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連載コラム

「Light + Building 2006訪問記」(その2)忘れられない事柄/5つのポイント

[ 2006年11月16日 ]

照明デザイナー 落合 勉(M&Oデザイン事務所)
1. 本題の前に... Light+Building2006出展メーカーを訪問して

 10月中旬にイタリア北部にあるエクステリア照明器具メーカーを訪問する機会を得た。

 今春開催されたフランクフルトメッセ・照明展Light+Building2006のHall3.0に出展していたアルミダイキャストのエクステリア照明器具専門メーカー・Simes社である。数年前から積極的に事業刷新を展開しその伸張に注目していたので、イタリアに行く機会があったらぜひ立ち寄りたいと願っていた。訪問日は土曜日で工場は稼動していなかったが運良くオーナーMr. Roberto Bottiと会え、新しいショールームなどを案内していただいた。その中から最新情報を紹介します。

 
図1 今春Light+Building2006会場のSimes社出展ブース概観
図2 Simes社出展ブース、コミカルな相撲力士人形が吊り下げられていた。


 日本の相撲力士の等身大人形が会場天井から吊り下げられ、ライトアップされたブースはLight+Building2006会場で異彩を放っていました。

 数年前から欧米の大都会メインストリートの店舗ウインドショーケースには日本製品が目立つようになりました。それらはハイテクな製品群(カメラや電器製品)から座布団や炬燵、座卓、和食器などの和装具にと、その広がりはまさしくジャポネスク復活のようで、Simesブースの設計者も日本文化には特別関心を抱いているように思えました。


図3 Simes社の外観
(左奥が工場、左手前がショールーム等があるオフィス棟、右側が倉庫棟)
 
図4 製品特徴が一目瞭然で判るよう羅列された
プレゼンテーションルームで説明するBotti氏。
DALIシステム活用のケースを説明。
図5 ショールームへの通路壁面に設置された防水構造のLED器具と、
その器具背面部を説明するBotti氏。
防水機能は規格IP65とのこと。
 
図6、図7、図8 製品が展示されていたSimes本社内ショールームの様相

図9 地中埋め込み用器具の3種
(世界最初のプラスチックケースを実用化した右サイドの器具/器具高がある)


 図6、7、8はSimes本社のショールームの様相で、最新の主力製品が展示されていました。それらの展示品の中で地中埋め込みケースの進化の度合いに注目しました。図9はその変化が良くわかる写真で、手前(右サイド)が5年前まで多用された埋め込み寸法が大きいもの(第1世代)、真ん中のものが5年ほど前から市場導入され普及化してきた第2世代型のもので、写真奥にある器具高(埋め込み寸法)の浅いものが最新型(第3世代)です。外観部の口径はそれぞれ3種類あり各種の光源や配光違いなど、多様な埋め込み器具の品揃えを展開していました。第3世代の小型化には光源自体の小型化とトランスやバラストの小型化(電子化など技術革新)が寄与していました。特にLEDは従来の光源に比較し小さくコンパクト化になり、また長ランプ寿命よりランプ交換頻度が少なくなり(メンテナンスが楽に)、埋め込み器具光源に適応しているので、ますますLEDは多用されていくでありましょう。この第3世代の埋め込み寸法なら床どこの深さも浅くても可となり、設置工事の簡便化により屋内での用途展開が増えていくと予想されました。今後のインテリア照明演出には床からの非日常空間照明が増え、LED+DALIシステムの普及化に伴い、さらにエキサイティングな空間照明が出現するでありましょう。
(DALIとはDigital Addressable Lighting Interfaceのことで、屋内既設電源線を活用して電気製品(照明器具も含め)の制御をする新しいシステムのこと)


2. Light+Building2006での5つのポイントから

 フランクフルトメッセの照明展は2000年から隔年に開催され、今年は4回目で前回よりさらに規模内容とも充実していました。その照明展を振り返り、前回5つのキーワード「コンパクト化、DALI、LED器具の展開、多様な装飾様式、パワフルな中国人」を紹介しましたが、今回はそのキーワードを照明デザインの観点から見て感じたことを記したいと思います。

 一言で感想を示すと『多様なるデザイン化』であります。その背景は、、、、小型化(光源)や高性能化(電子化など)は軽量や超薄型のコンパクト化を促進し、器具の形状を変えるだけでなく、その設置のあり方や流通形態まで変えていくでありましょう!

 さらにDALIによって、今までより多様な照明演出が容易になり(特にデジタル通信に適応する)LED器具は多用されるであろうと強く感じました。器具多用は空間に装飾過多を招きやすいので、器具デザインは目立たない無機質で簡素化されたものが増えていくでありましょう。今まで主流となっていたモダンデザイン(アピール性を表出志向とし、出展各社の特徴をそれぞれ生かしたスタイル)やクラッシクスタイルにこの無機質で簡素化のミニマニズムが加わり、多様化を感じた次第です。(このミニマニズム、Zuntobel社やErco社、Luceplan社などの新製品群に一部見られました。)

 もう一つ留意した点に大型ペンダントがあります。Light+Building2006会場のHall1の2階は住宅用モダン照明器具メーカーが多く出展していましたが、その出展品の中に直径1メートルほどのシンプル形状・巨大ペンダントがそこかしこに見られました。シャンデリアに代わる新しい装飾的用途の試みといえましょう。

 ところで「LED器具の展開」は、前回のLight+Building2004と比較して期待はずれでありました。今回出展品には新しい動向がもっと多く見られるかと期待していたからです。残念ながら新趣向製品は少なく(エクステリアの埋め込み器具や小型スポット製品には実用性ある製品がありましたが)、日本でのLED Next Stage展示(照明技術・デザイン最新事情(第5回)参照)との質の差はないと感じたのでした(出展数量には大きな差ありましたが)。その主な理由として、光質の電球色光源化がなされていない(あっても僅か)ことと、さらに光量の少ないLEDでの器具化があげられましょう。しかし、この光色と光量はこの半年ほどの間で確実に性能を高めており、次回にははっきりとした新用途展開が数多く見られることでしょう。


図10 Lightwave社のLEDペンダント

図11 周囲(6×2個)にパワーLEDを配置した薄型ペンダント

図12 T5(直径16ミリ管)蛍光ランプ使用の薄型吊り下げ器具
 
図13 T5(直径16ミリ管)蛍光ランプ使用のスタンド
図14 SLI SYLVANIAのLED(RGB)ダクト
 
図15 LEDダクトに取り付けられるレンズ付き超小型ダウンライト
図16 DALIシステムを壁面に積極的に紹介展示していたERCO社ブースとDALI対応器具
 
図17 パソコン・専用ソフトでの操作を表示しているDALI
図18 DALI対応器具
 
図19 LED器具の新用途展開を提案しているSPECTAL社
図20 LED屋外用スポットライトや埋め込み器具
 
図21 小型LED庭園灯/図22 ダイニングテーブル用LEDンダント


 「パワフルな中国人」について(デザインとは直接関係ないが)は、会場には本当に多くの中国人(台湾や東南アジア、ヨーロッパ在住の人も含めて)が出展者としてまたバイヤーとして、さらには視察団(メディア取材も含めて)などさまざまな形でパワフルに行動し目立っていました。そしてヨーロッパ老舗照明器具メーカーの中には、今年の中国人は大いなる顧客(大量発注者)であると明言するところも多く、元気な中国(出展社数もドイツに次いで多い)でした。

 その中国人と反して静かで目立たなかったのが日本人で、出展社数でも視察訪問者数でも台湾や韓国より少なく、グローバルビジネスへの消極さが気になりました。この「日本人の静」は留意した点でした。日本からの出展社は6社(全出展社数2098社)で、その中でもLEDトップブランドメーカー・日亜化学工業や世界最高レベルの発光効率(ルーメン/ワット)のLEDデバイスを展示していたシチズン電子、そして本格的アルミダイキャスト新製品群を展開していた遠藤照明など、世界へのビジネス展開を見据えたビジョナリーカンパニーとして心強く思いました。


図23 Hall.10に多数出展していた中国メーカー

図24 中国製のLED器具を展示していたブース
 
図25 Hall.4に出展していた日亜化学工業のブース/図26 日亜化学工業展示の様相
 
図27 Hall.4に出展していたシチズン電子のブース
図28 Hall.4に出展していた遠藤照明

図29 アルミダイキャストの高配光を追及した
本格的遠藤照明のスポットシリーズ


3. 住空間の照明

 フランクフルトLight+Building2006には、住宅用の照明器具メーカーも数多く出展していますが、その多くは中小のメーカーで製品は白熱ランプ多用の器具でした。そしてそれらはハンドメイド的なものも多く、出展社ごとにそれぞれ趣向が異なり会場に彩りを添えていました。


図30 布を使った製品を扱う住宅用器具メーカー

図31 陶磁器を使った製品を扱う住宅用器具メーカー


 新光源のLEDやT5蛍光ランプを活用した住宅用新製品は、前回記したインゴ・マウラーのLEDペンダントやルーチェプラン社のT5蛍光ランプのペンダントなどごく僅かでした。北欧やドイツなどは省エネや環境にも関心が高いので住空間へのLED採用も今後遅からず導入していくでありましょう。今回の照明展でその最新事例や提案モデルなどの器具を期待して見に行きましたが、レポートするものは少なく、ヨーロッパ全体ということになるとまだまだ普及には時間がかかるのかと感じた次第です。そのかわりではないですが、住空間でのLED照明提案を筆者は今年3ヶ所で試みましたので、その事例のいくつかを紹介したいと思います。

 図32は今年1月に竣工した住宅モデル棟「モア」寝室中央部天井と部屋へのドア上部壁コーナーに建築化照明のLED器具を設置した例です。次いで今春竣工の住宅モデル棟「和み」の玄関廻りの事例です。庭園灯や小池の橋手すり部から足元を照らすようにしたもので、和風玄関アプローチには電球色のLEDが相応しいことが認識できました(下の図34、図35)。

 
図32 住宅モデル棟「モア」の寝室にLED器具をデザインし設置した例。
(場所は愛知県豊田市のトヨタすまいるライフ)
図33 寝室天井部設置の様子。

図34 今春竣工のモデル棟「和み」の玄関アプローチ外観。
(トヨタすまいる館)

図35 玄関へのアプローチ部に設置されたLED庭園灯。
 
図36 玄関前の小池に設置された橋の手すり部LEDの様子。
図37 トヨタすまいる館モデル棟「和」寝室ベッド足元にLED照明した例。


 そして6月に竣工した千葉県・H邸(エアーサイクル産業施工)、本格的にLED使用しての住空間はまだ世界にも少ないかと思いますが、ほぼ全居室にLED照明(高演色の電球色LED(Ra96)を主体)を試みました。演色性を高めたLEDモジュールによるダイニングテーブルやリビングソファー部への照明、さらにキッチンワークトップへの全般照明や寝室ベッドサイドなど日常生活機能を考慮しながら照明デザイン(演出と器具)を展開しました。

 LED照明をする場合、ダウントランスによる電源部や演出のためのコントロール装置などが他の光源のように既製品化されてなく(既製品化も一部あるがまだまだ少ない)、制限あるのが実情です。店舗や施設空間と違い住空間の場合は一般の方々が普通に使用するという条件下ですので、使い勝手には配慮が必要でした。何度も関係者と協議しながらのこのH邸、1年余の準備開発期間を要しました。オーナーご家族(3人)が実際に生活されて数ヶ月が経ちましたが、H氏ご夫妻からは快適とお聞きしています。今後省エネのLED照明が世界中の住宅に普通に使われることを願っています。

 
図38 千葉県・H邸の外観
図39 玄関へと続くアプローチ灯と外観(LEDの足下灯)
 
図40 リビング・ダイニングのワイヤーペンダントやワイヤースポット、
さらには窓べのダウンライトなどすべてデザインされたLED器具。
図41 キッチンの天井部にはトップライト用ルーバー向にデザインしたLED器具。
 
図42 寝室ヘッドボード部のLED照明。枕もと灯のスタンドもLED灯。
図43 LED照明の階段室(窓枠に組み込まれたLEDライン照明とLEDピクチャーライト)


 2回にわたって紹介してきたFrankfurt Light+Build2006でしたが、この半年の間にもいろいろな事柄があり、それらも併せて紹介を試み併記してきました。整理する時間が割けず記載に間に合わなかったものもあり、次回には、と思っています。 了

照明技術・デザイン最新事情
執筆者:落合 勉

照明デザイナー
M&Oデザイン事務所代表
LBA JAPAN NPO 理事長、愛知県立芸術大学非常勤講師、照明文化研究会 会長


1948年愛知県三河生まれ、ヤマギワにて照明を実践。
1991年横浜にてM&Oデザイン事務所スタート、現在に至る。
2001年からLED照明デザインワークに特化しての活動を展開、そして2006年からはOLED照明普及にも尽力。
2006年のALL LEDの店舗空間、2008年のALL LED街あかりや住空間、2009年のALL OLED照明空間など手がけ、SSL快適照明を探求提案。
器具のプロダクトデザインや照明計画などを行う傍ら、国内外の照明関連展示会や企業などを訪れ、グローバルな照明最新情報をインプットする。コラム(http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/index.html)参照。
趣味は古灯具探索で、日本のあかり文化の認知普及活動を展開中。
2009年7月、Light Bridge Association JAPAN NPOを設立し、理事長に就任。
次世代のあかり文化を担う「あかり大好き人間」の育成を目指している。

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