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連載コラム

ネットから店舗への送客に挑むO2Oの全貌――松浦由美子著『O2O 新・消費革命』(東洋経済新報社)(1)

[ 2013年9月30日 ]

 O2Oという言葉が浸透してきた。
 関連書も増えつつある。だが小売店を事例とするものは、さほどない。本書、松浦由美子著『O2O新・消費革命 ネットで客を店舗へ引きつける』(東洋経済新報社)は、その代表的な1冊といえよう。
 O2Oを知らずして、未来、いや現在の小売業さえ語ることはできない。本書はこの注目されるO2Oの全貌を、事例を通してわかりやすく伝えるものである。

1 本書の概要

 画像まずこの本の目次を掲げておきたい。

第1章 なぜ、いま、O2Oなのか?
 O2Oビジネスという新潮流
 スマートフォンの影響による新しい消費行動
 O2Oマーケティングモデル「ARASL」
 ソーシャルメディアによる消費社会の再構築
 リアル店舗に集客するためにネット上で消費者に提供する7つの新しい価値
 ゲーミフィケーションで再来店促進
 スタートアップ企業の挑戦 成功の鍵は「リーン・スタートアップ」 

第2章 思わず店舗に行きたくなる! O2Oで共感・楽しさ・利便性を実現するリアル企業
 ローソン22 ものSNSを使いこなしO2Oを展開成功の秘訣
 良品計画 O2Oで「無印良品」ブランドと顧客との絆づくり ほか
 ユナイテッドアローズ 進化するO2Oでアパレル市場を生き抜く
 東急電鉄 O2Oによる街づくり「イマだけ・ココだけ・アナタだけ」
 セブン&アイ・ホールディングス 本腰を入れる「ネットとリアル店舗の融合」

第3章 魅力的な集客の仕組みを創り出す! ネットとリアルの架け橋を目指すネット企業
 Facebook ネットとリアルをつなぐ戦略
 コロプラ 地域活性化型O2O成功の秘密 
 マピオン「ケータイ国盗り合戦」企業タイアップ型O2Oで新市場を拓く
 Yahoo! JAPAN O2O市場ナンバーワン戦略
 Googleローカルショッピング ネットとリアルをつなぐ戦略1
 Googleプレイス ネットとリアルをつなぐ戦略2
 Googleアドワース ネットとリアルをつなぐ戦略3

第4章 O2Oインフラを握る! 遠大なシナリオを描く通信キャリア
 KDDI O2Oビジネス拡大の仕掛け人
 ソフトバンクグループ O2O市場圧倒的ナンバーワンを狙う孫社長の新たな野望

第5章 O2Oはこれからどうなるのか?
 「ビッグデータ」でさらに進化するO2Oの世界
 加速するO2O技術革新豊かで新しい消費体験 
 O2Oビジネスで始まる新時代の消費革命

 聞いたことのないキーワードが多いな、とご懸念をお持ちの方もおいでかもしれない。でも心配はご無用である。難しい言葉は、本書のなかで、ていねいにわかりやすく解説されていくからだ。
 目次は、第1章でO2Oについて紹介、解説、第2章では小売店での展開を、第3章は集客仕掛けを創り出すネット企業を、第4章ではインフラを形づくる通信キャリア、第5章ではビッグデータを中心にO2Oの未来を構想する、という流れになる。

 著者、松浦由美子氏については、奥付に

ITアナリスト。大学卒業後、米国留学を機にITの世界に目ざめる。帰国後、ITエンジニアとして半導体ウェハ検査装置の開発や原子力・ETCなどのインフラ制御系システムの開発、大手印刷会社のIT技術センター部門でセキュリティ関連のサービスや画像情報データベース、地図情報サービスなどのWeb開発に携わる。現在は、インターネット企業に勤務の傍ら執筆活動も行う 。「ITからリアル世界への翻訳者」として、テクニカルな話題を一般読者にわかりやすく解説することをモットーに活動中

とある。著者は、この本のテーマにふさわしい経歴の持ち主で、信頼できる書き手であるということが、手に取るように伝わってくる紹介だ。
 この本は、東洋経済新報社のサイト「東洋経済オンライン」に連載された「O2Oビジネス最前線」に加筆修正し、1冊の本にまとめたものである。またこの連載はいま現在もつづいており、その後の状況が的確に把握できるため、本書評と合わせご参照いただきたい。

2 本書のおもな主張

 本書の主張は「はじめに」に凝縮されている。この「はじめに」は、O2Oのイメージを明確に知るために、繰り返し熟読したい。
 O2Oとはなにか。当然ではあるが、話はこの点から入っていく。はじめに著者は3つの事実を示す。

① ローソンが「からあげクン」の半額券を、フェイスブックを使うことで、たった17時間で30万枚も配布した
② ヤフージャパンとカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)がネット会員とポイントの統合を発表
③ セブン&アイ・ホールディングスの会長、鈴木敏文氏が「ネットと現実(リアル)店舗の融合」に向けて大号令を下す

 そして問う。これらの動きは、いったいなにを意味しているのだろうか。さらにつづける。小売店にとって苦境を脱する糸口がここにある。それこそ、O2O(オーツーオー)にほかならない、と。
 O2OとはOnline to Offlineの略で、オンラインとオフラインとあるように

 ネット(オンライン)の力を駆使して、現実社会(オフライン)のリアル店舗へ消費者を呼び込み、商品・サービスの利用を促進しようというものだ。ネット(オンライン)とリアル(オフライン)の購買活動が相互に連携し合うことを表す言葉でもある(pⅳ)。

 改めて問う。なぜいまO2Oなのか?
 著者はこう答える。スマートフォンの急激な普及と、ツイッターやフェイスブックといったソーシャルメディアの拡大を背景に、新しい消費者が台頭してきている。このことを敏感に察知した企業は、スマートフォンを基点にしたサービス、スマートフォンとソーシャルメディアの特性を生かしたサービス、というふたつのサービスを生み出している。
 その代表例としてお客さまの立場から4つがあげられている。

1 スマートフォンのアプリで、最寄り店舗の情報を得て来店できる
2 アプリからお得なクーポンを入手できる
3 お店や商品の写真やコメントをソーシャルメディアに投稿し、友人と共有できる
4 リアル店舗で買い物をすると、ポイントとかネットゲームでの特典をもらえる→再来店の促進サービス

 もうひとつ、ビッグデータの関連での言及もみられる。

 O2Oでは、ネット上で収集できるデータだけではなく、リアル店舗への来店履歴、購買情報にまでデータの収集領域が広がる。膨大なデータをうまく活用できれば、ネット上の広告・販促情報が個人に最適化され、リアル店舗への効果的な集客や売り上げにつなげることが期待できる(pⅴ)。

 そのうえで「今までの商習慣の常識では考えられないような新しい消費世界が生まれつつある(同)」と指摘する。
 加えて注目すべきこととして「スタートアップ企業がO2Oサービスで起業できる」点をあげ、スポットライト社の来店ポイントサービス「スマートフォンポイント(スマポ)」のことを例示している。

 商品を購入しなくても、参加企業のリアル店舗に来店するだけでポイントが貯まるというサービスだ。ポイントは参加加盟店の共通ポイントになる(pⅵ)。

 このサービスを導入しているのは、大丸、ビックカメラ、ユナイテッドアローズ、マルイなどの大手小売店ということを示す。
 そしてこの本の成り立ちに触れる。

本書は、このようなO2Oの動きを、具体的な事例をもとにまとめたものだ。ネット企業だけではなく、リアル企業で活躍する第一線の方々にもインタビューを行い、最前線の現場の取り組みと今後のO2Oへのビジョンをレポートした。本書は、2012年1月から、約8カ月にわたり東洋経済オンラインに連載した「O2Oビジネス最前線――黎明期を迎えた新・消費革命」を土台として加筆訂正したものである(pⅶ)。

この箇所から、本書の説得力と信頼性が高い理由が伝わってくる。
最後に本書のねらいを2点示す(同)。

① O2Oで生み出される新しい消費とは、どういったものなのか
② どのようにすれば、スマートフォンとソーシャルメディアを使いこなす新しい消費者の心をつかみ、リアル店舗に足を運んでもらい、商品やサービスを利用してもらえるのか

 このふたつのモチーフを軸に、本書は書かれていく。
 当書評は、小売業の動きを追うため、第1章から第3章、まとめとしての第5章を中心に紹介していきたい。

次回につづく)

新・お店のバイブル
執筆者:青田 恵一

福島県出身。中央大学法学部法律学科卒業。中小企業診断士。
長年、小売店(八重洲ブックセンター、ブックストア談などの書店)に勤め、店長、営業企画課長、事業推進部長などを歴任。数々の出店と店舗指導に関わる。
現在、コンサルタンティング会社「株式会社 青田コーポレーション」代表取締役。
経営コンサルティング、店舗診断・提案、研修、出版、執筆などに従事。書店中心に商品レイアウト変更や販売促進を得意テーマとする。
2001年 日本エディタースクール「編集コース」終了。
2003年 『よみがえれ 書店——V字回復へのヒント』(青田コーポレーション出版部発行、八潮出版社発売)を刊行。
2004年 『書店ルネッサンス——進化・視察・出版営業・未来・電子ペーパー』(同)を刊行。書店進化論や、電子ペーパー報告などを収録。
2005年9月には「たたかう書店—メガブックセンター・責任販売・万引き戦争・ジャンル別マネジメント・新古書店対策—」(同)を刊行、「よみがえれ 書店」シリーズ完結編として注目を集めている。同書は日本図書館協会選定図書にも選ばれた。

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