日経メッセ > NFC & Smart WORLD > ニュース > 日本信号、人体介して通信「エレフィン」――カードかざさず認証(メカにズーム)

日経の紙面から

日本信号、人体介して通信「エレフィン」――カードかざさず認証(メカにズーム)

[ 2014年12月18日 / 日経産業新聞 ]

 国内鉄道信号大手の日本信号はICカードを読み取り機にかざさずに認証できる人体通信システム「エレフィン」を開発した。生きたのは、東日本旅客鉄道(JR東日本)のIC乗車券「Suica(スイカ)」開発時の技術。外部のノイズの影響をできるだけ少なくし、正確な個人認証を実現している。改札機や東京五輪のゲートへの採用を目指している。

 「正直これは難しい。できるわけない」――。開発を主導したICTソリューション統括技術部AFC設計部の大橋享司課長は開発当初、誰にも言えないがこんな気持ちもあったという。

 目指したのは、人体を通信媒体として電界により情報をやりとりする通信技術の実用化。ICカードを専用フォルダにいれて携帯し、人体表面に個人データを伝える幅10センチメートルほどの微弱な電界を発生させ、受信機で個人データを読み取る仕組み。結果に応じて改札機やゲートを開閉する。

 両手がふさがった状態でもICカードを首から提げたりポケットに入れたりしておくことで、自動認証できる。

 近距離無線通信「ブルートゥース」を使った方式なども開発されているが、「より個人認証に適している」(日本信号)として電界方式を採用。NTTの研究所の技術ライセンスを受け、2009年ごろに製品化の検討に入った。

 日本信号はICカードの発展に深く関わってきた。スイカなど非接触型のICカードの実用化では汎用電子乗車券技術研究組合(TRAMET)に改札機メーカーとして参画、共同で開発してきた。現在でも鉄道用カードリーダーなどを納入する。大橋氏は入社後ほぼ一貫してICカードの開発に携わってきた、通信技術を最もよく知るひとりだ。

 その大橋氏をして難しいと思わせたノイズ影響の低減。開発当初は「通信できない場所だらけだった」(大橋氏)。11年に初めて展示会に出展したが、持っていった機器が動かない。電線にシールドを巻くなどできるだけノイズを抑え、やっと動かせる状況になった。

 いかにノイズの影響を抑制し、幅広い場所で使えるようにするか。スイカの開発参画で得た通信状況の確保に関するノウハウや考え方を生かした。

 人体を介すため強い電気信号が使えない中、電極や電線の配置の変更、信号処理方法の工夫などで対ノイズ性能を向上。ほとんどの場所で動かせるように改良した。

 気軽に身につけるため、大きさも課題だった。最初の試作品は厚さがたばこの箱ほどあり、身につけると邪魔になる。電池と電極、アンテナの設置場所を工夫し、7ミリ程度と従来の半分以下の大きさを実現した。

 自社が手掛ける自動改札機に用いるほか、工場やオフィスのセキュリティーゲート、イベント会場での入退場管理などにも使えるとみて、システムインテグレーターなどとの連携を進めている。5年後に年50億円規模の事業に育てる方針。日本信号が中心となり、スイカに続く業界標準を作り上げていく考えだ。(岩戸寿)

ニュースの最新記事

PAGE TOP