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連載コラム

ネットから店舗への送客に挑むO2Oの全貌――松浦由美子著『O2O 新・消費革命』(東洋経済新報社)(3)

[ 2013年12月2日 ]

前回からつづく)

4 小売店の事例

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 第2章「思わず店舗に行きたくなる! O2Oで共感・楽しさ・利便性を実現するリアル企業」こそ、小売業の成功事例を集めた章であり、小売店としては最も学ぶべきところになろう。本章には、ローソン、良品計画、ユナイテッドアローズ、東急電鉄、セブン&アイ・ホールディングスの5つの小売企業の例が示されている。とくにローソンと良品計画のふたつ(前にも少し触れたが)の事例を詳しく取り上げたい。

 まずローソンではどういうO2O施策を採っているか、それを改めてみていこう。
 圧倒的な展開力を誇る「ローソンのO2O施策では、7割以上の顧客が、クーポンを引き換えるだけではなく、一緒に飲み物など他の商品も購入するという。店舗の売り上げアップに効果を上げている(p34~35)」とのこと。
 ローソンのO2O施策はなぜ成功したのか、ここでその秘訣が4点明かされる(p36)。

① 経営層の理解
② 各部署の本気での取り組み 
③ IT部門の協力体制
④ 独創的なアイディアが濃縮

 どれもがきわめて大切な事柄である。この4つは、いかなる施策においても成功条件となろうが、O2Oビジネスのように革新的な色彩が強い場合、とりわけ必須なことにちがいない。
 4つのうち④のアイディアについて具体的に記されている。そのポイントは、架空のキャラクター「あきこちゃん」をつくって、様々なソーシャルメディア上で顧客とコミュニケーションを取った点にあるという。「あきこちゃん」とは、お客さまの声で創り上げた「ソーシャルメディアアイドル」である。ではなぜ「あきこちゃん」は着想されたのだろうか。ここで著者は

ネットを活用するなら、『みんなで作っている感』が大切(p38)

というローソン担当者の言葉を紹介している。事実、この「あきこちゃん」というソーシャルメディアアイドルは、みんなでつくったのであった。
 この担当者は、「エヴァンゲリオン」や「けいおん!」などを扱うエンタメキャンペーン出身ということもあり、アニメほかのエンタメとのタイアップも進めたそうである。

 あと、数多い媒体のなかでも、LINEを使った施策はこまごま触れられているので、本書でご確認いただきたい。

 ローソンでは固定ファンづくりへの導線が確立している(p42~43)。その導線は
 
 ソーシャルメディアによる新規顧客の獲得
 ↓
 ポイント会員化
 ↓
 ポイント会員施策による継続来店化
 ↓
 ポイント会員向け無線LANを通じた情報とオリジナルコンテンツの提供

というプロセスでできあがる。O2Oビジネスで、導線の構築がいかに重要かを示す好例となっている。
 また、オリジナルコンテンツはエンタメとのタイアップが多いという。アニメの主人公が店内で話しかけてくるという企画も、そのひとつであった。

 ローソンは、商品企画の局面でも、ソーシャルメディアとポイント会員の両方のデータを活用する(p44)。「ソーシャルメディア上の顧客の声に基づいて仮説を立て、Pontaのデータで検証するという流れが多い(同)」のである(Pontaとは、「ローソンの提携する会員共通ポイントサービス」《p42》のこと)。そして「つねに各12部署に向け、ソーシャルメディア上のローソン商品に関する顧客の声をレポートにまとめ報告している(同)」
 ここに顧客基点の姿を見ることができる。O2Oビジネスといっても、すべてはやはり顧客から出発するのである。

 良品計画のO2Oビジネスの紹介は、本書の圧巻のひとつといってよい。
 この部分での特長は、重要キーワードが目立つことである。試しにあげてみると

 顧客時間
 6:4の法則
 世界同時キャンペーン
 ブランド価値の向上
 デジタルサイネージ(電子看板)
 オフライン・ツー・オンライン・ツー・オフライン
 ネットのリアル店舗化
 エバンジェリスト

などである。
 この辺りを読み直したとき、これらのキーワードが良品計画のO2Oビジネスの本質を表していることに気がついた。そこでここからは、キーワードの趣旨をみながら、本書のいわんとするところを追っていきたいと思う。
 最初は「顧客時間」。顧客時間とはお客さまの時間であるから、これからおのずと、お客さまが「購買する瞬間だけではなく、『買う前』『買った後』の時間も含めてとらえることが大事(p48)」という考えが示される。

まず、顧客に無印良品というブランドを体験してコンセプトに共感してもらい、商品に興味を持ってもらう。興味を持った商品を検討し、実際に店舗で購入してもらう。その後は商品をどう使ってもらうのか。そういった個々の顧客が無印商品とかかわる一連の時間全体で考え、顧客と絆づくりができないか、検討している(同)。

 この流れを再びフロー化してみると

 顧客によるブランド体験
 ↓
 コンセプトへの共感
 ↓
 商品への興味
 ↓
 興味を持った商品の検討
 ↓
 店舗での購入
 ↓
 商品の使用方法
 ↓
 顧客時間の把握
 ↓
 顧客との絆づくり

となる。ここでは「個々の顧客が無印商品とかかわる一連の時間全体で考え、顧客と絆づくりができないか」という問題意識が押さえるべき要点となろう。

 「6:4の法則」も注目される。
 良品計画では過去2年間のネット会員状況を調べた結果、6割の会員はネットで買い物をしていないことが判明した。そこから6:4の法則を発見し、その6割のお客さまに対し、リアル店舗の販促施策を打ったのである。

この「6:4の法則」が無印商品のあらゆるO2O施策の底流にある。顧客時間をO2Oでつなぎ合わせることで、店舗送客を実現する(p50)。

 例として4つあげられている。

① ネットストアでしか使えなかったクーポンを、ギフトカードにチャージできるようにして、店舗でも利用できるように仕組みを変えた
② 店にクーポン発券機を設置し、ネットストアの会員にメールで送ったクーポンが読み取れるようにした
③ ネットストアで注文した商品を、希望の店舗で受け取れるように変更
④ フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアからの店舗送客をおこなった

そして④の例がこう記されている。

有楽町店の10周年キャンペーンとして、FacebookかTwitter経由で「無印良品といえば、○○」の○○にコメントを入れて投稿したユーザーに、有楽町店で使用できる10%オフのクーポンを配布した。17日間実施し、キャンペーン売り上げは約1000万円に達した(p51)。

次回につづく)

新・お店のバイブル
執筆者:青田 恵一

福島県出身。中央大学法学部法律学科卒業。中小企業診断士。
長年、小売店(八重洲ブックセンター、ブックストア談などの書店)に勤め、店長、営業企画課長、事業推進部長などを歴任。数々の出店と店舗指導に関わる。
現在、コンサルタンティング会社「株式会社 青田コーポレーション」代表取締役。
経営コンサルティング、店舗診断・提案、研修、出版、執筆などに従事。書店中心に商品レイアウト変更や販売促進を得意テーマとする。
2001年 日本エディタースクール「編集コース」終了。
2003年 『よみがえれ 書店——V字回復へのヒント』(青田コーポレーション出版部発行、八潮出版社発売)を刊行。
2004年 『書店ルネッサンス——進化・視察・出版営業・未来・電子ペーパー』(同)を刊行。書店進化論や、電子ペーパー報告などを収録。
2005年9月には「たたかう書店—メガブックセンター・責任販売・万引き戦争・ジャンル別マネジメント・新古書店対策—」(同)を刊行、「よみがえれ 書店」シリーズ完結編として注目を集めている。同書は日本図書館協会選定図書にも選ばれた。

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