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連載コラム

永遠の経営バイブル『マネジメント【エッセンシャル版】』をとことん学ぶ②

[ 2012年12月3日 ]

前回よりつづく)

 ドラッカー博士による『マネジメント【エッセンシャル版】』(ダイヤモンド社)のご紹介、前回のイントロダクション、企業論につづき今回は組織論である。ここでの焦点はどうなるだろうか。

組織論

 企業の活動を、現実に回すのは組織である。マネジメントといえども組織のなかに存在する。 

組織の目的

 では、その組織とはなにか。目的は?
世のなかには様々な組織が現存している。これほどまでに数多い組織は、いったい、なんのためにあるのか? また、組織が抱える端的な問題――個を取るか、全体を取るかのテーマは、どちらが正しいのか――長年、会社務めをしつつ、もんもんと悩んだことだ。こんな悩みを博士は、一言で吹き飛ばしてくれた。

組織とは、個としての人間一人ひとりに対して、また社会を構成する一人ひとりの人間に対して、何らかの貢献を行わせ、自己実現させるための手段である(p276)。

 組織は、それを構成する人間が、貢献を通じて自己実現できるようにする手段、といった見解は、苦悶しながら働いてきた人間に開放感をもたらす。なおかつ「組織の目的は、凡人をして非凡なことを行わせることにある(p145)」と、偉大なる真実をも説く。
 
 博士によれば、リーダーとは、本来の成果を出すだけでは不充分であり、正統性が要求されるもの。その正統性の根拠はひとつしかない。それこそ「人の強みを生産的なものにすること」で、これが組織の目的という(p275)。
 組織の目的は「人の強みを生産的なものにする」という希望の論には、心から賛同したい。それにしても多くの経営者は博士の本を読んでいるだろうに、こういう話はなぜ耳に入らないのか。「人が大事」と考えたりいったとしても、「組織の目的」とまで言い切ることは少ないように思われる。

組織構造と成果

 つぎは組織構造と成果の問題。
 博士は、組織構造は目的達成の手段であり、それ自体が目的ではないと語る。目的についてはいましがた述べたが、では重要なのはなんなのか。答はこう記されている。「組織の健康を判定する基準は、構造の美しさ、明快さ、完全さではなく、成果である(p216)」と。
 なにがあっても、成果こそ第一と訴える博士の主張には、強い説得力が感じ取れた(その面からいえば、成果をあげていない店は、組織構造になんらかの問題がある、と考えたほうがいいのかもしれない)。ここが、組織構造論のなかで最も嬉しかったところである。
この点につき、博士が述べていることを箇条書きすると

1 成果こそがすべての活動の目的
2 人間や組織単位の関心を、努力ではなく成果に向けさせねばならない
3 専門家や能吏ではなくマネジャーの数、管理技術や専門的能力でなく成果や業績で評価される人の数を増やすべき

となる(p200)。


 そのうえで「成果よりも努力が重要であり、職人的な技能それ自体が目的であるかのごとき錯覚を生んではならない。仕事のためではなく成果のために働き、贅肉ではなく力をつけ、過去ではなく未来のために働く能力と意欲を生み出さなければならない(同)」とだめ押ししている。
 ここにも、激しいまでの成果志向が貫かれている。厳しい状況に立ち尽くし、ついつい成果より、努力や技術、能力を高く評価してしまう例が、あまたあるからなのであろう。もちろん、だからといって、努力や技術、能力が否定されているわけではない。成果が最重要、という基本的な考え方が示されていると思うのである。

 とはいえそうなると、成果とはどういうものか、ということも問われてくる。その意味を、博士は3つにまとめる(p145)。

成果とはなにか

① 成果とは百発百中のことではない。百発百中は曲芸であり曲芸は成果でない
② 成果とは長期のもの。失敗しない者を信用してはならない(失敗しない者は、見せかけか、無難なこと、下らないことしか手をつけない者)
③ 成果とは打率である。弱みがないのを評価しない。優れている人ほど間違いを犯す

 つまり、成果で大事なのは、成果の長期的観点からみた打率であり、その意味では、失敗しない人間は信用できず、逆に、失敗をおそれず「新しいことを試みる」人を重んずることが大事という。ここに、人を評価する際の基準が語られていると想われる。現実には、この反対の事柄が評価されるケースも少なからずあり、こんなときには、反論しにくいものがあった。そういう事情を考えるとき、博士のこの「思想」は、心ある現場の人々には心強く映るにちがいない。

マネジメントで最重要なこと

 ところでマネジメントにおいて、最も重要なものはなんだろう。まだ博士の答をご存じない方は、読む前にぜひとも想像してみていただきたい。注目されるその答とはなにか? 管理力か、統率力か、はたまたカリスマ力か、それともチーム力か。この答は、まったくのところ意外なものであった。それは、『もしドラ』(岩崎夏海著『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を 読んだら』《ダイヤモンド社》)でも強調された、あの真摯さだった。

真摯さを絶対視して、初めてまともな組織と言える。それはまず、人事に関わる決定において象徴的に表れる。真摯さは、とってつけるわけにはいかない。すでに身につけていなければならない。ごまかしがきかない。ともに働く者、特に部下に対しては、真摯であるかどうかは二、三週間でわかる。無知や無能、態度の悪さや頼りなさには、寛大たりうる。だが、真摯さの欠如は許さない。決して許さない。彼らはそのような者をマネジャーに選ぶことを許さない(p147)。

 それにしても、真摯さがここまで重要と言明する果断には、心から敬服してしまう。この言い切りの激しさには、誰しも胸が突き動かされよう。私自身、大切とは思っていたが、これほどかと、改めて驚かされたのであった。

 ドラッカー博士は、経営の各局面で、皮相な現実に左右されずに本質に斬り込み、それを表に引き出すことを常とする。そこで刻まれるかけがいのない警句は、顧客と経営に誠実に(真摯に!)向き合っている人々に、いかに力を与えることだろうか、とそう感銘を新たにした。

悪い組織とは

 ここで「悪い組織」に話を移したい。
 組織構造が不適切なため、マネジメントがおこなうべきをおこなわなければ、企業にとり最も希少な資源であるマネジメントを、いたずらに浪費してしまう、そう博士は訴える(p20)。私自身も、コンサルティングにおいて、このような痛ましいケースを目にするたびに、「本当にそうだ」と心底思った。

 組織論に関しての、負の部分がふたつ指摘されている。

昨日の専門化した組織は、消滅の危機に瀕する(p246)。
戦略の変更なしに行う組織改革はまちがいである(p185)。

 それぞれ衝撃的な見解といえよう。専門組織は、どこも誰でも、自分たちの組織が「昨日」のものとは思っていないかもしれない。それに、戦略変更なしの組織改変なども、世にあふれていそうなことではある。自戒せねば・・・・・・。

 悪い組織の反対(というのも変だが)、良い組織を考えるとき、大きな課題は「組織は、明日のリーダーを内部から調達できなければならない(p202)」ことという。リーダー、あるいは人材の外部調達が増えている現在、これまた心すべきことになる。

あるべき企業組織の形態

 本書において、あるべき企業組織として、職能別、チーム型、連邦分権、擬似分権、システム型という5つのケースが検討され、傾聴すべき見解が披露されている。前の3つについて簡単にご紹介したい(他のふたつは、本書212ページ以降をご参照いただきたい)。

職能別組織

 博士は、職能別組織は成果より技能に重点を置くため、マネジメントに不適な人間を作るという。「優れた技能を持っているほど、マネジメントの意味を軽く見る。それだけ明日のマネジャーを育てることが難しくなる(p206)」のである。
 いわゆる「職人肌」の人は(私を含めてだが)、この一節をみずからの心に打ち込んでおかなくてはならない。せっかくいい品を探しまくって仕入れたのに、売るのはホントもったいない、などと思われる方も、要注意、要注意。

チーム型組織

 チーム型組織は、トップマネジメントの仕事に関し「現在のところ最高の組織構造」とのこと。「トップのための唯一の組織構造」であり、「イノベーションのための仕事にも最適」とつけ加えられている(p209)。この辺も、とりわけ精読したいところである。
 知識労働者は、職能別の本拠地を持ちつつ、他の職能や他分野の知識労働者とともに、一つのチームを作って働く、という指摘にも注目したい(同)。

チーム型組織

チーム型組織は、トップマネジメントの仕事に関し「現在のところ最高の組織構造」とのこと。「トップのための唯一の組織構造」であり、「イノベーションのための仕事にも最適」とつけ加えられている(p209)。この辺も、とりわけ精読したいところである。
知識労働者は、職能別の本拠地を持ちつつ、他の職能や他分野の知識労働者とともに、一つのチームを作って働く、という指摘にも注目したい(同)。

連邦分権組織

 博士は「今日のところ、連邦分権組織に勝る組織構造はない。この組織はきわめて明快かつ経済的である(p211)」と断言する。その「最大の利点は、明日を担うマネジャーの育成にある。連邦分権組織だけが、やがてトップマネジメントの責任を担うべき者を育成し、テストできる(同)」という。人という経営資源を、最大限尊重する思想から、導かれた見解といってよい。

 働く人の多くは、職能別組織に所属していると思われるが、他の形を組み入れる企業も増えている。残ったふたつ、擬似分権組織とシステム型組織を含め、その長短をつかんだ組織構築が求められる。
 つぎはこの組織を動かすマネジメントについてであり、むろん本書のメインテーマとなる。

次回につづく)

新・お店のバイブル
執筆者:青田 恵一

福島県出身。中央大学法学部法律学科卒業。中小企業診断士。
長年、小売店(八重洲ブックセンター、ブックストア談などの書店)に勤め、店長、営業企画課長、事業推進部長などを歴任。数々の出店と店舗指導に関わる。
現在、コンサルタンティング会社「株式会社 青田コーポレーション」代表取締役。
経営コンサルティング、店舗診断・提案、研修、出版、執筆などに従事。書店中心に商品レイアウト変更や販売促進を得意テーマとする。
2001年 日本エディタースクール「編集コース」終了。
2003年 『よみがえれ 書店——V字回復へのヒント』(青田コーポレーション出版部発行、八潮出版社発売)を刊行。
2004年 『書店ルネッサンス——進化・視察・出版営業・未来・電子ペーパー』(同)を刊行。書店進化論や、電子ペーパー報告などを収録。
2005年9月には「たたかう書店—メガブックセンター・責任販売・万引き戦争・ジャンル別マネジメント・新古書店対策—」(同)を刊行、「よみがえれ 書店」シリーズ完結編として注目を集めている。同書は日本図書館協会選定図書にも選ばれた。

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