連載コラム

バランスのよいアカリ生活

[ 2010.03.03 ]

はじめに

 住宅エコポイント制度の受付が、いよいよ 3月 8日からスタートする。住宅産業の需要を喚起し、地球温暖化対策と、景気浮揚が目的だ。この制度は、主に断熱性能の向上が対象だが、建設業全体が低迷する中、住宅の新築、リフォーム特需に熱い期待が寄せられている。そこで、今回のコラムでは、住宅のアカリに注目してみたい。

明るすぎる住宅

 我が国のエネルギー消費量に占める照明の割合を見ると、家庭の消費が約16%を占める。エネルギー白書 2009によると、第一次石油ショックのあった1973年度の家庭用エネルギー消費量を 100とすると、 2007年度は216.2。つまり、現在 2倍以上のエネルギーを消費している。これは、世帯当たりの消費量の増大に加え、世帯数の増加も影響している。ライフスタイルの変化や、少子高齢化社会、個人消費に比例して依然、右肩上がりだ。
 日本の照明は一般に明るすぎるといわれる。谷崎潤一郎の『陰影礼賛』によれば、「武林無想庵(小説家)が巴里から帰って来ての話に、欧米の都市に比べると東京や大阪の夜は格段に明るい。巴里などではシャンゼリゼエの真ん中でもランプを燈す家があるのに、日本ではよほど辺鄙な山奥へでも行かなければそんな家は一軒もない。恐らく世界じゅうで電燈を贅沢に使っている国は、亜米利加と日本であろう。」とある。執筆されたのは昭和 8年(1933)だが、これより4、 5年前の話だというから、昭和初期の日本は既に煌々としていたようだ。
 実はこの頃、余剰電力の需要を増やすために「照明器具普及運動」があった。当時、照明器具は貴族か富豪でない限り縁のないものとされ、民家では「P-1セード」なる平たいガラスのセードに裸電球がついたペンダントが最も一般的だった。昭和 3年(1928)、照明器具製造業の先駆け佐々木商会創業者の佐々木真太郎は、このセードに代わるものとして「ササキシェード」を開発。満州に進出し、台湾、朝鮮まで照明器具の普及宣伝に努め、模造品が出回る程の空前の売れ行きとなった、と真太郎は後に『私の照明生活 37年』で回想している。
一方、大正5年(1916)竣工の公爵毛利家では、光源はコンパクト蛍光灯電球色に交換されているものの、当初からの照明器具がそのまま残され、工芸品のような美しい和風シャンデリアを見ることができる。応接室は照明の数によって招待客と部屋の格式を差別化しているのも特徴だ。部屋の片隅に置かれた美しいガラスの燭台から察すると、食事や来客時には、ろうそくのアカリがもてなしとして補助的に使われていたのではないか。防府毛利邸は一般公開されており、当時の華族の豊かな暮らしとアカリを垣間見ることができる。
 昭和 5年(1930)、更に真太郎は「光の芸術化運動」を通して照明による生活改善を訴えた。この運動は、欧米で流行のデザインを輸入するものではなく、日本の伝統をふまえつつ、機能だけでなく「光」そのものを利用したデザインを展開したことに特徴がある。そして、照明方法如何で人間の住むところは、まるで異なった色々の気分が出せるので、まずは電灯照明器具鑑賞からはじめるべきだ、と説いた。
 こうして、昭和の住宅は、家具や調度品を飾るように装飾的な照明器具が主流となったようである。

一室一灯から多灯分散へ

 筆者は、ここ最近、近代和風建築調査に参加し、明治、大正から昭和 20年代までの建築を実測しながら、独自に照明調査に勤しんでいる。調査は比較的大きなお屋敷が多いのだが、照明器具は天井の真ん中に和風シャンデリアかペンダントのどちらかで、光源は白色環形蛍光灯が圧倒的に多い。恐らく、当初は P1セードなどだったものが、「ササキシェード」風を経て、環形蛍光灯普及に伴って現在に至ったと推測される。 1956年発行の佐々木商会カタログ『照明芸術』には、環形蛍光灯や直管蛍光灯器具が掲載され、新しい照明の感覚には昼光色が効果的と謳われていた。
 平成になっても、住宅といえば、天井の真ん中にシーリングライトやペンダントが定番だが、このような歴史を見ると「一室一灯」は、もはや正統派と言うべきか。ところで、筆者は天井に鎮座するこのシーリングライトがどうも嫌いだ。光源が白い蛍光灯だったりすると、更に居心地が悪い。天井面など高い所から下向きに降り注ぐ均一な白い光は、オフィスのような緊張感を与える。住宅の場合は、なるべく低い位置から、暖かい光を室内に分散させて、壁面や天井面を照らした方がリラックスできる空間となる。
 このように、複数の照明を組み合わせて使う方式を「多灯分散照明」という。2006年に照明学会が『住宅照明設計技術指針』で提唱して以来、注目を集めている。光の「量」だけを重視してきたこれまでの姿勢を反省して、快適性を重視した光の「質」について様々な基準を提示している。一室に消費電力が少ない照明を複数置き、必要に応じて使い分ければ、50%の節電が期待できるという。
 これまで、多くの照明デザイナーが従来の住宅照明に異論を唱えてきたが、ここに来て、やっと時代が追いついてきた感じがする。では、プロの手掛ける快適性を重視した住宅照明を以下にご覧に入れよう。

図 1: 唐津のお屋敷で現役の P-1セード。電燈会社の標準品で、少しハイカラなお宅では、P-2、 P-3など、依頼に応じて形のバリエーションも選択できた。呼名の「P」はポーセレン(磁器)の頭字、或いは当時の商品目録のページの意味ともされている。図 1: 唐津のお屋敷で現役の P-1セード。電燈会社の標準品で、少しハイカラなお宅では、P-2、 P-3など、依頼に応じて形のバリエーションも選択できた。呼名の「P」はポーセレン(磁器)の頭字、或いは当時の商品目録のページの意味ともされている。

図2:旧長州藩主、公爵毛利家(山口県防府市)の食事室。二灯の花形セードペンダントは当初からのもの。お屋敷は一般公開されており、当時の華族のアカリと豊かな暮らしを垣間見ることができる。図2:旧長州藩主、公爵毛利家(山口県防府市)の食事室。二灯の花形セードペンダントは当初からのもの。お屋敷は一般公開されており、当時の華族のアカリと豊かな暮らしを垣間見ることができる。

アカリの魔法/ダイワハウス駒沢展示場

照明デザイン:スパンコール 村角千亜希
所在地:東京都世田谷区
写真撮影:ナカサアンドパートナーズ (図 3-6)
近年、戸建住宅には、より高度な品質と性能が求められている。外張り断熱などの先進技術によって多様化する時代のニーズに応えると同時に、住まいの新たな価値を創造するダイワハウスの注文住宅シリーズ「xevo(ジーヴォ)」のモデルハウス。「あんな家に住みたい」、「こんな家具を置きたい」など、家に対する憧れやデザインへのこだわりが拡大して照明デザインを依頼するケースが増えている。そこで、アカリを使って住む人の気分に合った空間を自由に演出できるようにと、照明デザイナーの村角千亜希氏(スパンコール)が、ダイワハウスと共に、「xevo by AKARI no MAHO」をプロデュースした。広さは 216.75㎡ (1階: 125.04㎡、 2階: 91.71㎡)。
 たくさんの照明器具を設置して、必要以上に室内を明るくするのではなく、最小限の照明器具で豊かな暮らしができるようにと丁寧に設計されている。パーティーやホームシアター、団らんのひと時のリラックスタイムなど、暮らしのシーンにあわせた調光システムでアカリをコントロールできるように設定。ゆっくり音楽を聴いたり、風呂あがりにテラスでビールを飲んだり、会話を楽しんだりと、心が豊かになる新しいライフスタイルの発見をアカリで提案している。消費電力の抑制も期待できるので、地球環境にも配慮したエコな暮らしが可能だ。
 「アカリは、人の気分によって変化させることができる。忙しい仕事を引きずって自宅に戻ったとき、雰囲気のよいアカリが迎えてくれることで、気持ちが自然に落ち着くことも。アカリは、人の気持ちを豊かに変化させる力を持っている。それがアカリの魔法。」と、村角氏。住まいのアカリを何とかしたいと思ったら、魔法を体験しに、駒沢まで足を運んでみてはいかがだろうか。

図 3:モデルハウス外観。窓越しに室内からこぼれる暖かい光が、やさしく出迎える。図 3:モデルハウス外観。窓越しに室内からこぼれる暖かい光が、やさしく出迎える。

図 4:通り庭。昼間は、天窓から降り注ぐ光が開放的な空間。暮れなずむ頃になると、行灯のようなやさしいアカリと、影絵のような木のシルエットが落着いた雰囲気を演出する。図 4:通り庭。昼間は、天窓から降り注ぐ光が開放的な空間。暮れなずむ頃になると、行灯のようなやさしいアカリと、影絵のような木のシルエットが落着いた雰囲気を演出する。

図 5:寝室。テラスのアカリを楽しみながら、ゆったりとした癒しの時間を演出。図 5:寝室。テラスのアカリを楽しみながら、ゆったりとした癒しの時間を演出。

図6:リビング・ダイニング。庭を囲む壁を面として照らすことで、室内との一体感を生み、空間に奥行きを与える。調光により陰翳のある生活シーンを演出できる。図6:リビング・ダイニング。庭を囲む壁を面として照らすことで、室内との一体感を生み、空間に奥行きを与える。調光により陰翳のある生活シーンを演出できる。

外の景色を楽しむウチ/K邸

照明デザイン:ライティングデザインスタジオ LUME
梅田かおり
建築設計:プレッツァ・アーキテクツ 岸上昌史
所在地:宮城県仙台市
写真撮影:梅田かおり (図 7-10)

 箱を積み重ねたような外観の高台にある戸建住宅。RC 2階建、延床面積は約 162㎡。40代の夫と 30代の妻、小学生の子供+犬 1匹が暮らす。室内は、昼間はふんだんに外光を取り入れ、夜になると全く違う落ち着いた光で構成されている。南面のガラスからは、中庭の桜や山並みの景色を楽しめる。夜もその景色を楽しめるよう、グレアレスダウンライトとスポットライトを室内に配置。間接照明はガラスに映り込まないように位置の検討がされている。
 「クライアントはスウェーデンに滞在経験があり、ろうそくの光を多用したり、ほのかな光で夜を楽しむ暮らしを理解されていたので、全体的に明るい空間は目指さなかった」、と照明デザイナーの梅田氏(ライティングデザインスタジオLUME)。ダイニングのペンダントは、クライアントの希望でポール・へニングセンの PHアーティチョークを採用。名作と謳われるアーティチョークは、全てのシェードに光が正確にあたり、器具自体を照らす美しい間接光と、グレアのない良質な光を生む。存在感が大きいので、他の器具はテクニカル照明に徹している。配光のあまり広くないものを中心に、ランプは調光可能で効率の高いローボルトハロゲンなどを採用。生活シーンに合わせて雰囲気を楽しみながら明るさを調節できるように、回路分けや、調光、スタンドの壁スイッチ制御など仕掛けを作った。
 中庭の桜のライトアップは、演色性の良さと省電力から CDM-Rを採用。事前に点灯実験をして効果を確かめた。天井面の間接照明は、効率とランニングコストから蛍光灯に。ドライエリアは、メンテナンスとランニングコストを考慮して LEDに。採用当時 LEDは、かなり高価だったものの、メンテナンスフリーであることと、クライアントが LEDに興味を持っていたので採用してもらえたとのことだ。
 マリメッコのテキスタイルとアーティチョークが映える空間が、控えめな照明でありながら暗さを感じないのは、内装が白で統一されていることも一つの要因。ここでは、夜を楽しむ豊かな暮らしが実践されている。

図7:ダイニング。スポットライトはDAIKO65Wダイクロハロゲン。ペンダントはルイスポールセン PHアーティチョーク。図7:ダイニング。スポットライトは DAIKO65Wダイクロハロゲン。ペンダントはルイスポールセン PHアーティチョーク。

図8:図8:リビングルーム。ダウンライトはマックスレイ12V50Wダイクロハロゲン。間接照明はパナソニック電工FH32W。

図9:ドライエリアは側壁をほのかにアッパーし、ゲストルームからの連続性を強調。エイテックスLED電球色を採用。図9:ドライエリアは側壁をほのかにアッパーし、ゲストルームからの連続性を強調。エイテックス LED電球色を採用。

図10:図10:ゲストルーム。マリメッコのテキスタイルを存分に楽しめるようテキスタイルのみの光で計画。スポットライトはヤマギワ 85Wハロゲン。

光溜まりに包まれる家/富ヶ谷の住宅

照明デザイン:コヤマケンタロウデザイン事務所小山憲太郎
建築設計:近藤創順建築設計事務所
所在地:東京都渋谷区
写真撮影:山崎洋一 (図 11-15)

 最上階にリビングを持つ眺望を重視した高台の住宅。RC造 +S造、地下1階、地上2階建。地階から屋上まで4つのフロアが、各層で仕上げやスケール、アカリの取り方など異なる様相になっているのが建築的な特徴だ。クライアントは 30代男性。パーティーや食事会など友人を招いたり、1人で過ごすときは静かにくつろげる空間を、との要望があった。「建築構造の面白さやシンプルな形状を生かせるように、照明器具の形ができるだけ見えないようにした。光の『たまり』や『広がり』など、照明効果そのものを感じられる空間にした」、と照明デザイナーの小山氏(コヤマケンタロウデザイン事務所)。人感センサーや調光シーン設定など照明制御を積極的に用いながら省エネや住まう人の省力化を図る。建築意匠の納まりを工夫し、ベーシックな照明器具を使用することでイニシャルコストの削減を図っている。トップライトのあるキッチンの天井は、開口部と一体となるようにベース照明を施し、手元の壁面には蛍光灯を納めてカウンター付近を照らす。通路のダウンライトは、コンクリート打設時に器具本体を天井に納め、トリムレスのスッキリした意匠で存在感を消した。随所に建築化照明の工夫がデリケートに施され、空間を包み込むような光溜まりのバランスが心地良い。

図11:リビング・ダイニング。天井スリットにスポット(マックスレイ MS1005282ハロゲンランプ40w)を納め空間一体でシーン調光制御。窓面の各柱は床面にLED1w(山田照明特注)を埋込み、柱と天井面をアップライト。図11:リビング・ダイニング。天井スリットにスポット(マックスレイ MS1005282ハロゲンランプ40w)を納め空間一体でシーン調光制御。窓面の各柱は床面にLED1w(山田照明特注)を埋込み、柱と天井面をアップライト。

図12:図12:ダイニング。リビングから続くダイニングでは、オリジナルのプリーツシェードペンダントをデザイン。黒の布製シェードの内面はクライアントのイニシャルを型押した手漉き和紙というこだわりの一品。ランプはミニクリプトン 60w ×3(山田照明特注)。

図13:図13:ガレージ照明はセンサーで点消灯。車をすっきりと見せ室内作業が可能なよう蛍光灯 32w(パナソニック電工FSA41070PN9)の白色。

図14:図14:寝室。クローゼットの木目扉を間接照明(パナソニック電工 FSA41070PN9蛍光灯32w)で全体の明るさ感を。ベッド側はグレアレスユニバーサル DL(マックスレイ MD20104-01ハロゲンランプ40w)と手元調光の組合せ。スタンドはクライアントの私品。


図15:階段室。手摺下面のT4蛍光灯27w(遠藤照明EK8434W)で足元を照らす。
カンチレバーの踏面だけなので階段室全体が柔らかい光で包まれている。

変わるライフスタイル

 北欧の人々はアカリの使い方が上手いといわれる。冬の北欧は、1ヶ月太陽が出ないこともあり、日中も日本とは比較にならない程暗い。季節的なうつ病になる人も多い。午後 3時には暗くなり、就労時間も短いので家で過ごす時間が長い。しかし、彼らは家の中を煌々と明るくしたりはしない。遊びに出かけたり、外食することもなく、ろうそくやスタンドで夜を楽しむかのように読書や団欒をするという。「太陽の光に恵まれた日本では、夜になっても家の中を隅々まで明るくする必要はないはずだ。明るいのが好きなら、明るくも暗くもできてリラックスできる光環境をつくれるようにしておくことが大事。」と話すのは前述の K邸をデザインした梅田氏。フィンランドに 7年間滞在し、現在は仙台を拠点に活動する。以前、煌々とした蛍光灯 1灯で暮らしていた方に、複数のアカリで調光できる住宅を計画した際、お酒を飲んだり、人を招いたり、音楽を聴いたり、本を読んだりと、テレビを見る時間が減って、充実した時間の過ごし方をするようになった、とアカリの効果を証言する。  労働時間が長い日本では、平日に家族とゆっくり過ごすのは難しく、休日は、どこかに出かけて外食というスタイルが多かった。ところが、不況の影響で最近は事情が違ってきた。だから、豊かな住宅照明を普及させるには今がチャンスだというのだ。これからは、日本人もアカリを工夫しながら家族と過ごす時間や暮らしを大切にする時代。演色性が上がり、価格が下がって、LEDのダウンライトも普及してきた。LEDならカラーの演出も自由だ。「単に明るくするために使うのではなく、ワクワクしたり、ゆったりした気分にするための小道具として LEDを使っては」、と梅田氏は暮らしを楽しくする LEDの活用を提案する。

アカリのごちそう

 ところで、良いアカリに出会ったときの感覚は、美味しい料理を食べたときの感覚に似ている。美味しいものが幸せな気分をもたらすように、良いアカリは心を満たしてくれる。そんなアカリを料理に例えて、「光の料理人」と自身を称するのは東海林弘靖氏。日本の住宅のアカリを少しでも快適で楽しいものにするため、美しく、楽しく、ワクワクするような光の演出を考案し、誰にでも簡単に実現できるレシピ集を編み出した。光という素材を様々なテクニックや工夫でアレンジすることで、ただ明るいだけでなく、生活を豊かにすることを提案している。出版後、これに多くの人が共感し、展覧会や講演会などを通じて新しい住宅照明のムーブメントとなった。「ライティングは、ファッションや読書、音楽、グルメ、旅行、スポーツなどと同じように人生の時間を楽しく豊かにしてくれるジャンルのひとつなのだ」と、著書『デリシャスライティング』の中で、日常のアカリの重要性を訴える。
 前述の『照明芸術』の中で、照明器具が食べものに例えられている。要約すると、照明器具には能率と芸術的要素の 2種類があり、前者は栄養、後者は味覚。料理を栄養価値だけで食べないように、照明器具も使い場所によっては芸術的要素に重点を置かねばならない。「光の芸術」とは粋な日本料理が味覚と視覚に重点を置くように照明芸術の鑑賞方法から生まれ出るのだ、とある。
 現代に於いて、照明デザインは、照明器具の形をデザインすることではなく建築空間を光で演出することだが、住宅においては、長い年月のうちに日本料理の真髄を忘れて、栄養価値だけを求めてきたのではないか。即席のカップラーメンやコンビニ弁当は、とりあえず空腹を満たしてくれるが、何か侘しい気分になる。手の込んだものでなくてよいが、誰かが心を込めて作った料理はごちそうだ。健康な心と体を維持するためにバランスの良い食事が必要なように、住まいのアカリにも腕のよい料理人とバランスが必要である。


図16: デリシャスライティング(TOTO出版)。

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泉 ルミ
執筆者:泉 ルミ

照明デザイナー、イルミデザイン主宰。
1969年青森県黒石(津軽)生まれ。1991年株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツに入社し、住宅から店舗、美術館、オフィス等の建築照明、橋梁、公園、都市計画等の都市・環境照明まで幅広い分野の照明デザインプロジェクトに従事。その傍ら、面出薫氏が組織する「照明探偵団」に所属し、世界の夜景調査や照明文化を研究。2003年独立し、九州・福岡にてイルミデザインをスタート。
現在、緑に覆われた環境実験住宅・E-sevenを基地に、エコロジカルで魅力的なアカリを探求している。

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