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四国進化する農(1)稼ぐ農業へ、デジタル攻勢、高知・本山町、棚田にセンサー100台。

[ 2018年1月10日 / 日本経済新聞 地方経済面 ]

 2018年は主食用米の生産調整(減反)が約半世紀もの歴史を終え、日本の農業にとって大きな転換点となる。環太平洋諸国や欧州との経済連携協定に伴い、輸入農産物との競争も激しさを増す。1次産業の比重が高い四国でも「強く稼げる農業」への改革は待ったなしだ。四国の農業の新たな動きを探る。

 四国のほぼ中央にある高知県本山町は山あいに美しい棚田が広がる。豊かな水と寒暖差が大きい気候を生かし、農薬や化学肥料を控えて作られるブランド米「土佐天空の郷(さと)」は、静岡県で開かれる米の日本一を競う大会で10年度と16年度に最優秀賞を受けた。品質に磨きをかけようと、18年の米作りから新たな挑戦を始める。

 町農業公社が主導し、各地区の水田に水位や水温を自動計測できる通信機能付きのセンサーを計100台設置する。一部は温・湿度や雨量、照度などを測る気象計も備え、蓄えたデータをインターネット経由で生産者が閲覧できるようにする。あらゆるものがネットにつながる「IoT」の農業分野への応用では全国でも異例の規模だ。

 棚田は高低で栽培環境が異なり、水位などの管理も難しい。各所に設けた水田センサーのデータの活用で産地としての壁を乗り越え、低たんぱく質で粒が整った高品質米の生産拡大につなげる。傾斜した棚田の見回りなど農作業の負担軽減も狙う。同町の担当者は「ベテラン農家の知恵を新規就農者にも伝えやすくなる」と営農技術の見える化効果にも期待する。

 データ収集端末によりIoTを農業で推進する同様の試みはNTTドコモが農業関連のIT(情報技術)ベンチャーのベジタリア(東京・渋谷)と組み、17年から四国で展開を始めた。愛媛県では県独自の酒米「しずく媛」の品質向上を目指す実証実験が6月、香川県では青ねぎの病害予防などに活用する研究事業が9月に始まった。

 就農人口が減り続ける四国ではITなどを取り入れた省力化や農産物の付加価値向上は急務だ。愛媛県では地元生産者が16年に立ち上げたNPO「坂の上のクラウド利用研究会」が農業用気象予報システムの普及に取り組む。1キロ四方の細かな地域の予報を72時間先までスマートフォン(スマホ)などに届け、先を読んだ作業や天候被害の防止に生かしてもらう。

 気象庁のデータに標高補正などを加え、精度を高めた。現在は50程度の生産者が使う。利用料は月約3000円。天候の変化が複雑な山間部でかんきつ類などの栽培が盛んな愛媛県に合わせてシステム会社などと開発したが、最近の気象変動などを背景に、「関西圏など県外の関心も高まっている」(同研究会)。

 新たな農業も芽吹きつつある。オーゲツ(徳島県阿南市)は光の波長が植物の生育に適した発光ダイオード(LED)照明を使った植物工場システムを開発した。自社の植物工場で食用花などを生産するほか、システムを外販する。香川県などは17年12月、理化学研究所(理研)の協力を得て、高収益の植物工場の全国モデルを探る「土庄町植物栽培システム研究所」を小豆島に設けた。

 小型の無人飛行機(ドローン)による事業を手掛ける空撮技研(香川県観音寺市)は16年8月から四国初となる国の認定施設として農業用ドローンの操縦教習を始めた。機種ごとに必要な資格をこれまでに延べ約80人の生産者らが取得し、農薬散布などの作業効率化に結びつけ始めた。

 中山間地が多く、担い手不足も深刻という厳しい環境を逆手に、四国がITや先端技術を駆使した「スマート農業」の実験場となりつつある。

農業人口、25年で半減
ブランド創出や
IT活用に余地

 人口減が進む四国では農業でも生産者の減少と高齢化が著しい。農林水産省が5年ごとに調査する「農林業センサス」によると、1990年に30万人近かった四国の農業就業人口は2015年に13万人弱と25年間で半分以下となった。このうち農業主体の基幹的農業従事者は16年の農業構造動態調査で9万9千人と10万人を割り込んだ。そのうえ15年時点で農業従事者の8割近くを60歳以上が占める。若い世代や企業などの新たな担い手を呼び込めなければ、生産者の減少に拍車がかかる。

 一方、四国では耕作放棄地率が約2割と全国の倍近い水準に高まる。年間4000億円を上回る四国の農業産出額を維持するにはブランド化や6次産業化などで収益性を高めるとともに、IT(情報技術)の活用や機械化などを進め、生産者の減少を補う生産性向上に取り組む必要がある。

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