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連載コラム

第7回「みずから経営する"モデル店"の成果が結実! 『小さなお店でガッチリ稼ぐ法』(1)」

[ 2008年7月1日 ]

 今回、紹介する本は、大咲元延著の『小さなお店でガッチリ稼ぐ法 来客数を増やす・客単価を上げる7つの力』(日本実業出版社 2008年)である。 本書には際立つ特長がふたつある。
 ひとつは小さいお店が対象と銘打っていること。独立とか小資本開業というとき、小規模店が対象になるのはごく自然だが、本来、全般的なテーマはあえて「小さなお店」と限定しなくてもいい。それをタイトルに入れたのは、この本が"挑戦"の書であることを示していると思われる。
 ふたつ目は、著者、大咲元延氏が経営コンサルタント(中小企業診断士)であること。もちろんコンサルタントが本を書くのは、商売のワンアイテムゆえ、とりたてて特別のことではない。注目すべきは、コンサルしながら、自分でお店(書店)を営んでいることだ。コンサルティングの"モデル店"と考えられるが、その成果が、本書に、鮮やかなまでに結実しているのは驚くばかりである。


1 本書の趣旨

 この書の趣旨は、「はじめに」と序章で明快に断じられている。まずはここをしっかり押さえたい。
 「はじめに」には、いきなり自店での体験談がある。それも異業種の商品を扱うことを推奨している。作者は新聞で、折りたたむと平らになり、内ポケットに収まる傘のことを知るや、売れると直感、すぐみずからの書店に導入する。これが直感どおり、2ヵ月でなんと300本も売れた。本とかDVDソフトでいうなら『ハリーポッター』並みだろう。このことがマスコミにも紹介され、それ以降も、なんとなんと年間2000本がさばけているという。著者はここで、商いに最も重要なのは「カン」だと述懐する。

私が新聞広告で傘を見たときに、「これは売れる!」と感じたのは「カン」です。決してデータではありません。いまは科学万能の時代、コンピュータで何でもできると思いがちです。しかし、いくらPOSの性能が発達しても、仕入れをしていない商品のデータは出てきません。「この商品を仕入れたら売れるよ」とは教えてくれません。商人が元来持っている「カン」に勝るコンピュータはなく、この能力はトレーニングすれば身につきます(「はじめに」より)。

 序章のテーマは「お客様はなぜ商品を買うのか」、すなわち、お店の最重要課題、顧客の分析である。
 作者は最初に新しいキーワードを打ち出す。――「創客」である。創客とはなにか? むろんファン創りのことだ。「小さな店」がファンを創るには、なにより「この店が好きだから、ここの店主の話がおもしろいから、奥さんと話すと元気が出るから(p12)」といった気持ちをかきたてるような「量販店ではできない創客方法」が欠かせない。そのうえで特段に強調されるのが、ストーリーづくりと総合力の大切さである。
 ストーリーってなんのストーリー? といえば、これはむろん、お客さまにその気になっていただくためのストーリーである。つねに買うものなら、自然、手に取るにせよ、「はじめて買うものだと、それを使ったときのイメージが浮かぶかどうかが大切(p15)」として、POPやポスターの効用を説く。
 これらがストーリーの発端で、ここから、注目→興味→欲求→記憶→行動というおなじみのサイクルとなり、それがストーリーの骨格と教示しながら、こうアドバイスする。

買い物は、単に商品を手に入れることだけではありません。手に入れる前、手に入れた後のことまで含めて買い物なのです。店としては、買い物の一連の流れをストーリーとして見せることが必要です。そのストーリーが魅力的であればあるほど、販売数が上がるということです(p19)。

 ついで「消費者アンケートを実施したことがあるお店は、意外と少ない(p20)」と、顧客志向が足りない現況を嘆きつつ、消費者調査の必要性を訴える。売上はお客さまの財布からしか発生しないことから、「考えてわからなければ、お客様に聞け!(p25)」と強く主張するのである。
 著者によれば、調査には、来街者、居住者、経営者という3つあるが、問題は経営者と顧客のギャップだという。だからときには、ビックリするような結果が出る。たとえば、価格力が一番大事というある店で、いざ調べると、近隣力、店舗力のほうが価格力を上回った。この例から以下のように諭す。

価格はたしかに重要な選択基準ですが、すべてではありません。もしこれがすべてであれば、街の小規模小売店は生き残ってはいないはずです。実際にたくさんの店が存在しているということは、他の要素でも消費者は選択しているということです(p27)。

 課題は価格だけでない、そう警鐘を鳴らすのである。では店はいかなる要素で動くのか? この展開が本書の背骨になる。作者はそれを、店舗力、近隣力、商品力、価格力、販促力の5つにわける(p26〜27)。これはいわば、店舗のマーケティングミックスなのだが、著者はそういわず、できるだけ普段着のことばで語ろうとする。したがって文章は、読みやすいことこのうえなく、5つのことも理解しやすい例があげられる(表「商売に不可欠な7つの力」p30)。

 店舗力――店員や主人が顔なじみなど
 近隣力――長時間営業、商品が探しやすいレイアウトなど
 商品力――新製品が常にある、話題の商品が揃っているなど
 価格力――価格が適切、価格表示が明確など
 販促力――チラシ広告やポイントサービスがあるなど

 じつはこの直後、さらに、企画力(「ターゲット層や販売方法が明確など」)とコミュニティ力(「お客様との人間関係を密にする手段や方法など」)があることが明かされる。とりわけ企画力の中味はなかなかに奥深い。

「企画力」というのは、どういった店にしていきたいかという経営戦略、どの客層をターゲットにし、どのような販売方法をしていくかという販売戦略、そのためにどの媒体を選んで広告するかという広告戦略、どの商品を前面に押し出して販売を仕掛けていくかという商品戦略など、店の根幹に関わってくる力といえます。すべてここから他の力が生まれていくのです(p29)。

 コミュニティ力については

小さなお店にとっては、経営者がお客様と直に接するということが、大型店では持っていない優位性です。『あそこのご主人の話がおもしろいから、また行こう』『あの奥さんがいるから、あの店で買おう』というのが『コミュニティ力』(同)

とヒューマン面が重視される。結局、この7つの要素が店づくりを決定する。「これらを相乗的に高めていくことが、店の繁盛につながっていく(同)」のである。で、その一つひとつについて、第1章から詳細に説かれていく。もっとも話はさらにつづいて、この7要素からより力を入れるものを決めたり、総合の力を発揮するように促す。ちょっと長い引用だが、肝の部分なのでお許しいただきたい。

新規参入には、いずれかの力が突出していることが必要です。たとえば、超低価格を武器として参入したり、店のいたるところに棚を設けて商品量を通常の1.5倍から2倍にするなどの特徴を打ち出します。しかし、当初はこれでいいのですが、これだけなら、いずれお客様に飽きられてしまいます。 ここで必要なのは、やはり総合力。加重の違いはあっても、常に他の力にも気を配っていくことです。そして、その時々で、力の配分を変えることで、お客様の気を引くようにしなければいけません。お客様は常に変化を求めていますから、新しい存在であるためには、変化をし続けなければならないのです(p29〜30)。

 柔らかい表現のなかに、店舗ビジネスの本質が、鋭くかつ深く語られていることに驚嘆する。店の強み打ち出しや総合力の重要性とともに、変化への対応を説くこのフレーズは、とくに精読したい。作者が、「小さな店」ほど、これらのことが必要不可欠なのだと、繰り返し、痛切なまでに訴えているからである。ここに著者、大咲氏の「小さな店」に対する限りない愛情を感じるのは、私だけだろうか。


2 店づくりノウハウの数々

 本書には、コンサルタントの、まさにそのコンサルノウハウ=店づくりノウハウが、きめ細やかに公開されている。以下、要点をすこしずつピックアップしたい。
 近隣力の章では、PTA、サークル、同窓会など中年女性のグループ活動が盛んな立地で、終わったあとの集まりの場として店を位置づけ、成功した中華料理店(p32〜35)を、「同業者と同じ土俵に立って商品構成を考えるのではなく、お客様の観点から商品や店づくり、店の雰囲気を考えた勝利(p35)」と分析する。
 とはいえ「お客様の観点」はひとつでない。それをどう見つければよいのか、その発見法のひとつが、お客さまの悩みを知ることだ。「お客様の立場から考えると、どの商品を買いたいかというよりも、誰から買いたいかという基準もあるのです。『自分の困った』を解決してくれる人から買いたいと考えるのは、むしろ自然なことではないでしょうか(p59)」

 納得できる話である。つぎの店舗力でも、店は20m手前(ロードサイドは7秒前)で認知できない場合は素通りされる(p68)、お客さまは店に非日常を求めており、同じ雰囲気だと足が遠のく(p79)といった問題をあぶり出し、これらを含め、本質的、抜本的な対策として「集客ソフト」の重要性に言及する。

「駅前にある」「価格が安い」「商品を手にとって確かめられる」などの理由では、いまの消費者には通じなくなってきています。店に来る理由、店に来たくなる理由がないといけません。それが「集客ソフト」です(中略)。店の長所、これが店の集客ソフトです。これからの店はこの集客ソフトを活かして「一度来た客」を「また来る客」に、そして最終的には「毎日来る客」にするしくみをつくる必要があります(p85)。

 加えて、手軽に顧客目線をつかむ方法として「セルフフォト法」を手ほどきする。これが、正統的でありながらも意表をつく。カメラを持って店の外に出る。50m先から10mごとに写真を撮り、店前、店内も映し、その写真をもとに、スタッフ全員でミーティングをおこない、店を改革するのである。この詳細が載っている90ページ以降は必読部分!

(次号につづく)

《筆者紹介》

青田恵一氏(あおた けいいち)

福島県出身。中央大学法学部法律学科卒業。中小企業診断士。
長年、小売店(八重洲ブックセンター、ブックストア談などの書店)に勤め、店長、営業企画課長、事業推進部長などを歴任。数々の出店と店舗指導に関わる。
現在、コンサルタンティング会社「株式会社 青田コーポレーション」代表取締役。
経営コンサルティング、店舗診断・提案、研修、出版、執筆などに従事。書店中心に商品レイアウト変更や販売促進を得意テーマとする。
2001年 日本エディタースクール「編集コース」終了。
2003年 『よみがえれ 書店――V字回復へのヒント』(青田コーポレーション出版部発行、八潮出版社発売)を刊行。
2004年 『書店ルネッサンス――進化・視察・出版営業・未来・電子ペーパー』(同)を刊行。書店進化論や、電子ペーパー報告などを収録。
2005年9月には「たたかう書店―メガブックセンター・責任販売・万引き戦争・ジャンル別マネジメント・新古書店対策―」(同)を刊行、「よみがえれ 書店」シリーズ完結編として注目を集めている。同書は日本図書館協会選定図書にも選ばれた。

バックナンバー
青田恵一氏の「新・お店のバイブル」バックナンバー
青田恵一氏の「お店のバイブル〜旬な1冊、効く1冊〜」バックナンバー

新・お店のバイブル
執筆者:青田 恵一

福島県出身。中央大学法学部法律学科卒業。中小企業診断士。
長年、小売店(八重洲ブックセンター、ブックストア談などの書店)に勤め、店長、営業企画課長、事業推進部長などを歴任。数々の出店と店舗指導に関わる。
現在、コンサルタンティング会社「株式会社 青田コーポレーション」代表取締役。
経営コンサルティング、店舗診断・提案、研修、出版、執筆などに従事。書店中心に商品レイアウト変更や販売促進を得意テーマとする。
2001年 日本エディタースクール「編集コース」終了。
2003年 『よみがえれ 書店——V字回復へのヒント』(青田コーポレーション出版部発行、八潮出版社発売)を刊行。
2004年 『書店ルネッサンス——進化・視察・出版営業・未来・電子ペーパー』(同)を刊行。書店進化論や、電子ペーパー報告などを収録。
2005年9月には「たたかう書店—メガブックセンター・責任販売・万引き戦争・ジャンル別マネジメント・新古書店対策—」(同)を刊行、「よみがえれ 書店」シリーズ完結編として注目を集めている。同書は日本図書館協会選定図書にも選ばれた。

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