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連載コラム

第12回【ノートシリーズ1】「小売店頭論の最高峰----流通経済研究所編『インストア・マーチャンダイジング 製配販コラボレーションによる売場作り』を解剖する(1)」

[ 2008年12月1日 ]

 今回から、単なる書評でなく、もっと内容にわけ入り、さらに詳しく紹介するノートシリーズをはじめたい。ずいぶんと優れた書が、多少の案内だけではもったいないと感じるからである。このシリーズは数回にわけ掲載していくため、本を読むだけでなく、チェックしたりノートしながら、研究していただくこともお勧めしたい。

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 第1弾は、この夏に刊行された、小売の店頭論のなかでも最高峰と思われる、流通経済研究所編『インストア・マーチャンダイジング 製配販コラボレーションによる売場作り』(日本経済新聞出版社 2008年7月)である。

 インストア・マーチャンダイジングの本といえば、1989年、田島義博氏の監修で刊行された『インストア・マーチャンダイジング』(ビジネス社)、同じく田島義博氏によって監修された、その改訂版『インストア・マーチャンダイジングがわかる→できる 流通情報化と小売経営革新』(同2001年)の2冊を思い出す。
 本書がこれらを引き継いでいることは、一読してすぐにわかった。過去の2冊に比べると、テーマがすこし変更されたほか、論の組み立ても簡潔になり、文章も読みやすくなった。その意味でこの本は、インストア・マーチャンダイジングの格好の基本書といっていい。そうなると前2著は参考書という位置づけになるが、ともあれ、このテーマを深堀りできるチャンスがついに到来したのは、たしかなことだろう。

1 インストア・マーチャンダイジングとなにか

 そもそもインストア・マーチャンダイジングとは、いったいなんなのか。話をここからはじめたい。カバーの折り返しを見ると、以下のように書かれている。

「小売店頭で、市場の要求に合致した商品および商品構成を、最も効果的で効率的な方法によって、消費者に提示することにより、資本と労働の生産性を最大化しようとする活動」のこと。買物客の視線を意識したゴンドラ配置や陳列位置により長期的視点から売場生産性を高める「スペース・マネジメント」と、価格・非価格の両面で商品に付加的な刺激を与えることで短期的な売上増加をはかる「インストア・プロモーション」から構成されます。

 手っ取り早くいうなら、顧客の視点に立脚したうえで、MD(商品政策)や店舗プロモーションを効果的、効率的に積み重ね、売上と生産性を上げる活動といえようか。

2 本書の趣旨、特長と構成

 人口減少と高齢化による需要の伸び悩み、その反面、大規模化する店舗、ここから求められる消費者ニーズを踏まえた生産性の向上・・・。これらの事情から、インストア・マーチャンダイジングは必然となった。
 この書の趣旨は「はじめに」で開陳されている。

財団法人流通経済研究所では、POSシステムが普及し始めた1980年代から消費者の購買行動と店頭の売場作りについて、実証的な研究をおこなってきました。本書『インストア・マーチャンダイジング』は、これまでの成果のうち、基本的な知見と考え方を紹介するものです(pii)。

 趣旨は同じでも、前の2著と比較し本書は、以下の際立った特長を持っている。

1) きわめてわかりやすくなったこと
2) メインテーマを今日的課題に絞り込んだこと
3) 新しい切り口で分析と提言をしていること
4) 消費者観点が強まったこと
5) メーカーとの協働が前提になったこと

 スッキリわかりやすくなったことは、インストア・マーチャンダイジングの普及にとり大きい。ではどう理解しやすくなったのか。といえば、なにより、このインストア・マーチャンダイジングが、おおまかに、商品配置(スペース・マネジメント)と販売促進(インストア・プロモーション)に二分されたのが、非常に貢献している。その結果、誰もが容易に、"理論の森"に入りやすくなったのは間違いない。

 ついで、テーマを、今日的課題に絞り込んだ点。"DPP(直接製品利益)"とか"LSP(レイバー・スケジューリング・プログラム)"、リテールサポート(小売店支援)などは、消えるか別テーマに吸収された。これに対し、フロア・マネジメント、シェルフマネジメントといったキーワードが新たに登場した。

 消費者観点を探り出す動きも強調されている。消費者行動は、本書ではじめて独立章を持ち(第2章「消費者の購買行動の見方と基本的特徴」)、さらに第6章「業態別の消費者購買行動特性とISM」でも、重要なポジションを獲得した。顧客本位の時代なら、それはもう当然なのかもしれないが。

 各章で言及されるが、メーカーとの連携が前提となり、協働マーチャンダイジングという概念も出現した。これは「小売業と取引先との関係を、従来の買い手と売り手という利害対立関係から、サプライチェーンの共有者という関係にシフトさせ、マーチャンダイジングの仕組みを革新しようとする動き(pi)」であり、時代の変化を示唆するものだ。

 構成は目次からすぐわかる。

第1章 効果的な店舗を実現するインストア・マーチャンダイジング
第2章 消費者の購買行動の見方と基本的特徴
第3章 フロア・マネジメントの基本と活用
第4章 シェルフ・スペース・マネジメントの基本と活用
第5章 インストア・プロモーションの基本と活用
第6章 業態別の消費者購買行動特性とISM
第7章 カテゴリーマネジメントでのISMの活用
第8章 インストア・マーチャンダイジングの展開

 総論につづき、消費者行動、インストア・マーチャンダイジングの柱、フロア・マネジメント、つぎにもうひとつの柱、インストア・プロモーション、そのうえで、消費者の購買行動特性を業態別に考え、協働マーチャンダイジングの具体的表現であるカテゴリーマネジメントにたどりつき、最後に今後を展望するという流れである。

 次回から本の構成に沿って、テーマ別に論点をご案内したい。はじめは焦点の消費者行動論になる。乞うご期待!

(次号につづく)

新・お店のバイブル
執筆者:青田 恵一

福島県出身。中央大学法学部法律学科卒業。中小企業診断士。
長年、小売店(八重洲ブックセンター、ブックストア談などの書店)に勤め、店長、営業企画課長、事業推進部長などを歴任。数々の出店と店舗指導に関わる。
現在、コンサルタンティング会社「株式会社 青田コーポレーション」代表取締役。
経営コンサルティング、店舗診断・提案、研修、出版、執筆などに従事。書店中心に商品レイアウト変更や販売促進を得意テーマとする。
2001年 日本エディタースクール「編集コース」終了。
2003年 『よみがえれ 書店——V字回復へのヒント』(青田コーポレーション出版部発行、八潮出版社発売)を刊行。
2004年 『書店ルネッサンス——進化・視察・出版営業・未来・電子ペーパー』(同)を刊行。書店進化論や、電子ペーパー報告などを収録。
2005年9月には「たたかう書店—メガブックセンター・責任販売・万引き戦争・ジャンル別マネジメント・新古書店対策—」(同)を刊行、「よみがえれ 書店」シリーズ完結編として注目を集めている。同書は日本図書館協会選定図書にも選ばれた。

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