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連載コラム

「JAPAN SHOP 2006を視察訪問して」(その3)展示ブースのあり方(環境共生とカラー)

[ 2006年6月30日 ]

照明デザイナー 落合 勉(M&Oデザイン事務所)

1. はじめに

 今年も春から続いた数々の照明展が6月中旬の台湾LED展で一段落終えました。私が世界の照明展を意識して視察するようになったのは1976年のハノーバーメッセからですから、今から30年前になります。それ以来主なる照明展をほぼ毎年見るようにしてきました。視察してきた照明展の中で、印象強く記憶しているものに3つの異なる照明展があります。それは1995年ハノーバーメッセ(照明館)、そして2003年東京・ライティングフェアと2004年フランクフルトLight + Buildingです。その理由ですが、1995年のハノーバーメッセは展示製品の急激な変化=省エネ光源(T8蛍光ランプ)の積極的展示に驚き、2003年の東京・ライティングフェアではLEDの器具化やLED照明演出の展示化に、そして翌年の2004年フランクフルトLight + Buildingでは、そのLED照明演出の著しい増加にそれぞれ驚いたのです。この3つの照明展の変容への注視理由は、社会ニーズから市場ニーズを先取りしての有り様であったことで、特にLEDの動向にはより注視したのでした。他の世界(照明界だけではなく)の方々も注目されたことでしょう。

 そのLEDの今後を占う意味で今年留意した照明展は次の5つでした。3月の東京JAPN SHOPでのLED Next Stage、4月のフランクフルトLight + Building 2006、そして5月には韓国・ソウルでのLED展とサンフランシスコLight Fair International 2006、6月の台湾LED展でありました。それらの中で最もドラマチックなLED照明の展開を見せていたのはどこか? を改めて思考してみました。その結果、LED Next Stageが最も見ごたえがあったと結論付けました。世界最大の照明展でもあるフランクフルトLight + Building 2006の方が出展数も規模も大きいから内容は上では!と指摘する声が多いことでありましょう。確かに出展社数もそのブース規模も、さらにはディスプレーへのこだわりなどの差も歴然としていますが、光と色の質的レベルとその多様さは決して引けをとってはいないと思いました。

 確かにこれら5照明展の開催目的や背景・規模などはそれぞれ異なり、一概に比較する訳にはいかないでしょうが、LED Next Stage会場の出展製品群の質の高さとそのバラエティーの豊富さを改めて再認識し、見直した次第です。―――それらの内容もすでに2回紹介し、出展製品の動向は理解されたかと思います。―――3回目の今回はJAPAN SHOP 2006において、展示ブース(ブース設営)のあり方とそのブース演出(LED活用の観点から)について記したく思います。さらにアジアでの2つのLED展(5月・6月と続いたソウルと台北)の概要なども併せて紹介します。


2. 展示ブースの演出とLED

 最新の商業空間へのデザイン・ディスプレーや店舗什器・設備などの新製品や関連情報を一堂に集め展示紹介する、アジア最大級の店舗総合見本市"JAPAN SHOP 2006"では、LED Next Stage以外の会場にも多くのLEDが見られました(前回までにその一部を紹介)。その中には商業施設向けサインや看板用の"LED製品"としてだけでなく、展示ブース・什器演出のためのLED活用照明事例もありました。この展示演出用のLED活用化に対し、特に留意した事柄(会場設営のあり方)があります。それは環境共生とカラーについてです。

 世界中の照明展を見ても、まだまだ多くの展示造作では木造パネルの簡易壁構造でブース設営(時には床・天井部の造作まで)されています。閉会と同時に壊され廃棄処分、つまり1週間ほどで大量ゴミを生産するという行為を続けてきているのです。現代社会においてこの展示設営のあり方は、単なる経済性(コストパフォーマンス)の観点だけではなく、ゴミを作りださない環境共生を求められる時代になってきています。

 今回のJAPN SHOP 2006においても、展示ブースや什器へのリサイクルやリユースを考慮する出展企業が目立ちました。その事例等を紹介したいと思います。

 写真図1と2は、ドイツのオクタノルム社製Rシステムを使った展示ブースで、アルミフレームに専用金具を用いて構成されている。小ブースや簡易展示台など簡単に造作でき、しかもパネルはめ込みにより間仕切りなどもできる。このシステム製品は1968年に発売され40年ほど経過し、今日では世界中で使われている。尚、オクタとは八角形の意で90度より広い角度での対応が可能なシステムです。

 
図1. ビソーコーポレーション/図2. 加賀電子


 大型スパン用のトラスシステムを組み、大型の展示壁面作りを展開していたのがシステムワークスで、そのトラス梁からLEDネットを吊り下げて大きな面照明の演出をしていました。このトラスシステムはJAPAN SHOPのいろいろな箇所でも多用されていました。

 トラスシステムではないが、100ミリほどの太さを持つアルミフレームで大きな空間を作り出すシステムフレームが、5年ほど前からよく見かけるようになりました。その断面形状も正方形や円であったり、またH型であったり十文字であったりと多様化の様相を示し、用途によって選べるようになってきました。

 
図3. システムワークスの展示ブース全面に設けられたトラスシステムの例
図4. 十文字型のフレームで高所までくみ上げた事例(ヒビノ)
 
図5. 過重ある壁面演出に適応するよう組まれた事例(イー・エム・エンジニアリング)
図6. 最近よく見かける正方形の断面を持つフレーム。柱梁兼用に使える。(デグサ ジャパン)


 いろいろなリユースのための展示用什器や空間作り、仮設用構造の部材はそれなりに見られることができたJAPAN SHOP 2006でしたが、そのほとんどが構造材としての部材(建材)で、インテリア用品的美観や触感への配慮が不足しているように思えました。仮設といえ来場者は上質の展示や演出空間を望みます。派手な演出や奇抜さだけを望むのではなく、仮設展示であってもより心地よい演出が今後求められていくことでしょう。

 展示ブースではありませんが、会場内に設けられた仮説セミナー会場もリユース式のアルミフレーム構造で、天井部には白色プラスチックが壁面には透明ガラスが張り込まれ、採光に配慮した気持ちよい設計空間を創り出していました。スポットライトや案内表示看板などの部分照明も加えられており、インドアでの臨時会議室などにも適しているように思えた仮設のセミナー会場でした。

 このセミナー会場ではLED照明と一体化したシステムフレーム「ジーステム(名称変更:旧オッソ・エ・ペッレ)」を設計した(後述するが)建築家・小林清泰氏が講演をしており、商業施設空間の導線や佇まいについて氏の考えを解説していました。

 
図7. 仮設のセミナー会場/図8. セミナー会場で講演する小林清泰氏

図9. LED照明と一体化のシステムフレーム
「ジーステム」の展示事例(松本金属)


 インテリア(内装)に配慮したリユース式アルミフレームの展示ブース2点を紹介します。一つ目は展示什器としての用途より住居空間作りにウエートをおいた2階建て「エコムス」です。一般的商業施設空間の雰囲気の少ないこの出展品は、新しいモダンな上質な戸建店舗の可能性を感じさせ、注目しました。

 
図10. エコムスの設営状況。階段部もアルミ製。(SUS)
図11. 完成展示していたエコムス


 もう1点は、「次代を彩るLED Next Stage」の企画展示ブースです。新しい概念によるシステムフレームが提示されていました。その概念とはLED照明による空間演出を前提に、展示ディスプレーもLEDで実践を!でありました。この基本コンセプトによって制作されたのが「ジーステム」で、環境共生型の光源=LED一体型の"リユースの展示什器"が提案されました。このジーステムのフレームにはローボルトとラインボルトの配線ダクトも取り付けられるよう設計されており、店舗等のスポットライト多用空間でも適応するよう考慮されていました。ハロゲンランプと異なり、光に熱を有しないLEDは今後多くの商業空間に使われていくでありましょう。この「ジーステム」の今後が楽しみです。

 
図12. 企画展示ブースのLED一体型構造材をくみ上げている状態
図13. アルミフレームの柱梁システム「ジーステム」によって形成された展示ブース

図14. 「ジーステム」に取り付けられた
LEDスポットとLEDライン照明


 この展示演出用のLED活用化で留意したもう一つの事柄(会場設営のあり方)にカラーがあります。従来の展示会の照明演出の基本は白色光(電球や蛍光ランプや高輝度放電ランプ使用)によるもので、その展示会場はモノトーンで構成されることが多く、陰影主体の照明演出でありました。カラーによる色光演出などは非常に少なく、あったとしても特殊なシーンで、一般的ではありませんでした。しかし数年ほど前からLED照明によるカラー演出を施し、展示ブースへの存在や視認性を高めるために積極的な使用を試みるようになりました。特に店舗の外壁や店内ショーケースや陳列棚などで目立つようになってきました。

 JAPAN SHOP会場でも、多くのブースでカラー演出が見られました。床面のカラー演出事例も数箇所のブースで展開されていました。

 ところで、このカラーLED照明には新しい演出ノウハウの収得が必須です。LEDは従来の光源と違い容易に色光演出ができます。そのため、従来の照明演出(陰影照明が主)からカラー演出照明へのセンスが要求されます。つまりカラーコーディネート力が必要となります。さらにそのLED演出は点滅調光や色光変移も容易で、その発光形状や光色などのパターンデザインの構成力も要求されるのです。またLEDは併用ユニットのプログラム変更で演出変化が可能ですから、プログラムの基礎知識も有すべきであります。この3種のノウハウ=カラーコーディネート力、パターンデザイン構成力、そしてプログラムの基礎知識がLED空間演出照明には必要であると考えるのです。今後益々のLEDによる新しい演出照明事例が創出されるでありましょう。それらは予想されない今までにない演出(例えばオーロラのような幻想的演出など)であり、次世代の若い照明デザイナーが新しい発想をもって果敢に展開されることを期待します。


3. アジアでの2つのLED展

 21世紀初頭、アジアの極東地域はLEDをはじめとする半導体の世界的生産地域として発展していくでありましょう。そしてそれは半導体だけでなく、それを組み込んだパーツやそれらを組成したユニット製品、さらにはユニット製品をアッセンブルした完成品の生産地としても伸張していくでありましょう。最後にそんな予感を感じさせた2つのLED展について記します。

 5月17日から(20日まで)韓国ソウルで第4回目の「International LED EXPO 2006」が開催されました。この韓国LED展を友人と一緒に見ておきたいと思い、予定をしていましたが残念ながら私は時間がとれず行けませんでした。この韓国LED展の概要は、一人で視察した友人からの情報を元に記すものです。

 韓国LED展「International LED EXPO 2006」の会場はソウル市内から電車で1時間ほど離れた、2005年4月オープンの新展示会場「KINTEX」で、同時開催の「Flat Panel Display EXPO 2006」とあわせて、ホール4と5の2ホールを使用。出展社はLED EXPO展部分で約110社(前回は150社)程度。日系企業からはLEDデバイスメーカー等6社が出展していたとのこと。

 出展品の内訳は、サイン系40%、イルミネーション系30%、チップ・デバイス・モジュール系20%、その他10%。照明としての展示や提案はほとんど見られなかった。

 来場者の多くは韓国国内からで日本人来場者は少ない様子であった。(昨年は来場者の40%ほどが日本人であったそうで今年は少ないとのこと。

 韓国は政府が2005年より3年間で1億ドルをLED事業に投資していると聞き及んでいます。当然国内での販売もあるでしょうが海外への輸出(日本やアメリカ、そして中国)には関心高いと思われます。

 友人の撮影してきた会場写真を見て感じたことは、赤や青のカラーLEDを多用したサインやイルミネーション製品が目立ち、白色LEDについては携帯電話やLCD-TVのバックライトなどの産業用光源需要が主で、照明演出の分野へはまだこれからとの印象を受けた次第。

 
図15. 展示会場外観/図16. 展示会場のメイン通路
 
図17. 綺麗な展示ディスプレーの出展事例(MOKSAN ELECTRONIC)
図18. 会場入口


 6月14日から(17日まで)、第2回台湾LED展(LED Lighting Taiwan 2006)が開催されました。会場は台北市内中心に位置する台北世界貿易センタービルのエキビジションホール1階で、高層ビル「タワー101」の近くです。この展示会、昨年も視察しその時の盛況なる印象から再訪したく思っていました。そんな折に主催社のPIDA(Photnics Industry & Technology Development Associationの略)からセミナーの講演依頼もあり、講演(題目:LED Lighting Design of Product)と共に展示会視察をしてきました。

 台湾LED展は昨年同様に他の光工学の展示会(フラットパネル展や光通信や精密光学の展示会等)と併催されていました。他の展示会も光と関係する産業展であり、LED関連外とはいえ、照明関係者でしたら興味ある事柄も多々ありましょう。機会がありましたら視察訪問されるのも良いかと思います。

 今年の台湾LED展の出展社は85社で、台湾を代表するLEDメーカー「Light On」や「Ever Light」、欧米からGEやOSRAM、PHILIPS、韓国からSeoul Semiconductorなどが出展し、会場では各社それぞれ趣向をこらした展示をしていました。その会場での出展品内訳は、サイン系15%、イルミネーション系15%、チップ・デバイス・モジュール系30%、LED製造の部材系15%。LED製造機械系10%、照明カラー演出5%、照明器具5%、その他5%でした。

 昨年との相異点には、台湾器具メーカーのLED照明器具出展がほとんど見られなかったこと、日本からの出展企業が部材系や製造機械系で、LEDメーカーは一社もなかった点です。

 
図19. 会場俯瞰図/図20. 会場風景
 
図21. LUMILEDS/図22. Seoul Semiconductor
 
図23. PHILIPS/図24. GE
 
図25. 信越化学/図26. マクセル

図27. 国立中央大学


 展示会全体の印象は、「台湾ひかり産業界はエネルギッシュ!」との印象を受けたことです。台湾でのLEDはチップやデバイス、さらにはLEDモジュールやユニット化を積極的に製造販売しているように思えました。展示品の品揃幅は決して広くないのですが、それぞれの部品化を水平展開し商売に徹しているようです。最終製品(例えばアッセンブルのLED照明器具など)は台湾市場では時期尚早と見ていると受け止めました。4月にあったフランクフルト照明展には多くの中国人(台湾、香港も含めて)がLED製品を出展していましたから、、、。 そのフランクフルトの照明展「Frankfurt Light + Building 2006」の動向は、次回の『照明技術・デザイン最新事情(第6回)』で記したいと思います。

 最後の写真は台湾の国立中央大学の学生が自分たちで作ったLED デバイスを実際に発表しているブースです。彼らの活き活きとしたその姿から、"次代を彩るLED Next Stage"を感じとった台湾LEDでした。 了

照明技術・デザイン最新事情
執筆者:落合 勉

照明デザイナー
M&Oデザイン事務所代表
LBA JAPAN NPO 理事長、愛知県立芸術大学非常勤講師、照明文化研究会 会長


1948年愛知県三河生まれ、ヤマギワにて照明を実践。
1991年横浜にてM&Oデザイン事務所スタート、現在に至る。
2001年からLED照明デザインワークに特化しての活動を展開、そして2006年からはOLED照明普及にも尽力。
2006年のALL LEDの店舗空間、2008年のALL LED街あかりや住空間、2009年のALL OLED照明空間など手がけ、SSL快適照明を探求提案。
器具のプロダクトデザインや照明計画などを行う傍ら、国内外の照明関連展示会や企業などを訪れ、グローバルな照明最新情報をインプットする。コラム(http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/index.html)参照。
趣味は古灯具探索で、日本のあかり文化の認知普及活動を展開中。
2009年7月、Light Bridge Association JAPAN NPOを設立し、理事長に就任。
次世代のあかり文化を担う「あかり大好き人間」の育成を目指している。

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