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連載コラム

O2Oの進化と店舗再生の道筋を示す――松浦由美子著『O2O、ビッグデータでお客を呼び込め! ネットとリアル店舗連携の最前線』 (平凡社新書) (1)

[ 2014年2月26日 ]

 前回まで、松浦由美子著『O2O 新・消費革命』(東洋経済新報社)を紹介してきた。
 奥深いテーマに魅了されながら、続編を読みたいと切望していたところ、今年1月、なんと、同じ著者によるO2Oの新刊、『O2O、ビッグデータでお客を呼び込め! ネットとリアル店舗連携の最前線』が、平凡社から新書版として刊行された。
 内容的に前作を引き継ぐ形であり、その後の状況もふんだんに書き込まれていることから、今回以降はこの作品を学んでいきたいと思う。

1 本書の概要

 画像最初に目次を当たっておく。

はじめに

第1章 O2Oで、売れない時代に客を呼び込め
● O2Oは、50兆円市場へ
● O2Oにはどんなサービスがあるのか
● 中小事業者でもO2Oができるのか
● こうしてO2Oは現れた 

第2章 ここまで進んだ! 最新型O2Oの衝撃
● 急成長するO2Oインフラ、LINEの凄味 
● O2Oベンチャーの先駆け、「スマポ」の野望! 大丸など700店に拡大
● グルメで世界へ! O2Oベンチャー「Retty」の挑戦 
● 伊勢丹が飛びついた最新型O2O 素人メディア「tab」の磁力

第3章 一歩先をいく先進企業は、O2Oをこう使いこなす
● 20代女子の心をつかめ! ジーユーのO2O
● 音楽から始まる、王者コカ・コーラのO2O
● ネットと店の壁を壊せ! 東急ハンズのO2O

第4章 O2O成功企業から学ぶ五つのポイント
● 成功企業から学ぶ共通ポイント

第5章 「ビッグデータ」で融合するO2Oの世界

第6章 O2Oプラットフォームを狙う電通、NTTの野望と「ビッグデータ」ビジネス
● 電通が狙うO2O! テレビCMと店舗をつなぐ未来戦略
● 巨艦・NTT 日本最大級のO2O実証実験

おわりに──O2Oが日常になる世界へ


 第1章ではO2Oとなにか、ということを改めて説き、しかもそれを体系づける。第2章では、O2Oのシステムをつくる企業にスポットを当て、どれだけのことができるようなったかを報告する。
 第3章では、O2Oを駆使する3つの先進企業をレポート。3つのうちふたつが小売企業という点に、著者の思いやねらいが伝わってくる。第4章では、成功例から5つの共通性を導き出す。
 第5章でビッグデータの重要性を、新たな側面から解説する。第6章では、O2Oのプラットフォームをねらうふたつの大企業の未来戦略を描く。

 本書が前作同様、O2Oの啓蒙書という点は変わらない。
 フランス革命に先立って、ルソーやディドロといった著作者の書物があったように、「O2O革命」ともいうべき現代、『O2O 新・消費革命』(東洋経済新報社)と今度の本『O2O、ビッグデータでお客を呼び込め!』――この2冊は、ビジネス革命を促す啓蒙の書と呼ばれていい。
 読了してからの感想になるが、過去・現在・未来におけるO2Oのすべてに迫ろうという著者の意欲は、並々ならないと思った。なにより圧倒的な事例の数々には腰が抜けた。よくぞここまで取材できたものだと、ため息さえ出てしまう。O2Oこそが現在の突破口になるという、著者の強い信念が取材の多さと深さに表れている。

 帯には以下のフレーズがある。

「売れない時代」をO2Oが変える!

《24兆円O2O市場が動き出す》
ローソン、ユニクロ、Yahoo! JAPAN、コカ・コーラ、電通・・・・・・
中小・地方企業もチャンスをつかめる!

 気鋭のITアナリストが徹底レポート!

さらに表カバーを開くと、そこには

LINE、フェイスブック、スマホの位置情報機能など、
ネットを駆使してリアル店舗に消費者を呼び込む──
この新しい仕組みがO2O(Online to Offline)だ。
業界トップも次々に取り組みを強化し始めた!
ビッグデータを活用することで新たな段階に入った、その最新事情を
気鋭のITアナリストが、わかりやすく解説。
「モノが売れない時代」を変えろ!
新しい消費モデル・O2Oを徹底解剖する。

とある。
 これらの呼び掛け文でもわかるように、この1冊は、コンパクトな新書判にもかかわらず、情報とノウハウがめいっぱい詰まっている濃密な本、といえよう。以下、章ごとに、O2Oの進化を学習していく。気合を入れて読み込もう!

2 「はじめに」と第1章「O2Oで、売れない時代に客を呼び込め」

「はじめに」と第1章「O2Oで、売れない時代に客を呼び込め」は、いってみるなら、あいさつと自己紹介になる。本書のエッセンスが、このふたつ、前者の6ページと後者の38ページに凝縮されている。 
 したがってまずは、この箇所を精読したい。2回読んでから第2章に入るもよし、全体を通読してから再度読むのも方法だろう。ともあれ、このふたつこそ、予習と復習の部分にほかならない。

「はじめに」と第1章を読むにあたり、お勧めしたいことがある。
「はじめに」に目をとおしたあと、いきなりで恐縮だが、41ページの図(1‐5)「O2Oサービスの分類」をじっくり眺めていただきたい。この図は、本書の出発点であり到達点である。これを眺めながら読み進めれば、いまこのところだなと確認できるので、便利なことこのうえない。いっそこの図だけコピーし、たとえば本のしおり代わりとして、必要に応じ参照してはいかがだろう。

 では、この図はどういうものか。
 O2Oのサービスを、「お得」「楽しい」「便利」の3つに分類し、それぞれの具体的サービスと、さらに該当キャンペーンを組み入れたものである。

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「お得」にはクーポンとポイント、「楽しい」にはデジタルコンテンツ、ゲーミフィケーション、驚きと感動の店頭体験、「便利」には、店・商品情報、口コミ、キュレーション、自社内ショールーミング、モバイル決済がある。そのうえで各々に、クーポンではLINEの「LINE@」とソフトバックテレコムの「ウルトラ集客」などと例示される。
 つまりこの図を見るだけで、「お得」の価値のひとつにクーポンがあり、その具体的な例がLINEの「LINE@」とソフトバックテレコムの「ウルトラ集客」になることがわかるのである。 

 このことを前提として、「はじめに」と第1章に入ろう。
「はじめに」の手はじめに、O2Oを改めて説明する。

O2Oとは、インターネットの力を駆使して、現実社会の一般のお店へ消費者を呼び込み、商品の販売やサービスの利用を促進しようというものです。ネットとリアルの購買活動が相互に連携し合うことを表す言葉でもあります(p10)。

 店舗ビジネスの立場から「O2Oは、消費者に新しい価値を提供することで、来店、購入を促そうとするものです。従来の消費の置き換えではなく、まったく新しい消費を生み出す可能性がある(p18)」ともつけ加えられる。
 
 この本はなんのために書かれたのか? 
 メディアの主導権が新しい消費者に渡ること、広告や販促の情報が個人個人に最適化すべきことなどを指摘しながら、著者は、本書の意図をこう明らかにする。

私は、2012年1月から現在にいたるまで、数多くの企業に足を運びO2Oをテーマに取材をしてきました。本書は、現場取材をベースに、O2Oとは何か、企業や店舗にとってどのような意味があるのか、どのようにすればO2Oで成果をあげられるのかについてまとめたものです。図表も加え、O2Oを体系化し、わかりやすく伝えることを心がけました。O2Oという非常に広範囲にわたるビジネスシーンの全体を網羅した書籍にしたいと考えました(p13~14)。

 ここには現場、成果、体系、統合の視点が感じられる。

次回につづく)

新・お店のバイブル
執筆者:青田 恵一

福島県出身。中央大学法学部法律学科卒業。中小企業診断士。
長年、小売店(八重洲ブックセンター、ブックストア談などの書店)に勤め、店長、営業企画課長、事業推進部長などを歴任。数々の出店と店舗指導に関わる。
現在、コンサルタンティング会社「株式会社 青田コーポレーション」代表取締役。
経営コンサルティング、店舗診断・提案、研修、出版、執筆などに従事。書店中心に商品レイアウト変更や販売促進を得意テーマとする。
2001年 日本エディタースクール「編集コース」終了。
2003年 『よみがえれ 書店——V字回復へのヒント』(青田コーポレーション出版部発行、八潮出版社発売)を刊行。
2004年 『書店ルネッサンス——進化・視察・出版営業・未来・電子ペーパー』(同)を刊行。書店進化論や、電子ペーパー報告などを収録。
2005年9月には「たたかう書店—メガブックセンター・責任販売・万引き戦争・ジャンル別マネジメント・新古書店対策—」(同)を刊行、「よみがえれ 書店」シリーズ完結編として注目を集めている。同書は日本図書館協会選定図書にも選ばれた。

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