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優雅さ演出、光のオブジェ、国際照明見本市、光源の新技術駆使。

[ 2017年6月14日 / 日経MJ(流通新聞) ]

香川の和紙の美 光を優しく拡散
日本漆器参考に 黒と赤そろえる

 照明機器の光源が発光ダイオード(LED)や有機ELへと変化し、デザインの可能性を広げている。ミラノで今春開かれた国際照明見本市「エウロルーチェ2017」では住空間を楽しく優雅に演出する「オブジェライト」が多数登場。従来の無機質な照明とは、ひと味違った趣で話題を呼んだ。

 隔年開催で、今年4月で29回目を迎えたエウロルーチェには世界から485社が出展。暮らしに大きな影響を及ぼす照明デザインは、明るさの追求からインテリアや空間デザインとの関係性を強調する様々な造形が模索され、注目の見本市となった。省エネから家庭にLED照明がすっかり定着した今、メーカーやデザイナーは環境の持続性や光害などを考慮し、新技術を駆使した独創的な商品を発表した。

 赤い長靴を履き、白いレインコートをまとったような高さ約140センチメートルの大きな光のオブジェ「ウオーキング・イン・ザ・レイン」=写真【1】。意表を突くたたずまいに各国からの来場者が足を止め、見入っていた。「光の詩人」の異名を持つ照明デザインのパイオニア、ドイツのインゴ・マウラー氏(85)が50年にわたり照明の楽しさと豊かさを追求してきたゆえの傑作だ。「昔の日本の雨具、蓑(みの)からヒントを得た」

 長年の素材への関心と情熱で日本の和紙や金箔などを探求し、2000年ごろから何度となく来日。香川県まで出向き、気に入った和紙を調達した。「和紙を通した光が特に美しい。光を優しく拡散してくれる素晴らしい素材」と絶賛。持ち帰った平らな和紙をドイツのテキスタイルデザイナー、ダグマ―・モンバッハ氏の協力を得て、日本の伝統技法に従った手作業で引っ張ったり折り畳んだりしてプリーツを表現。念願の照明が誕生した。

 手仕事が際立つもう1つの作品はカナダ・バンクーバーで05年に設立した新進気鋭の照明メーカー、ボッチ社の新作「76シリーズ」=写真【2】=だ。デザインから開発まで1人で手掛けるイスラエル出身のデザイナー、オマー・アーベル氏は紙に描いて創作するのではなく、素材と対話するかのように手を動かし、伝統的な手吹きガラスに独自の新しい手法を加えていく。

 ハリセンボンのようにユニークな表情が面白い新作は、まさに高度な職人技による。半球状に吹いた透明ガラスと白ガラスの間に銅のメッシュを挟み込み、吸い戻すという特殊な技法で内側にくぼみができ、ランダムな白い筋が放射状に入るという不思議な仕組み。真っ白な明かりだが冷たい印象はなく、繊細で優しい雰囲気が漂う。

 世界で躍進を続ける2組のデザインユニットも話題作を出した。英国のバーバー&オズガビーはイタリアの照明メーカーの大御所、フロス社から「ベルホップ」=写真【3】=を発表。高さ21センチのLEDの小型タイプで充電機能付きだ。3時間の充電で6〜8時間、低調光なら丸1日使用でき、片手で持ち運べて便利だ。配色は日本の漆器の漆黒と朱赤からヒントを得た黒、赤とその他に2色をそろえた。

 エドワード・バーバー氏とジェイ・オズガビー氏はともに1969年イギリス生まれ。ロンドンのRCA王立芸術学院で出会い、96年にデザインスタジオを設立した。「いつも会話を交わす中でアイデアが生まれる。ビールを飲みながらが多いけど」と気さくなバーバー氏。ベルホップは「ホテルでベルボーイを呼ぶときのベルからヒントを得た。色々な所に設置されたベルの便利さに、便利な照明をイメージした」と説明する。

 もう1組は上海とロンドンを拠点に活躍するデザインユニット、ネリー&フー。中国というアイデンティティーをもとに大胆な提案を続けている。公私ともにパートナーの2人は日常が創作の場だという。イタリアのブランド、アルテミデのためにデザインした「ヤンジ」=写真【4】=はペンダントやフロアランプとして使える軽量で可動式の照明だ。

 ヤンジは中国語でツバメの意味。上海の日常生活で遭遇するツバメの様子を描いた。「ポエティックな風景を部屋の中に作りたい」と、真ちゅうと白いガラスの異素材を組み合わせ、真ちゅうで木の枝、小さな白いガラスはツバメを表現した。

 イタリア・ベネチアの伝統的なムラーノガラスを使った商品で人気のフォスカリーニ社は1981年設立のモダン照明の雄。今回の話題作「フィーロ」=写真【5】=はアーティストのアンドレア・アナスタシオ氏が創作した。ベネチアはもとは漁村で、漁に使う浮きのイメージをカラフルなガラスで表現し、照明のアクセントに。むき出しの電気コードも斬新さがうかがえる。

 インゴ・マウラーとボッチの新デザインは日本ではスタジオノイ(東京・渋谷)が総代理店を務める。フロス、アルテミデ、フォスカリーニも各社の日本法人が販売する。室内空間を楽しく優雅に演出してくれる「オブジェライト」は日本でも支持を集めそうだ。

(ホームファッションコーディネーター 堀和子)

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