日経メッセ > ライティング・フェア > 連載コラム > 照明技術・デザイン最新事情 > 「Light + Building 2006訪問記」(その1)フランクフルトメッセを思い出しながら

連載コラム

「Light + Building 2006訪問記」(その1)フランクフルトメッセを思い出しながら

[ 2006年9月8日 ]

照明デザイナー 落合 勉(M&Oデザイン事務所)
1. 本題の前に... インゴ・マウラーのこと

 今年もインゴ・マウラーは元気です。御歳74歳でしかも世界の第一線で活躍中でもある現役照明デザイナーのインゴ・マウラーの展覧会が今、東京・新宿で開催中です。照明関係者のみならず、建築家やインテリアデザイナーなどはすでにご覧になっていることでありましょうが、もしまだでしたら見に行かれることをお薦めします。これほどの充実した照明デザイナーの作品展は、かつて無かったように思います。必見のこの展覧会、9月18日まで東京オペラシティ アートギャラリー(http://www.operacity.jp/ag/)で開催中です。

 
図1 インゴ・マウラー展入口/図2 会場風景
 
図3 会場風景(中央の電球型スタンドが1966年のデビュー作「バルブ」)
図4 会場風景(ローボルトハロゲン使用のスタンド類等)
 
図5 代表作品のローボルトワイヤー「ヤーヤーホー」
図6 会場風景(ガラスシート材使用のペンダント類等)
 
図7 LEDが挟み込まれたガラスの机とベンチ
図8 LED基盤を使用したペンダント作品群
 
図9 LED使用の作品群いろいろ
図10 有機ELをガラス層にはめ込んだテーブル作品


 1932年にマウラー氏はドイツ南西部のコンスタンス湖ライヒナウ島に生まれ、スイスとドイツで植字印刷工として働くかたわら、グラフィックデザインを学びます。しかし第2次世界大戦後のドイツではグラフィックデザインの仕事は少なく、1960年アメリカに渡りフリーランス・デザイナーとしてニューヨークとサンフランシスコで活動します。4年後の1963年にヨーロッパに戻りますが、このアメリカ滞在期に流行していた"ポップアート"と出会います。彼の出世作となる作品「バルブ」(1966年)はこの現代美術"ポップアート"の影響を受けています。このバルブは発表後ポップアートの代表作として評価され、欧米の美術館にコレクションされるのでした。

 マウラー氏はその後、数々の新作照明器具を制作します。その手法はポップアート的ではありますが、取り上げる素材の良さを活かした造形美に最新のテクノロジーを駆使して発表し続けてきています。それらは量産化の製品とは異なり一品ずつ制作(アート性が高く、機械生産に向かない)し、販売しています。インゴ・マウラーが凄いのはその生み出すユニークな作品の数々だけでなく、自らの工房(デザインMという会社)で作り続けているという点です。その根底にあるものはマウラー氏の愛、あかりに対する愛だと思います。

 そのインゴ・マウラー氏が作り続けてきた最新の作品までが、東京で見られるのです。初秋の東京で、現在世界で最も人気が高い照明デザイナーのインゴ・マウラーのあかりが堪能できるのは、素晴らしいことです。

 このインゴ・マウラーの照明作品は今春のフランクフルトの照明展でも見られました。下図の11〜17はその様相です。出展ブースへの人気は相変わらず高く、いつも視察者が多く、撮影するのに手間取りました。出展作品には最近の代表作品であるLEDや有機ELを使用した作品もありました。中でも入口付近に張られたLED天井ネットの変幻する演出はユニークで、新しい面照明への提案として注目しました。


図11 フランクフルトLight+Building会場より
〜インゴ・マウラーのブース入口
 
図12 変幻する演出LED天井ネット
図13 ブース風景〜中央に張られたLED天井ネットが変幻する
 
図14 ブース風景/図15 ブースコーナー風景
 
図16 ハイパワー使用のLEDペンダント
図17 有機ELがはめ込まれたガラステーブル


 図17の有機EL、欧米ではOLED(Organic LED)と呼ばれていますが、その技術開発で日本はLEDとともに世界トップランナーでもあります。その日本で先日、OLEDセミナーが山形であり行ってきました。明るさも大きさもOLEDとしては世界最大クラス(30cm×30cm)のものも見てきました。このOLED、21世紀の省エネ環境良品光源として注目されており、LEDに次ぐ新光源として普及するでありましょう。楽しみです!

 
図18 有機ELセミナーの会場風景
図19 会場に展示していた有機ELを見る人達

図20 色鮮やかな有機EL

図21 世界最大クラスの明るい有機EL(有機エレクトロニクス研究所制作)


2. Light+Building2006の様相

 さて、世界最大の照明展「フランクフルトLight+Building2006」は、4月23日から27日までの5日間、フランクフルト中央駅に程近い国際展示会場(メッセ)にて開催され、視察してきました。今年もこのメッセ会場を中心にしてフランクフルト市内165箇所もの場所で照明イベントを展開していました。これらのイベントにはメッセ会場を出発する無料バスが深夜まで巡回しており、フランクフルト市民あげての盛り上がりでありました。

 今年の照明展は出展社数2,098社(54カ国)で、10会場を使用した展示会場(総面積226,195m2)は広く、シャトルバスが巡回するほどです。そして展示内容は質、量とも予想以上でありました。来場者数は135,294人(117カ国)と前年度16%増とのことでしたが、日本からの出展社は少なく6社、来場者数は711人との集計でした。

 下図はフランクフルト会場の写真です。図22〜25で中央広場を中心に会場構成されている様子がわかると思います。そして図26〜38は会場内出展企業の展示ブースです。

 
図22 フランクフルトメッセ会場の中央広場
図23 広場中央に作られた川と噴水

図24 会場全体のモデル
 
図25 メッセ会場中央広場からメッセタワーを見る
図26 会場内 ガレリアホール
 
図27 Forum0という名の会場を使用していたPhilips社
図28 Hall2.0の会場風景
 
図29 Hall2.0のOSRAM社
図30 会場 主要照明器具メーカーが出展しているHall4のエレベーターホール
 
図31 会場内、出展社風景/図32 会場内、出展社風景2

図33 会場内、出展社風景3
 
図34 会場内、大型のカラフル樹脂ペンダントに注目
図35 出展社風景、大型ペンダントに注目
 
図36 会場内、出展社風景〜太陽光の採光(光ダクトシステム)の紹介ブース
図37 Hall5.0の街路灯展示会場中央部の様相

図38 会場内出展社風景
ユニークなコンテナ展示を展開していたKreon


3. Made in China

 今年のLight+Building2006で注目した事柄は数多く、期間中5日間でも充分に視察できないほどでしたが、それらの中から主なキーワードを挙げると「パワフルな中国人、コンパクト化(器具も光源も)、制御システム(DALI)、LED器具の展開、多様な装飾様式(時代の過度期)等」でした。特に中国パワー(買い付け額や、大規模の出展ブースやその出展製品数)は会場の随所に見られ、照明業界における中国の存在が大きくなっていることを再認識できました。例えば、ヨーロッパメーカーの出展ブースの展示製品の中にMade in Chinaがあったりと、その展開が広範であることを覗い知りました。6月には台湾LED展に行き、中国人のエネルギッシュなるビジネスマインドを再認識したのでした。(台湾LED展のことは前回=第5回の(3)を参照ください)

 
図39 出展品すべてのLED製品が中国製のヨーロッパの出展社
図40 LEDのコントローラー(中国製)を専門に展示していたドイツ企業の展示状況

図41 中国からの出展社が集合展示していたHall10出入口
(中央にCAINA PAVILIONの提示版)
 
図42 中国出展社風景1/図43 中国出展社風景2

図44 中国出展社風景3


4. コンパクト化、細管のサークライン

 次いで留意した事柄にコンパクト化(光源、器具)があります。前回の2004年度もその傾向はありましたが、今回もそれは目立ちました。光源のコンパクト化にはOSRAM社よりローボルトハロゲン「MINISTAR」シリーズが拡充されたこと、またPhilips社が先行していた光演色セラミックメタルハライドランプの小型化に、OSRAM、GE両社が20Wタイプを品揃えし、さらに反射鏡付タイプも各社からコンパクト化した新製品が発表されていました。そして、現照明業界での市場構成の大きい蛍光ランプでは、T5(直径16mm)蛍光ランプが展示主流を占めており、蛍光ランプ器具新製品の多くもこのT5蛍光ランプ搭載器具でした。今後、この細管は省エネ・省資源志向により世界に拡販展開されて行くことでありましょう。

 このT5蛍光ランプは直管だけでなく、丸環タイプ(通称:サークライン)も会場で見らました(器具も)。ところでこの環形蛍光ランプ(日本ではこの名称が正規)は日本で、細管の蛍光ランプとして一般普及(日本では直管より丸環のほうが普及)しています。住宅照明器具のリビングやキッチン用シーリングライトとして直径70cmほどの浅いお椀形状の白いプラスチック、そう、天井にさりげなく取り付けられている器具にT5丸環が使われているのです。いままで欧米の住宅では天井が高く、シーリングライトは普及しにくい環境でした。しかし最近の都市型マンションでは高天井も少なくなっており、省エネ光源の蛍光ランプ搭載シーリングライトが美しく多様にデザインされたなら普及するでありましょう。その兆候としてデザインされたT5丸環新製品器具をフランクフルト会場で見ました・・・・・。この時、数年前にデザインした器具を思い出していたのです。

 2000年に発売されたwaoという製品を思い出したのです。実は図47のLuceplan社のペンダントはワイヤーで傾くのですが、waoも傾き自由に変えられるからです。(waoは高さ調整も可)この傾き変幻自由の特徴を生かして、美容学校では実習室に使われています。必要な方向に配光できるからです。

 
図45 T5(直径16ミリ)蛍光ランプを用いた照明器具(コンパクトで、薄型化)
図46 フランクフルト会場のHall3.0Luceplan社のブース
 
図47 LuceplanT5環形蛍光ランプ使用のペンダント
図48 LuceplanT5環形蛍光ランプ使用の直付け

図49 上部から見たwao、ドーナツ状で中空形状をしている。
(高110×ψ460ミリ)460
 
図50 wao全体像
図51 waoが設置された横浜ビューティーアート専門学校
 
図52 教室に設置されたwao/図53 傾斜させたwao


 Light+Building2006の視察訪問した感想を紹介しようと思っているうちに夏も終わろうとしています。この間に、見聞した事柄と関連するあれこれを加えて記しています。

 次回も、フランクフルトの照明展の事柄を主にそれにまつわる最近動向も交えて記します。デザイン動向や日本企業の出展の様子など主にお伝えしようと思っています。(続く)

照明技術・デザイン最新事情
執筆者:落合 勉

照明デザイナー
M&Oデザイン事務所代表
LBA JAPAN NPO 理事長、愛知県立芸術大学非常勤講師、照明文化研究会 会長


1948年愛知県三河生まれ、ヤマギワにて照明を実践。
1991年横浜にてM&Oデザイン事務所スタート、現在に至る。
2001年からLED照明デザインワークに特化しての活動を展開、そして2006年からはOLED照明普及にも尽力。
2006年のALL LEDの店舗空間、2008年のALL LED街あかりや住空間、2009年のALL OLED照明空間など手がけ、SSL快適照明を探求提案。
器具のプロダクトデザインや照明計画などを行う傍ら、国内外の照明関連展示会や企業などを訪れ、グローバルな照明最新情報をインプットする。コラム(http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/index.html)参照。
趣味は古灯具探索で、日本のあかり文化の認知普及活動を展開中。
2009年7月、Light Bridge Association JAPAN NPOを設立し、理事長に就任。
次世代のあかり文化を担う「あかり大好き人間」の育成を目指している。

バックナンバー

PAGE TOP