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連載コラム

「照明市場ニーズの3点/安心・省エネ・環境」(その1)安心について

[ 2007年9月25日 ]

照明デザイナー 落合 勉(M&Oデザイン事務所)
はじめに

 新聞切り抜きを始めて20年程になります。特にテーマ設定をするのではなく、その時覚えておきたい事柄を自由にピックアップするのです。健康に関するものから好きな食べ物や浮世絵の記事、そして緑が大好きなので植物や樹木に関することまで多種多様な記事が集まったスクラップ帳です。もちろん「あかり大好き人間」を称する私ですので、古灯具から最新光源まで照明に結びつく事柄も貼ります。この私のスクラップ帳に最近増えているのは安全・省エネ・環境に関する記事です。気になるこの3つの要素からみた照明について記したいと思います。今回は安心についてです。

1 防災グッズとしての照明とは?

 「地震、雷、火事、親父」世の中の恐ろしいものを順に並べた言葉で、有名なことわざです。ご存知のように確かに日本は地震の多い国といわれます。最近では7月16日の新潟県中越地方の震度6強の地震は大きな被害をもたらし、復旧活動が現在も続いています。この地震は、震災地だけでなく日本の経済活動にも大きな影響を与えました。

 また9月1日は「防災の日」で、防災に関する意識高揚と、正しい防災知識や技術を身につけることを目的とした各種行事と広報活動が日本全国で実施されました。政府による総合防災訓練では、大規模な地震を想定した災害対応訓練が実施されました。この二つの記事より、私の防災への意識が高まる中、防災用品にはどのようなものがあるのか、防災に関する照明にはどんなものがあるのか気になるようになりました。

 私たちが防災用品と聞いて思い浮かべるものとして、多くの家庭で常備されている「非常持出袋」があります。この袋の内には非常食の乾パンや保存水、マッチや軍手やロープ、缶きりやはさみ、タオルや包帯などと共に、ロウソクや懐中電灯が収められています。その他に防災頭巾や防災服、ラジオや救助用工具、救急セット、給水用具や消火用バケツなども防災用品に挙げられます。

 日常生活用品の中にも防災グッズといわれるものがあります。家具転倒防止用の道具や金具、そして充電式保安灯です。さらに施設に関するものでは防災器具があり、消火器や防災シャワー、煙感知器や熱感知器、緊急時照明設備(避難口を明示した誘導灯や矢印で方向を示した通路誘導灯)等があります。これらの照明は、最近では小型のLEDや直径4ミリの冷陰極蛍光管を光源に用いたコンパクトで省エネな製品が普及し始めています。これらの防災器具は病院や学校やオフィスなどの施設用が主で、住宅用器具は極めて少ないのが実情です。大きな地震が発生すると、電力会社は安全のために送電を自動的にストップさせます。夜だと真っ暗になります。このような時、住宅で日常的に使用している照明器具が非常灯になるなら、避難はより安全に出来、安心でありましょう。

 このような一般住宅用防災照明器具が、地震多発の日本には必要であると思っていたところ、面白い製品が四国で製品化され発売しているとの情報が四国の友人から入ってきました。


図1 一般住宅のコンセントに差し込み日常使用されている充電式保安灯・WH1101WKP
(松下電工カタログより)
 
図2 停電時に点灯するハロゲン電球使用タイプの非常灯照明器具・
LBG76430K
(松下電工カタログより)
図3 停電時に点灯するLEDランプ使用タイプの誘導灯照明器具
(2006年の日経主催LED Next Stage三菱電機照明ブースより)


2 LED防災ライト「ぐらっパ」

 8月初旬、愛媛県松山市にてLED防災照明器具「ぐらっパ」を拝見しました。アルカリ電池の約5倍以上の容量を持つリチウム電池(単3形)4本を非常時バッテリーとして専用壁スイッチ内に収納するLED非常灯は、説明を受けなければ小型の一般的ポーチライトとして見受けられるほど、お洒落な照明器具にまとめられていました。このLED防災ライト・ぐらっパはLED照明器具のMulti Cube(マルチキューブ)シリーズ製品の一つで、停電時にバッテリー点灯に切り替わり、連続24時間明るく照らし続けられるという優れものです。この長時間点灯は消費電力が極めて少ないLED光源だから可能なの(一般的非常灯は1時間ほど点灯が基準)です。このぐらっパ、103ミリのキューブ形状内には高輝度LED6個(消費電力2.45ワット)が内蔵され、非常時の点灯初期は通常時より明るく、25ルックスで5時間点灯し、その後徐々に輝度は下がります。日亜化学工業製のLEDは、入力電流を定格(電圧3.5ボルト、電流150ミリアンペアー)以下に抑えることで4万時間ほどの長寿命化が可能となり、1日8時間使用では、15年間ランプの交換が不要となるとのことです。消費電力が少なくて済むため電気代は1ヶ月13円、1年間でも156円(1Kw/h=22円で計算)しかかからない省エネルギー製品です。

 このシンプルなデザインでなおかつ省エネルギーで長寿命な防災ライト。四国4県で照明器具販売を手がける宮地電機製造のオリジナル製品であります。

 
図4、5、6 Multi Cube新製品発表会場(松山市総合コミュニティーセンター)の様子

図7 Multi Cube「ぐらっパ」の展示状況
 
図8、9 「ぐらっパ」の専用スイッチ概観とその内部(中に非常時バッテリーが内蔵されている)
(Multi Cubeのカタログより)


3 上林森林公園のLED照明器具Multi Cube

 松山市内での新製品発表会場で「ぐらっパ」を見ていたら、Multi Cube設置事例の映像が会場で紹介されていました。松山市から車で1時間ほどの上林森林公園にあるとのこと。実際のLED照明の明るさをぜひ体験しておきたいと思い、友人に見学案内を依頼しました。業務を終えた友人の案内で夜9時に松山を出発し、高知県方面に車を走らせます。カーブの続く上りの山道をしばらく走ると、真っ暗な山中にあかりがともるお洒落な木造の建物が現れました。心細くなっていた私の心がほっとするのを感じました。実はこの建物、上林森林公園入り口部に設置されたトイレで、センサーで点灯消灯するMulti Cubeが使われていました。道路沿いには風力発電機とソーラー発電パネルを組み合わせたハイブリットポール(蓄電池ボックス付き)があり、それから給電を受け点灯する仕組みです。

 充分に明るい電球色のLED光は内装木材の心地よさを引き出し、落ち着いた柔和な雰囲気をかもし出していました。このLED器具Multi Cubeは白熱電球25ワットと同等の照度が得られていると友人の説明を聞いて納得しました。都会の繁華街と違って煌々とまぶしい光がない環境でなら、必要最小限のLED照明器具のあかりでも充分であると確信しました。今後、このような山中にハイブリットポールやソーラーパネルを活用した、省エネで環境と共生するLEDの夜間照明が急増するでしょう。そしてこのような人里離れた場所での照明のあかりはいつでも私たちを安心させてくれるものです。

 
図10 上林森林公園内にあるトイレ。横に見えるのがハイブリッドポール 図11 ハイブリッドポール。風力発電機とソーラーパネルがついている。
 
図12 トイレの入り口部/図13 夜間点灯の様子


 なお余談ですが、このMulti Cubeを製造、販売している宮地電機(株)は松山市内をはじめとして四国に4店舗インテリアショップ「ラ・ヴィータ」を展開しています。照明を中心としたハイセンスなインテリア用品の品揃えと洗練されたディスプレーは一見の価値有りですので四国にお立ち寄りの際にはぜひ。

 
図14 松山市内の「ラ・ヴィータ」夜間の概観/図15 「ラ・ヴィータ」の店内の様子


4 その他の「安心」につながる照明器具

 今回は「安心」というテーマで、LEDを使用した防災ライトの紹介をしましたが、この他にも「安心」につながる照明があります。

 電池が内蔵されている非常灯は定期的にその非常時点灯機能を点検する必要がありますが、非常灯などは高所の視認性の良い場所に設置が義務付けられているので、点検時には足場を用意しなければならないことが多く、非常に面倒でお年寄りにとっては危険な作業でもあります。そこでこの点検を簡易にできるタイプの「リモコン自己点検機能付き非常灯」が松下電工や東芝ライテックから発売され、停電時に作動するかどうかリモコンでいつでも楽にチェックできるようになっており、いざという時に慌てないで済むようになっています。

 また昨年東芝ライテックから発売された製品で、「ゆれピカ」という住宅用天井シーリングライトがあります。震度4〜5以上の揺れを感知すると照明器具の横の保安電球が5分間点灯し、停電時には30分間点灯するというもの。まさしく日本人の高まる防災意識に対応した商品だといえます。

 次回は省エネについて述べようと思いますが、最近省エネの観点からLED照明が店舗でも検討されるようになってきました。発熱の少ないLEDなら空調負荷も少なく、さらに省電力です。また昨今のエコブームにのって企業が導入する事例が増えています。2008年3月には「LED Next Stage」という店舗向け(LED照明やサイン・看板、ディスプレーなども見られる)の展示会が開かれます。このLED Next Stage、今年3月のライティング・フェアでも留意したLED店舗照明がどのような形で出展されるのか、楽しみにしています。

照明技術・デザイン最新事情
執筆者:落合 勉

照明デザイナー
M&Oデザイン事務所代表
LBA JAPAN NPO 理事長、愛知県立芸術大学非常勤講師、照明文化研究会 会長


1948年愛知県三河生まれ、ヤマギワにて照明を実践。
1991年横浜にてM&Oデザイン事務所スタート、現在に至る。
2001年からLED照明デザインワークに特化しての活動を展開、そして2006年からはOLED照明普及にも尽力。
2006年のALL LEDの店舗空間、2008年のALL LED街あかりや住空間、2009年のALL OLED照明空間など手がけ、SSL快適照明を探求提案。
器具のプロダクトデザインや照明計画などを行う傍ら、国内外の照明関連展示会や企業などを訪れ、グローバルな照明最新情報をインプットする。コラム(http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/index.html)参照。
趣味は古灯具探索で、日本のあかり文化の認知普及活動を展開中。
2009年7月、Light Bridge Association JAPAN NPOを設立し、理事長に就任。
次世代のあかり文化を担う「あかり大好き人間」の育成を目指している。

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