日経メッセ > NFC & Smart WORLD > ニュース > 電力ルーター、ケニアで実験、東大発VBが新技術、電力制御と通信、売電で運用、日本の自由化見据え。

日経の紙面から

電力ルーター、ケニアで実験、東大発VBが新技術、電力制御と通信、売電で運用、日本の自由化見据え。

[ 2013年12月24日 / 日経産業新聞 ]

 2016年にも始まる国内の電力小売りの自由化を見据えた技術開発が進む。東京大学の阿部力也特任教授が開発した「電力ルーター」もその1つで、特定の地域間で電力を融通する際に使うのを想定する。実はこの新技術が一足先にケニアの無電化地域で普及しようとしている。手がけるのは東大発ベンチャーのデジタルグリッドソリューションズ(東京・文京)だ。

 「10月からケニアの3カ所で試験運用を始めた」。秋田智司社長は力を込める。デジタルグリッドのサービスは電気をプリペイド販売する「電力キオスク」。商店のオーナーなどに太陽電池と蓄電池、チャージャーを貸して充電サービスをしてもらう。

 電気が欲しい顧客はオーナーに料金を支払う。オーナーはスマートフォンなどを通して東京のデジタルグリッドに電子マネーで支払う。デジタルグリッドは金額に見合った電力量を提供するようにネット経由でチャージャーの充電口に指示する仕組みだ。

 この元になった電力ルーターはインバーターなどからなり、電力供給網の分岐点で使う想定だ。電圧や周波数などを自在に変換して複数の場所に個別に送り出せる。阿部特任教授は「電力制御の技術と通信を組み合わせた」と話す。

 デジタルグリッドはこの技術をチャージャーに応用した。充電口にIPアドレスを与えておくことで、金額に合わせて遠隔地から電気の量や質を管理して提供できる。

 狙う市場は電子マネーの普及した無電化地域。アフリカは人口密度が低く、電線を引けない地域も広い。サハラ以南では電気の届かない地域が3割とも言われる。住民は照明には燃料を燃やすランプを使い、携帯電話の充電に太陽電池のある村まで出向くこともある。

 デジタルグリッドは2013年度、ケニアに電力キオスクを30カ所設置する計画。14年度にはタンザニアやルワンダなど計5カ国に約300カ所。2年後には5000カ所以上にして3年後の黒字化を目指す。

 秋田社長は「無電化地域は世界で13億人。5年後にこの1割にサービスを提供したい」と意気込む。ケニアの場合、1世帯、1日あたりの燃料代は30円で携帯電話の充電には20円使う。単純計算すると市場規模は13億人で2兆円を超える。

 秋田社長が新事業に気付いたのは地元電力会社の提案がきっかけだった。13年3月、経済産業省の事業でケニアの電力事情の聞き取り調査をした際に「管理コストを抑えた充電ステーションを実現できる日本の技術はないか」と相談されたという。交流のあった阿部特任教授に話を持ちかけると話はとんとん拍子で進み、6月に会社を設立した。

 電力小売り自由化を見据えて国内でも関連会社による事業を検討中。ベンチャーキャピタル、東京大学エッジキャピタル(東京・文京、郷治友孝社長)や文部科学省の支援で、需給調整などに役立つ事業を模索する。

 秋田社長は学生時代、BOPビジネス(低所得層向け事業)を研究し、アフリカで植林活動などをしていた。「BOPビジネスを手がけたい」とコンサルタント会社に入社するなど、NPO活動のために独立した経歴の持ち主だ。「電気があれば教育やエンターテイメントなど暮らしは変わる。何とか実現したい」と目を輝かせる。

(松田省吾)

ニュースの最新記事

PAGE TOP