みの証といえましょう。

図2
図2 Hall 4.2 Verbatimというブランドで初出展した三菱化学.
LEDモジュールやLED器具等(OLEDパネルも)を展示していた。

図3 図4
図5 /><br />
<span class=図3、4、5 Hall 4.2会場内に大きなスペースでLED各種照明器具を展示していた初出展の東芝。
LED電球も積極的にアピール展示しており、注目されていました。

図6 図7
図6、7 Hall 4への連絡通路で積極的に自社展示ブースへ誘導する東芝の案内ガールと案内看板(左側)。

図8 図9
図10 /><br />
<span class=図8、9、10 韓国からは初めて出展するLEDメーカーが目立ちました。
その中でもこのLG Innotekはチップから、モジュール、さらには完成品までと多様な展示を見せていました。

図11
図11 LGの製品説明パネル。タッチパネルは、各種の紹介画面が触れるだけで変わり、
「最新テクノロジーのある企業」と信頼性を認知させるでありましょう。

図12
図12 Hall4.2に大挙して出展していた韓国パビリオンの様相

 ヨーロッパ企業もLEDを企業ネームにした(○×LEDとかLED×○などとアレンジ)ベンチャーと思われる出展社も目立つLight+Building2010ですが、それらの企業の取り扱い製品にはMade in Chinaのものも少なくなく、中国製が浸透しているとうかがい知りました。
 尚、新規出展のブースで異彩を放っていたのが京都の番傘メーカーで、LED照明ではありませんが竹と和紙のペンダントは、注目を集めていました。

図13
図13 Hall 1.1に初出展した京都の和傘屋
「日吉屋」の照明器具「古都里(ことり)」展示の様子

フランクフルト照明展を視察して/その4 Zhaga(ザガ)

 照明業界における各国主要企業が提唱するLED照明の標準仕様づくりの任意団体Zhaga Consortium(ザガ・コンソーシアム)が2010年3月に設立されました。このZhagaという名称を聞いたのは、会場視察時に取材していた時でした。 LED照明への主要部材(モジュールと駆動回路など)の機械的特性や光学特性、さらには電気的特性、熱的特性などを対象に、主要企業間での製品に互換性を形成しようとする試みです。この団体、日欧米の主要照明関連企業9社(Acuity Brands Lighting、Cooper Lighting、OSRAM、パナソニック、Philips、Schréder、東芝、TRILUX、Zumtobel)で発足し、今後はLED関連部品メーカーなどにも広く参加を呼びかけると聞き及んでいます。
 21世紀の主要光源と認知されるLEDは、今後も新技術による新製品が開発発表され、市場導入されましょう。それも迅速に! 従来の光源や照明器具の世界標準化には国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission、IEC)が、取り決めを実践してきました。しかしながら世界各国の標準化調整にはそれなりの検討期間が必要で、現LEDの開発スピードには遅れがちといわれます。このZhaga、安全で良品質なLED製品による市場形成のために、欧米の主要照明企業がイニシアティブを取って立ち上げたといえます。

 日本は世界のどこの国より早く量産化技術を開発し、良質なLEDチップ、デバイス、モジュール製品を展開してきました。それは世界トップランナーでのLED基礎研究とその応用研究の賜物でありました。しかしながら実用・普及化への研究・協議(市場への製品導入)は、この数年慎重であったといえます。逆に20世紀の光源で世界の照明界を席捲しつつも、新光源LEDで遅れを取っていた欧米主要企業が実用化に積極的姿勢を見せ始めたと言えます。その顕著なる変化の兆しは2004年のフランクフルトの照明展でした(過去コラムを参照)。欧米の主要照明メーカーは実用化へ取り組みます。そしてLED照明標準化活動にも積極的になります。それも急速に、です。
 今年のフランクフルトの照明展会場では前回のコラムで記したごとく、空間でのLED実用化を表した展示でした。また日本のLED照明市場は日本製LED製品とともに隣国の製品が多数販売されているとも記しました。
 今後のLED照明はZhaga(ザガ)による世界普及化と関連し、市場形成も変わっていくこと(今までのように日本がLEDトップランナーとは言えない状況)が予想されます。LED照明の実用時代になりつつある日本の照明市場、この大きな流れにどのように対応すべきか?気になります。

フランクフルト照明展を視察して/その5 在来光源器具のLED化

 Frankfurt Light+Building2010の会場は、LED照明の実用化を表出していたと何度も述べておりますが、その顕著な事柄として、20世紀の代表的光源の白熱電球やハロゲンランプ、さらには蛍光ランプ搭載のヒット商品の数々が、光源をLEDに取り替えて展示していたことでも証明されましょう。
 世界の照明器具メーカーとして認知されているイタリア・アルテミデ社のスタンド群、さらには北欧デンマークで有名な老舗メーカー、ルイス・ポールセン社(タルゲッティのグループ会社)の製品群など、LED切り替え製品と説明を受けなければ判らないほど従来と変わらない光を提供していました。自然で快適な照明環境を提案できる照明器具となっていたのです。さすがに良いものを大事に永く使いこなすことで定評あるヨーロッパ人、今後は光源を代えた名作が、LED器具として増えることでありましょう。

図14 図15
図14、15 アルテミデの展示ブースとローボルトハロゲンランプからLED光源になった名作のスタンドたちのコーナー

図16 図17
図16、17 ルイス・ポールセンのLED光源代替製品

フランクフルト照明展を視察して/その6 アジア

 Hall 10.1を占有していたのは400社ほどの出展社で盛況であった中国メーカー専門館で、展示の主役はLED製品群でした。各種のLED電球からLED光源を組み込んだ多種多様な照明器具製品が会場を埋め尽くしていました。低価格のLED懐中電灯から、丁寧な仕上げで配光もきれいな高品質な施設用器具まで、いろいろでした。この中国メーカーの製品群は、前回よりも確実に良品が多くなっており、数年後には粗悪な製品は少なくなると予想されたHall 10.1の中国館でした。
 中国メーカーは、このホール以外にも別のホール(Hall 4.2など)でも出展ブースが見られましたし、またOEM製品で他国からの出展社ブース製品にも含まれていました。現実に、世界中に輸出していることが推察されます。
 またアジアからの出展社は前回より増えており、中国290社、香港53社、台湾72社、韓国26社、日本13社でした(前回2008年は中国282社、香港63社、台湾60社、韓国15社、日本7社)。特に韓国は目立って増えたと感じました。またタイやインドなどのメーカーも出展しており、確実にアジアンパワーが増大していると感じました。

図18 図19
図20 /><br />
<span class=図18、19、20 Hall 10.1の中国メーカー出展ブースの様相

図21 図22
図21、22 韓国の照明メーカーの様相。LED照明器具で展開。

図23 図24
図23、24 台湾の大手LEDメーカーEverLight社の展示ブースとそのLED製品群。

図25 図26 図27 図28 図29 図30
図25、26、27、28、29、30 日本メーカーの出展ブース
 パナソニック(図25)、日亜化学工業(図26)、シチズン電子(図27)、遠藤照明(図28)、
三菱樹脂(図29)、スタンレー電気(図30)

フランクフルト照明展を視察して/その7 SSLへの人材育成

 経済産業省は日本産業界成長要素の一つとして昨年末に「新成長戦略(基本方針)」(経産省ホームページより)を発表しています。その中で固体素子照明(SSL:Solid-State Lightingの頭文字で、LEDやOLEDを示す)分野の市場構築を進め、「次世代照明のLED照明と有機EL照明の100%化」を目指すと明言しています。
 そのSSL照明ですが、フランクフルトの照明展で多数見られたことはすでに記してきましたが、これらの展示説明員は20歳代や30歳代が多く、ベテラン・トップセールスマン(40歳以上)はあまり見かけませんでした。これは営業分野だけでなく開発技術や研究分野においても若い人たちが多く、SSLを理解できる人材の少なさを示していると言えましょう。
 特に中国や韓国、台湾からの出展ブースが急増した今回のフランクフルト照明展でしたが、ほぼすべてがLED照明を主に展開していましたし、その説明員の多くが35歳以下(女性も多い)でした。 LED照明の次に市場参入が確実化されている有機EL照明ともども、SSLの急速な世界照明市場形成化に20世紀型照明知識では不十分です。照明発光原理やその器具化への機構や操作性は従来光源とは異なります。またその照明演出手法への留意点も20世紀型光源と異なることが多く、SSLの基本知識や実用への失敗しないためのチェックなど知っておかねばなりません。

図31
図31 韓国LG Innotekのブースで接客説明する若い社員

図32
図32 企画・開発が台湾、生産が中国、販社はドイツの
HEP社、そのブースで説明する台湾の女性

 Frankfurt Light+Building2010を視察して今後SSL市場が急速に拡大形成されるに、多様な生活環境を体験したミドルやベテラン人材のSSL理解者も必要と考えました。次代を担う若者のSSL人材教育も必要ですが、20世紀型光源で幅広い知識を有してきた照明経験者も、SSL照明の基礎知識を習得され、急速な市場展開を見せるLED照明の適正な普及推進に寄与すべきでもあると考えるのです。さらに今後、日本のLED製品が世界に広く認知されるためにも、より良い実用品創出にもSSL理解者の育成は肝要と考えるのです。

 以上が、今春ドイツ・フランクフルト照明展で筆者が留意した事柄(7つの解説)です。続いてSSL照明の新たな注目する動きとして2つの研究会「有機EL研究会」と「LED応用研究会」のことを紹介します。

有機EL研究会 (高分子エレクトロニクス研究会と合同で)

 「有機EL照明の世界デビュー」と紹介した前出のフランクフルト照明展2010の報告内容で、有機EL(エレクトロルミネッセンスの英語頭文字)の照明分野が急速に市場への導入形成化を示そうとしていると記しました。20世紀の世界3大ランプメーカーであるGE、OSRAM、PHILIPSも競ってサンプルを公開し、さらに実用サンプル提供に拍車をかけているのです。この有機EL照明ですが、日本は世界トップランナーであると、このコラム欄で何度も紹介してきました。しかしそれは基礎研究や応用研究のこと(実用研究とは違う)ですが、その基礎・応用研究の発表会=有機EL研究会が、高分子エレクトロニクス研究会と合同で開催されました(主催:社団法人高分子学会)。
 専門研究者たちの研究発表、専門用語が飛び交う解説には照明デザインを生業にしている筆者には難解でありました。しかし光に関する内容でもあり、興味深く聴講してきました。
 合同研究会の趣旨には「有機EL素子の実用化以降、有機エレクトロニクスの対象は有機太陽電池、有機トランジスタと大きな拡がりをみせています。有機エレクトロニクス材料という観点から、通電性、電荷輸送性、発光及び光吸収といった物性を踏まえた材料設計を行うことは、様々な応用をする上での基本となります。本研究会では、有機エレクトロニクス材料の半導体としての機能に着目し、各分野で活躍の講師をお招きし、有機エレクトロニクス材料の可能性と共通課題などについて幅広く議論をしていただき、今後の研究開発の動機付け、方向付けの一助となることを目的として企画しました。」とありました。以下、研究発表の中から筆者が注目した事柄について記します。

 飛行機や自動車の軽量化への実用新材料として話題になっている炭素繊維、いわゆるカーボンナノチューブに関する研究開発は、日本で盛んです。そのナノカーボン素材の電子デバイス応用研究内容が今回の合同研究会で発表されていました。 現在の電子デバイスにはSi(シリカ)を活用した薄膜加工のものが多いのですが、炭素のみの電子デバイスが実現できれば、究極のクリーンデバイスといわれ、地球温暖化対策や環境問題対処などに大きな貢献となりましょう。今回の研究会では金属層を使用しなくても電極になるカーボンナノチューブゲルが創製され、その有機トランジスタの研究内容が紹介されていました。今はまだわずかな電気エネルギー対応の研究段階ですが、更なる材料基礎研究もされ、機械的・電気的劣化のない高効率エネルギー対応デバイスになれば、まさしく実用の有機LEDとなりましょう。 これはすごいことだ!と思いました。実際に解説発表された映像では、微弱でありますが発光されていました。 (理化学研究所 基幹研究所の福島孝典氏『カーボンナノチューブゲルの創製とそのソフト電極材料への応用』研究発表の聴講より)。

 ところで現在、有機ELをLEDと区分する上で、オーガニックLED=OLED(オーレッド)と称していますが、カーボンナノチューブのデバイスから生産されるLEDとなると、まさしく有機LEDです。『これは紛らわしいぞ、有機ELと混合してしまうなぁ~』と、聴講しながら分かり易い分類名称は何が良いか?と思い巡らしていました。 カーボンのLEDだからカーボンLED=CLED(シーレッド)ではどうか、分かり易くてよいかも、と思ったのですが別の研究者の発表を聞き、考えを改めました。その発表によると電子輸送の研究開発では、電子移動度の高い材料(有機ELデバイス)が創製でき、それは「有機発光ダイオード」になると説明されていました。しかもここでの有機ELデバイスは、カーボンナノチューブではなく他の元素の有機化合物(ビビリジン置換トリアゾール系/BpyOXD)でありました。(信州大学 繊維学部 准教授 の市川結氏「アモルファス性高速電子輸送材料の開発とデバイス応用」研究発表の聴講より)
 先のカーボンナノチューブでの研究発表時にCLEDなどと、有機LEDの呼び名を思い浮かべていましたが、他の元素の有機化合物でも有機LEDが可能となると「CLED」は不適当だ!『う~ん、有機化合物なるものをもっと勉強しないといかんなぁ!』と思いながら聴講したのでした。
 確かに現在のLEDは無機化合物(レアメタル等の金属による)量産品で実用されていますが、有機化合物によるLEDの量産化が、近い将来可能になったらLED価格は大幅に安くなり、世界中で一挙に普及しましょう。有機LEDの呼称、有機ELとどのように区分した呼称とされるか?益々気になってしまいました。

 「有機EL材料の分子配向と電気・光学特性」のテーマで研究開発を発表された山形大学大学院理工学研究科助教の横山大輔氏は、有機EL材料の発光分子を基板面に対し平行方向に配向すると、素子内部の発光取り出し効率をランダム配向に比べて1.5倍に向上させられると発表されました。従来がランダムであったことから、この研究発表は大いなる効率UPに寄与すると思いました。しかしながら発表に至るまで実施した実験研究は数多く(地道なる基礎研究の経緯も一部開陳)、成果形成までの長い道のりがうかがい知れました。

 他にも有機EL素子の開発動向や、有機ELの市場動向、さらには研究開発企業動静などの研究報告もあったりと有意義でありました。有機化合物による光産業形成化の可能性、大いに魅力あるものであること、改めて確信した次第です。
この合同研究会は7月23日、東京・神田駿河台の化学会館7階のホールで開催されました。尚、上記研究発表の画像や資料は各研究者の承認を得ていませんので掲載できませんが、概要だけでも皆様にお伝えしようと思った次第です。

LED応用研究会

 名古屋・名城大学内のレセプションホールにて、LED応用研究会の発足シンポジウムが7月27日開催されました。この研究会、赤﨑勇教授が来賓されると知り、心弾ませて会場に向かいました。
 このLED応用研究会の主催は財団法人科学技術交流財団で、この研究会開催の案内パンフには、「今後世界中の照明用光源としての普及が見込まれている白色LEDに特化し、超省エネルギー、超高演色性、長寿命、低コストを実現できる究極の光源実現のための技術開発の動向や、商品化の動向などについて情報提供・意見交換を...」と趣意が掲示されていました。
 開会には赤﨑教授から、GaN系pn接合による青色LEDの実現の意義と、その応用の大きな可能性を述べられ、今後の発展を大いに期待していますとのご挨拶がありました。そして2つの基調講演が続きます。

 最初の講演は、経産省の先端イノベーション拠点に選定された名城大学理工学部の上山智教授から、「LED照明技術の発展を目指して」と題し、LEDによる次世代産業形成への取り組み(名城大学のLED研究)をご自身の研究内容と併せて発表されました。その概要は学校法人名城大学を事業者とするLED共同研究センターに、エルシード(株)を設立し、超省エネルギー、超高演色性、長寿命、低コストを実現できるLED照明の技術開発の実施を推進する内容でした。提唱する蛍光基板を用いた新方式の白色LEDや高効率近紫外LEDの開発は、現在普及展開されているLED(サファイア基板上に窒化物半導体層による青色LEDと蛍光体とで構成されたもの)とは異なる構成および機構を持つLEDです。さらに光取り出し効果が大幅アップの組み合わせ技術と併せ、超高効率の新型LED生産化を進めているとのことでした。
 さらに、名城大学理工学部は世界最高水準の研究教育拠点を形成し、研究水準の向上と世界をリードする創造的な人材育成を図り、国際競争力のある個性輝く大学づくりをも推進しようとしています。次代の新素材原料といわれる「ナノカーボン」誕生地の名城大学、そのナノカーボン新用途開発研究と新型LED量産化と併せた次世代産業化プログラムは、ナノファクトリーと名づけられ実践展開を進めているとのことでした。
 講演後の聴講者からは多くの質問があり、関心と期待の大きさがうかがい知れた講演でした。早期の新産業形成を願うのでした。

図33
図33 LED応用研究会開催の挨拶をする名城大学
理工学部研究科 赤﨑勇教授

図34
図34 上山智教授から紹介された名城大学LED共同研究センターの概要

図35
図35 蛍光基板を用いた新方式の白色LEDの解説図

図36
図36 近紫外LEDの高効率化を示した解説図

図37
図37 名城大学のLED研究への取り組みを示した図

 LED応用研究会の二人目は、「LED Museum 21(名古屋に21世紀型LEDミュージアムを!)」の題目で、講演者は筆者です。その講演概要は「日本はLEDの研究開発については世界のトップランナーであり、中でも名古屋は窒化ガリウムの青色LEDが生まれたところであります。そして今日、白色LEDへと進化し、照明に多用されています。本講演では最新の世界LED照明の動向等を紹介し、LED照明実用化のための人材育成の拠点となるLED Museum開設の必要性を提言します。」でした。 筆者は本コラム内で自身設計のLEDの空間照明事例やプロダクト製品も紹介してきましたが、講演では未紹介の各種事例をお見せし、さらにLED照明ノウハウも話しました。また永年海外の照明展を視察して省エネ照明への変貌理由や背景、さらに欧米のLED光源への取り組み変遷についても映像で示しました。そしていかにLED照明を学習すべきかのポイント等をも提示し、最後に筆者自身の実践経験からですが、LED照明は20世紀の光源と異なりその基礎知識の習得はもとより照明計画の違いも学習すべきと考え、革新続けるLEDの21世紀型研修学習センター=LED Museum(人材育成の為)、その必要性を提言したのでした。

図38
図38 (以下すべて筆者の講演データより)
2008年のドイツ・フランクフルト照明展のオスラムブースでのLED照明システムの事例

図39
図39 2009年の中国のLED照明産業センターの地区マップ

図40
図40 2009年の韓国サムソン自社新オフィスビル。照明はすべてLED

図41
図41 日本照明器具工業会が想定するSSL照明
(「照明器具業界の新成長戦略」より抜粋)

図42
図42 筆者が提言するLED照明の普及化4つのポイント

 講演終了後の名刺交換会で、いかにLED基礎知識と照明基礎知識を学習できるか?の質問を複数の聴講者からいただきました。それについては、筆者が理事長を務めるLight Bridge Association JAPAN NPO(あかりの架け橋)でその研修プログラムを作成中です、とお伝えしましたが、間近に形成されつつあるLED産業やそのLED照明環境創出に備え、学習する真摯な姿勢を知った名刺交換の懇親会でありました。
 さらにこの懇親会時に、筆者LED実践事例で紹介した『LED信楽』、滋賀県信楽焼産地でのLED製品化にも質問がありました。さすがやきもの産地多数の中部地方、陶磁器愛好家からの質問は真摯なるものでした。 信楽には3年間通い、次代を担う若手やきもの窯元らと製品化を研究進めてきました。世界初のLEDやきものであり、信楽で発明された透光性ある土(磁器ではない)等のLED照明作品作りです。やきもの談義で盛り上がった懇親会でもありました。

図43
図43 2009年のライティング・フェア出展した「LED信楽」のブース。試作品での出展。

図44 図45
図44、45 今年の3月青山にて行った展示会の様子。信楽焼のLED照明を多数展示しました。

 旧盆の夏休み8/6、九州・福岡県の小郡市にある七夕神社のお祭りを見てきました。日本全国からの思い思いの願いを記した短冊がこの七夕神社に送られてきます。それを地元の子供たちが一生懸命に竹にくくりつけていました。私も願いを記した短冊をくくりつけてきました。「来年の七夕、LEDで輝く竹でお祭りを!LED七夕!」と。 この日の七夕神社の夜空、天の川は素晴らしくきれいでした。

照明技術・デザイン最新事情
執筆者:落合 勉

照明デザイナー
M&Oデザイン事務所代表
LBA JAPAN NPO 理事長、愛知県立芸術大学非常勤講師、照明文化研究会 会長


1948年愛知県三河生まれ、ヤマギワにて照明を実践。
1991年横浜にてM&Oデザイン事務所スタート、現在に至る。
2001年からLED照明デザインワークに特化しての活動を展開、そして2006年からはOLED照明普及にも尽力。
2006年のALL LEDの店舗空間、2008年のALL LED街あかりや住空間、2009年のALL OLED照明空間など手がけ、SSL快適照明を探求提案。
器具のプロダクトデザインや照明計画などを行う傍ら、国内外の照明関連展示会や企業などを訪れ、グローバルな照明最新情報をインプットする。コラム(http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/index.html)参照。
趣味は古灯具探索で、日本のあかり文化の認知普及活動を展開中。
2009年7月、Light Bridge Association JAPAN NPOを設立し、理事長に就任。
次世代のあかり文化を担う「あかり大好き人間」の育成を目指している。

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