連載コラム

LEDブームの到来

[ 2010.04.19 ]

はじめに

 最近依頼された個人住宅と某改修プロジェクト。施主からの要望は双方ともに「LEDを使いたい」。LEDに対する一般消費者の関心の高さを改めて実感した。この背景には、環境意識の高まりやLEDの低価格下がある。環境に配慮して某施設が全てLED照明に交換された、というようなニュースを最近頻繁に目にする。電球形LEDに限って言えば、家電量販店やスーパーなどでもよく見かけるようになり、価格も手頃になってきた。LEDブームの到来だ。LEDが成長産業としても注目される中、3月9日~12日に「第3回LED Next Stage 2010」が東京ビッグサイトで開催された。落合勉氏が別のコラム「照明技術・デザイン最新事情」で詳しくレポートされているので、最新技術や動向分析はそちらに譲ることとして、本コラムでは筆者が注目したLEDを幾つかピックアップして形式別に分類してみる。

選択肢が増えた電球形LED

 昨年来、電球形LEDが各社から相次いで発売された。E26口金のスタンダードな電球形については、選択肢が増えたことを歓迎するが、ランプ半分が光るだけで、放熱のためのフィンでソケットまで覆われている構造が大部分。その中にあって、スタンレー電気の製品は発光面積が広いのが特徴。電球形蛍光灯のように白熱電球ソックリとまではいかないが、直下方向だけでなく、水平や上方向への光を必要とする場合に有効だ。拡散形のシェードを装着するペンダントなど用途の幅は広い。ちなみに、筆者は壁面を照らすタイプのブラケットに早速採用の予定。ところで、多くの電球形LEDはダウンライトへの使用を想定しているようだが、壁面を照らすウォールウォッシャーダウンライトとなると効果が期待できないので使えない。最近、E17口金のミニクリプトン形が出始めたが、こちらも同様に発光面積の狭さが難点。

図1:スタンレー電気の電球形LED。発光面積が広いのが特徴。
図1:スタンレー電気の電球形LED。発光面積が広いのが特徴。

海外勢に押されるダイクロハロゲン形LED

 電球形に次いで選択肢が多いのがダイクロハロゲン形。最近、店舗の採用例をよく見かけるが、従来のダイクロハロゲンと同サイズで明るさ、色温度、配光、価格を満足するものに筆者はまだ出会っていない。これまでのランプは、実際に照射してみると黄色い縁取りのような不自然な光が気になった。これをイエローリングと呼ぶそうで、このタイプのLEDをまだ使ったことがないので、今回の展示会では特に注目して見た。韓国、中国、台湾など海外ブースのバリエーションは実に豊富で、国内製品の開発が遅れていることを目の当たりにした。従来形のE11口金だけでなく、ピンタイプの口金、12V、100V対応など選択肢が広い。これまでの現場を振り返ると、MR16と呼ばれる50mm径のダイクロハロゲン12V50W形の採用が圧倒的に多い。だから、この代替品となる同サイズのLEDが欲しいのだが、熱と寿命の問題があって販売できるまでに至っていないと、ある開発者から聞いた。

図2:エス・ティー・イーが販売するデコライト
図2:エス・ティー・イーが販売するデコライト。
50mm径でE17とE26口金対応。E26の電球色は40W形レフ球相当。

 国内の照明メーカーが配光のやわらかいランプを展示していた。大光電機、コイズミ照明、マックスレイといった従来の照明器具メーカーだ。大光電機の製品「DECO-Lランプ」は、消費電力5Wで50W相当。E11口金なので、全長サイズに制約がなければ既存の器具にも使える。コイズミ照明は50mm径と70mm径のE11口金タイプ「フェニックスRLeds」を展示。前者は消費電力4.5Wで20W相当。後者は消費電力6.8Wで40W相当。何れも調光可能。ランプ本体はフェニックス電機の製造だが、会場ではスポットライトやペンダントに装着されていた。マックスレイの製品「HPLランプ P21」は65W相当の明るさで消費電力7.8W。専用口金でダウントランスを必要とするので汎用性は低いが、割り切って使うには十分だ。

図3:大光電機の「DECO-Lランプ」。白と黒の2種類で狭角と中角がある。定価は10,500円。図3:大光電機の「DECO-Lランプ」。白と黒の2種類で狭角と中角がある。定価は10,500円。

図4: 「フェニックスRLeds」を装着したコイズミ照明のスポットライト。ノングレアキャップ付のためまぶしくない。図4: 「フェニックスRLeds」を装着したコイズミ照明のスポットライト。ノングレアキャップ付のためまぶしくない。

図5:65W相当のマックスレイ「HPLランプ P21」。
図5:65W相当のマックスレイ「HPLランプ P21」。

 そして、従来のダイクロ形状にこだわりを見せるのがスタンレー電気の「E11/MR16型LEDランプ」。E11口金、消費電力3Wで40W相当の明るさ。セラミックを採用しダイクロハロゲンの形状と同等。高照度を必要としない場所や照射距離が短い場合に有効なので、筆者は住宅への採用を検討中だ。電球形のラインナップが一段落したので、国内大手各社にはダイクロハロゲン形の発売を大いに期待している。

図6:スタンレー電気の「E11/MR16型LEDランプ」。セラミックを採用した白い外観が特徴。
図6:スタンレー電気の「E11/MR16型LEDランプ」。
セラミックを採用した白い外観が特徴。

激戦区の蛍光灯形LED

 従来にも増して、各社が注力していたのは直管蛍光灯形LED。新規参入組が目立ち、激戦区といったところ。(社)日本電球工業会の昨年の調査によると、現段階では性能面、安全面とも蛍光ランプの代替品としては未成熟であるとの評価だった。だから、直管形にはいまひとつ興味がなかったのだが、今回の展示会では更にパワーアップされた模様。本来の蛍光管は360°方向に光が広がるが、LEDは120°から180°と照射角度が狭いため器具によっては暗い部分が生じる。その問題を改善した240°の広角製品「ミラット」を開発したのは、昨年設立されたばかりのミライゲートという会社。電気工事不要なのでランプ交換だけで対応できるのも特徴だ。

図7:ミライゲートの「ミラット」照射角度の比較図。
図7:ミライゲートの「ミラット」照射角度の比較図。

 ところで、G13口金のこのタイプにはJISで定められた500gの重量上限を超えたものがあり、衝撃や振動で落下する可能性があると指摘されている。ちなみに、パナソニックのパルック蛍光灯直管ラピッドスタート40形の重量を調べてみると253g。そこで、同タイプのLEDをチェックしてみた。今回収集したカタログのうち重量が記載されているのは全部で21種類。このうち、最も軽いのがMARUWA SHOMEIの「ミューレッズF」040Fタイプ240g。1つだけ上限を超えたものがあったが、平均すると389gという結果に。直管蛍光灯形LEDはオフィス用途を見込んで色温度が高いものがメインなので、筆者としては電球色で調光可能なタイプを希望する。
 その他に、エコマックスジャパンからはサークライン形も登場。消費電力14Wで明るさ28W相当の外径225mmと、消費電力15Wで明るさ30W相当の299mmの2サイズ。住宅用の需要が見込まれるので、電球色のバリエーションがあればと思った。

図8:エコマックスジャパンのサークライン形LED。
図8:エコマックスジャパンのサークライン形LED。

面発光形LEDのベースライト

 これまで、サインや装飾、演出用途が主な面発光形だが、ベースライト用の製品が多く登場していたのも今年の特徴。丸善電機と住友化学が共同で出展したブースでは、導光板を用いたベースライトを展示。サイズは1238mm×324mm×72mmで消費電力74W。FL40W2灯用の明るさ40%アップ、消費電力約20%削減とのこと。導光板サイズは、最大3600mm×1600mmでカスタマイズ可能。直下形LEDに比べて効率は落ちるが、その分まぶしさを低減したフラットな光を厚み20mmで実現している。今後の普及が期待される。

図9:丸善電機+住友化学の共同出展ブース。図9:丸善電機+住友化学の共同出展ブース。

図10:オプトデザインの直下形LED「ユニブライト」。無数の穴の開いたフラッタを実装することでフラットな光を実現している。図10:オプトデザインの直下形LED「ユニブライト」。無数の穴の開いたフラッタを実装することでフラットな光を実現している。

ダウンライトの小型化

 LEDの利点は、器具をより小さく、薄くできる点にあるが、埋込穴径35mmの超小型ダウンライトを発見した。消費電力は3Wでハロゲンランプ20W相当の明るさ。多灯使いにすれば高天井でも照度は確保可能だ。開発したのは森川製作所。特注照明や船舶照明を得意とする会社で、航空旅客機用のLEDを研究開発中というので、妙に納得した。器具が目立たず用途を限定しないので、コンテンポラリーな空間だけでなく、純和風な空間にもしっくりきそう。個人的には、この小型シリーズが今回の視察最大の収穫で、住宅やホテルの客室などに採用してみたい。

図11:森川製作所の「DX20シリーズ」。図11:森川製作所の「DX20シリーズ」。

図12:ロームが展示していた7Wモデュールのダウンライト。小粒なLEDチップを並べることで、従来のダウンライトの輝度とは印象が異なる。図12:ロームが展示していた7Wモデュールのダウンライト。小粒なLEDチップを並べることで、従来のダウンライトの輝度とは印象が異なる。

屋外照明

 フットライトやインジケータとして屋外で採用されたのが、LED実用化の始まりでもあるが、歩道照明や防犯灯、道路照明など街路灯への実用化が着々と進んでいるようだ。水銀灯などのHID、蛍光灯の代替品としてこの分野の製品も目についた。岩崎電気は、セルフバラスト水銀ランプ500Wと同等以上の明るさを実現した消費電力110WのLED投光器を展示。約79%の省エネを図ることが可能だ。

図13:株式会社ESLの防犯灯エコラ。図13:株式会社ESLの防犯灯エコラ。

図14:パナソニック電工の街路灯。図14:パナソニック電工の街路灯。

図15:岩崎電気の投光器「LEDiocフラッドネオ」。
図15:岩崎電気の投光器「LEDiocフラッドネオ」。

まとめ

 先頃、東芝は120年間に及んだ白熱電球の製造を中止し、大手各社もこれに追随して、LEDの生産が強化される。発光効率が高まるにつれて、その用途が次第に拡大していることを今回の視察で実感し、新規参入のメーカーが多いことにも驚かされた。LEDは初期コストこそ高いものの、電気代やランプ交換代を計算すると、数年後には元を取れる程度の実用的な価格になってきた。冒頭にも述べたように、LEDを使いたいとの要望を受けて、某改修プロジェクトではオールLEDで計画してみた。ところが、従来照明と同程度の予算しか用意できないというので、既存の蛍光灯を生かしつつ、LEDは部分的な採用に留めることとした。
 筆者が初めてLEDを使ったのは、東京ビッグサイト前にある広場のインジケータだと記憶している。当時は有明南広場と呼んでいたが、現在は石と光の広場というらしい。竣工は1996年。点灯スケジュールが不明なので4万時間に到達したかどうかは微妙なところ。若干輝度が低下した気もするが、14年を経過した2010年現在、インジケータ用途としては問題なく点灯していることをここに報告しておく。

図16:LED Next Stage 2010会場間近の石と光の広場LEDインジケータ。4個をグリッド状に1ユニットで埋込んでいる。
図16:LED Next Stage 2010会場間近の石と光の広場LEDインジケータ。
4個をグリッド状に1ユニットで埋込んでいる。

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泉 ルミ
執筆者:泉 ルミ

照明デザイナー、イルミデザイン主宰。
1969年青森県黒石(津軽)生まれ。1991年株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツに入社し、住宅から店舗、美術館、オフィス等の建築照明、橋梁、公園、都市計画等の都市・環境照明まで幅広い分野の照明デザインプロジェクトに従事。その傍ら、面出薫氏が組織する「照明探偵団」に所属し、世界の夜景調査や照明文化を研究。2003年独立し、九州・福岡にてイルミデザインをスタート。
現在、緑に覆われた環境実験住宅・E-sevenを基地に、エコロジカルで魅力的なアカリを探求している。

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