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連載コラム

「照明市場ニーズの3点/安心・省エネ・環境」(その3)環境/街あかりについて

[ 2008年6月27日 ]

照明デザイナー 落合 勉(M&Oデザイン事務所)
はじめに

 環境を取り上げた話題が日々増している昨今、照明の市場においても生活空間での照明演出のあり方や照明器具のリサイクル(デザイン・製造・廃棄それぞれの取り組み)など、環境への配慮は必至です。私は以前、講演の為に"街のあかり環境"についてリサーチしたことがあり、その結果街あかりには3種のカテゴリーに分けられると分析し、そのデザイン事例を紹介しました。その3種とは不特定多数の人のためのPublicなる照明(市町村名を知らしめるサイン標識やランドマークとなる建造物へのライトアップ事例など)、2つ目に道路や公園の街路灯や案内標識灯のような住民の為のCitizenの照明、3つ目が個人住宅の玄関廻りの門灯のようなPrivateの照明です。今回の連載コラムはこれら街のあかりについて環境という観点から、最近留意した事柄を紹介します。


数キロ続くLED街路灯の道

 100基以上のLED街路灯が連なって照らされる歩道があると聞き、あの高輝度で眩しく指向性ある光のLEDを用いた街路灯はどのように周囲の環境に対応させているのか、ぜひ見たいと思い岡山に行きました。

 瀬戸大橋が完成するまで本州から四国に行くには、岡山市の郊外・宇野港から四国・高松への宇高連絡船に乗り瀬戸内海を渡って行くのが一般的でした。この宇高連絡船には岡山駅からJR宇野線で港町・宇野駅まで列車で行くのです。1988年瀬戸大橋の架橋完成により瀬戸大橋線が開通し列車で行き来できるようになりました。この工事に伴い岡山市中心街を走る宇野線は高架線路となり高架線路下脇の道路整備がなされました。その歩道にソーラーパネル発電によるLED街路灯が大元駅から備前西市駅一区間の約3キロに100基ほど設置されたのです。このLED街路灯、景観的に小型軽快で爽快なる歩道空間を形成し、夜間歩行には充分なる明るさでありました。日中の太陽光で起電した電気はポール下部に収納されたバッテリーに蓄電され、不日照日が4日間でも夜間点灯し続ける設計となっていました。そのLED照明ですが、夜間の照明環境対策に配慮ある照明設計がうかがいしれます。この設置地域は岡山市内の中心街で住宅地区でもあり住宅への照射漏れや道路走車輌運転手への視線障害がないよう(光害対策考慮)、配光制御がされていました。指向性の光を有すLEDの特性を活用した器具設計は見事でありました。

 
図1、2 岡山市内JR宇野線高架線路沿いの道路歩道に設置された
ソーラーパネル式LED街路灯の様子
(ポール灯タイプと電柱供架の2方式両用/製造:日本街路灯製造)。

図3 144個の超高輝度砲弾型LED(白色と黄色)で構成されたLED灯具部
(設置高さ3.5M/LEDは日亜化学工業)。


 岡山市郊外の瀬戸内海の入り江・児島湖に面して岡南飛行場や岡山パブリックゴルフコースなどがあり、その脇に新しい計画道路が作られていました。その道路「岡山市岡南線」の歩道2キロほどにもLED街路灯が約100基設置されており、壮観でした。この街路灯、超高輝度砲弾型白色LED180個が使われていました。そのLED灯具部は4.5メートルの高さから歩道面を照射するように設計し、設置されておりました。日没直後にもこの歩道を歩いてみましたが、LED特有のぎらつきはなく、適度に陰影ある歩道面照明を展開していました。明るさも夜間歩行に特に支障なく、平均1ルックス以上の照度は得られていました。

 この街路灯の形状ですが、構造や製造上の効率機能優先形状で、景観に馴染みにくい印象を受けたのは残念でしたが、時々ジョギングする市民の人たちもいて気持ちよく散策できました。街の景観にも充分配慮したデザインの街路灯で、親しみある街づくりがされることを願う次第です。

 
図4、5 岡山市郊外の計画道路「岡山市岡南線」歩道に設置されたLED街路灯の景観
LED街路灯には商用電源線からの給電方式(電柱供架式、ポール灯)タイプと
ソーラーパネルポールタイプとがある。

図6 設置のLED灯具部。


 とかくLEDの照明は輝度が高く、ぎらついて使いにくいとの印象を持ってしまいがちですが、数キロにも続くLED街路灯照明を体験し、LED照明もその配光など配慮すれば充分適応できると思いました。

 欧米など先進国の街並みは、落ち着いた照明環境に配慮していると云われます。視察した岡山のLED照明事例も落ち着いた照明(光害のない)であり、私には心地よく感じました。現在市街地に普及し始めている高輝度放電灯や高効率コンパクト蛍光ランプでの明るい照明は、その適応場所や空間を見極め使用することが賢明でありましょう。それでなくても街には高層ビルや橋などの夜間ライトアップの光や広告競演のイルミネーション、さらには深夜に煌々と明るいコンビニエンスストア・ファサード看板や自動販売機の光など、明るすぎると指摘されます。省エネが叫ばれる昨今、植物等への影響も考え、環境に優しい街のあかりとしたいものです。


省エネ環境共生の街づくりと21世紀型の照明

 2008年の秋、省エネ環境共生型の街づくりを目指している分譲住宅地(開発:トヨタすまいるライフ)がオープンします。オールLEDによる外構照明計画の街で、従来の光源を使用した場合の電気使用量比は1/3にもなるとのこと。「Green Avenue あざぶの丘」というこの街、名古屋市と豊田市の間にある三好町の緑豊かな丘に204区画の新街区として建設中、まさに省エネ環境共生型住宅として社会ニーズにフィットすること間違いないでありましょう。その住戸廻りのLED照明の最終テストを見てきました。間接照明手法や眩しさを感じさせないよう配慮した照明配置計画によって、ぎらつくあかりなく(教示なければLED照明とは思えないほど)落ち着いた住戸周りの様相は上品なる照明空間を創り出し、高級レジデンスの雰囲気を感じさせていました。

 Green Avenue あざぶの丘の基本計画書によるとこの街は、地域の自然環境を最大限に活かし、快適な空間構成を施し安全性に配慮することで「住み続けることで成熟していく街」を目指すべきゴールとしているそうです。(なお、地域の自然環境とは地形と植生と水が作る微気象であり、快適な空間構成とは公園と街路とオープン外構を指すとのこと。)その基本概念から照明計画は、『環境立国である北欧デンマークのように明と暗の心地良い光のコントラストをバランスよく配置しながら、緑豊かな街に優しくも暖かい夜間景観形成を目指すもの』としています。その照明手法は、長寿命・省電力であるLEDを使用することで環境負荷軽減を計りつつ、建物や植栽への照射によって夜の景観にメリハリと優しさを創りだすよう配慮した照明デザインでありました。

   
図7、8、9、10 最終テストの住戸廻りの照明演出の事例。
すべて電球色のLED照明で展開(LEDは豊田合成)。


 各住戸の玄関廻りのLED屋外照明器具で道あかりの演出を展開させるこの街は、住戸廻りがオープン形態であり、住民協定による夜間常時点灯(200円ほどの電気代/月)によって夜の街路景観を作りだすことになるのです。街のあかりをそこに暮らす住民の方々で形成するということは、素晴らしいことでありましょう。ところで、この街は地中ケーブル電線で電柱はなく街路灯は主要交差点のみです。すっきりとした街並み形成が続き、夜間ではその家並みのシルエットが浮かびあがりましょう。今秋の街開き、楽しみです。

 夜間の明るさを追及する外構照明計画は、植物や動物の生態系に影響を及ぼすと言われています。この街の照明計画には過剰な光を設けず、壁面など鉛直面に光をあてることで充分な「明るさ感」を得られる手法です。又、公園にはソーラーパネルや風力発電機と組み合わせたハイブリットポールなどが配置され公園内の電力として活用されるよう計画されています。

 
図11、12 公園に設置されているハイブリットポールとLED街路灯(設置工事直後の様相)。


 省エネ環境が重視されている昨今、住宅地の照明も今後そのあり方が検討されていくでありましょう。防犯への布石として単純に明るくしたり、又精神安定化のためとの見解から青色光での照明演出など一部で実地検討されています。今後の私たちの生活空間へ、より良い環境照明のあり方について多くの見識ある提案を期待します。


街あかりの祭典-フランクフルトのLuminale(ルミナーレ)

 今春、フランクフルト市中心街は220箇所もの場所で、各種の照明演出イベントが展開されていました。市内を流れるライン川の支流、マイン川沿いから見られる数々のライトアップ景観やレーザービーム光のパフォーマンスなどで、モダンな建物が多い商業都市フランクフルトの夜景は昼間とは異なるファンタスティックな様相を呈していました。

 ご存知のようにフランクフルトはドイツの商業、金融の中心地で、街の中心地に立ち並ぶ高層ビルの多くが銀行の建物で、金融都市との異名も持つほどです。これら近代モダンデザインの高層建築物が多いこの街の日中は、古き良き欧州のロマンチックな雰囲気を好む人には味気ない街と映ることでしょう。そのモダンシンプルの街並みが夜ともなると、いっせいなる照明演出(19:00頃から24:00近くまで)で、驚くほど華やかな転身を見せるのでした。この夜間照明の祭典「Luminale」、多くは建築物への照射演出(ライトアップやイルミネーション)ですが、屋内空間でのインスタレーションやあかりのワークショップなどもあり、多彩なる光のイベントであります。

 Luminaleを見て廻るには、散策しながらのウオッチングも春の風に吹かれ気持ち良いですが、Luminale Bus(18:00〜23:50まで10分間隔)が市内巡回しており、その巡回バスでイルミネーションやカラフルに照射されたライトアップ建築物見学の周遊も楽しいものです。

 このLuminale、世界最大の照明展Frankfurt Light+Building 2008の開催期間中(2008年4月6日〜11日)の6日間実施されるもので、照明器具メーカーの協賛とフランクフルト市の後援によって実行委員会が実施しているものです。世界中の照明関係者が一同に集まるLight+Building展(市内の国際見本市会場で開催)は2年ごとに開催され、今年で5回目です。Luminaleは2002年(年々その規模内容が充実)からで、照明展同様に規模が大きく、期間中すべてを視察するにはたいへんな事であります。以下紹介する事例もほんの一部ですが、そのスケールの大きさがうかがいしれましょう。

 
図13 世界最大の照明展Frankfurt Light+Building 2008の会場入り口の様相 図14 フランクフルト市内で展開されているLuminaleの場所を示したマップ (122箇所までのマップでこの他に100箇所ほどある)


 ランドマーク的建築物(中央駅や再建された旧市庁舎や博物館やオペラハウス、さらにはマイン川にかかる橋など)へのライトアップ効果は、街の華やかさだけでなく鑑賞する人たちも多いことから夜道であっても安心感があります。これらの鑑賞には近距離から見る迫力はさることながら、遠くからの眺望をも計算しての演出は見事であります。街の通りに面した工事現場のクレーンも、このLuminale期間の6日間はイルミネーションで飾られ楽しい景観を提供するなど、街のあちこち大小の夜間照明演出であふれ、見て廻る来訪者を歓迎しているようでした。

         
図15〜25 市内で展開されているLuminaleの会場事例の様相。


 Light+Building 2008照明見本市と連動してのLuminale、日中は商談ビジネスが展開される照明見本市の会場で最新照明器具の方向性(製品を競うハード)を確認し、夜はファンタスティックな照明演出の妙味(ソフトアプリケーション)を楽しむ。この時期のフランクフルトは昼夜、照明で明け暮れるのです。

 街あかりと題して留意した事柄3点、LEDの街路灯、省エネ環境共生志向の住宅街のあかりについて、そして照明展と連動するビルのライトアップやイルミネーションを紹介してきました。省エネルギーへの関心が高まる今、魅力ある街のあかりにそして環境への対応に参考になれば幸いです。なお、フランクフルト照明展の最新照明器具動向は、次の連載コラムで記述することにします。 了

照明技術・デザイン最新事情
執筆者:落合 勉

照明デザイナー
M&Oデザイン事務所代表
LBA JAPAN NPO 理事長、愛知県立芸術大学非常勤講師、照明文化研究会 会長


1948年愛知県三河生まれ、ヤマギワにて照明を実践。
1991年横浜にてM&Oデザイン事務所スタート、現在に至る。
2001年からLED照明デザインワークに特化しての活動を展開、そして2006年からはOLED照明普及にも尽力。
2006年のALL LEDの店舗空間、2008年のALL LED街あかりや住空間、2009年のALL OLED照明空間など手がけ、SSL快適照明を探求提案。
器具のプロダクトデザインや照明計画などを行う傍ら、国内外の照明関連展示会や企業などを訪れ、グローバルな照明最新情報をインプットする。コラム(http://messe.nikkei.co.jp/lf/column/ochiai/index.html)参照。
趣味は古灯具探索で、日本のあかり文化の認知普及活動を展開中。
2009年7月、Light Bridge Association JAPAN NPOを設立し、理事長に就任。
次世代のあかり文化を担う「あかり大好き人間」の育成を目指している。

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