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連載コラム

「フランクフルトメッセ2004 Light+Building照明展から」(その3)街の表情

[ 2004年9月15日 ]

照明デザイナー 落合 勉(M&Oデザイン事務所)

1 初めに

 世界最大の国際照明見本市、Frankfurt Messe/Light+Building2004を3回に分けて連載しています。初回はフランクフルトメッセの概容と出展の特徴を取り上げ、2回目の前回は展示製品群の動向や会場内イベント等を紹介しました。今回は最終回で、照明見本市開催期間中のフランクフルト市内やその周辺の街の様子などを紹介したいと思います。

 世界中から10万人以上の照明関係者がこの照明展を目的に集まるのですから、フランクフルト市当局もこの開催期間中、市内の照明演出や照明イベントには大いに配慮し、連日各種の催しが展開されていました。その規模・内容は今回さらに充実し、まさしく街を挙げての「ライティング・フェスティバル」でした。

 
1 フランクフルト中央駅の夜間照明演出シーン 2 旧市街地にある旧市庁舎レーマー


2 Luminale

 このフェスティバル、「Luminale」と名し前回の2002年度から開始したもので、観光名所の多い旧市街地やマインツ川辺を中心に、市内80ヶ所で各種の照明イベントが催されていました。それぞれのイベント会場へはLuminale Bus(無料巡回バス)が10分おき(16:00から)に走っており、夜9時頃まで明るい(トワイライト)時間帯を過ぎて暗くなった午後11時まで巡回してくれるのです。照明関係者だけでなく、一般観光者にもこの見本市開催中実施されるルミナーレは楽しいナイトツアーショーでもあります。下のマップ中央マイン川の北辺り(上)が旧市街地区です。


3 マップ左中央部がFrankfurt messe会場で、Luminale Busルート(黄線)の出発地点です。
 
4 世界的に有名なゼンケンベルク自然博物の外観ライトアップ
5 ゼンケンベルク自然博物館内での照明イベント
 
6(左上)/7(右上)/8(下) シルン美術館での展示作品
 
9 ライトアップされた住宅/10 ライトアップされたメイアンプラザ


 このルミナーレ・カテゴリーは、交通関係・都市景観・Art・ギャラリー・カルチャー・照明器具・照明インスタレーション・音......などの14に分けられ、多種多様のあかり空間を演出していました。ヨーロッパの街は全体に夜間は暗く、大都市フランクフルトにおいても日本や台湾の街のようなネオンやサイン灯は少なく、静かで薄暗いのです。ですからルミナーレによるライトアップ効果は、よりあかりの楽しさや美しさが強調・再認識され、フランクフルト照明見本市の存在をより魅力あるものにしていると言えます。


3 ガス灯のある街並

 ヨーロッパの街では、古式スタイルの街路灯をよく見かけます。それはアンティークのようなものから、時には新式のレプリカ製品のようであったりと注意して見ないと間違えてしまいます。特に郊外の住宅街などは築100年以上の建物が多く残っており、そのような街の街路灯には街並みに適応するよう配慮した街の明かりが(器具デザインも)工夫されています。時にはガス灯が使われていたりします。旅をしていて薄暗くなり始める頃、ガス灯の明かりに接すると、心が安らぎ、ホッとするのは私だけではないと思います。今回のフランクフルト滞在時に宿泊した周辺には、古い鋳物製のガス灯が使われていました。フランクフルト中心地からUバーン(中心地では地下鉄で市郊外では地上走)で30分ほど北に行った市のはずれ、とても静かでのどかな郊外の街、いや村といったほうが当たっているような、所(Niederusel)でした。築300年ほどの木造建築の家々が大事に手入れされ住まいにしている集落でした。宿泊の館までは駅から7〜8分ですが、駅前には村一番の1軒だけのレストランがありました。それを過ぎると、緑と土の香りのするガス灯の続く石敷きの道です。優しく照らす灯りは心地良く、一日の疲れが癒されていくようでした。

 
11 村一番の駅前レストラン/12 宿の前のガス街路灯
 
13 郊外の駅とUバーン/14 宿周辺の田園風景
 
15 宿の前入口周辺(中庭)/16 宿中庭から見える朝の景色
 
17 宿の前のガス街路ブラケット/18 Griesheimのガス灯 1

19 Griesheimのガス灯 2


 写真の17、18、19は同形のガス灯灯具ですが、18と19は前回のLight+Building展(2002年度)滞在時に宿泊した街Griesheimのものです。そこはフランクフルト市でしたが中央駅からSバーン(ドイツ国鉄郊外列車)に乗って10分ほどのマイン川に面した閑静な住宅街でした。ドイツは昔から石炭が採掘されていた為、ガス灯は多用されていました。その名残りもあって、古い建物が残る街にはガスの街路灯が愛用されているようです。あかり大好き人間の私にとって、ガス灯のある街に宿泊できることは、とても嬉しく喜びでもあります。


4 Ebbelwel

 村一番のレストラン(写真11)には、フランクフルトの名産「りんご酒」があり、愛飲されていました。このりんご酒、エッペルヴァイ(アップルワインのこと)と言ってフランクフルト市内ではEbbelwel-Express(りんご酒市電の名)があるほどで、フランク市民の自慢の飲み物です。この観光バスならぬ観光市電Ebbelwel-Expressは市内最大の観光名所旧市庁舎のある「レーマー広場』横からアップルワインケラー(りんご酒酒場)が数多くあるザクセンハウゼン地域、さらには動物園などの名所旧跡を、りんご酒を飲みながら一周できるという左党には嬉しい乗り物(土曜、日曜のみ)です。次回のフランクフルト照明展では、市内でのLuminaleとともにこのEbbelwel-Expressも楽しんでみるのも良いかと......。


5 温泉保養地

 もう一つ、フランクフルトに行かれたなら立ち寄り、できれば宿泊したい名所があります。フランクフルト中央駅からSバーンで30分程の近郊の町Bad Homburgです。フランクフルト郊外の高級住宅街ですが、この街はフランクフルト近郊の温泉保養地として中世の頃から栄えた町でもあります。現在も温泉保養地として賑わっており、この街の中央には美しい保養パークがあります。その中には治療用の本格的サウナ施設や、家族で楽しめる温泉レクリエーション施設タウヌス・テルメなどがあります。健康的でリラックスするにはこの街も又よろしいかと......。(付記:このパークには、ヨーロッパ最初のカジノもあります。)


6 ライティング・フェアに向けて

 フランクフルトLight+Building 2004について、Messe(見本市会場)のことや展示製品動向、そして市内のLuminaleや郊外の街のあかりなど3回連載で紹介してきました。今年のLight+Building展では照明業界に新しい指向を明示していました。21世紀の主要光源と認知されつつあったLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)が、新製品として開発展示品のメインになっていたことです。世界のLED先進国である日本において、今回のLight+Building展では多くの示唆を得たことと思います。確かに発光効率的には、充分とは云えない面も指摘されていますが、それでも現有性能でのLED開発製品市場は拡大伸張化を示しています。しかも世界規模で急速にです。今後このLEDを活用した製品(従来の発想延長でない)で斬新なる未知覚製品類が、日本発信で創出されることを願う次第です。この大きな時代の指向を示す時、来春3月に東京国際展示会場ビッグサイトにてライティング・フェアが開催されます。このLED先進国での照明展、世界の光産業分野(照明関係者はもとより)の人達から、今まで以上の注目がなされることでしょう。楽しみに期待する次第です。 了

照明技術・デザイン最新事情
執筆者:落合 勉

照明デザイナー
M&Oデザイン事務所代表
LBA JAPAN NPO 理事長、愛知県立芸術大学非常勤講師、照明文化研究会 会長


1948年愛知県三河生まれ、ヤマギワにて照明を実践。
1991年横浜にてM&Oデザイン事務所スタート、現在に至る。
2001年からLED照明デザインワークに特化しての活動を展開、そして2006年からはOLED照明普及にも尽力。
2006年のALL LEDの店舗空間、2008年のALL LED街あかりや住空間、2009年のALL OLED照明空間など手がけ、SSL快適照明を探求提案。
器具のプロダクトデザインや照明計画などを行う傍ら、国内外の照明関連展示会や企業などを訪れ、グローバルな照明最新情報をインプットする。コラム(http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/index.html)参照。
趣味は古灯具探索で、日本のあかり文化の認知普及活動を展開中。
2009年7月、Light Bridge Association JAPAN NPOを設立し、理事長に就任。
次世代のあかり文化を担う「あかり大好き人間」の育成を目指している。

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