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連載コラム

「広がり」がテーマとなったIC CARD WORLD 2009

[ 2009年3月16日 ]

 3月3日から6日にかけて行われた「IC CARD WORLD 2009」が、盛況のうちに閉幕した。今年は会期中の天候にはあまり恵まれなかったが、約15万2000人(リテールテックJAPAN 2009 / IC CARD WORLD 2009合計)が会場を訪れた。昨年の来場者数である約16万5000人は上回れなかったものの、厳しい景況感の中で好評のうちに終了したといってもいいだろう。

 そして、今年のIC CARD WORLDは、FeliCaビジネスが新たな段階に入ったことが象徴的に感じられる場にもなった。それは「交通IC」と「電子マネー」を両輪としたFeliCaのインフラ拡大期が一段落し、そのインフラの応用や新たなFeliCa活用の模索が、FeliCaを用いたビジネスやサービスの最重要なテーマになったということである。

「FeliCa = 電子マネー」以外が展示の中心に

 この傾向が顕著に現れたのが、展示内容の変化だ。
 昨年までのIC CARD WORLDでは、電子マネーが展示の中心であり、各電子マネー方式や決済用リーダーライターの出展が豊富だった。しかし今年は様相が一転し、電子マネー事業者は1社も出展せず、会場を見渡しても電子マネーや決済関連の展示はほとんどなかった。各電子マネー事業者が金融不況の影響を受けたという理由もあるだろうが、それ以上に、電子マネーの決済インフラが「(費用対効果や設備投資の面において)展開可能な施設や店舗には、ほぼ行き渡った」(電子マネー事業者幹部)という理由もまた大きいだろう。

 代わって台頭したのが、電子クーポンやポイント、電子チケット、会員証機能といったCRM分野におけるFeliCaの活用だ。

 例えば、フェリカネットワークスのブースでは、おサイフケータイを用いた電子クーポンや電子チケットの展示やデモンストレーションを積極的に行っており、多くの来場者の注目を集めていた。また同社のブース内では、おサイフケータイで認証を行う超流通モデル型のDRM管理の提案や、最近人気のネットゲームでの認証機能としての利用なども展示されていた。誤解を恐れずに言えば、これまでの「電子マネー」と「交通IC」だけでは、おサイフケータイを利用するメリットを、一般ユーザーに対して明確に打ち出すことが難しかった。しかし、今回展示されていた電子クーポンや電子チケット、著作権コンテンツの認証管理といった分野は、おサイフケータイを利用する必要性や必然性が高い。この分野のサービス開発が進めば、すでに6000万台近くまで普及したおサイフケータイの利用が活性化し、リアル連携型のサービスプラットフォームとして"化ける"シナリオも見えてくるだろう。

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フェリカネットワークスのブースでは、おサイフケータイを用いた電子クーポンのソリューションを積極的に展示。端末やサービスの低コスト化にも注力し、中小規模の店舗チェーンでの採用を狙う。

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こちらもフェリカネットワークスのブース。おサイフケータイをネットゲームの認証や、デジタルコンテンツのDRM管理に使うというデモンストレーションを行っていた。

 また、フェリカポケットマーケティングのブースも、FeliCaサービスを取りまく現在のトレンドを象徴していた。同社は1枚のカードもしくはおサイフケータイのアプリに複数のサービスをまとめる「FeliCaポケット」というCRMソリューションを展示。中小企業や商店街でのCRMサービスの展開はもちろん、地域振興や企業・自治体のエコ活動、病院・クリニックでの利用、そしてネットのアフィリエイトプログラムとリアル店舗/施設の連携など、様々なアプリケーションを提案していた。
 こうしたFeliCaを用いたCRMソリューションの提案は今回のIC CARD WORLDで多く見られたが、なかでもFeliCaポケットの展示が優れていたのが、「中小企業や自治体は、コストが安くて実効性のあるソリューションを求めている」(フェリカポケットマーケティング代表取締役社長の納村哲二氏)と、"導入しやすさ"や"使いやすさ"の部分に徹底的にこだわっていた点だ。FeliCaを用いたソリューションというと、とかく先進的だが複雑で高コストなものになりがちで、それが中小の導入企業や一般ユーザーにとっては利用のハードルになっていた。その一方で、FeliCaポケットは応用性は高いがシンプルで低コストなソリューションパッケージを作ることで、普及しやすいものになっている。今後、FeliCaサービスの裾野を広げる上で、このようなアプローチは重要になるだろう。

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フェリカポケットマーケティングの展示では、地方の観光振興や、地域商店街のCRMでのFeliCaポケット利用を積極的にPR。同社のサービスはすでに多くの観光振興プロジェクトで採用されているという。(写真は四国で導入される「めぐりん」と、YOKOSO Japan!で用いられたFeliCaポケット用デジタルキオスク)

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FeliCaポケットでエコポイント管理を行うペットボトル回収機や、スタジアムなどに設置するFeliCa認証型のゲートシステムも展示。FeliCaポケットを地域全体で認証・ポイントカードとして用いて、地域活性化するというソリューションを提案していた。

デジタルサイネージなど"UI活用"の展示も増加

 昨年から注目のトピックスだった「UI (ユーザーインターフェース)としての活用」も、積極的な展示・提案が見られた分野だ。特に今年はもうひとつの注目分野である「デジタルサイネージ」と、ケータイやネットサービスを連携させるツールとして、おサイフケータイ活用が行われていた。

 例えば、丸紅情報システムズのブースでは、FeliCaリーダーライター「rapiNAVI」を用いておサイフケータイと連携するCRMソリューションを展示。このシステムの導入事例が多数紹介されていたほか、表示灯が福岡・天神に設置したおサイフケータイ連携型のデジタルサイネージ「ナビタッチ」などが展示されていた。

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丸紅情報システムズのブースでは、外部アンテナを用いることでデジタルサイネージでも活用できる「rapiNAVI」や、電子ポップ型の「popNAVI」など、FeliCaをUIとして使う様々な機器を展示。おサイフケータイ/FeliCaカードをマーケティングで使う有用性を提案する。

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表示灯の「ナビタッチ」。これは駅表示看板とおサイフケータイ向けの地図サイト/サイネージ機能を融合したもので、会場内には福岡・天神に設置されている最新版が展示されていた。

 他にも、ソニーのブースでは簡易型の「FeliCa Lite」やFeliCaトークンを用いて、デジタルキオスクやPC上のソフトウェアと連携する展示が豊富に行われていた。なかでもユニークだったのは「FeliCaランチャー」という新サービスで、これはPCに内蔵されたFeliCaポートやPaSoRiにFeliCaをかざすと、目的のアプリやWebサイトを起動させることができるというもの。デモンストレーションではFeliCa Liteを埋め込んだ初音ミクのフィギュアをPaSoRiにかざすと、初音ミクの動画を見ることができるというものだった。FeliCaを読み取れるPCはここにきて増加しているため、将来的にはデジタルコンテンツの配信サイトやWebサービスへの誘導/認証にFeliCaの技術が利用できそうである。

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FeliCaリーダーライターを内蔵したBRAVIA用リモコンと、初音ミクでデモが行われていた「FeliCaランチャー」の展示。ネットコンテンツ配信の認証/決済も、今後、FeliCaの採用が増えそうな分野である。

社会インフラから、生活・情報のインフラに

 振り返れば、2001年の「Suica」や「Edy」登場から本格化したFeliCaの歴史は、交通と電子マネーを軸に"非接触IC (FeliCa)が社会インフラ化"していくというものだった。それが一段落した今年は、FeliCaが様々な「生活サービス分野」や、ネット=リアル連携を実現する「情報連携のインフラ」として広がり始める年になりそうだ。


FeliCaビジネス定点観測
執筆者:神尾 寿

通信・ITSジャーナリスト。
日経BP社契約ライター、大手携帯電話会社の委託プランナー(新ビジネス/マーケティング担当)などを経て、1999年にジャーナリストとして独立。移動体通信とITSを中心として技術やサービス、ビジネスの動向について取材を行っている。
現在はジャーナリストのほかに、IRIコマース&テクノロジー社の客員研究員。2008年から日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、モバイル・プロジェクト・アワード選考委員などを勤める。著書は「自動車ITS革命」(ダイヤモンド社)、連載は「ITMedia +D Mobile」「ビジネスメディア誠」、「レスポンス」などWeb媒体を中心に幅広く展開。新聞各紙、ビジネス誌への執筆や、講演活動などを積極的に行っている。

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