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日経の紙面から

クレディセゾン社長林野宏さん――現金決済を打倒する(トップの戦略)

[ 2012年4月30日 / 日経MJ(流通新聞) ]

利用率向上へ新還元策

 時代の先端を走っていたセゾングループの出身者は好奇心が旺盛。中でもクレジットカード大手のクレディセゾンの林野宏社長は69歳となる今もビジネスの新境地を開こうと、クレジットカードの普及のための団体設立や提携戦略に走り回る。「打倒・現金払い」と独特の言い回しで、成長戦略を語った。(聞き手は編集委員 中村直文)

クレジット版

エコポイント

 ――国内消費の伸びは期待できません。クレジットカードの利用率をどのように上げますか。

 「カード業界と小売業界で新たな取り組みを始めています。クレジット版エコポイントのような制度の導入を考え、協議会を立ち上げました。テレビや自動車のエコポイントは消費の前倒しが進みますが、クレジットの対象は幅広く、永続します。カード利用に伴う還元策では韓国が先行し、普及率を世界一に引き上げた実績があります」

 「日本経済は国内総生産(GDP)の約60%を占める個人消費が浮揚しないと活性化しません。具体的な内容は協議会で詰めますが、民主党議員の協力も取り付けています。会長はセブン&アイ・ホールディングスの村田紀敏社長にお願いしました」

 ――最近の個人消費をどう見ていますか。

 「消費の二極化が進み、西友は新しい顧客が増えています。だからカード開拓もしやすいですね。一方でパルコ向けのカード開拓も好調です。しかし、つくづく若い人には不利な社会ですね。団塊の世代などは日本経済の発展の恩恵を被り、収入とか地位があります。だが、1990年初め以降の失われた20年を過ごした若者はあまり恵まれていない」

 「団塊世代のリタイアが始まり、膨大な人件費が減りました。その分、若い人の給与に付加されてもいいのに賃金は上がらない。逆に福利厚生費がどんどん増えます。さらに消費税などが加わり可処分所得が減ります。この世代の活力や消費を浮揚させるため企業が行動する必要があります」

 ――その点、クレディはどう対応していますか。

 「うちは若い世代に分けてやれよって言うと、女性の人事部長が『うちは大丈夫です。十分です』と力強く答えます。女性の戦力化も活発で、役職者のうち、部長が16%、課長が23%ぐらいかな。係長クラスは50%以上と、女性が活躍している点では断トツですよ」

コラボを重視

レンタル芽吹く

 ――カード業界の再編は終わったのでしょうか。

 「我々は82年、当時の日本信販の牙城だった大手小売り分野に切り込みました。すると流通企業がまねを始め、三越も大丸もハウスカードは子会社独立、という流れができた。そして銀行系、信販系、流通系という中で競争してきたわけです」

 「ところが貸金業法と割賦販売法という2つの法律と、過払い利息に関する最高裁判決で業界が打撃を受け、(メガバンクを中心に)再編が進みました。カードのブランドは残っているけれど、今や上場企業は我々とイオンクレジットサービス、オリエントコーポレーション、ジャックスぐらい。我々はみずほの色が少しあるけれど独立している。ニュートラルであることは武器になります」

 ――成長戦略をどう描いていますか。

 「とにかく打倒現金払いです。日本の決済比率は現金が60%を超え、クレジットカードはわずか11%。米国は24%、韓国になると50%を超えます。女性はポイントが付くから積極的に利用しますが、男性はいまだに現金払い志向が強い」

 「そこで今はコラボレーションを重視しています。カードの合弁ではセブン&アイや高島屋などの小売企業とともに、大和ハウス工業や出光興産、静岡銀行などとも組んでいます」

 「金融戦略も重要です。リースはヤマダ電機やキヤノン、ダイキン工業と組んで広げています。レンタルも芽が出てきました。LED(発光ダイオード)は全国の事業所に5億7000万個あるんですね。そのレンタルだけで50億円くらいやれるんじゃないか」

 ――インターネットの可能性は大きいように思いますが。

 「うちのサイト『永久不滅ドットコム』は、ここを経由して楽天にもアマゾンにも入っていけるし、買い物をすれば(アマゾンなどの分も含め)ポイントが倍になります。今、通販でクレディのカードを利用する人は500万人で、年間利用額は5000億円。永久不滅ドットコムを通過するのはまだ50万人の500億円です。知名度が上がれば決済比率も高まります」

 ――これだけ提携すると人脈も広がりますね。

 「日ごろから言っているサービス先端産業を作るために、サイバーエージェントの藤田晋さんとか色々な人と組んでいます。藤田さんが学生時代、マージャン屋でアルバイトしてて大会で負けたことがないと雑誌に書いてあったから、すぐに電話して『マージャンやろうよ』って声かけたんです。遊びから入るとビジネスの話につながりやすい。アジア戦略でも手を組もうと考えています」

業績データから

業法改正の影響なお

 クレディセゾンの2012年3月期の連結業績は、営業収益が前の期比10・0%減の2570億円にとどまったもよう。10年6月に借入総額を制限する改正貸金業法が完全施行されて以降、キャッシング収益の減少が響いている。経常利益は与信管理や債権回収が進み、12・8%増の380億円。ただ、子会社再編で不動産評価損など特別損失を計上したことで純利益は64・8%減の45億円になったようだ。

 13年3月期はセゾン・アメリカン・エキスプレス・カードなどプレミアムカードの獲得を一段と強化。ショッピングの取扱高を伸ばす考えだ。日本のカード流通枚数は11年3月末に減少に転じた。既に3億2213万枚が出回り、成人1人あたり3・1枚保有している計算。付帯サービスを充実させ、特別な1枚を作ることが課題になる。(高橋徹)

 りんの・ひろし 1942年京都府生まれ。65年埼玉大文理卒、西武百貨店入社。宇都宮店次長などを経て、82年に西武クレジット(現クレディセゾン)に入社。2000年に社長就任。顧客本位が信条でアイデアマン。永久不滅のポイントやスーパー店頭でのサインレスといった斬新な施策をいち早く打ち出した。

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