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連載コラム

「フランクフルトメッセ2004 Light+Building照明展から」(その2)出展製品動向

[ 2004年7月8日 ]

照明デザイナー 落合 勉(M&Oデザイン事務所)

 世界中の国々から11万人もの人達で埋まった世界最大の国際照明見本市、FrankfurtでのLight+Building2004を今春視察してきました。その視察感想を3回にわたり紹介しています。前回はその開催概要とLEDの出展・展示事例についてとりあげました。今回はその出展製品群の動向や会場内イベントについて紹介したいと思います。

 
1 Philipsの展示状況/2 Targettiの展示ブース


 2004Light+Building展には大きな指向変化が見られた......と前回の巻頭で紹介しました。その変化を一言でいえば"Color"色光のことで、多様な色が使われていた事です。数多くの色光が、会場のそこかしこに鮮明にしかも大胆に展開されており、この様相には驚きました。事前に「ある程度はカラフルな会場に変化するであろう」と想定はしていましたが、これほどまでとは考えていませんでした。実は昨年のミラノで開催されたINTELワ―ルドライトショーでも見られましたから......。ミラノでは一部の出展ブース程度でしたが、今回のフランクフルト会場での"Color"多用には圧倒されました。この"Color"化に来場者の多くも驚きと関心を持ったことでありましょう。

 従来の国内外の照明展会場では、白熱ランプや電球色蛍光ランプ等の暖かみを帯びた白色の光(陰影)演出が主で、会場全体は白を基調とした明るい展示空間で、出展照明器具も白やメタリックシルバー等の無彩色が主流で形成されていました。ですからシックで清楚な雰囲気の展示会様相でした。華やかさの創出といえば、ガラスや金属の鏡面に反射する輝き等できらびやかさを演出する形態でした。しかしこの展示会では、白色光だけでなく赤や青等の色光による華やかなカラフル演出が会場のいたる所で見られたのです。

 この"Color"化には2種類ありました。一つはLEDによるもの、他は蛍光カラーランプ使用のもので、まったく異なる2種の光源によるカラー競演が随所で展開され、新しい照明演出の時代を象徴しているようでした。今回のこの"Color"化現象を見て、今後の21世紀空間演出にはカラー化が促進されると感じ、従来とは異なる空間演出のデザイン力(照明にもインテリア、そして建築にも)が必要とされるであろうと再認識しました。

 
3 Osram社のカラー蛍光ランプ/4 キネティックのLED演出器具例


 この光によるカラー化には、半導体の照明業界普及が大きく影響しています。赤、緑、青の色光を発するLEDは名のごとく発光ダイオ−ド=半導体の光源です。このLEDが照明カラー化の源ですが、一昨年まで照明界にはこのLED現象は認知されていませんでした。このLED照明カラー化をいち早く手がけたのがカラーキネティック社で、世界のカラー演出物件を実践展開したのでした。日本国内でもビル外壁や店内のカラー照明演出等で見られるようになりました。しかし、照明業界ではそれ以前に半導体を活用していました。それはトランスメーカーで、蛍光ランプや高輝度放電灯(水銀灯やメタルハライドランプなど)の変圧器(インバータ)などに小型・軽量化や高性能化に有効利用してきたのです。これらの照明用通電パーツメーカーで世界的販路を有する企業(2004Light+Building展への出展社)が半導体光源(LED)活用製品を自社の品揃えに加えるのは自然のことで時流でありましょう。今春のフランクフルト照明展では、これらの通電パーツメーカーがそれぞれのトランス技術を活用し、種々のLED通電パーツ(モジュールやマルチトランス)を出展してきたのでした。

 
5 VLM社のモジュール/6 TridonicのLEDモジュール
(両社ともハイパワーLEDを使用した例。他にも多数出展あり。)


 展示モジュール等は、昨年のミラノ・インテル出展品より格段に使いやすく進化しており、在来の照明器具メーカーが簡単に器具搭載できるレベル内容で公開(会場にてその試作照明器具等が展示)されていました。自動車用ヘッドランプに採用化される程の明るさが得られる白色LEDを、生活空間用に活用するにはそれほど難しいことではなく、会場にはそのハイパワーLED活用化の紹介が随所で見られたのです。

 
7 日亜化学工業のLED展示ブース/8 豊田合成のLED展示ブース
 
9 自動車用ヘッドランプ(ハイパワーLED)等を展示していた豊田合成の展示
10 LumiledsのLEDモジュール


上の写真は世界3大LEDメーカーのブースや展示の概要です。
それぞれの主力展示はハイパワーLEDです。


 "Color"化のもう一つ、蛍光カラーランプのことを記しておきます。このランプ自体は以前からあり目新しいものではありませんが、技術革新や改善改良の組み合わせによって、使いやすいカラー演出システムが構築され紹介されていました。ランプはヨーロッパで一般普及している管径16ミリのT5蛍光ランプタイプ(T8も一部ある)で、直管形や環形にも展開し、色も赤・緑・青など7色用意されていました。この蛍光カラーランプ演出操作に忘れてはならない事項に調光点滅の簡素化があります。数年来のトランスインバータ化による小型・高性能化は、軽量化だけでなく調光や瞬時点滅化などスムーズ操作を容易にしました。(電子化による操作性の簡略化)さらに操作プログラムの向上とパソコン活用で、蛍光カラーランプの照明演出が簡単操作できるよう提案されていたのです。この蛍光カラーランプシステムは、LEDのカラー市場進出により改めて組成提案されたものですが、蛍光ランプの絶対的光量の多さ=明るさと価格ではLEDより優位であり、蛍光ランプの存在が明示されたと言えます。(数年後には同等に、その後はLEDが優位になると予想。)

 カラー化はLEDの普及が源と記しましたが、さらにLEDは従来光源の小型化も促進させていました。前回の記述で世界3大ランプメーカーとLED3大メーカーとは異なると示しました。従来光源が主力の世界3大ランプメーカーOsramとPhilipsにとって、ハイパワーLEDの出現は脅威でありましょう。特にOsram小型ローボルトハロゲンとPhilips小型のセラミックメタルハライドランプ(以下、セラメタと記す)は、ともに両社の主力光源の一つであり、圧倒的世界シェアを有している光源です。今後ハイパワーLEDが性能UPし市場に普及したら、これら2つの市場領域を脅かすことになるでしょう。さすが世界のランプメーカー、その対策ともいえる超小型ランプの品揃えが両社とも強化されていました。Osramのミニスターローボルトハロゲンの10W・20Wと、Philipsのメタハラ20Wタイプ(Mini MASTER CDM-Tm)ランプでした。今後器具メーカーはハイパワーLEDを含めた超小型ランプを生かした従来にない発想の新しい器具デザインを創出してくることでありましょう。今後の器具動向が楽しみです。来春3月の東京・ライティングフェアではそれらの新作器具が見られることでしょう。

 
11 Osramのミニスターローボルトハロゲン/12 Philipsのメタハラ20W


 今回の展示会での器具印象は"Improve"(改善改良)でありました。LED分野以外、展示製品から強いインパクトを受けたものは少なく、新製品開発に積極さが感じられませんでした。数年続いたドイツ市場の不況も影響しているようで、新製品開発への金型投資より、従来の主力製品の品質向上やアレンジデザイン提示が主流であったようです。それでも注目した新製品も多々あり、各種のイベント開催とともに活気あるフランクフルトメッセ2004のLight+Building展でした。その注目した製品群と人気を集めたイベントを紹介します。

 
13 LEDのピンスポット(Zumtobel) 14 新機能搭載のLEDダウンライト(Erco)
 
15 LEDワイヤー器具(Spectal)/16 T5FCLを用いた街路(ing.Castaldi)
 
17 偏光アクリルのT5FL吊り下げ器具(Targetti)
18 ガラスカバーの集合した吊り下げ器具(artemide)
 
19 折れた形状がユニークなT5FL器具(artemide)
20 T5FLが動くペンダント(movelight)


 FrankfurtでのLight+Building2004では、今年も各種のイベントが主催されています。コンペでは出展製品からデザインや品質、エコロジカルなどの面で審査するDesign Plus(デザインプラス)や省エネを重視した'Light of the Future'(直訳で未来の照明)展、さらには若いデザイナーや学生向けへのデザインコンペ発表の展示場などがありました。各イベントの場所はそれぞれの会場内出展ブースの間に設けられており、開催期間中の会場盛り上げに工夫(イベントコーナーを拡散)した配置になっていました。昨秋名古屋の国際デザインセンターで開催された「LEDケイタイあかり展」の選出作品を中心としたLED作品展'Frankfurt LED Extra Show'も展示スペースの提供を受けて出展していました。(Hall4.1)その出展作品の斬新なるデザイン性やオリジナリティーは、LEDの新しい使い方やパフォーマンス溢れる出展作品に来場した専門家たちから賞賛をうけていました。

  
21 LED展の会場風景/22 会場の展示ケース/23 好評の酒井俊彦出展作品
   
24/25/26/27
   
28/29/30/31

写真は、展示されていた作品の一部紹介です。
24 長根寛:SMART作品
25 細川修:ROLLING LIGHT
26 田邊麗子:TREKKING POLEのヘッド部
27 鈴木啓太:HI-LED Event Ticket
28 玉井俊二:CAND-LED LIGHTのヘッド部
29 塚越貞:The light on one night
30 舟橋辰朗:Conical cup

会場壁面には英文での29作品の紹介パネルが貼られていた。
31の写真はその一部です。


 フランクフルトメッセ・Light+Building2004の出展品について紹介してきました。その中で新鮮なる事柄(新技術やモダンデザイン)を主に取り上げてきましたが、出展内容はモダンなものばかりでなく、250年程前からの伝統的スタイルを継続しているクリスタルビーズシャンデリアやアンティークな木製やロートアイアン製の照明器具、さらには幼児向けなど様々な魅力ある商品も数多く展示されていました。構成の関係上省略してしまいましたが付記しておきます。

 
32 クリスタルビーズシャンデリアの展示ブース
33 子供用照明器具の展示ブース


 次回はLight+Building2004見本市開催期間中の、メッセ会場外の街の表情(照明イベント)などを紹介したいと思います。(続く)

照明技術・デザイン最新事情
執筆者:落合 勉

照明デザイナー
M&Oデザイン事務所代表
LBA JAPAN NPO 理事長、愛知県立芸術大学非常勤講師、照明文化研究会 会長


1948年愛知県三河生まれ、ヤマギワにて照明を実践。
1991年横浜にてM&Oデザイン事務所スタート、現在に至る。
2001年からLED照明デザインワークに特化しての活動を展開、そして2006年からはOLED照明普及にも尽力。
2006年のALL LEDの店舗空間、2008年のALL LED街あかりや住空間、2009年のALL OLED照明空間など手がけ、SSL快適照明を探求提案。
器具のプロダクトデザインや照明計画などを行う傍ら、国内外の照明関連展示会や企業などを訪れ、グローバルな照明最新情報をインプットする。コラム(http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/index.html)参照。
趣味は古灯具探索で、日本のあかり文化の認知普及活動を展開中。
2009年7月、Light Bridge Association JAPAN NPOを設立し、理事長に就任。
次世代のあかり文化を担う「あかり大好き人間」の育成を目指している。

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