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連載コラム

すべての店長のバイブル――川崎進一著『新・店長の条件』(5)

[ 2013年7月30日 ]

前回よりつづく)

5 管理の問題

 店長にとって非常に重要な仕事――管理の問題が第6章のテーマとなる。
 この局面で問われるのは(前にも少し触れたが)、「管理とはなにか」という、そもそも論である。誤解されやすいこの言葉は、いつしか悪いほうに一人歩きしてきた。そのため、ここで本来の意味をもう一度確認してから、つぎに進みたい。
 著者はこの管理の章「効果的な管理の仕方」で、管理の意味、最低必要な管理の方法、自己管理について論じる。まずはその意味である。
 では改めて、管理とはなにか? 著者はこの大事な問いにこう答えている。少し長い引用になるが、お許しをいただきたい。

管理というのは、こちらの意思で、ある目的を実現するために、人、物、金を目的に向って効率的に動かせる統一活動のことである。企業組織の最高責任者はトップであるから、管理者としての中堅幹部は、最高責任者に対して管理上の責任を負っている。したがって、管理というのは、意思と責任をもって一つの目標を達成する人間の活動ということができる。商品管理、在庫管理、材料管理、計数管理、人事管理などと言うときには、すべてそこに達成すべき目標があって、その目標に向って経営要素をコントロールしていることである(p172~173)。

 ここでは「目標に向って経営要素をコントロール」と覚えておこう。

 ついで管理の前提が語られる。これは会社の理念や方針について「よく理解している(p174)」ことと、実行させるための「目標の設定、遂行基準の設定、日頃の作業訓練、リーダーシップ(p175)」である。
 つぎは、とりわけ大切な目標管理であり、著者はこれに関し、具体的な6条件をあげている(p175~176)。この部分もきわめて有用であり、熟読が求められよう。

 ここで著者は、店長の店舗マネジメントにはふたつのシップが必要であると語る。ひとつがマネジメント・シップ、もうひとつがリーダーシップである。このふたつはどうちがうのか。といえば、マネジメント・シップは仕事の管理であるのに対し、リーダーシップは人の管理であるという。
 仕事の管理についてみると、著者は「店長の一二の主要機能を計画的に管理し、店舗の利益を実現すること(p177)」と記し、6つの基本条件が必要と述べている。ここも必読。その具体化のため、予定表の作成を勧め、作り方を教示している(p177~178)。なお「店長の一二の主要機能」は、42ページから44ページに述べられている。

 つぎは「最低必要な管理手段」である。ここでは、管理手段、組織ルール、チェックリストについて述べられる。
 はじめは管理手段。なぜ管理手段は必要なのか。著者は記す。「時間の足りないところで、仕事をこなさなければならないため、管理手段がないと、よきに計らえ式になったりして、手抜きになる恐れがある(p179)」と。そしてその方法として、ツールとルールのふたつが必要とする。ツールではチェックリスト、マニュアル、ガイド、遂行基準など、ルールでは報告、相談、連絡、チェックがそれぞれ欠かせないとのこと。

 で各々を解説するのだが、ルールのなかの、わけてもチェックリストについては詳述される。このところで、店長が売場をチェックするポイントとして「7つの〝やすい〟」をあげ図表化している(p191)のは、素晴らしい枠組みづくりといえよう。
 その7つとは、入りやすく出やすい、歩きやすい、分かりやすい、見やすい(比べやすい)、手に取りやすい(触りやすい)、選びやすい(決めやすい)、買いやすい(支払いやすい)である。図表には、各テーマについて、さらに具体的ポイントが示され、使いやすいツールになっている。
 また194ページから提示されている、自己管理用の8つのセルフチェック表もありがたい。

6 店長のリーダーシップ

 いよいよ店長のリーダーシップがテーマの第7章に入る。
 リーダーシップの局面で悩む店長は、思った以上に多いのではないか。そんな店長にとり、この章は、まちがいなく読みどころとなってくる。店長は店の責任者であるが、著者は、まずこの「店とはなにか」ということを改めて説く。

店とは、その会社の政策を実現し、それを利益に転換する唯一の場所である。    それまでのあらゆる経営内の活動は、店からみれば、可能性でしかない(中略)。その創造された可能性を現実化するのが店舗である。現実化とは、その可能性をもってお客に満足してもらうことを通して利益に転化することである(中略)。この、店舗の陳列技術などを含めて創造された可能性を、部下を使って現実化することが店長の主要な仕事である(p202~203)。

店のあり方について、あるスーパーマーケットを見学したときのことが紹介されている。見学者のひとりが

生鮮(魚)に不良品をみつけたので、係にその旨を告げた。それから三〇分たっても少しも変わっていないのを発見した。何か組織管理の欠落があると考えざるを得ない。この店の販売課長は、後方にあって販売上の書類の作成や在庫数字の作成に追われているのかもしれない(p207)。
 

業種を問わず、こうしたことは起こりやすい。むろん起こしては断じてならないことである。
ところで店長のリーダーシップは、なぜ問われるのだろう。これに関し著者は、このように書く。

よく店長を変えたら売上げが伸びたという話がある。売場管理などには他人(部下)の自発的協力を必要とするからである。ここに店長のリーダーシップの能力が問われる(p210)。

 それからこうもいう。「有能なリーダーとは、部下の心情をつかんで、全員を目標に向けて結集させるということである。有能なリーダーの仕事は、効率のよい真の全体をつくりあげる方法である。ということは、計数的に言うと投入した総労働力より、より大きな力を生み出すということである(p211)」
 このことのたとえとしてオーケストラの指揮者の話が持ち出される。この箇所は、本書中、最も美しく感動的、かつそれだけに、説得力が強烈なところのひとつである。ぜひ本書の211ページを何回も何十回も精読していただきたいと思う。

 ついで「よいリーダーシップ」のモノサシに話は移る、そんなモノサシはあるのだろうか。それがあるのだという。なんだろうか? それは、店長になにができるかではなく、店長が不在のとき、部下になにができるかなのだとのこと。著者は記す。「かつてアメリカのJ・C・ペニーでは、八名の店長候補を育てることができて、初めて地区長になることができた(p212)」と。実際、地区長だった人の話ということである。
 そしてこう結論づける。ここもかなり重要な指南である。

人間はやる気を起こさなければ、注意深い仕事をしない。したがって、管理をする人は、人間的要因を理解して、その人の心の中に潜んでいるマイナス要因――不安や意欲を阻んでいるものに対処して、積極的に挑戦する心を引き出さなければならない。こうすれば生産性は向上する(p213)。

 あとにつづく4つの管理スタイルの話も興味深いので、ぜひご参照いただきたい。
 ついで提言される「日本的管理を変革せよ」は、いまにつづく日本的管理の弊害を乗り越えるべく論じられている。リーダーシップの具体的な適用について、著者の明察が示されており、とくにこのテーマで悩んだときなど、じっくり読み込みたい。

7 教育と訓練

 この8章は、店長がおこなう教育と訓練について書かれている。
 店長は教育と訓練の責任者であることと、計画の立て方、パートについての方向という3テーマが記されるが、ここでは、おもに最初のテーマをみておきたい。
 はじめに著者は、教育と訓練のちがいに触れる。教育の目標は「開発であり、知識を与えること(p238)」であるのに対し、訓練は「知識を道具として使うことを教える(同)」こととなる。さらにこう補う。「訓練は、教育以上にカリキュラムが整理されていることが必要である。整理されていないと混乱が起きる。混乱した人は行動を起こさない。明確に整理されていない訓練プログラムは失敗に終わる(p238~239)」と。

 ではなぜ教育・訓練が必要なのか。著者は語る。「管理者とは、人を使って仕事をする人のことである。『人を使って』とは、人を組織して、訓練してという意味になる(p239)」。ここから話は「人を使う」ことの本質に触れていく。

人を使って」ということは、「命じて作業をやらせる」ことである。「命ずる」と言っても自主的協力を求めていることである。したがって命じて作業をやらせるには、三つの前提が必要になる(p240)。

 3つとは、言っていることが相手に伝わること、作業の遂行基準があること、日頃から教育と訓練を受けていることである。
 つぎに、店長が教育・訓練をおこなう場合のプラスとマイナスが、7項目ずつ示されている。この辺のことをキッチリ押さえつつ、取り組みたいものである。
 計画についても少し触れたい。
 251ページの図表は体系だっており、全体像をつみやすくなっている。骨格部分のみ示すと

教育・訓練の必要点
↓ 
教育・訓練の必要点の発見趣旨、理由
↓ 
教育目的(なぜ)
↓ 
内容(なに)
↓ 
期間(いつ)
↓ 
方法(どんな方法)
↓ 
教育予算
↓ 
教育評価

著者は、教育・訓練の必要点を重視する。

教育・訓練の必要点の発見については、店長の経験がものをいう。在庫日数などについては本部から単位品目ごとに言ってくるかもしれないが、店でも単品管理の仕方や季節との関係、陳列の見方、考え方、その技術、商品の関連性、ロス管理、商品の発注法、ABC分析、目的買いと衝動買いなどについて教えるべきである。これらはほとんど現物を使って教えなければ理解されないであろう。もちろん、本部も、店長の教育活動についてはサポートしなければならない(p250)。

 そして大事なOJT(職場内訓練)のテーマである。
 この進め方についてポイントが書かれているので、しっかり読みこなしたい。で最後にこう訴える。

人材は決算書には掲載されていない会社の資産である。教育・訓練の能力は無形資産づくりの唯一の方法である(p257)。

(次回につづく)

新・お店のバイブル
執筆者:青田 恵一

福島県出身。中央大学法学部法律学科卒業。中小企業診断士。
長年、小売店(八重洲ブックセンター、ブックストア談などの書店)に勤め、店長、営業企画課長、事業推進部長などを歴任。数々の出店と店舗指導に関わる。
現在、コンサルタンティング会社「株式会社 青田コーポレーション」代表取締役。
経営コンサルティング、店舗診断・提案、研修、出版、執筆などに従事。書店中心に商品レイアウト変更や販売促進を得意テーマとする。
2001年 日本エディタースクール「編集コース」終了。
2003年 『よみがえれ 書店——V字回復へのヒント』(青田コーポレーション出版部発行、八潮出版社発売)を刊行。
2004年 『書店ルネッサンス——進化・視察・出版営業・未来・電子ペーパー』(同)を刊行。書店進化論や、電子ペーパー報告などを収録。
2005年9月には「たたかう書店—メガブックセンター・責任販売・万引き戦争・ジャンル別マネジメント・新古書店対策—」(同)を刊行、「よみがえれ 書店」シリーズ完結編として注目を集めている。同書は日本図書館協会選定図書にも選ばれた。

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