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連載コラム

リーダーシップはアートである――マックス・デプリー著『響き合うリーダーシップ』 (海と月社)(1)

[ 2014年8月1日 ]

 リーダーシップは本から学べるものだろうか。
 じつは長年、私はそう疑問に思ってきた。だから経営とかマネジメント、店長の本は山ほど読んでも、直接リーダーシップに関する本だけは、さほど当たってこなかった。唯一の例外は、男子バレーボールの監督、ミュンヘンオリンピックで金メダルを獲得した松平康隆氏の『リーダーの哲学』(柴田書店 出版社切れ)だった。あとは、身近なリーダーや現実から、ときには手痛い代償も払いながら学習してきたといえる。
 ところが今回、紹介する本は、私にとってあまり親しいとはいえない、そのリーダーシップのものだ。これには理由がある。ベレ出版の会長である内田眞吾氏から、この本の存在を教えていただいたのである。
 昨年、私は6冊目となる本、『理想の書店――「お客さま第一」の旗を高く掲げて (書店大戦シリーズ第1弾)』(青田コーポレーション出版部発行、八潮出版社発売)を上梓した。内田さんは、荻窪の居酒屋、寄港地にて、社員の皆様とともに、お祝いをしてくださった。その際、「いい本だよ」とご教示いただいたのが、今日からご紹介する本、マックス・デプリー著『響き合うリーダーシップ』(海と月社)なのであった。

1 本書の概要

 画像この本は、カバーが水色のさっぱりした装幀である。
 さわやかといっていい。ソフトカバーのB6判で手に持つと軽快だ。初夏の風に吹かれながら読みたい、という感慨に襲われるほどである。だがそのさわやかさに、だまされてはいけない。本書の中味は濃厚としかいいようがない。
 そのことはひとまず置くとして、表紙には、「20年以上読み継がれる名著」とあり、そのあとに小文字で「いかにして部下の潜在能力を最大限まで引き出し、強力な組織をつくるfか?」とあった。まさにこの点が、本書のモチーフとなる。
 またこの書には、ウラ表紙に、様々な方々からの推薦文が掲載されている。眺めると、これがまた、そうそうたるラインナップで刮目(かつもく)してしまう。以下はそれらの文章である。

● ピーター・F・ドラッカー氏
すばらしい本だ。まず、マックスの精神をとらえている。 彼は並はずれた人物だ。 さらに、リーダーシップについて、これまで出版されたどの本より、 明確で、エレガントで、説得力がある。
● トム・ピーターズ氏
深い思索に満ち、一人ひとりの心に訴え、人間的で、説得力がある。 この本を、あなたの娘、息子、フォーチュン500企業の会長に進呈しなさい。 この先何年も感謝されるはずだ。
● ビル・クリントン氏(第42代アメリカ合衆国大統領)
驚くべき本。
● サム・ウォルトン氏(ウォルマート創業者)
リーダーシップとビジネス・マネジメント哲学について 私がいままで読んだなかで、最高の一冊だ。
● タイム誌
彼の会社が作り出すエレガントな家具のごとく、 デプリーの本は、品位とスタイルと成功の要素を備えた、 価値ある教訓を授けてくれる。
● Inc.
珠玉のこの一冊を除いて、マネジメントに関する本はすべて 捨ててしまうべきかもしれない。 デプリーは、信頼、品位、精神、愛情のことだけを書く。 それらは、どんな規模の組織にとっても本質だ。

 あまりの讃辞にびっくりしつつ本を開くと、見返しにはこうあった。

チャールズ・イームズをはじめ数多くの世界的デザイナーを率いて、ハーマンミラー社を「もっとも働きがいのある企業」「もっとも称賛される企業」と呼ばれる世界的家具メーカーに育て上げた伝説のCEOが説くリーダーシップの真髄!

 そうか、そうだったのかと思いつつ目次を開くと、どこかエッセイ集の趣きも感じとれる。それがわかるように、全章のタイトルを並べてみよう。

1章 ある親方の死
2章 リーダーシップの「アート」とは?
3章 参加型マネジメントで組織を変える
4章 「愛着」について
5章 投手と捕手
6章 遊軍リーダーを活かせ
7章 資本主義の未来のために
8章 これが「偉人」だ
9章 「語り部」の役割
10章 オーナーと従業員の理想の関係
11章 リーダー必須のコミュニケーション術
12章 「ピンクの氷」は危険の兆し
13章 勤務評定のポイント
14章 会社の施設のあり方
15章 後継者の選び方
16章 あなたは泣いていますか?
17章 品格のしるし
あとがき

 いかがだろうか。これらのエッセイ風のタイトルから、読みたい気分をそそられないだろうか。
 もちろんこの本のテーマはリーダーシップだから、リーダー経験をお持ちの方は、いままでの体験や読書からつかんだものを、照らし合わせて読むのが最も効果的と考えられる。体系というよりピックアップ的に、リーダーシップの核心をとらえているからである。思想とか体系とかは抜きにして(本書の考え方にそれらのものは、もちろん磐石なほど存在しているが)、どこからでも当たっていけるのがありがたい。

 これから、いつもの独断と偏見で、私が重要と判断する「改訂版序文」から4章の「『愛着』について」までを(11章の「リーダー必須のコミュニケーション術」も含め)、限定的にはなるが、順を追ってみていきたいと思う。

2 「改訂版序文」より

 「改訂版序文」では、まずリーダーシップに不可欠なものが3つあげられている(p6~8)。いきなりの重要テーマになるが、その3つとは、

① 誠実さ
② 関係を築き、はぐくむ手腕
③ コミュニティの構築

である。
 そのまま読むと、あまりの意外さに拍子抜けする。統率力とか指導力とかではなかったのだ。

 ひとつずつ当たっていく。
 まず①の誠実さについては驚くべきことが書かれている。「誠実さは自由市場のシステムを維持する大原則のひとつ」で、「社会のためにある原則」だから「リーダーに合わせて都合よく変わる概念ではない」というのである(p6)。
 私などてっきりその反対だと思ってきたから、こう聞くと、どうしても腰を抜かしてしまう。
 ②の「関係を築き、はぐくむ手腕」は「人とのつながりをつくる能力」であり「リーダーが実践すべきスキルのひとつ」と教示される。
 ③の「コミュニティの構築」は②の「関係を築き、はぐくむ手腕」のうえに成り立っていると思われる。このふたつは、通常、別のものととらえられることが少なくない。それゆえ、ふたつが同時にあげられたことには、新鮮さが感じられた。 
 ここでのつぎの言及こそ胸に刻みたい。

コミュニティにいればこそ、意味のある目標を設定し、自分の業績を正しくとらえることができる。コミュニティにいればこそ、私たちは個人として成長し、成功し、潜在能力を発揮できる。コミュニティにいればこそ、持ちつ持たれつの世界を支えてくれる相手に敬意や感謝を捧げ、互いに心から許し合うことができる。企業、教会、スポーツ・チームといったコミュニティにいればこそ、他人に奉仕し、他人と知り合うことができる(p7~8)。

 本書全体にもいえることだが、とりわけこの箇所では、普通の言葉が宝石のように輝いている。この一文は「真のリーダーは、集団を率いて、めざすべきコミュニティを設計する」とつづく。

 少し飛ぶが、「新しい状況は、すでに知っているものと結びつけられることで理解が深まる(p28)」というフレーズにも感銘を受けた。

次回につづく)

新・お店のバイブル
執筆者:青田 恵一

福島県出身。中央大学法学部法律学科卒業。中小企業診断士。
長年、小売店(八重洲ブックセンター、ブックストア談などの書店)に勤め、店長、営業企画課長、事業推進部長などを歴任。数々の出店と店舗指導に関わる。
現在、コンサルタンティング会社「株式会社 青田コーポレーション」代表取締役。
経営コンサルティング、店舗診断・提案、研修、出版、執筆などに従事。書店中心に商品レイアウト変更や販売促進を得意テーマとする。
2001年 日本エディタースクール「編集コース」終了。
2003年 『よみがえれ 書店——V字回復へのヒント』(青田コーポレーション出版部発行、八潮出版社発売)を刊行。
2004年 『書店ルネッサンス——進化・視察・出版営業・未来・電子ペーパー』(同)を刊行。書店進化論や、電子ペーパー報告などを収録。
2005年9月には「たたかう書店—メガブックセンター・責任販売・万引き戦争・ジャンル別マネジメント・新古書店対策—」(同)を刊行、「よみがえれ 書店」シリーズ完結編として注目を集めている。同書は日本図書館協会選定図書にも選ばれた。

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