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連載コラム

O2Oの進化と店舗再生の道筋を示す――松浦由美子著『O2O、ビッグデータでお客を呼び込め! ネットとリアル店舗連携の最前線』 (平凡社新書) (2)

[ 2014年3月31日 ]

前回からつづく)

 第1章の「O2Oで、売れない時代に客を呼び込め」は、おもに41ページの図(前回①の図参照)を解説する形になる。だがその前に、大切な消費者とその行動の分析がおこなわれている。
 大量生産・大量消費を追った高度成長期の家族、カスタマイズされた多品種・小ロット商品を旨とした安定成長期の個人という、それぞれの消費者像に対し、能動的にかかわれる商品・サービスを求め、ソーシャルメディアで新しいつながりをつくろうとする、現代の人間像が描かれる。

 さてこれから41ページの図「O2Oサービスの分類」に表されたO2Oの価値――「お得」「楽しい」「便利」という3テーマの中味に立ち入っていく。「お得」テーマでは、クーポンとポイントが詳しく紹介されるが、ここらは小売業の得意施策であるから、本書を直に当たっていただきたい。
 おもしろそうなのが、「楽しい」テーマのデジタルコンテンツ、ゲーミフィケーション、店頭体験と、「便利」テーマのキュレーションである。

 まずはデジタルコンテンツ。
 O2Oでいうデジタルコンテンツってなに? と興味津々に読んでいくと、「消費者が、リアル店舗に来店、あるいは商品を購入するとデジタルコンテンツがもらえるO2O(p27)」とあった。セブン‐イレブンによる「AKB48の壁紙ダウンロード」とかJT(日本たばこ産業)の「ローラのオリジナルLINEスタンププレゼント」とかのキャンペーンが例示されている。そういうことかと納得。
 ゲーミフィケーションは前作でも紹介されたが、本作ではより具体的な言及になる。ゲーミフィケーションとはゲームの仕掛けをビジネスなどに応用していくことで、O2Oとは相性がいいという。

(ゲーミフィケーションのひとつに)携帯電話やスマートフォンで利用できる位置情報ゲームがあります。自分の居場所や移動時間に応じて、ゲーム上の街やキャラクターを成長させるためのアイテムや、ゲームで利用できる通貨などを取得して、ゲームを進めます。位置情報ゲームでは、リアル店舗に来店、もしくは商品を購入すると、ゲーム上の限定アイテムを取得できるような仕掛けもあります(p29)。

 位置情報ゲームの輪郭が描かれたあと、そのひとつである「ケータイ国盗り合戦」の事例が記される。

ケータイ国盗り合戦は、O2Oで大きな経済効果を上げることに成功しているサービスの代表格です。ユーザーが戦国武将になりきって、全国制覇すべくスタンプラリーなどをして楽しむこのゲーム。ユーザーの8割は、実は社会人です。出張や仕事の外出の機会を利用して楽しむ人が多く、比較的お金に余裕があるサラリーマンが多いのが特徴です(同)。

 その成功例として、大手百貨店や商店街があげられるが、この辺りは本書の山場のひとつといってよい。
 なかでも、2012年12月、大丸松坂屋百貨店の2店(大丸梅田店と大丸東京店)で実施した際には、両店合計6日間で上げた成果が、なんと「合計3400人を集客し、売り上げ約5200万円、客単価1万5000円以上(p30)」に達したそうだ。絶句(!)してしまう例である。
 
 驚きと感動の店頭体験の記述も素晴らしい。無印良品の、文字どおりアッと驚くプロモーションは、小売店の人なら必ずお読みいただきたい。31ページから33ページは絶対必読箇所になる。
 そのプロモーションの総括は胸にしみる。

(無印良品のプロモーションは)ソーシャルメディア上の評価を視覚的、体感的に可視化した好例です。技術的にもまさに最先端なのですが、技術を全面に出さずそれよりも驚きや感動といった感情を動かす顧客体験を提供している。これがブランド価値の向上につなげることに成功しました(p33)。

 「技術を全面に出さずそれよりも驚きや感動といった感情を動かす顧客体験を提供」という箇所に、親近感を覚える店の人は多いのではないだろうか。
 ところで、「便利」テーマに店・商品情報、口コミ、キュレーション、自社内ショールーミング、モバイル決済があるのは前述のとおり。なかでも、在庫情報が短時間で更新される東急ハンズの話がある「店・商品情報」、興味テーマごとに特化するという「口コミ情報」、スマートフォンが決済端末になる「モバイル決済」などに食指がそそられる。しかしここではキュレーションに焦点を合わせたい。
 キュレーションとはなにか。著者はこう答える。

キュレーションとは、ネット上の情報やコンテンツを収集、編集し、共有することを表します。たとえば、ユーザーAさんが独自の目線やセンスで商品や店舗の情報をまとめ、自分の感想やコメントを追加して公開します。ほかのユーザーはAさんをフォローすると、Aさんが収集してまとめた店舗などの情報を見ることができる仕組みです(p36)。

非常に関心をそそられる話である。文章はつづく。

膨大に情報があふれるなか、なかなか自分の好きな商品やお店を見つけ出すことが難しくなっています。企業や店舗からの一方的な広告ではなく、自分が好きな人をフォローすれば、その人が収集してまとめたおすすめの商品や店舗の情報が、自動的に流れてくるようなサービスが次々に生まれています(p36~37)。

 誘惑を感じるO2O施策といっていい。
 さて、中小事業者にもO2Oが取り組める施策であることを、松浦由美子氏は声を大にして叫ぶ(その様子が、行間からほのみえると感じるのは、錯覚だろうか)。さらに心の壁、人材、コストなど各側面から心を尽くして訴える。O2Oを使ってみたい、とちょっとでも考えるお店にとり、42ページから46ページは、なんとしても参照してほしい箇所となろう。

 第1章の最後に語られるのは、O2Oの全体像である。
 O2Oの全体像は、メディアがリアルとネットのふたつ、販売拠点が店舗と通販のふたつ――つまりリアルメディアとネットメディア、リアル店舗とネット通販という4つの要素から構成されると述べたうえで、これらの相互の関係を導き出す。
 まず流通企業のO2Oを「顧客循環型O2O」として位置づける。

流通企業は、ネットメディア、リアルメディア、ネット通販、リアル店舗の四つの要素を使い分け、効果的に顧客を循環させて結果として店舗へ集客し、売り上げや利益を上げようと取り組んでいます(p50)。

さらにこれを、統合チャネルを表すキーワード「オムニチャネル」に結びつける。

ネットとリアルのあらゆる販売チャネルを統合し、顧客の満足度と利便性を高める 「オムニチャネル」という戦略でも表されます(p51)。

そして、O2Oに取り組む流通企業にとって共通の課題として、「ネットメディア(オンライン)からの来店促進(オフライン)という従来のO2Oの流れに加えて、その前にオンラインの情報への接点をオフラインでどれだけ作れるか、効果的なネットへの入口をどれだけ用意できるか(p54)」という問題があることを指摘する。
これは以前からの課題ともいえるが、O2Oの時代を迎え、より切実になっていることが伺える。

3 第2章「ここまで進んだ! 最新型O2Oの衝撃」

 第2章「ここまで進んだ! 最新型O2Oの衝撃」には、新しい手法がいくつも登場する。O2Oの世界が「終りなき戦い」なのだと実感するところでもある。
 第2章ではLINE、スマポ、Retty、tabそれぞれをとおしたO2Oの最新型が、報じられ論じられていく。飲食業向けのRetty以外は小売業に関係するため、このふたつを、少しずつ見ていきたい。

(1)LINEによるO2O施策

 はじめは「O2Oサービスの急先鋒」LINEである。
 LINEは「全世界で2億7000万人、日本国内でも4800万人以上という膨大な利用者を持つ無料通話・メッセージアプリ(p56)」で、「友だち登録をした利用者同士であれば、無料で通話やメッセージのやり取りができ(同)」るということから、現在、若い世代におけるコミュニケーションのインフラになっている。
 そのLINEがいま、各種広告・販促サービスを強化しつつあり、これが消費者をリアル店舗に導くために貢献しているという。この点が「従来のネット広告と大きく異なる特徴のひとつ」である(p59)。

 では各企業はLINEをどう使っているのか。ここには、LINEの公式アカウントを使った、販促情報の送付とスタンプサービスの例が紹介されている。たとえばローソンやHIS、マツモトキヨシの場合。

そうした企業が友だち登録してくれている利用者に向けて、メッセージやクーポンなどの販促情報を配信します。多くの企業や店舗が、実際の集客や購買を促進させるO2Oの効果に手応えを感じています。「LINEの利用者の約40%弱が割引クーポンを使う」という調査結果もあります(p60)。

 つづいて、コアラのスポンサードスタンプや日清食品のひよこちゃんスタンプなど、スタンプの衝撃的な(!)成功例が紹介される。小売店がこの情報を逃したら、間違いなく損となろう。そして著者は、日清食品のつぎのコメントを引き出している。

LINEはほかのソーシャルメディアに比べて、より親しい知人同士とのコミュニケーションが中心となります。そこで〝スタンプ&キャラクター〟を介して企画を展開したことで、広告宣伝色が薄まり、ユーザーの積極的な利用につながったのだと思います(p64)。

 この一文にLINEの特質が表れている。ではそのLINEのコンセプトはなにか、というと58ページに3つが解説されているので、この辺りも「理想の書店」もご参照のほど。

 ところでLINEは中小事業者向けにもO2O施策を用意している。
 それがLINE@である。これがまた魅力あふれるものというしかない。料金設定が中小事業者にとって利用しやすいうえ、機能もあまり変わらないとのこと。前述したが、中小事業者にも期待を込める著者は、ここでも力を入れて語っていく。小売店は中小事業者も多いため、該当する部分はぜひともご精読を!
 ひとつ見すごせないのは、このLINE@が「スーパーの特売配信にぴったり(p76)」という記述である。LINE株式会社の役員がこうコメントしている

スーパーは、おそらくいちばん適しているのではないか。特売のチラシを画像で送ればいい。チラシ画像は拡大できるので、消費者にとっても見るのに苦になりません。そもそも、毎日チラシを出している業界なので、非常にポテンシャルが高い領域です。夕方のタイムセールや賞味期限が近い商品の特売など、必要に応じてリアルタイムに配信でき、非常に使い勝手がいいはずです(p77)。

このことは、ひとりスーパーだけではなく、様々な業種業態でも通じるのかもしれない。

次回につづく)

新・お店のバイブル
執筆者:青田 恵一

福島県出身。中央大学法学部法律学科卒業。中小企業診断士。
長年、小売店(八重洲ブックセンター、ブックストア談などの書店)に勤め、店長、営業企画課長、事業推進部長などを歴任。数々の出店と店舗指導に関わる。
現在、コンサルタンティング会社「株式会社 青田コーポレーション」代表取締役。
経営コンサルティング、店舗診断・提案、研修、出版、執筆などに従事。書店中心に商品レイアウト変更や販売促進を得意テーマとする。
2001年 日本エディタースクール「編集コース」終了。
2003年 『よみがえれ 書店——V字回復へのヒント』(青田コーポレーション出版部発行、八潮出版社発売)を刊行。
2004年 『書店ルネッサンス——進化・視察・出版営業・未来・電子ペーパー』(同)を刊行。書店進化論や、電子ペーパー報告などを収録。
2005年9月には「たたかう書店—メガブックセンター・責任販売・万引き戦争・ジャンル別マネジメント・新古書店対策—」(同)を刊行、「よみがえれ 書店」シリーズ完結編として注目を集めている。同書は日本図書館協会選定図書にも選ばれた。

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