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JCB社長、高倉民夫氏――的絞り1番目のカードに(トップの戦略)

[ 2010年4月5日 / 日経MJ(流通新聞) ]

中国などアジア展開加速

 金融危機が直撃するクレジットカード業界で、ジェーシービー(JCB)が若者向けカードを発行するなど、顧客層に的を絞った戦略を打ちだし他社との差異化を図っている。国際ブランドカードとして、中国やベトナムといったアジア各国の加盟店開拓も進めている。高倉民夫社長に現状と戦略を聞いた。(聞き手は日経MJ編集長 篠原昇司)

若者向け強化

特典多彩に

 −−クレジットカード業界に逆風が吹いています。足元はどうですか。

 「取扱高は2008年秋のリーマン・ショック以降、ゼロ成長が続いていましたが、昨年12月からプラスに転じています。以前の2けた成長には戻っていませんが、月間ベースの伸び率は5%前後まで回復しています」

 −−回復をけん引している業界はありますか。

 「家電量販店はエコポイント制度のおかげで力強く回復してます。ネット通販も2けた成長です。一方、伝統的に使われてきた百貨店はまだマイナスですが、減少幅は徐々に小さくなってきました。1年前に切迫していた我々の精神状態はだいぶ和らいできました」

 「消費者のクレジットカードの利用回数は実はそんなに減っていません。1回に使う金額が大きく減ったのです。それも、消費者の手元にお金がなくなったわけではなく、将来に対する不安からです。日本は海外に比べるとカード決済比率は13%とまだ低いです。カードの使えるシーンをもっと増やせば取扱高はもっと大きくなります」

 −−特定の層に照準を定めた戦略的な動きを見せていますね。

 「昨年8月、新しい自社ブランドカード『オリジナルシリーズ』の発行を始めました。これは1961年の当社設立以来の大幅な刷新です。従来の『ゴールドカード』『一般カード』に加えて、29歳以下の若者向けのカードを用意したのが特徴です。若者がよく利用するコーヒーチェーン店やCDソフト販売店でカードを利用すると、ポイントを通常より多く付与する特典を付けました」

 −−なぜてこ入れされたのですか。

 「現在成人1人当たり、3〜4枚のクレジットカードを保有しています。しかし、実際に使われるのは1番目か2番目のカード。提携カードをたくさん発行した結果、眠っているカードもたくさん生まれました。ポイントをためやすくすることで、我々のカードを消費者にとっての1番目にしてもらう狙いです」

 −−ゴールドよりランクが高い「JCBゴールド ザ・プレミア」の発行も始めました。

 「最近、各社がゴールドカードの発行に力を入れたことで、ゴールドの特殊性が薄れてきています。当社のカードのヘビーユーザーからもゴールドの特典だけでは物足りないという声も聞かれました。ザ・プレミアは年会費はゴールドと同じで、サービスは他社の『プラチナカード』に近い特典を提供するのが特徴です。一定の利用実績のあるゴールドの会員を招待しており、会員数は約2万人います」

従来の考え捨て

加盟店を支援

 −−日本発の国際ブランドとしての展開は。

 「海外全体ではアジアを中心に17カ国・地域で発行しています。500万人の海外会員のうち300万人がいる中国を特に強化していきます。現地の銀行と提携してカードを発行し、加盟店の開拓も進めます。アジアで2年後には1000万人の会員を獲得したいです」

 「地域経済が多極化しています。そこで勝ち抜くためには、単にロゴや決済ネットワークを提供するという従来のカード会社のあり方を根本的に変えなければなりません。加盟店と一緒になって加盟店の価値を高めるのが我々の仕事と考えます。私はこれを『JCBウエイ』と名付け、社内で徹底しています」

 −−カード業界では合従連衡が続きました。再編の可能性は。

 「国内にはカード会社が多すぎて過当競争という側面も否めず、合従連衡は当然のことだったのかもしれません。ただ、JCBとしてはM&A(合併・買収)に価値を見いだしていません。カード会社の統合は、相手と決済システムをきちんと一緒にしなければならないので効果を出すのは難しいし、それなりの投資もかかるからです」

 −−後払い式電子マネー「クイックペイ」のすそ野が拡大中です。

 「ようやく主要なコンビニエンスストアやスーパーに端末を設置し終えたという状況です。初期投資がかかったため、これからは決済件数を増やす努力をしなければなりません。自動料金収受システム(ETC)カードのように、電子マネーをひもづけして、消費者のメーンカードにするためのツールとして活用していきたいです」

 −−改正割賦販売法の影響はありますか。

 「貸金業法改正時ほどの悪影響はないかもしれませんが、会員の支払い能力をきちんとチェックする必要があり、業務コストが増えます。ただ安心・安全にカードを使ってもらうためなのでしっかりとやるつもりです。一部の会員に利用額の制限が出るので、全体の取扱高には多少の影響があるかもしれません」

業績データから

ネット通販がけん引

 ジェーシービーの2008年度のショッピング・キャッシングの取扱高は前期比7%増の8兆3511億円だった。08年の金融危機の影響で伸び率は鈍化したが、公共料金や医療費などカード決済ができる分野が広がったほか、市場規模が8兆円とも言われるネット通販がけん引した。ネット通販をよく利用する若者向けのカード「エクステージ」の会員獲得の成否に注目が集まる。

 今後の焦点は海外展開。これまでアジア唯一の国際ブランドのクレジットカードとして、地位を固めてきた。しかし最近では中国の銀行が発行するキャッシュカード「銀聯カード」が加盟店や会員を急速に増やしており、アジアの主要カードとしての存在感を高めつつある。先行の利を生かしてシェア拡大できるか、戦略が問われている。

(鈴木洋介)

 たかくら・たみお 1945年(昭20年)大阪府生まれ。64歳。68年神戸大経営卒、三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。98年同行常務。2000年同行専務。06年ジェーシービー副社長。07年社長。趣味は年30回はするゴルフ。最近ではフィルム一眼レフカメラを下げながら夫婦で街中を散策するのも楽しみ。

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