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コイニー社長佐俣奈緒子氏――カード決済、裾野広げる(異才の横顔)

[ 2012年9月20日 / 日経産業新聞 ]

スマホ活用、商店・個人でも

 社員わずか6人のベンチャー企業コイニー(東京・港)が日本のクレジットカード決済で新風を巻き起こそうとしている。社長の佐俣奈緒子が目指すのは「個人や小規模店舗が広くカード決済を受け付けられる世界」だ。カードを使える場が増えれば、6・6兆円もの潜在需要を掘り起こせると鼻息は荒い。

 佐俣の陣頭指揮で現在開発しているのが、スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)1台でカード決済を実現するウェブサービスだ。イヤホンジャックに小型のカード読み取り装置を装着してもらい、その場でネット経由でやりとりしてカード決済を完了する。小規模の販売店などを会員として組織する。フリーマーケットや屋台など、これまでカードが使いにくかった場面での利用が可能になる。

 「過去10年間、決済の世界ではベンチャー企業によるイノベーション(革新)がほとんど起こらなかった」。

 佐俣が3月にコイニーを設立したのは、欧米で次々起こる“決済革命”に危機感を覚えたからだ。例えば米国ではスクエア社がコイニーと同様の事業を手掛け、急速に普及している。今では約200万人があちこちでカード決済する。「業界のルールや商習慣を打ち破らなければ取り残される」

 勝算はあるとみる。現在従業員が20人未満の小売業は日本国内で408万社あるが、カード決済できるのはそのうちわずか11%。年間売上高は平均1383万円の各社の需要を取り込めれば「2013年には10万人の会員を獲得し、月間決済額で30億〜50億円は目指せる」と意気込む。

 カード会社と利用者を仲介する際に得る手数料がコイニーの収入。通常、店舗がカード会社と直接契約すると手数料は5%程度。コイニーは大量の会員を抱える強みを背景にカード会社と交渉し、会員店舗が支払う手数料の引き下げを目指す。

 佐俣の強みは米電子決済大手ペイパル日本法人で培ったノウハウだ。金融とウェブサービスの両方の知識を備える。まだ数名しかいなかった頃から、ペイパル日本法人の立ち上げに参画。現在、様々な電子商取引(EC)サイトではペイパルを使った買い物ができるが、その土台作りに奔走したのが佐俣だ。2010年には功績を認められ、アジア地域の最優秀社員として表彰されるほどだった。

 IT(情報技術)業界での広い人脈も活用する。コイニーの事業モデルをマネしようとする企業は出るかもしれないが、実際のサービス実施は簡単ではないと佐俣は胸を張る。「ベンチャー企業の大半は交流サイト(SNS)やソーシャルゲームなどで、金融系の知識を持つ人が少ない」

 ただ6・6兆円もの需要を1社で受け止めることは難しいとも語る。「我々が先陣を切ることで、同じ志を持ったベンチャー企業に次々登場してもらい、一緒に市場を盛り上げ需要を開拓していきたい」。業界の第一人者として、先行者利潤を得ることに自信はある。

 「やりがいや意義を感じるのは枠組みをあえて変える挑戦をし、スマホ時代の決済ルールや商習慣を作り上げること。旧友からはむちゃな挑戦をすると言われるが」。佐俣はにっこり笑ってこう語る。

 近く正式なスタートにこぎ着ける計画。小型のカード読み取り装置の国内生産もすでに準備を整えている。大手カード会社の日本法人との交渉も順調という。カード決済の世界に新風が吹く日がすぐそこまで近づいている。=敬称略

(高田学也)

 さまた・なおこ 広島県生まれ。2009年に米ペイパル日本法人の立ち上げに参画。加盟店獲得などを手掛けた。11年10月に退社。12年3月に電子決済のベンチャー企業、コイニーを設立し社長に就任。29歳

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