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連載コラム

「次代のこどもたちとLED」親子LED工作教室

[ 2006年12月26日 ]

照明デザイナー 落合 勉(M&Oデザイン事務所)
はじめに

 先日東京ビッグサイトで開催されたエコプロダクツ2006展会場に、愛地球博で人気を博した一人乗り未来コンセプトビークル「i-unit(アイユニット)」が展示されていました。

 この一人乗りアイユニットにはいろいろな光り演出をするようにプログラムされたLEDが前方外周部に装着されており、そのユニークな点滅や調光などの動きにはかねてより関心をもっていました。またアイユニットLEDプログラム設計者から開発設計時の苦労話を聞いていたので、実際に直接見てみたいと思っていたのです。そのアイユニットが展示されていたので、「ウォッ、見たい!」と人だかりの最後尾でその動きを見つめ続けました。

 愛地球博では、このアイユニットを一目見たい子供たちが長蛇の列を作ったとのことですが、実際に見て納得した次第。エコプロダクツ展で見ている大人達でさえ見入っていましたから、、、実際に私も「点滅するLEDの光りの中で乗車したら快適であろう。機会があったらぜひ乗車したい!」と子供のように見とれてしまいました。


図1 エコプロダクツ展(2006年12月14日〜16日)会場の
トヨタ自動車ブースに展示されていた「i-unit(アイユニット)」


 このアイユニットに見とれる子供たちの姿をみて、2005年の愛地球博の展示イベントのことを思い出しました。それは親子でのものづくり「ピカピカ光る生きものを作ろう」のタイトルで公募された作品・100選の審査と地球博会場での展示やLEDワークショップのイベントに協力したことでした。その小学生の作品それぞれには自由な発想があふれ、親子で協力して創作した作品は素晴らしいものばかりでした。

 私が親子でのLEDイベントを手がけたのはこの時が初めてだったのですが、子供たちが次代のあかりといわれるLEDを用いて、楽しくものづくりをしてほしい!と願い、これ以後親子のLED作品作り活動にも取り組むようになりました。

 今回のコラムでは、次代のこどもたちとLEDと題し、小学生や中学生さらには高校や大学生を含めて、私の最近の活動内容等を紹介します。


1. 「あかりの日」に関連して、親子LED工作教室

 10月21日は「あかりの日」です。このあかりの日に関連して何かLEDの催事をしてみたいと以前から思っていました。できれば子どもたちと一緒に何かしてみたいと。そんな折に、愛地球博での親子LED展作品に関心を持たれた日本電球工業会から、世界のLEDトップランナーの国の日本の子供たちに「LEDのあかりの楽しさ」を知ってもらいたいとの話がありました。LEDによる工作教室ができる!と喜んで協力することになり、2006年10月7日「親子LED工作教室」が実施されました。

 ところで「あかりの日」とは、1981年に照明関係4団体(日本電球工業会、日本照明器具工業会、照明学会、日本電気協会)により制定されました。その主旨は「照明文化の向上による豊かな社会の創造とエネルギーの有効活用」をめざすもので、照明の持つ意義を改めて認識するとともに正しい照明知識の普及と啓蒙活動を推進する手段として制定したものです。今から120余年前のこの日(1879年10月21日)、アメリカのトーマス・エジソンが白熱電球(カーボン電球)の実用化実験に成功(発明)、その偉業を称えての日です。2006年秋も照明関係者により日本全国で様々なイベント活動が展開されました。

 親子LED工作教室は、東京銀座の泰明小学校・土曜スクールにて実施されました。自主参加の3年生50名ほどを対象とし、その保護者の方々を交えてのものでした。子供たちが夢中になって作っている様子などを紹介します。

 
図2 会場となった泰明小学校外観(地下1階・地上3階建て)
図3 泰明小学校の講堂での説明会の様子。
(後援の日本電球工業会専務理事より電球やLEDの説明)


 事前に担当教諭から工作への準備事項など教示を受けていた子供たちは、思い思いの創作に必要な日用不用品(牛乳パックやお菓子の空箱などの加工が容易なもの)を自宅から持参してきました。朝9時から講堂での工作教室開始の挨拶と説明を受けた子どもたちは、工作の教室に移動、まず6色のLEDを点滅させる作業からスタートします。半完成状態のLEDキットの結線作業で、子どもの小さな手ですから細かなLEDピンへのコード巻き付けもスムーズに終え、点滅が始まります。子どもたちの歓声「お父さん!点いたよ、ほら!」などあちこちから聞こえるのでした。


図4 使用した砲弾型LED6色(LEDは日亜化学工業から寄贈)

図5 使用したLEDキット(LED片方ピンが未結線の半完成の状態)


 次いで持参してきた空き箱などでめいめいが好きな工作物を作り始めます。光る家であったりお花であったり、光線銃や飛行機、さらにはクリスマスツリーやハロウィンの人形など多種多様でしかも色紙貼ったりしてカラフル鮮やか! 隣同士の作品を眺めながら光り輝く名作、秀作が出来上がっていきます。自慢げに自作品を点滅させる子どものそばで微笑んで見守るお母さん、手伝う祖父の姿などそれぞれの微笑ましい光景が見られた工作教室でした。

 

図6.7.8 泰明小学校での「親子LED工作教室」での制作風景

図9 LEDキットの工作を見守る指導員
 

図10.11.12 制作された作品事例


 次代のこどもたちに、21世紀の主要光源といわれるLEDを実際に触れ知ってもらうことは、「あかりの日」制定の主旨にもつながることでしょう。親子で工夫と協力をしながらLED工作教室が、各地に広がっていくことを願っています


2. 全国各地での親子ものづくり教室

 最近、全国各地でも親子ものづくり教室の開催情報が多く聞かれるように感じます。それらの中でLEDの催しも増えてきました。特に夏休みに集中するようで、7月に神奈川県藤沢工科高校で神奈川子どもワクワク体験プロジェクトとして小中学生対象の夏休み工作教室「LEDライト・防犯ブザー作り」が実施されました。

 愛知県名古屋市の大同工業大学では名古屋市南区役所との共催で地域連携講座「親子ものづくり教室」が開催され、「光るおもちゃを作ってみよう」をテーマに、画用紙一枚にLEDを組み込んだ作品作りが行なわれました。

 九州福岡県の戸畑工業高校でも8月に親子ものづくり教室が開催され、電気科教室にて「手作り光り(LED)時計」制作が実施されています。

 
図13.14.15.16 大同工業大学の教室で開催された
地域連携講座「親子ものづくり教室」の様子と作品事例


 少し話が外れますが、最近の街のイルミネーションの華やかさには子どもならずとも大人も驚かされるものが増えました。特にクリスマスともなると街中が光で溢れます。元々はクリスマスツリーへの装飾であったものが年々派手になり、1920年代になると電球点灯電飾のイルミネーションがクリスマスツリーに、そしてさらに建物外壁をイルミネーションするようにもなります。日本では東京・日本橋三越本店が1931年、6000個の電球で正面外壁をクリスマスイルミネーションしています。最近ではビル全体を演出する事例まで出現、そして光源にLEDが多用されるようになりました。2006年のクリスマス商戦はそのLED電飾の競演のようです。省エネを考えてのLED化でありましょうが、年々エスカレートする街の電飾について、こどもたちにどう受け継がれるべきか!どうすべきかを思考(地球環境へのCO2削減や省電力化など)する昨今です。親子参画での街のイルミネーション作りができたらと、願うこの頃です。


図17 2006年のクリスマスイルミネーションの例
(過剰で派手なイルミネーションではなく、
上質にクリスマス商戦を盛り上げている横浜元町商店街。)


 12月9日10日の2日間、愛知県豊田市で開催された親子100組のLEDクリスマスリース作りのイベントに協力しました。クリスマス用のリースに簡単なLEDイルミネーションを組み合わせる"親子ものづくりイベント"です。このイベントは制作する役割が分かれており、こどもたちはLEDを組み込むオーナメント(紙にお絵かきし切り絵)を作り、お母さんがリースを作り、そしてお父さんはLEDキット制作と分担して作ったものを組み合わせる家族全員のものづくりです。お父さんがハンダ付けしたLEDキットの点滅に嬉しそうに見つめるこどもたちの輝く瞳、そしてお母さん制作のリースにLEDを組み込んだオーナメントを付けて完成。点滅するリースを大切に抱え持って帰るこどもたちの後姿はとても印象に残りました。今年のクリスマスイブは家族で作った点滅LEDリースで過ごしたことでありましょう。

 
図18 LEDクリスマスリース作りのイベント会場
(トヨタすまいるライフのスマイル館1階、LEDは豊田合成から寄贈)
図19 お父さんのLEDキットハンダ付けの様子を見守る子どもたちとその制作風景

図20 こどもたちがお絵かきしたオーナメント用紙に取り付け作業をしている親子
(制作したリースとこどもの絵)


 親子LED工作ではありませんが、大学の特別講義"LEDの試み"の事例を紹介します。東京・多摩美術大学のテキスタイル・プロダクト論講座「LEDと素材の融合」で、100人ほどの美大生に任意の素材によるLED作品(手の平に乗るサイズのオーナメント)を制作してもらいました。LEDの光が素材との組み合わせによって、どのような効果が生まれるかを検証提案してもらおうと試みたのです。単純にLED光を当てるだけでなく素材特性(透過や反射の度合い)や素材造形による光拡散や集光などで、小さな発光体LEDの有効的事例を探り、さらにそれを参加学生が同時に共通認知(LEDの光の使い方多様性を認知)して欲しいと願うものです。

 手のひらサイズの作品作りはハンドメイドでの制作度合いが高く、手先が器用な美大生には抵抗ないでしょうし、小型のため制作材料も少量で済み(予算的に負担少なく)、又制作時間の拘束も多くはならず、出席学生のほとんどの学生から作品提示(提出の義務付けでなく自由提示)がありました。それらの中には想定していなかった素材や使い方の提案もあったりと、学生たちとの"新しいLED光と素材の融合探し"は楽しい試行でした。

  
図21 持ち寄った作品を、設置台に取り付けている風景(多摩美術大学の講義室にて)
図22 いろんな素材と組み合わせたLEDオーナメント作品を確認しあっている風景
図23 設置され輝く作品事例


3. 照明文化研究会で知った「ロウソクの科学」

 子供たちにあかりの不思議さやおもしろさ=科学の楽しさを知らせる"講義の内容"を紹介する本があります。イギリスの科学者が少年少女のために行なった講義をまとめたもので、1860年の暮れにロイヤル・インスティチューション(王立の実験研究所)で行なわれたクリスマス講義の内容です。ロウソクの炎を通じて子供たちに科学への興味や関心を持ってほしいとの思いが伝わる名著で、本の題名は「ロウソクの科学」です。

 この本の主人公がファラデーの法則で有名なマイケル・ファラデーで、クリスマス講義が行なわれた時は、エジソンが電球を発明する19年前でファラデー70歳、このロイヤル・インスティチューションの教授退官1年前のことでした。彼の「電磁誘導の原理」によって発電機や変圧器が発明され電力の時代は始まったのです。19世紀最大の科学者は、イギリスの科学者であり物理学者でもあるこのマイケル・ファラデーと云われます。そのファラデーの晩年、次代の子供たちのために行なった講話の中の「ロウソクの科学」、その6講についての概要を紹介して今回のコラム了とします。

 第1講は6本の代表的ロウソクを見せながら話を始めています。1本目は牛脂に木綿糸を浸してそれをぐるぐる巻きした糸ロウソク、ここでロウソクの基本的作り方を説明しています。2本目は難破沈没船から見つかったロウソクで、海水に浸かっていたのに火が点くことを燃やして見せます。3本目のロウソクは鯨油ロウソクを、4本目は黄色の蜜ロウソクでした。5本目はアイルランドの沼地から採ったパラフィンで作られたパラフィンロウソクを、6本目は日本の和ロウソクを見せるのでした。種々のロウソクを見せながらロウソクの燃える原理を科学的に分かりやすく、用意した実験試料の数々を用いて説明するのでした。固体の蝋は溶けて液体になり、毛細管現象でロウソクの芯を昇り、そしてその蝋は炎の熱で気化しそのガスが燃焼し続ける。さらに炎の種類やその美しさなど説いて見せるのでした。

 第2講では炎の明るさや燃焼には空気が必要であることを見せ、そしてその燃焼によって水が生じることなどが記されています。第3講はロウソクが燃えたあとに残るものは何か?を、第4講では燃焼によって生じた水の成分、水素と酸素について実験で採取(電池を用いた電極から発生するガス)し、その特性を紹介します。そして第5講では空気中の酸素についてその性質と、ロウソクから生ずる炭酸ガスの性質を説きます。最後の第6講では石炭ガスのことを実験道具を用いて解き、ロウソクの燃焼が人間の呼吸とほぼ同じ現象であることを説明しました。

 
図24 岩波文庫本「ロウソクの科学」/図25 実験の様子を描いた掲載挿絵の事例


 順を追って分かりやすく身近にあるロウソクの炎を活用した講義のこの本は、10年ほど前に照明文化研究会の催事時、当時その研究会名誉会長であった深津正氏から「読んでおくといいよ!」といただいたもの(まだLEDが周知される前の頃)で、今振り返ると、最近の私の活動"子供たちとのLED工作"に繋がる起点のものでありました。


 追記:私の最も欽迎する照明文化研究会・名誉会長の深津正氏が2006年9月11日に急逝されました。少なからぬショックを受けたのは私だけではなかったことでありましょう。日本の照明を愛しその照明文化の研究にそして後進への指導にも大変な尽力をなされました。ここに謹んで哀悼の念を捧げます。

照明技術・デザイン最新事情
執筆者:落合 勉

照明デザイナー
M&Oデザイン事務所代表
LBA JAPAN NPO 理事長、愛知県立芸術大学非常勤講師、照明文化研究会 会長


1948年愛知県三河生まれ、ヤマギワにて照明を実践。
1991年横浜にてM&Oデザイン事務所スタート、現在に至る。
2001年からLED照明デザインワークに特化しての活動を展開、そして2006年からはOLED照明普及にも尽力。
2006年のALL LEDの店舗空間、2008年のALL LED街あかりや住空間、2009年のALL OLED照明空間など手がけ、SSL快適照明を探求提案。
器具のプロダクトデザインや照明計画などを行う傍ら、国内外の照明関連展示会や企業などを訪れ、グローバルな照明最新情報をインプットする。コラム(http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/index.html)参照。
趣味は古灯具探索で、日本のあかり文化の認知普及活動を展開中。
2009年7月、Light Bridge Association JAPAN NPOを設立し、理事長に就任。
次世代のあかり文化を担う「あかり大好き人間」の育成を目指している。

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