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人体通信の未来広がる適用分野(上)「血流」で入退室管理へ。

[ 2009年4月15日 / 日経産業新聞 ]

アンプレット、心電計試作  ICカードの携帯不要

 人体を通信経路として利用する人体通信技術の適用対象がヘルスケアや医療分野に広がってきた。手を触れるだけで解錠できるドアや自動改札などセキュリティーの分野で実用化が進んできたが、心臓の動きをとらえる装置などが試作段階に入った。さらに生体認証の分野に応用範囲が広がる可能性も出てきた。付加価値の高いサービスと結びつけば普及に弾みがつきそうだ。

 手を触れるだけでセキュリティー対策を施したドアを解錠でき、改札も通れる――。専用チップを組み込んだカードが発する電気信号を体の表面を介して装置に伝える人体通信技術の代表的な応用例だ。

 無線技術の研究開発企業、アンプレット(東京・台東、根日屋英之社長)は人体通信技術をセンサーとして使った心電計を試作した。イスに座って両手をひじ掛けの電極に載せるだけで心電図のデータがネットの向こうに蓄えられる仕組みだ。一見、胸に電極を張って電位を計測する心電計と同じデータを手軽に測定しているだけのようだが、生体認証に応用の道が開けるかもしれない。

 心電計の開発段階で心拍に同期したはっきりした波形を観測できることが分かった。「人が動く時の筋電流の変化など個人によって異なる信号のパターンを抽出できる可能性がある」(アンプレットの根日屋社長)。心拍数などの変化はもちろん、心臓や血流の異常、個人の識別も可能なセンサーとして応用が拓ける可能性が出てきた。

個人差で認証

 血流の流れや筋電流の個人差を生体認証として入退室管理システムなどに使えば、人体通信用回路を内蔵したカードを利用者が携帯する必要がなくなる。

 現段階で実用段階に入っているのは入退室管理や在室者管理、行動足跡管理などの分野だ。日立製作所やNTTコミュニケーションズ、美和ロックが共同開発した入退室管理システムでは、利用者は人体通信用回路を内蔵したカードを携帯するだけでよい。

 ドアノブを握ったり、廊下を歩いたりすると、利用者が意識しないままアンテナを介して個人認証システムにデータが送られ、認証できた人に対してだけドアを解錠する。

 ICカードを用いた入退室管理システムと異なり、利用者がカードをリーダーにかざさなくても個人の識別・認証が可能。同様のセキュリティーシステムはイトーキや岡村製作所、NTTファシリティーズ、大日本印刷なども試作している。

 NTTやNTTエレクトロニクスは、入退室管理だけでなく、プリンターと組み合わせて、本人以外は機密文書を印刷できないセキュリティーシステムを開発した。電子乗車券をポケットに入れたままで、手をかざすだけで駅の改札機を通過できるという使い方も考えられている。

コードレス再生

 NTTドコモは、携帯電話に保存した音楽を人体通信経由でヘッドホンに流せる機器を試作した。もちろんヘッドホンと携帯電話の間にコードは不要である。カップルあるいは数人が寄り添ったり手をつないだりしたときに、一台の携帯プレーヤーの音楽を同時に聴く、といった応用も可能だ。ゲーム機などへの利用も考えられる。

 量産すれば人体通信機能を搭載したカードのコストは、従来のICカードと同程度で済むとみられている。このため、「そのうち自然に従来のICカードを置き換えていく」(NTT)という見方もある。ただ、ICカードが浸透しているだけに、普及を加速させるには、生体認証などの高付加価値機能が必要になりそうだ。

【図・写真】アンプレットの心電計座席(写真上)と大日本印刷が開発した入退室管理用ゲート

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