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連載コラム

「照明市場ニーズの3点/安心・省エネ・環境」(その2)省エネについて

[ 2007年12月5日 ]

照明デザイナー 落合 勉(M&Oデザイン事務所)
はじめに

 地球温暖化への警鐘が唱えられ、その対策が世界中で次々と実施されようとしている昨今、"ポスト京都議定書"として2007年6月に開催されたドイツ・ハイリンゲンダムでのサミットで、2050年までに世界全体の温室効果ガス排出量を半減させることを真剣に検討するという合意が、G8(日、米、英、仏、独、伊、加、露)首脳によってなされました。この目標に向け、我が国でもさらなる省エネルギー対策が検討されはじめています。

 これまで日本の照明業界はオイルショックを経て光源の改良や器具の効率をUPさせるなど積極的な照明の省エネ化を進めてきました。そして温暖化ガス削減への取り組みに照明の役割も大きいと認識され、1999年には省エネ法でテレビやエアコンなどと共に「蛍光灯器具」が特定機器に指定され、省エネ効果が大きいインバータ蛍光灯器具の普及が推進されました。照明の省エネ化は今後も新たなる展開が予測されましょう。今回はその照明と省エネについて述べたいと思います。


図1 世界の温暖化ガス排出の割合(2003年)
出典:IEA STATICS 2005年版

図2 蛍光灯器具の消費電力推移
出典:日本照明器具工業会HP(40W2灯用タイプで6000ルーメンを得るための消費電力)

図3 家庭における機器別の消費電力量の比較。
エアコン、冷蔵庫、照明器具がトップ3に入っています。
出典:資源エネルギー庁 平成16年度電力需給の概要


1 ソーラーパネルとエコショップ・エコストア

 「熊本県大津町。ホンダの二輪車工場の一角で、まもなく"場違い"な太陽電池の量産が始まる。」この出だしで始まる新聞記事に目が留まりました。本田技研工業が本格的なソーラーパネル事業を構想しているという記事(2007/7/19日付日本経済新聞)でした。太陽電池はクリーンエネルギーとして市場が急拡大しています。その世界市場は2005年で4300億円と見られていましたが、昨今のエコブームで毎年10〜20%の増加予想がなされ、2010年には1兆2000億円に達するといわれています。この太陽電池、日本は世界のトップシェア(2004年では約50%)を占めていましたが、市場の急速拡大に伴いシェアは大きく変動。中国など世界の新勢力が台頭し、2006年度の日本のシェアは約40%になりました。

 このソーラーパネルを活用した照明器、街路灯や庭園灯や交通標識などが最近急速に普及しています。それらの中でソーラーパネルを取り入れた"エコストア"の事例を紹介します。

 昨年の省エネ法改正に伴い、一般の中小店舗だけでなく大型商業施設や全国的チェーン展開をしているコンビニエンスストアなど、今まで以上にエコショップ化の推進に積極的です。その先進的事例として以前に、このコラム欄でコンビニエンスストアのLEDファサード看板を紹介しました。(詳しくはこちらから)この時は商業用電源(電力会社からの供給電力による点灯)による白色LED内照式看板でした。今回紹介するのは電源にクリーンエネルギーのソーラーパネルを使用するショッピングストア、イオン柏店(千葉県)とイオン千種店(愛知県)です。

 図5と図6をご覧ください。正面壁のLEDを使用して作られたJUSCOの文字の背看板部にソーラーパネルが設置してあり、さらに手前のポールにもソーラーパネルが設置してあります。また、上記の2つのショッピングセンターの正面壁面は、植物を設置した「壁面緑化」も展開しており、イオンが展開しようとする"エコストア"を目指す姿勢が窺い知れます。先月オープンしたイオン鹿児島ショッピングセンターではイオン店舗で最大級のソーラーパネル(総面積約1000m2)を導入したそうです。


図4 コンビニエンスストアのファサードLED看板 ファミリーマートのサンシャイン南店 (2006年1月のこのコラム欄/第4回「省エネ新光源・LEDの動き」その3参照)
 
図5 イオン柏店正面部全景
正面壁のJUSCOの文字看板(LED)とその背部黒い面がソーラーパネル。
手前のポールにもソーラーパネルが鉛直に掲げられている。
図6 正面壁のJUSCOの文字看板(LED)とその周囲の植物による「壁面緑化」の様子
 
図7、8 イオン千種店
ソーラーパネルと白色LEDの内照式看板(グリーンの木をイメージしたイラスト)
上部には風力発電機も設置されている。

図9 イオン鹿児島店の駐車場横に設置されたソーラーパネル


2 東京モーターショー、東京デザイナーズウィーク(TDW)に見る省エネ

 今秋の首都圏は例年と変わらず、各種のイベントや展示会が目白押しでした。その中でもモーターショー、東京デザイナーズウィーク(TDW)には省エネ志向がそれぞれに見られました。

その1 東京モーターショー

 第40回東京モーターショー2007が、千葉・幕張メッセにおいて10月26日〜11月11日までの17日間開催され、142万人もの人が集まったそうです。会場はクルマに関するすべてのカテゴリーにおいて最先端製品や最新技術が発表され、世界中から注目を集めていました。

 私の関心は、LEDが前回に比べてどのように、どこまで用途が広がったのかということです。前回の様子はこの連載の『第4回「省エネ新光源・LEDの動き」その1、モーターショーから見る照明トレンド』(詳しくはこちら)にて紹介しました。内外装の照明は昨今の急激なる石油高騰により、消費電力の少ない省エネ光源=LED化が促進されていると見込んでいましたが、やはり前回のモーターショーではコンセプト・カーにのみ見受けられたLEDヘッドランプが、市販用の車にまで搭載され始めていました。車の内装用照明としてダッシュボード(インスツルメント)内照明と室内灯、足元灯が、そして外装用にはヘッドライトと表示灯や信号等がありますが、今年はあらゆる部位でLED実装への様相を具体的に見せていました。

 
図10 第40回東京モーターショー2007の会場風景(外)
図11 第40回東京モーターショー2007の会場風景(内)
 
図12、13 トヨタ自動車のレクサスLS600hLに搭載のLEDヘッドランプとLED照明の足元灯


 LEDランプやその周辺パーツの製造技術は、日本が世界においてもトップランナーです。LEDランプの高出力化やデバイス製造技術、さらにモジュール化やコンバーターとのシステム化、そしてレンズによる配光制御などLEDを含めた半導体技術や光システム制御装置の製造技術の高さが、品質にシビアな要求をされる自動車用LEDヘッドランプ(トヨタ・レクサスLS600hL)を実現させていました。そして数年後には車載で培われたLED照明ノウハウが、一般用照明(住宅、店舗など)へと展開されていくことでありましょう。

 
図14 小糸製作所のLEDヘッドランプ内部ユニット
図15 小糸製作所の光色が変化する指示器と可動する前照灯
 
図16 トヨタ「FT-MV」(コンセプトカー)のLEDヘッドライト部分
図17 三菱ふそうトラック・バス「CANTER ECO-D」(コンセプトカー)のLEDヘッドライト部分
 
図18 マツダ「大気」(コンセプトカー)の透過性のあるボディを利用したLEDを使用した指示器
図19 スズキ「X-HEAD」(コンセプトカー)のLEDヘッドライト部分


その2 TDW

 TDW(ティーディーダブル)とはTokyo Designer's Week(東京デザイナーズウィーク)の頭文字を称したもの、1986年にスタートした"デザイナーズサタデー"が前身でそれから数えて22年目になるとのことです。今や5日間で8万人以上が会場に集まる大きなイベントです。出展者は学生から個人、さらには企業や公共団体まで多様で、出展品も多種多様、デザインスタイルも、形態も展示スペースの制限を除けばほぼ自由というこのイベント、正しくお祭りと云えましょう。

 このイベント会場は、メインを東京・明治神宮外苑の絵画館前特設テント会場を中心に都心に散在しており、全体を見て周るには開催期間(10/31〜11/4)では不足するほどであります。今年のテーマは「愛」とのことで、「地球を愛す、人を愛す、モノを愛す」のキャッチフレーズで自由な発想の作品が集積されました。そのなかでコンテナグラウンドというコンテナがまるごと展示ブースとなっているゾーンの一画に、「日常生活を通じてCO2削減(温暖化防止)を行おう!」と啓蒙する「カーボン・ダイエットなあかり展」と名づけられた展示ブースが省エネ照明を提案していました。

 省エネ照明を提案していたコンテナの出展者は「チーム・マイナス6%(環境省)、月間ソトコト、J-WAVE(81.3FM)」で、2種の展示構成(「SAVE Energyな空間デザイン展」監修:照明デザイナー石井幹子氏と「カーボン・ダイエットなデザインカタログ展」)となっていました。「SAVE Energyな空間デザイン展」はコンビニエンスストアの電気量、光量を50%削減することでCO2削減を目指すもので、実際にコンテナの中にコンビニの模擬店内をつくり、デザイン学校の学生たちがLED照明器具や電球色の蛍光ランプ照明器具を用いて照明計画を行っていました。もう一つの展示「カーボン・ダイエットなデザインカタログ展」では身近なところで実行できるCO2削減へのアクションヒント(省エネ光源への交換など)が示されていました。


図20 Tokyo Designer's Weekの会場風景(外観)

図21 1ブースがコンテナになったコンテナグラウンドの様子。
この一画に「カーボン・ダイエットなあかり展」が行われていました。
 
図22 「カーボン・ダイエットなあかり展」のコンテナその1、従来型のコンビニストアの天井灯(40w蛍光ランプ器具)を消灯して、50%の電力でLED照明器具を点灯した時の様子。
図23 「カーボン・ダイエットなあかり」のコンテナその2、従来型のコンビニストアの天井灯(40w蛍光ランプ器具)を消灯して、50%の電力で電球色蛍光ランプ照明器具を点灯した時の様子。


 今回は省エネと照明、という観点から、最近気になった事柄を取り上げました。照明から省エネを考え、そして実行しようとする動きは今現在様々な分野に及んでいます。また、この省エネルギーに関して"クリーンなエネルギー"を普及させようとする展示会「新エネルギー世界展示会」もありました。


図24 第2回新エネルギー世界展示会の案内パンフレット
 
図25 各種の新エネルギー(ソーラーパネル、風力発電、太陽熱高度利用システム、地熱エネルギー、燃料電池など)が発表されていた会場風景
図26 シャープと並び世界の主要ソーラーパネルメーカーである三洋電機のブース


 私たちも照明の観点から省エネを心がけ、地球温暖化防止へ協力(CO2削減)をしませんか?誰でもが簡単に参加できることとして「ランプ交換時の省エネ光源への取り替え」があります。電球型コンパクトランプの使用です。寿命は白熱電球の10倍で、電気代が1/4にもなるという長寿命の省エネ光源です。できることからはじめてみてはいかがでしょうか。

 
図27 省エネの電球型コンパクトランプ(松下電器産業パルックボール・プレミア)
図28 省エネの電球型コンパクトランプ
(LED常夜灯と一体で簡単に使い分けができる東芝ライティックのネオボールZ)


次回は環境について、街のあかりの観点から記してみたいと思います。

照明技術・デザイン最新事情
執筆者:落合 勉

照明デザイナー
M&Oデザイン事務所代表
LBA JAPAN NPO 理事長、愛知県立芸術大学非常勤講師、照明文化研究会 会長


1948年愛知県三河生まれ、ヤマギワにて照明を実践。
1991年横浜にてM&Oデザイン事務所スタート、現在に至る。
2001年からLED照明デザインワークに特化しての活動を展開、そして2006年からはOLED照明普及にも尽力。
2006年のALL LEDの店舗空間、2008年のALL LED街あかりや住空間、2009年のALL OLED照明空間など手がけ、SSL快適照明を探求提案。
器具のプロダクトデザインや照明計画などを行う傍ら、国内外の照明関連展示会や企業などを訪れ、グローバルな照明最新情報をインプットする。コラム(http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/index.html)参照。
趣味は古灯具探索で、日本のあかり文化の認知普及活動を展開中。
2009年7月、Light Bridge Association JAPAN NPOを設立し、理事長に就任。
次世代のあかり文化を担う「あかり大好き人間」の育成を目指している。

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